加薬飯

日々雑感 ときどき雑記 愚だくさん

【ブラスに魅せられし頃】

2010年12月06日 | 未分類
姪っ子の娘はいま中学二年生であるが、部活はブラスバンド部で、トランペットを吹いているという。
わたしもひと頃トランペットに凝ったことがある。折りしもニニ・ロッソの「夜空のトランペット」という曲が大ヒットし、日野皓正が台頭しはじめた頃でもあった。
新品のトランペットなど高くて買えるはずもなく、顔見知りの質店に置いてあった、安い質流れ品を更に値切って購入するのが精一杯だったが、それでも、初めてバルブの上に指を乗せたときには、さすがに胸が高鳴ったものである。
「目指すはトランペッターだな」と言ったら、当時トロンボーンを吹いていたイトコに「トランペッターじゃなくてトタンペッターだろ」と揶揄されたりもしたが…。

金管楽器というのは普通に吹くと音が大きくて、練習するにも周りに気兼ねする。さりとて吹かなければ上達もしないので、近所迷惑も顧みず騒音を撒き散らしていた。
あるとき近くに住む姉の同級生と顔を合わせたときに、にこやかな顔で彼女がこう言ったのである。
「○○くん、トランペット上手だねぇ。すごくよく聞こえてくるよ」
もちろん褒め言葉であろうはずがない。「あんた、ちょっとウルサイわよ。もっと小さな音で練習しなさいよ」という苦情の、婉曲的かつ皮肉を込めた表現方法に違いないのだ。

流石に気がひけたものの、当時はミュートを買う余裕もなくて、仕方なく朝顔の部分にタオルをギュウギュウと詰め込んでミュート代わりにしたり、苦肉の策で頭から布団を被って音が漏れないようにしたりして、更なる練習に励んだのである。