BLOGkayaki2

蚊焼です。日記です。
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【WH】景観は、壊して作る

2011年07月10日 | テレビ

 自然の景観と思いきや、実は人の手によるものだった。
 そういう例は日本国内においても案外多い。

 例えば、青松白砂の、綺麗な砂石や銀を採掘する際に、
切り崩した岩石が川に流れて、砕かれて、
海岸に堆積してできたものであると言う。
 そして砂浜に生えている松は、飛砂防止のため
人工的に植えられたものであると言う。

 特に鉄鉱石の採掘は、1000年ほど前から
行われているではなかったか。
 そんなに昔から日本人は、山を彫るなどして
自然のものをせっせと壊しては、一方で砂浜など新たな景観を
知らぬうちにせっせと作っていたのだ。
 今でこそ重機を使って、大々的に地形を改変している。
しかし人間は昔からせっせと営んでいれば、
圧倒的に見える自然の景観を作り変えてしまう事が出来るのだ。

 最初にこの話を聞いた時は、いたく感動したものだ。
 人間が、景観を作り出すことができるとは。
景観を見れば、人々の営みの歴史が見えてくる。その景観が
美しものであるほど、人間の営みは、自然と上手い事
共存できているともいえる。


 しかし今日見た世界遺産は、その思いをことごとく
破壊してくれる、強烈な遺産だった。

 時は2000年以上も昔。
 わずかな含有率の金を採掘するために、山を丸々削ったローマ人。
 ダイナマイトが無い時代に、水を流し込むことで
人工深層崩壊を起こして山を丸々破壊するという、
なんとも大胆で、強烈な事をしてくれよう。
 一気に山を崩すのだから、コツコツ景観を変えていく、
という流暢なものではない。更に、当時の景観はとても
美しいと言える代物ではなかったろう。自然との共生なぞ見当たらない。

 しかし2000年もの時を経れば、自然と人間は和解するものなのだろうか。
 よくある、奇岩群の自然遺産のような景観が広がっている事に、
たいそう驚かされた。しかしこれは文化遺産、山を丸々破壊する、
自然も環境もあったものではない豪快な産業遺産である。
 それがこんなにも美しい景観を作り出そうものとは。

 厳正なる自然景観と、人の手が加わった及び人の手による景観の
境目は果たしてあるのだろうか。もしくは、区切る必要性が
あるのだろうか。
 大々的に自然を壊しておきながら、後世になって美しいと
評される景観が生まれてくると、果たして自然破壊は
憎むべき存在なのだろうか。
 わずかな金の採掘というちっぽけな目的のために、
欲深い人々が大勢を借り出して景観を変えてしまった
という史実は人類にとって誉れな遺産なのだろうか。

 様々な思いが去来するが、しかし圧倒的な景観を前に、
世界遺産の価値ありと認めざるを得ない壮大な世界遺産だった。


 というわけで今日の「THE世界遺産」(TBS)は、
「ラス メドゥラス」(スペイン)でした。

 ちなみに人間が作り出した景観、という話でもう一点。
 奇岩の麓は栗の林が広がっているという話。
 これも人の手で造られたものという事が言われていたが、
言われなくても森林科学を習っている身としては分かる話。

 むしろ、栗林が広がっている景観に、たいそう驚かされた。
 これだから世界遺産は、知らない事が次々に出てきては、
常識を破壊させてくれ、ますます奥深いところへ引き込んでくれる。