カヤックと過ごす非日常

大人は水辺で子供に返ります。男は無邪気に、女はおバカに。水辺での出来事を通してそんな非日常を綴っていきます

547.何のために漕ぐか ― 見るためか食べるためか

2012年09月16日 | Weblog
安曇川辺りの、のんびり漕ぎと豪華ランチ? の漕ぎの日の記録

去年秋から公私共に?、大きな事件・小さな出来事、悲しい別れ・嬉しい出会い。めまぐるしくいろんんな波に翻弄され続きだった生活。それも一段落し、夏の暑さも落ち着いてきたこの頃、何かとお誘いが続き、嬉しい限りだ。

同じ日に3つのカヤックが計画されて、どうして同じ日になるのか、どうして体が3つないのか、と諦めざるを得ないカヤックに未練を残す。

カヤックの他にも、9月10月は平日にも何かとイベントがある。あっちも行きたい、こっちも行きたい、と嬉しい悩みを抱える日が続く。

そんなある日、これは選ばざるを得ない事、そう、「気ままツアー」でびわ湖に浮かぶ。 

相棒のご希望は湖西。

          OK! ではいつもの公園に集合!

と行ってみると、

          えっ!  この車は一体?…

出艇に予定していた公園ではどうやらゲートボールか何かの試合があるようで、駐車場は満杯。私たちが止める場所はもうない。

          えぇ~、 まぁ、しゃぁないな
          出艇場所を変えよう

          ってことはコースもちょっと変えて

こんなアバウトな事ができるのが 「 気ままツアー 」 の良いところ。 言い換えれば 「 いいかげん 」? 
それを 「 良い加減 」 と言い換えて、静かなびわ湖に漕ぎ出す。

今回は横江浜~北船木。岸なりに行けばたいした距離ではないが、あちこち寄り道し、7キロほどを漕ぐ。澄んだ空、水底を覗かせる太陽、心地よい風、今日もまた絶好の漕ぎ日和り。まずは内湖に入る。



 松の木内湖

 久しぶりに入りました

 意外と水がきれいなことに
 ちょっと驚きました

 

 




入り口付近の水草も、カヤックが通る分は開けてくれていて、久しぶりの内湖に入る。 夏の内湖は水が臭うのではないかと思っていたが意外ときれいで、まだ緑の水草、もう茶色になった水草、青い空、白い雲。 



遠くの山が近くに見え、そんな内湖で、「 期待する人間像 」・「 上に立つ者のあるべき姿 」なんてちょっとまじめ論を話しても、それもまたコーヒーに乗せたクリームのように柔らかくとける。



レンガではなかったが、緑と茶色はよく合う色使い。 ちょっと前、ある人に 茶色と緑の組み合わせは 「 重色目 」 では夏の色で、「 蝉の羽 」 と言うことをお話したことがある。

もう秋が始まりかけたが これは最後の夏色なのだろう。

           そう言えば…

           ある人さん、「 色の名前 」 の本を下さったある人さん

           あなたの名前を懐かしく思い出します
           できたら、

           懐かしい思い出より、嬉しい再会 でありたいです

静かに漕ぐ時はいろいろな事に思い巡らす。ちょっと詩人だったあの人の事を思い出すのも久しぶりだった。


っと、回想録は先に書くことにして、水門をくぐってまたびわ湖へ出る。



戻ってきたびわ湖もまた穏やかな水。水際まで迫る木々、波間に茂るヨシ。この辺り特有の光景が続く。びわ湖の景色ではあるが、アマゾン川やイグアス川、ザンベジ川にも似ている。みな懐かしい。( これはカヤックではありません、残念ながら )



スタートして直線距離にしたらさっぱり進んでいないがまたこんな所に入る。



ここも私のお気に入りの場所。夏の初めにはコウホネの黄色い花が咲く。今年はカヤックで見に来る事はできなかったが、懐かしい友人に会いに行く、そんな気がする所だ。



前回、海漕ぎのお話の中で

『 人はどこか、生命が誕生した海を、本能的に故郷と感じているのかもしれない。 だから海に向う事に何がしかの興奮を覚える ― 思い出す ― のではないだろうか。』

と書いたが、小さな川から大きなびわ湖に視界が開ける光景には、川から海に出る時の興奮に似たものがある。

相棒が 「 こういう光景いいね 」 と言う言葉に、この人にも川から見る本物の海を見てもらいたい、と思った。

「 海 」 に出た船乗りたちは(1名だけだったが)こんな冒険もする。



カヤックの楽しみ方にはいろいろあるが私は、「 こんな所に行かれることの楽しみ 」、それもまたカヤックの大きな魅力ではないかと思うし、それを伝える事が私の使命ではないか、と最近は思うようになった。

そんな所に行くから出会うこんな命。



         根元から倒れてもなお緑の葉を茂らす木と

         その木の根元に芽吹いた小さな木

前回白浜の海で見かけた2匹の犬もそうだったが、一人だけでは寂しいが小さくても友人がいると心強い。 互いに求め合ってつながる時と、意図せずにつながっている時と、人と人とのつながりもまたこのようである事、ふとした事で気がつく。 そんなつながりを嬉しく思う日がなんだか多くなった。

澄んだ水を覗き込むと、岸辺から沖に向かって石畳のような石の道が伸びる。

          もしかしてこれは水中遺跡?

一体なんなんだろう。水中メガネ、持って来れば良かった、と後悔する。

道がすぐ横に迫る辺りにあるこの木、オニグルミ。びわ湖の北の方ではよく見る。食べごろにはまだちょっと早いようだ。こんな水辺の実を採る人もいないだろう。ただカヤック乗りを楽しませるために毎年実をつける。 それもこの木の性なのかもしれない。



このクルミの木に、こんな杭に、そして以前、廃屋では? と言った建物にもこれまでに漕いだ人達とその時交わした会話を思い浮出す。

さて、どこで休憩しようか。別に疲れたからではなく、休憩時のお楽しみが待っているからだ。順調に行ったのではじきにゴールしてしまう。ゴールしてからは豪華?ランチが待っているので、その前に 「 お楽しみの休憩 」 をしなくては。

ではあの岸に上がろう。



「お楽しみ」をするために、目指す岸に上がって休憩とする。今回のコース、ずっと水がきれいだ。 揺らめく光を写す砂、澄んだ湖水から伸びる藻、その間を泳ぐ魚。 つい先日この近くを漕いだ時には風と波で水が濁っていた事が嘘のようだ。

         あぁ、あの人、乾パンの人にもこんな静かできれいな水を見せたかったなぁ
         まぁ、でも、この次もある事だし、
         次にはきっときれいに澄んだびわ湖を見てもらおう

ちょこっと楽しい休憩をした後はまたのんびり漕ぎ出す。この先はもう安曇川ジャングル。 

         この水路は行けるかな? 
         ここは水位が下がって行かれない

         その次は?
         お? おぉ~!

         橋立がない!

びわ湖にもある、と言った 「 天の橋立 」。何と、水位が下がっている今でも水没している。どの時から変わったのだろう、自然が作った橋立、自然が崩したのだろうか。それとも誰かが浚渫したのだろうか。



そのせいか、以前は泥水だった橋立内部は意外なほどに澄んでいる。浅い水底の砂に太陽がさしているのがはっきりと見える。びわ湖とつながったことで水の浄化が図られたのだろう。

きれいになったことは喜ぶべき事なのだが、橋立がなくなったことは…

         ちょっと残念だった。

自然 ( ネイチャー ) が削ったとしたなら、この姿が自然 ( ナチュラル ) なのだろう。



安曇川は南流も北流も水量が少ない。このところまとまった雨が降っていない。このまま水位が低いと鮎の遡上にも影響が出るのではないだろうか。

川底を白くする産卵後の鮎。それもまたびわ湖の秋の風物詩としてその白くなる川を楽しみにしている。次の年の新しい命のために、今年もまた鮎に遡上してもらわねば。

          川の水、もっと増えますように

橋立が消えた一方で、新しい砂州ができかけている。私がちょっと留守にしている間にびわ湖は少しずつ姿を変えている。だから何度きても新しいびわ湖に出会える。 


          だから、何度きても面白い

そんな岸を振り返りいくともうゴールは目の前。もっとゆっくり見て来れば良かった、と思いつつも、これからランチの用意をしなくては、とそちらのほうにも気が流される。

そして昼過ぎに待望のランチ。

 
 今回はパスタ

 ほうれん草とシメジのカルボナーラ  
 本格ニンニク入り

 それとサーモンの唐揚げ 

 ビワマスにしたかったのですが
 いつでも手に入るとは限らないのです

 それと、トーゼンの乾杯缶




お飲み物とデザートは相棒の担当。なぜかいつも暗黙の了解のようになっている。 今回も気の利いたデザートが出る。 写真に撮るのを忘れていた、残念!

少ない湯と油と時間と火を有効に使う技も、ちょっと上達した。次のリクエストも頂いたし、さらに腕を磨かなくては。

前回びわ湖を漕いだ日、「 乾パンの人 」 と漕いだ日にも、やはりこの岸でランチだった。沖の白石を見ながら湖水を渡る風の中でのランチは、この秋のびわ湖の定番となったようだ。 極上のランチタイムが過ぎる。


ゆっくりゆっくり漕ぎたいと言いながら、どうしてそそくさと岸に上がったのだろう。 何のために漕いだのだろう。

びわ湖を見るために漕いだのか、漕いだ後のランチを楽しむために漕いだのか…


           カヤックは道具である

           人生を楽しむための道具である

           びわ湖もランチも乾杯も、
           みなカヤックの部品の一つなのではないだろうか

                ・
                ・
                ・

           この上なく良い部品と

           最高に良い道具に感謝した日の記録






     

546.想像と期待と冒険と ― 何がついでの目的か 

2012年09月14日 | Weblog
TK-7 富田川から志原

今回もご一緒下さるのは ハンチングさん と 若者君。 今日もよろしく!

前回お話した宿から程近い小さな船だまり。そこが前回のゴール場所であり、今回の出発場所であり集合場所。前日に確認していたので間違える事もなく着く。 

「小さな船だまり」と言ったが、ここが川なのか海なのか、曖昧とした湿地が続く。7月にこの岸に着いた時にはねむの木に薄紅色の花が咲いていた。今はその花もすっかり落ちて、木を囲む草には秋の色が見える。

いざ行かん! と漕ぎ出してすぐ、海漕ぎの前にちょいと川漕ぎをする。。



「川」、と言ったが、「海の奥まった所」と言った方が正しいのかもしれない。じきに行き止まりとなり、戻る先に海が広がる。



「川を下って海に出る」、そんな大そうな距離ではないが、海に向かって行くのは不思議な感動がある。 人はどこか、生命が誕生した海を、本能的に故郷と感じているのかもしれない。 だから海に向う事に何がしかの興奮を覚える ― 思い出す ― のではないだろうか。

磨崖仏が刻まれていそうな岩が並ぶ。これは海と川の堺を守る巨人警備隊。



 お役目ご苦労様です

 水辺の護り、お願いします









今日も静かな海。最近の空は夏の入道雲と秋のすじ雲とが同居している。季節の変わり目が空を通っている。 じきにこんな島が現れる。



海でよく見かける形。 双子島 とか夫婦岩 とか、たいていは和風の名前が付く。しかしたまには ツインズロック なんてのもしゃれているだろう。 

        よし、決めた
        
        この岩は今日から ツインズ・ロック!

大きく小さく入り組む海岸線。 まっすぐ駆け抜けたのでは気がつかないほどに奥まった所に小さな港がある。 そこに見える赤い鳥居。 海にある神さま、お参りに行かなくては、とその社の下に舟を着ける。



小さな入り江の小さな港の小さなえびす様。 

         えびす様、私は大漁は願いません。でもカヤックの無事をお守り下さい。

この町の生業も見たかったのだが海はまだまだ先がある。お参りを済ませるとまたパドルの人となる。 入り江にはタコクラゲ? がたくさんいたのだが、残念ながらカメラには入ってくれなかった。

切り立った崖の下の磯場に誰かいる。釣り人だろうか、どうやって来たのだろうか。



どこまで行っても岩と木々が連なり、重なり合った地層がパイの一層一層に見える。一枚ずつめくって最後にジャムの付いた生地が出てくる。 思わず一口かんでみたい、そんな衝動に駆られる。

直線にしたら何キロもない所へ、寄り道しながら岸沿いに進むと意外と時間がかかる。やがて椿温泉の岸に着き、夕べ灯りの灯っていたあの建物が目の前になる。 



      大きな岩がフェンスに食い込んで…

      いや、フェンスが大きな岩を挟み込んで…

      海から得体の知れない怪獣が町を襲い…

      いや、遠い海を渡ってきた神が陸に上がるための橋として…

いろんなふうに見える大岩、この岩の前には謂れが書かれた立て札があるに違いない、そう思わせる大岩だ。 今度来る時には陸からこの大岩を見てみよう。 また課題ができた。 

今回もまた穏やかな海、この辺りでこんな海況なら絶好の漕ぎ日和り、と言うそんな海で、大きな岩、小さな洞窟、そして これは入れるのかな、と覗いて見る割れ目。 



      これは入れる、ヨシ!
      これは入れない、残念!

複雑に入り組んだ磯は岩の重なりが洞窟の入り口を隠す。 ほぉ~らね、こんな所にも隠れ家があったじゃない。

さらに奥まった入り江に入るとなにやら鳥居が見えてくる。ここにも神様が。



      八百万の神様

      私とメンバーと
      全てのカヤックの安全をお守り下さい

ここには以前、野猿公園があったとの事。今は人影のないその施設の岸で昼食とする。観光船も着いたのだろうか水辺から上がる階段の崩れが物悲しい。 

と、どこからか2匹の犬が現れてその内の1匹が海に浸かって、「涼を取る」?。 どうみても親子とは思えないが、親友? 同志? 同僚? それとも意外と親子?



近くに飼い主らしき人は見えず、どうやら2匹だけの冒険の旅に出ているようだ。それとも無人の施設のパトロールをしているのだろうか。

「犬猿の仲」と言うが、海を漕いで犬をみる事は殆どないというのに、野猿公園で犬に会うのもまた面白い巡り会わせだ。 ここで猿も出てきたら 犬と猿と人とカヤックと、思い白いお話ができそうなのに…。

残念ながら猿には会わなかったが、土木工事関係の人だろうか、橋の調査をしている人影が見えた。誰もいないだろうと思った所に現れるものには、犬にも人にも驚く。

        お仕事、ご苦労様です

        この橋は大丈夫ですか?

ゆっくり過ごした岸を後にして次はちょっと冒険。



大きなホールの先に延びる細い水路。行けるのかな? 行きたいな? でも一発波が来たら壁に激突だろうな。 そんな洞窟がいくつもある。 

      1年の特定の日の夕方、
      水平線に沈む太陽が洞窟の一番奥までその光を差し込んだ時、
      
      洞窟の壁が金色に輝き、そこに黄金色のうろこの魚の絵が浮かび上がる

きっとこの洞窟にはそんな秘密があるに違いない。人々はそれがどの日なのか知らないだけに違いない。

日が沈むまで居たいと思う所が多すぎる。日が昇るまで居たいと思う所も多すぎる。人間が「満足」を感じるのは欲する物が存在しなくなった時か、欲を感じる心を失った時か。 それは人にとって良い事なのか、憂う事なのか…

単調な様でいてめまぐるしく変わる海岸線。ただ無心の世界で漕ぐにも、空想の世界で漕ぐにもどこまで漕いでも際限がない。



ちょっと薄日の、とても漕ぎ易い日、時々現れる白く泡立つ波が僅かに風がある事を気がつかせる。小さな磯で休憩する。この時期、この海に来ならシュノーケルは必携。気がつけばみんな海に潜っている。 潜れない私はライジャケ頼りに浮かびながら水中散歩。

どの海も不思議な世界だ。水中では物が大きく見えるので 「ちょっと広い」場所も「広大な台地」となり、「ちょっと大きい岩」も「巨大な岩山」となる。 


波が引いた時に見える大きさと水中で見る大きさ、海水と言う媒体は物の見え方を変える。 もしかすると、空気とう媒体も本当の事を変えて見せているのかもしれない。 何が真実なのか、実は誰も知らないのではないだろうか。 

まぁ、そんな小難しい事は置いといて今カヤックを漕いでいる、という事実。それが大切な事実である事、私はその環境に感謝している。 

熱帯魚、珊瑚、ウニ、ナマコ? 得体の知れない何かがうごめいている。

   

        

             

                   

波に揺られるカメラとじっとしていてくれない魚と、写真がぶれるのはいつもの事。

磯伝いにどんどん先へ行き、ふと元の岸からずっと離れた事に気がつきちょっと怖くなる。そろそろ戻らなくては。

久しぶりに覗いた竜宮の世界。のんびり遊んでこの岸とも別れを告げる。さぁ、あと少し。ゴールの志原につく前にもこんな岩、と言うか洞窟。



後で調べると、潮位はこの日のこの時間の高さよりさらに最大で1メートルくらいは上がるようだ。となると、この洞窟にもカヤックで入れるに違いない。 

いつか、そんな時に行ってみたいものだ。 幾つかある入り口が中でつながっていたり、何百メートルも続いていたり、奥に海幸彦明神の祭壇があったり…

見えない物は想像をかき立てる。想像は新しい冒険を期待させる。 新しい冒険は目標を先へと導いてくれる。 こんな洞窟が最終ゴールまであと幾つあるのだろう。 まだまだ知らない海の事、ライフワークは壮大だ。

入り江を周り、2つの神様にお参りし、シュノーケルで水中散歩して1日楽しんで、結局16キロ? 17キロ? 程漕いだだろうか。 すっかり片付け終わる頃、今日漕いで来た海が傾いてきた太陽に光っている。

 

前日のお宿の記録で「海はこの宿のついで」と言い、今日の海の記録では「この海のついでだった宿」と言う。 どちらも大切な記録となった白浜の海だった。

              いい海だった。

              本当にいい海だった。

              また一歩、ゴールに近づいた海だった

              みんな、ありがとう…







545.秘境なる宿 ― 意外と行きやすい秘境

2012年09月11日 | Weblog
記録が前後してしまったが先日行った白浜の海。そこを漕ぐために泊まった宿を、この宿の事もまた大切な記憶として一話の記録とする。

                ・
                ・
                ・ 

ちょっと前のある日の朝、あの人からの電話が鳴る。 あの人からの電話は海漕ぎの連絡に決まっている。

      あ、電話だ。 ってことは明日だな!

そのとおり、「あした、どうですか?」の知らせ。 

      もっちろんOKです!
      いつだって 連絡の1時間後には出られるように準備してます!

と言ってから、大慌てで準備する。 前回のTKシリーズ漕ぎから2ヶ月が経った。そんなに経ったんだろうか、
10日ほど前のことのような気がするのだが。

実は、以前から、次に白浜方面に行く時には途中で確かめたい事が2つあり、今回はそこへ寄ってから行く。

1つ目  やっぱりね、やっぱりそうだった
      11:15!
      ちょっと安心

2つ目  そうだったのか、 でも、やっぱりね
      なんか用かい? 
      ちょっとおかしい
   

何を安心し、何をおかしく思ったのか… それはいずれお話するとして、今夜泊まりたい宿に連絡する。

     今晩、いいですか
     そうですか、良かったです、ありがとう。

急な申し出だったが快く泊めてもらうことができた。 前回、7月に海を漕いでやってきたあのお店。
『 まるで秘境 』 と言った店が、泊まる事もできると知って、次回ここに来る時にはぜひ泊まりたいと思っていた。

海が次第にたそがれる頃、念願の宿に着く。店の主が出迎えてくれ、早速あのテラスで夕食とする。 


 覚えていますかこの海とこのテラス
 前回はここにケーキがありました

 前回は休憩で
 そして今回は宿泊で

 「再び」とか「帰る」って
 心地良い響きですね

 それがいつか「還る」になるんですね


 

私のためだけに開けられている店。太平洋のささやき。暮れて行く海。こういう時間を「贅沢」と言うのだろう。

今回の夕食は途中で仕入れた手毬寿司にしたが、この次は店の自慢のメニューを頂かなくては。 

すっかり夜の帳が下り、岸辺へ続く小路に灯る灯り。今夜の泊まりは私だけとの事。これは私1人のために点けてくれたのだろう。 こんな小さな灯りと太平洋が奏でる波の音。これほどの贅沢があるだろうか。



明日はあの岬の明かりのずっと向こうまで漕ぐ。どんな海になるだろうか。

夜風に冷えて店の中に入ると厨房から良い匂いがしてくる。明日の準備をしているとの事。



 軽い曲が流れ

 玉ネギを炒める匂いがし

 大きな飾りがゆっくりまわり

 柔らかい光の中で本を読み

 それから…







棚に置かれたワインの瓶に気がつき、グラスに注いでもらう。厨房で仕事をしていた主が仕事の手を休め、私のワインに付き合ってくれる。 静かな時が流れ、このためだけにはるばる来ても価値がある、と思えてきた。

明日の海漕ぎとこの夜と、どちらがメインなのか。 なんだか海は「この宿のついで」、のような気がしてきた。

ゆっくり寛ぎ、いつのも時間より早めに床につくのが惜しかった。

         そして朝…



明け始めた空とまだ灯りを残す建物と、そしてかすかな波の音。今日もいい海になりそうだ。 朝の海には誰もいない。 磯には幾重にも重なる地層が続き、どこまで行っても見飽きない。



荒々しく削られた奇岩、何と名前をつけようか。いろいろな物に見えてくる。そしてこんな、一輪が10センチほどの大きさの「石の花」も咲いている。



これはどんなふうにしてできたのだろう。きっとこれにも小難しい学術用語があるのだろう。しかし私はこれは「石の花」と言おう。

散歩から帰り、やっぱり今日は海漕ぎが目的だった事を思い出す。一晩の贅沢を過ごした宿の主に見送られ、『 まるで秘境 』 の小さなカフェを後にする。 意外と行きやすかった 『 秘境の宿 』。正直言って、この贅沢を誰にも言いたくないような…。 

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目的の海漕ぎの前の日に、もう一つの目的を果たした日の記録。 これだけで気持ちがいっぱいになった。海漕ぎの記録は、また別の日にしよう…




 


544.新たな出発 ― 再びのパートナー

2012年09月09日 | Weblog
昨日、友人の、大切な友人の、ささやかな進水式を行った。

ささやかではあるが、その思いは大きく、熱いものがこみ上げる進水式だった。 愛艇との新たな出発式と新たなツーリングにご一緒させていただいた事、この上ない光栄であり、私にとっても新たな出発の喜びだった。 そんな進水ツーリングの日の記録。

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              ・

その人と一緒に漕ぐ事が決まった日、コースを幾つか提示した。 以前、相手に何かを選んでもらう時、意図的に並べる順番を変える、とお話した事がある。覚えておいでだろうか。一番選んでもらいたい事を一番最初に置く(書く)と。 

それで今回、その人と前回漕いだ続きのコース設定を4つ、そして5番目に私が希望するコースを示した。実はそれが B-Ⅳ-18 のコース。しかし今回のツーリングはその人のためのびわ湖だったので、私の B-Ⅳ シリーズのコースは、二の次、三の次。 そう思ってあえて5番目に書いた。

ところが意外にもその人が選んだプランは 5番目のコース。安曇川北流から今津の約10キロ。

      えっ? もしかして 私のために選んだの?
      どうして私がここを希望していたかわかったの?

そんな疑問もその人に会うとどこかへ消えていた。(実はこのコースはその人の B-Ⅰ シリーズのコースでもあったことが後でわかったのだが)

      お久しぶりです!
      でも、そんな気がしないんです。 つい先日も会っていたみたいな。

本当に久しぶりに会うその人は、相変わらず… 相変わらずの笑顔だった。 

「知る人ぞ知る」の出艇地。途中の道でまた車の底を擦った。右に左に大きく揺れる道、「大冒険をしているみたいだね」。隣に乗ったその人の言葉にさえ嬉しくなる。 

       そうです、大冒険が好きなんです!

遠くに沖の白石が見えている。ざわめいている水面がキラキラ光ってこの日のスタートラインのようだ。



今日の天気予報は、曇り、昼頃小雨。風は4~5メートル。 5メートルの風はなぁ… と思いつつも、まぁ、行ける所まで行こう、それに今日は 『 進水式 』 をやらなくては。


壊れて長い間乗っていなかったが自分で修理した、と言うカヤック。 真っ白なボディーに艇名がしゃれている。 その人とその舟と、長い間パートナーである事から遠ざかっていたが、今また新たにパートナーとしての非日常が始まる。

風が吹き始めた岸でささやかな進水式を行う。

        スッポーン!!

勢いよく飛ぶコルクの栓。 ボトルからほとばしる泡の一つ一つは新しい冒険のページ。その泡を生まれ変わったカヤックに注ぎ

        この人とこの舟の旅が安全で楽しいものでありますように
        この人とこの舟に幸いあれ

と言葉を贈る。 そして、今日この舟を受け入れてくれたびわ湖への感謝としてその酒をびわ湖へも注ぐ。



私の進水式はいつもこんなふうだ。 どの進水式も嬉しいものだが、今回の進水式はまた格別の思いがした。 人とカヤック、人と人との再会が格別の思いをかき立てた。

ささやかな進水式の後は いざ、漕ぎ出さん! とばかりに波に向かって出発する。



今のところ風もたいしたことはなく、暑くなく、寒くなく、ちょうどいい気温の中、追い風に乗って漕ぎ出す。 しかし途中波が真横から当たる時にはかなり難儀をする。 10キロほどの距離、一気に行けば2時間ほど、昼に風が強まるまでにゴールできる距離だ。

今回はあんまり寄り道はせずに進む。 とは言ってもそこそこにまったりとしながら、休憩しながら、観光?しながら、波に揺られながら行く。



青い空に浮かぶ白い雲、水はまだ温く、軽い追い風。「乗ってる!」の感触が程よく感じられる波。絶好の漕ぎ日和、と言うには少し風があったが、この二人連れなら何も怖くない。

じきに見えてくる大きな風車。



       えぇ~、あそこにおいでになるのが
       太郎兵衛さんで…

本当は岸に上がって見たかったのだが、お天気が気になるのでゆっくるするのはお預けとする。 風は徐々に出てきて沖では白波も立ち始める。 ここらでちょっと休憩しましょう。



打ち寄せる波は大きく立ち上がり、そして滑り降りる。 漕ぎながら、休みながら、とりとめのない話が続く。 ちょっと風が収まったようだ。そろそろ出発しましょうか。



出艇時には青く澄んでいた空に灰色の雲が広がる。雨が降るんだろうか。岸の木々は葉を裏返し、白い肌を見せる。



ここは思いの外風が当たらない。波も静かだ。となれば行かない訳にはいかない所で、やらない訳にはいかない事がある。

          枝くぐり!  

あまりゆっくりとはできなかったが申し訳程度にくぐって先を急ぐ。



その先には浮島のような…、これは何と言う名前なのだろう。 設備? 構造物? 消波堤? 塩津にもあるし、赤野井にもある。それからぁ  きっと正式な名前があるのだろう。 これも調べておかなくては。

そこも駆け足で ― 駆け漕ぎで? ― 通り抜け、こんな所で休憩する。



ここまでくればゴールはもう目の前。 しかし、見えているゴールは意外と遠いものだと言う事、何かと経験済みの二人だった。 風はまた出てきて、大きく横から迫ってくる。

波の谷間を行く人を写真に撮りたかったのだが、こんな所で沈してはいられない。私も気合を入れて漕ぐ。

本当にあとわずかまで来た。 「あと15分くらいですね」 なんて言って5分と経たない内に、

        ん? 何か聞こえた?

        エッ!  雷?

        ひぇ~ いそげぇー!

それまでは打ち寄せる波を避けるためちょっと岸から離れて漕いでいたが、いつでも岸に上がれるよう、岸沿いを漕いでひたすらゴールを目指す。

何度も振り返り、雲はどうだろうか、雷はどうだろうか、と心配しながら行くが、どうやら雷はちょっと脅かしに、鳴ってみただけのようだった。

追い波に巻かれない様に慎重に上がる。沖の大きい波では沈しないが、岸の打ち寄せる波では沈する事、これもまたよく心得ている二人だったが、幸い無事上陸できた。



        ほぉ~ やれやれ

小雨が降る中、舟を車に積む。最後に雨が降ったが、これ位の雨はご愛嬌だろう。 それから遅い昼食とする。



 今日のメニューは

 変わりゆで卵と焼き豚
 フルーツはパイナップル

 
 特性野菜炒めとスープ

 そして乾杯のアイテム




そこそこのできばえ? しかし、もう一度同じ物を作ろうと思ってもそれは無理。 テキトーな調味料をテキトーに入れたので二度と同じには作れない。 そこが又新しいメニューとなってレパートリーが増える、と言うものだろう。

波の音を聞きながら、人生の事、カヤックの事、それから…

長い時の隔たりを埋めるには短い時間だったが充実した時を過ごした。 本当にいい時が流れた。


     晴れた心の青空があり

      冒険心をくすぐる光の粒があり

       湧き立つ思いの白い雲があり

        ひたむきさを奮い立たせる追い風があり

         苦難に立ち向かう大波があり

          叡智でかわす雷があり

           そして

            
            安らげる木陰があり


新しく漕ぎ出すカヤックとそのパートナーへ、びわ湖がいろいろな場面で歓迎してくれた。 全てがいい日だった。

 
          最後の雷は、あれはゴールの祝砲だったのかもしれない。

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生まれ変わったカヤック、どんな舟かって?  それはベルトをかわいく結んだ真っ白いカヤック。 きっとどこぞの水辺に浮かんでいる事でしょう。

     
           


          






543 又一巡り ― 猫と少年のいる海

2012年09月07日 | Weblog
また暦が一巡りして、また、この海へ還って来て、またあの猫と少年に会った日の記録

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毎年恒例となった常神の海。今年で5回目。5回目ともなると、「もう知っているから行かなくてもいい」、のではなく、「もう恒例になっているから行かなくてはならない」と言う気がしてくる。

このところカヤックに乗る機会が少なかったが(チャンスがなかった訳ではないがいろいろ野暮用で乗る事ができなかった)、そろそろ本格始動しなくては、と動き出す。

びわ湖を見ながら行くのも良いし、かやぶき屋根の峠道も良い。どっちでも良いなら、たいていはびわ湖が見える道を選ぶのが私の常だが、若狭の海へ行く時は峠道を行く。 

たまに通る峠道の茶店にも懐かしさがあるし、何より早い。 信号は殆どないし、脇道から出てくる自転車もいないし、左右を見ないで横切る老人車もいない。 一般道なのに70キロは当たり前。ふと気がつくと80近く出ていて、これはまずい! と慌ててブレーキを踏む。 

そんな私を追い越していく車を見ると、「捕まるよ! その前に事故するよ!!」 と自分はさて置き、忠告の言葉を口にしている。

つづら折れの道を行くと見えてきたあの海。



今日も穏やかだ。 予報では昼頃から風が出るとの事、どうぞ予報が外れますように、と祈りながら港を目指す。途中、人に会うことなどめったにない道だが、この日はこんな方々(?)を何度もお見かけする。



群れで移動しているのだろうか、何組もの親子の集団に会う。必死にしがみついている子猿が何ともかわいい。

        落ちないようにね

集合の1時間前に着いたのだが、すでに何艇か準備をしている。

        あの人、どこかで会ったような気がするなぁ
        誰だったかなぁ

        こんにちは、どなたでしたっけ?

いつもの挨拶から始まり、記憶の不確かさが年々増していくことを実感する。

メンバーの準備が整うまでちょっとお先に海に浮かぶ。 海は抜群の透明度で足元にはお馴染みの魚たちが寄って来る。


 
 これはたぶんキュウセン

 若狭の海でよく見ます
 
 どこにでもいるのかも








みんなが揃い、のんびりと漕ぎ出す。サッチモさんが先頭を行く。毎年見る光景を今年もまた「去年も見たな」と言って見る。時が巡って暦が新しくなってもまた同じ言葉を言えるという事の喜びを感じる。



去年もこの崖の上の小さな祠に行きたいと言っていたが、結局行かず終いだった。今、私はこの階段を昇るには一苦労だ。崖は、これはちょっと無理だろう。 気持ちはあるのだが…。

「やれる時にやれる事を」それをモットーとしてきた私だったが、やれる時にやらなかった事が何と多いことか、最近胸が痛むほどに後悔している。

まぁ、そんな後悔は波間に残して、あの洞窟へと向かう。

常神、と言ったらあの洞窟。 お馴染みのグリーンケイブ。 いつもはまっすぐ入ってまっすぐ出てくるのだが、今回は横道から出てくる。


 白いルートで帰ります

 波が寄せ、水面が広がった時に
 通ります

 ファルトの人はやめた方がいいかも 

 サッチモさんは黄色ルートで出た
 事があるとか

 いいなぁ、私も行きたかったなぁ


新しいルート制覇! 同じ所なのに別の発見がある。 きっとまだまだ知らない事がたくさんあるに違いない。

さて洞窟の後はあの島、ネコ島を目指す。 地図上での名前は正式にあるのだが、私はこの島を「ネコ島」と呼んでいる。

        あの人が、そう、教えてくれた島だから…



この日は午後から風が出るとの予報。どうぞ穏やかな日でありますように、祈っていたが、今のところ順調に進む。サッチモさんが言う。

        常神は何度もきているが、こんなにきれいな水はめったにない

そう言わせるほどに青い海だった。



懐かしい洞窟、初めて入る洞窟、こじんまりとした洞窟がいくつも続く。



         この洞窟、も~らぃ! 

独り占めできないことがちょっと悔しい。 どうしてこんなに例えようのない色になるのだろう。

以前、びわ湖大橋の橋脚を囲うパネルが外れていて、中を見た時、それは不思議な緑色の世界だった事をお話した。覚えておいでだろうか。



この緑色はまるで絵の具を流したように濃い緑色だった。マラカイトグリーン とでも言おうか。

それに比べると常神の洞窟の色は、緑と言うより「青緑」ピーコックグリーン? いやそれとも違う。言いようのない色をして見る者を楽しませる。

今回は久しぶりに大人数でのツーリング。ランチ会場にもいろんな匂いが漂ってくる。私は相も変わらず夏の定番「冷やしうどん」。



さてお次は待ってましたのシュノーケリング。 去年はここで半透明な細長いクラゲ?を見た。 

今年は… 今年はこんな物



 カメラについた水滴!

 ではありません。

 長さ5cm位の小さなクラゲ?
 
 あんまり小さくてうまく撮れません

 きっと赤ちゃんクラゲでしょう
 そういうことにしておきましょう


魚たちは、色とりどり、とは言えないが、大きいとは言えないが、数は多い。



「スイミー」みたい、と言うとある人が 「教科書にあった」と言う。 その人は自分の教科書で見、私は子供の教科書で見た。 「スイミー」の一言で、ここに二つの世代が一緒に海にいる事に気がついた。

しかし、親子ほどの年の差も水の上では意識する事がなく、水辺では世代を隔てる時間は存在しないんだな、と不思議な嬉しさが湧いた。(その人は、すごく違う、と思っているかもしれないが…)

のんびりネコ島を周り、小さな洞窟に入り、小さな岩を抜け 



とある岩の隙間でサッチモさんが

          経験者は行って良いです。初めての人は… 
          びわっこヨ さんは大丈夫!

          えぇー!
          そんな事言われて行って沈したら生けてけない…

プレッシャーかけられての岩抜けだったが、恥かくこともなく、無事通り抜けられた。 すると…
殆どの人がそこを通っている。

          みなさん、やるじゃございませんか!
          でも、舟傷つけたからって、私のせいじゃないですよ!

しかし、これで岩抜けの面白さを、ここでも普及できたかと、それだけでもこの日のツーリングの価値があった(かも?)

遠くまで続く浮きがこの日の穏やかな海の帰り道を案内してくれる。 穏やか海だったが小さなうねりがあり、入った洞窟、入れなかった洞窟、通ったトンネル、通れなかったトンネル、たくさんの遊びをして、そろそろ元の岸へ向かう。



予報に反して風も出ず、遠くに見えていた入道雲も遠ざかり、今年も又常神のページを静かに閉じる事ができた。



暦が一巡りして、またあの少年に会った日に、しばらく会っていないあの人を思い出した。あの人にもこんな少年の時があったのだろうか。 そんな日を想像すると笑えてくる。 よく時間に遅れる人だったのだが。



      「あれはネコ島」と教えてくれたある人さん、お元気ですか
      私は又、あのネコ島へ行って来ました
      
      時間は、人が回さなくても自然が回してくれますね
      私とあなたの時間が穏やかに回りますように 

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      若狭の海、常神の海、この日もまたいい海だった。

        みんな、みんな、 ありがとう