■ 一人綴り

イロイロやってますが、停滞中。(モノが出来たらアップする感じですから...。)更新はしますが数が減るかも。

■ 無題

2011年02月09日 | ○ Weblog



 春。色づく桜に人々が立ち寄る。薄紅色の花が生み出す優しい淡い光が人を

集めているのかも知れない。

 桜。一つの季節しか花を咲かせない植物。花の咲く季節に葉を持たず、そし

て葉の生い茂る季節には花を持たない。

 その樹木は美しい光をその場所に放つ時にそれ以外のモノを捨て、後の命を

宿した時、その命の為にすべてを捧げる...。

 春。もっとも美しい桜は自分以外の存在にその姿を知らせる。

 夏。命を宿した桜は、その命を育てるためにすべてを注ぎ葉を広げ、後の命
 
の為だけにその季節を過ごす。

 秋。後の命を宿した桜は後の世代の為だけにその季節を費やす。


では、冬の桜はどうだろう?誰かが見つめる花を持たず、命を育てる為の葉を

持たず、そして後の命も旅立ち、孤独な樹木のみになってしまった。

 樹皮の色は冬の雲のように暗く重く、枝を広げ、時に冬の風に折れそうにな

り、時に雪の重みに潰されになり、その寒さに朽ちてしまいそうになる。

 再度を失った世界にある春の時に見える美しさを持たないその樹木。

 孤独に多くに耐え冬という季節を過ごす。耐え偲ぶ桜はただ、耐えているだ

けじゃない。腐らず、そしてその花を咲かす桜であるから、後の春にあの美し

い花を咲かせる。

 桜の花の色。それは、樹木の中に止まった色でもある。冬にどんな事があっ

ても朽ちることなく、桜はその色を持ちつづけ春を向かえたからその花の色が

ある。

 桜のあの優しげな花の色は、桜の心の色名のかもしれない。

 見るものを優しく包むあの色。そして、後の命の為にすべてを捧げる夏の

姿。そして葉が散った後にその命を育てる姿。桜の色は葉が散ったとしても

その薄紅色の花が生み出す春の色に満ちている。

 そして、冬になったその時でも目に見えないけど、桜は変わらず、春のよ

うに優しいままでその場所に佇んでいる。

 冬の桜。誰も見ていないその場所で、誰よりも優しい心で未来を見据え、

空を見つめている。

 ただ空を見つめ、大地に根を張り伸びていく。あの優しい色をした花を咲

かせる樹木は未来の為に生きているのかも知れない。

 冬。誰も見つめていないかもしれないその樹木。ただ、その色はその色に

素材を染めるほど深い薄紅色に満ちている。

 深い優しさを持つ樹木だから、あの花があるのかも知れない。だから人は

その花に魅了され、その花を見にその場所に赴くのだろう。

 その深い優しさに触れ、その慈愛に満ちたその空気に抱かれ、そして、そ

こにある安らぎを求めて...。



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