さて、彩色に入っていたが、下地塗りはこんなものか。一番下には真っ白な胡粉を塗っている。その次に、前回作った喝食の余りの色を使って重ね塗りをしている。これはいずれ上塗りには「金泥」を塗るので、基本的には下地塗りにはどんな色でも良い。そのため、余っていた色を使ったまで。
ただ、これも過去の経験から、出来るだけ上塗りに近い色を塗った方がよろしい。が、せっかく余っている色なら、ただ捨てるのはもったいないから、再利用もありなのだ。
これは完成したの図。表面には「金泥」、口の中には「弁柄」を塗った。眉やひげの類は胡粉を混ぜた墨を使った。当初は墨だけを使って彩色を試したものの、「金泥」が金属系の粉末のために墨だけでは色をはじいてしまう。従って、胡粉を混ぜたにかわ液に墨を混ぜ、黒色を出したのだが、胡粉は真っ白、これに墨を加えても真っ黒にはならなかった。そのため、若干灰色がかった黒色となり、やむを得ずそのまま彩色したという具合。
なお、冠(かんむり)部分は黒っぽい灰色になったあとに、改めて墨汁を塗ったことから、ほぼ真っ黒になった。ただ、眉毛とひげはこのままでも良いかも知れないので、様子を見よう。
眼球の黒目部分が赤いのは、赤い紐が裏側で見えているだけだから、特に問題はない。
と、この段階で一応は完成として、次の課題に入ることにする。次の課題は「十番切(じゅうばんぎり)」という、この地方の能舞で使われるお面だ。これは、前に作った「志のぶ」と言う能面(これもこの地方で行われる能舞の面)と似たようなものらしい。