ねこに ねこじゃらし

ねこのそらの話を中心に、ぽつぽつゆっくり更新しています。

富安陽子さんの講演会

2018年07月08日 | 日記





わたしの街の広報に嬉しいお知らせが載りました。
「富安陽子さんがやってくる!」
     ~妖怪とのつきあい方教えます!~



もうそれを見て舞い上がってしまったわたし、
さっそく近所の図書館へ申し込みにいくと
司書の方が頭を傾げて「え~と・・・」と困り顔になり
言いにくそうに
「あの、申し込み用紙がまだ来ていないんです。
申し込み、明日からですので」

あらっ(゚O゚)!






そんなおっちょこちょい丸出しで始まった講演会までの道のり、
なかなか平坦ではありませんでした。
難関の定員100名の抽選に当選したハガキが届いた喜びも束の間、
どう転んでも、笑って講演会に行ける状況ではない事態になってしまったのです。
あ~行きたかったなぁ~と未練たっぷり、でも諦めざるを得ないわたしに、
大丈夫!行っておいで!と手を差し伸べてくれる人が現れたのは、講演会の前々日でした。
具体的なことが書けない事情なのですが、
どれだけ嬉しかったことか。
講演会の会場を出たとき、まっさきに浮かんだのは
最初から聞けて良かった、ここに来られてよかった、
本当にありがとうございました。ということでした。



そんな紆余曲折のおかげもあって、目の前に富安さんが現れたときのワクワクは、
きっと何倍にも膨らんだと思いますが、
お話が始まるやいなや、初めてのお話を読むときのように
日常のざわざわを忘れて、楽しい世界に引き込まれていきました。


東京で生まれ、育ちも東京だと思い込んでいましたら、
幼少期にお父様の転勤でカナダへ行かれ、
帰国した5歳からは大阪の箕面で暮らされてきたそうです。
当時、「箕面といえばサル」というくらい有名だったらしいですが、
なんと富安さん、サルが自販機でコーラを買うところを目撃されたことがあるというのです。
そればかりか、プルトップをプシュっと開けてゴクゴク飲んだとか。

その短いエピソードひとつで会場はザワザワ、ゲラゲラの渦。
「そういう街から来ました。」というご挨拶なのですが
もとより富安さんの物語に入り込む習性のある人ばかりの会場ですから、
どの方の頭の中でもサルが自販機にコインを入れたり、コーラを飲んでいる姿が浮かんでいたでしょうね

大阪の箕面といえば、つい先日の大阪北部地震や、猛威を振るった豪雨の被害が酷い最中でありながら
東京方面にはギリギリで走っていた新幹線に乗って来てくださったのだそうです。
ほとんど標準語でお話されていながら、時折顔を出す大阪弁が新鮮で魅力的でした。


物語を生み出すタネはとても身近なところにあって
それに気が付くきっかけを、ご自身の子供時代の体験や、子育てを通して語られる富安さんを見ていると
なんだかまるで、ずっと前からの知り合いのような気がしてきました。
子育て中の公園の砂場で、
「ねぇ、ウチのコ、大きくなったらゾウになりたいなんて言うんだよ~。まったくやんなっちゃう。」
「え~、ゾウならまだいいわよ。うちなんて輪ゴムよ、輪ゴム。」
たしかにそんな会話をしたような記憶があります。
でも、その種を、子供を夢中にさせる物語に育てられる方はそうはいないでしょう。
ものすごく優れた作家さんであるのに、人として、お母さん同士として仲良くなりたいなぁ。
おこがましいけれど、そんな風に感じさせるお人柄でした。


講演会の中程だったでしょうか。最高のサプライズが始まりました。
スクリーンに大きく「まゆとかっぱ」という絵本の表紙が映し出され
「いいですか。よ~く見て、聞いていてくださいね。後で質問しますよ。」と言って
富安さんが読み始めたのです。
知らなかったお話を聞きながら、
お話にぴったりな、楽しすぎる降矢ななさんの絵がめくられていく、とても贅沢な時間です。
思わず、見とれ、聞き惚れているうちに物語が終わり
「さて、まゆは最初は何をしていましたか?」という質問が出されました。
あら~?あんなに真剣に聞いていたのに・・オボエテイマセン(^^ゞ

答えは「ヤブイチゴ摘み」なのですが、そのイチゴがたっくさん入ったカゴが、
どのページにも必ず描かれているんです。
子供の視線が迷子にならないように。
裏表紙ではジャムになっていて、まゆがお土産で持っていったのでしょうか、かっぱと一緒に食べています。
他にも、まゆの相棒のキツネとかっぱの一人(一匹?)が仲良しになるサイドストーリーが
物語とは直接関係ないけれど背景にきちんと描かれていて、
お話の世界全体をうんと膨らませているのです。
それが優れた画家さんのお仕事だと富安さんはおっしゃいました。
絵の中に子供が遊ぶ。これも思い当たることのある人が多いのでしょう。
会場中の人がうんうんと頷き、感嘆の声も聞こえてきました。


嬉しいことにもう一冊、「オニのサラリーマン」という絵本も読んでくださったのですが
こちらは関西弁で書かれているので、
「ネイティブな関西弁で」と、ユーモアを忘れないところは、サスガ!大阪のおばちゃんの面がチラリと顔を出しました。
このお話も、富安さんはオニのサラリーマンに「オニガワラさん」という苗字こそ与えましたが、
シリーズ化することまで考えていなかったそうです。
絵を描かれた大島妙子さんが「オニガワラ・ケン」という名刺を持たせたことで
しっかりとキャラクターが立ち、シリーズ化していくことになったそうですから
ただぼんやり「素敵な絵だな~」「面白いなぁ~」と見ているだけでは申し訳なくなりますし、
絵の中に隠されたストーリーを見つけられたら、と思うと
さっそく何冊か手元に置きたくなってきました。


ホワイトボードにバルタン星人とピグモンの絵をスラスラ~っと描きながら(写真撮りたかった!お上手でした)
ご自分の子育て時代のエピソードを絡めて、子供の目にしか映らない見え方、
子どもは大人には出来ない発想をするということをお話されましたが、
富安さんがちゃんとした大人だからこそ、そのことを理解して
そんな子供をあっと言わせる物語を書なければならないという
難しい仕事が出来ているのだと感じました。
子供の本を書く仕事の難しさを、とても易しい言葉でわかりやすく
わたしたちに話してくださったのがとても心に残りました。


今までに120冊もの本を刊行されていらっしゃるということですから
わたしが読んだのは、その数分の一ですし、
一度読んだだけでは、どんなに面白い物語でも哀しいかな、硬くなった頭では忘れてしまいます。
これが子供の頃に読むのと、大人になってから読むことの大きな違いだと痛感しています。
「この本を子供の頃に読みたかったな」
富安さんの本を読みながらいつもそう思うのは
こんなわたしでも、子供の頃に読んだ本は今でも心の中に残っているからです。
富安さんの物語に出てくる誰かが、子供の頃からずっと心の中にいてくれるなんて
なんてすてきでしょう。
そういう子供時代を過ごせた人が本当に羨ましく思います。


それでも、これからもまだ知らないお話を読みたいですし、
もしかしたら読んだことを忘れて借りてきてしまうこともあるかもしれませんが
何度でも感動できるなら、それもありかななんて、オトナな考えでしょうか
帰りに図書館で借りてきた「レンゲ畑のまんなかで」は、
富安さんに出会った頃に読んだ本なのですが、
やっぱり初めて読むようなワクワクとした気持ちで、ページをめくっています




















  暑い日が続きますが、水分補給を忘れずに









  サッカーで夜更かしした分は

  






  涼しい場所で お昼寝をして補いましょう









最後に、西日本の豪雨ではたくさんの方が亡くなられました。
たくさんの方が、まだ怖い、不便な思いをされていることと思います。
心よりお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに
これ以上の被害が起こらないようにお祈りいたします。