久しぶりに小説らしい小説を読んだ。金座街の古書アカデミィで110円で購入。
1995年3月発表の長編。
映画にもなったので
amidado dayori 2002 trailer - YouTube
ご存知の方も多いと思うけれど、肺腫瘍の専門医の妻と、小説の新人賞受賞後四苦八苦する夫が、体調不良と都会の生活に疲れ、夫の生まれ故郷に戻り、美しい自然と素朴な人情に触れて再生する物語。
ストーリーもちゃんとしていて、医師でもある作者は医療の部分の描写も的確で(たぶん、私は素人なので)、安心して読めました。そして人は結局、自然の中で人とのつながりで生かされるのだと、作者の強い確信を感じました。
1995年と言えば阪神淡路大震災の年、書かれたのはその前だと思うと、あれから続く天変地異に事件の数々、感染症の広がりは、その心のよりどころさえ頼りにならない時代になったのかと、殺伐とした思いにとらわれます。
帰るべき美しいふるさとも人情も、もうこの国には残されていないと結論付けるのは早すぎるけれど、わずか四半世紀前の作品なのに、とても昔のことのように感じてしまう。
時代は逆に向いては流れない。新しい時代の、コロナと天変地異の時代の新しい再生の物語を読みたいと思った。
作者は、私の遠縁の友達のお兄様、一度だけ消息を聞いたことがある。たったそれだけの御縁ですが、遠い知り合いと勝手に思っています。
作者自身、助からない患者さんを見続けて心身不調になられたと、何かで読みました。もう回復されたのでしょうか。世界中の病気のニュースを見るにつけ、生きて成長するものを見て元気になりたいと、しみじみと思う。
先生には人間ドックでお会いすることもありました。
新作が出るとついつい買ってしまいます。
美しい映画でしたが、母も、その他の入居者の方々も、反応が少なくて、普通の映画館みたいに、ほかのお客さんとの感情の共有が感じられない、ちょっと奇妙な鑑賞会でした。映画のそこはかとない哀愁と、年老いた母と一緒にいるときのもの悲しさとが、重なりました。樋口可南子さん、北林谷栄さんが、素敵でした。
読んでみたいけれど、長編なら、今は無理かな。
私が先日書いて保留にした記事『絵師 絵金』の作者、木下昌輝は私の長男の勤めていた住宅メーカーの同僚だった人でした。作者を知っていると読んだときの感触が違ってきますね。
そうなんですか。地元ですね。確か佐久総合病院とかいうところに勤務されていましたよね。
二足のわらじは大変だと思いますが、それで心のバランスが取れているのでしょう。きっと優しいお人柄ではと想像するのですが。
貴重な情報、ありがとうございました。
お母様の施設でご覧になったんですね。ご高齢でなかなか理解まで行かなかったのでしょうか。
阿弥陀堂の堂守の老女のような境地にはなかなかなれそうにありませんが、自然と一体になった生き方が昔は普通だっなあと思いました。
お母様の反応はいかがでしたか。今は全然施設に行けないので、うらやましいです。
エッセィに、助からない患者さんを見続けて精神に変調をきたしたと書いてたと記憶しています。
木下晶輝氏も二足わらじで大変だったことでしょう。今は作家専業になったのでしょうか。知っているだと応援したくなりますよね。