生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

声楽と器楽の違い 楽器を選べるということ、楽器を選ばなければならないということ

2017-05-26 22:51:23 | 思うこと

 声楽しか勉強していなかったときは、器楽の人たちをうらやましいと思うことがありました。声楽の場合は親から授かった、生まれ持っての自分の声帯以外で歌うことは出来ません。極めて特殊な例として「声帯移植」という医学的な手法もあるようですが、「声帯移植」によって高名な声楽家になったという人は知りません。声帯が薄くて短めならソプラノかテナー、厚くて長めならアルトかバス。本人が希望してもその歌はあなたの声には合わないから歌うのは止めなさい、と言われたことのない声楽家はいない(あるいは極めて珍しい)のではないでしょうか。

 その点器楽演奏家の皆さんは、自分の好みの楽器を選べるし、異なるタイプの楽器を複数所有して、弾き・吹き分けることも普通のことですよね。うらやましい限りでした。まあ大きい楽器や重い楽器を持ち歩く人は大変だなとは思っていましたが。

 ところがいざ自分で楽器を選ばなければならい立場になってみると、何を買えばよいのか決められません。楽器店主催の選定会に行って吹き比べれば違いは判ります。一般的な傾向として高額なモデルになるほど音色も演奏感覚も良くなります。とは言え経済的制約がもちろんあるので、本当に良いものを一本だけ選ぶのか、最高ではないけれどそこそこ使える違うタイプを二つ買うか?等と考えだすと決められません。その上、同じメーカーの同じモデルでも10本あれば10本全部違うからできるだけ多くの個体を自分で演奏して最もしっくりするのを選べ等と言われると、この楽器に決めようかなと言う瞬間に「本当にこの楽器で良いのか?次の楽器店には同じモデルでももっと良い状態の個体があるかもしれないぞ???」という悪魔の囁きが聞こえだすと、ハイ、もう永久に買えなくなります。

 私自身は見合い結婚ではありませんが、結婚相手と出会う前に何度かお見合いはしたことがあります。一人だけ絶対に無理と思える女性がいましたが、他の女性は結婚したらしたで上手く行くかも知れないと思いつつ、最後の踏ん切りが決められないうちに当方の感触を悟った相手方から断って頂いたりして、そうこうする内に転勤の打診があったことがきっかけとなって、結婚しないなら転勤に応じるし結婚するなら断ろうと思うと言った相手と結婚した次第です。

 何かを選ぶということは他のこと(もの)を捨てることだ、という主旨のことを言った先人がいると思いますが、けだし名言ですね。何かを選択するということは他の可能性を捨てるということです。そして年齢を重ねる毎に捨てる可能性の重みが増してきます。若いうちは多少の過ちはやり直せますからね。

 別の観点から考えてみましょう。プロの演奏家であれば楽器は仕事道具ですから、楽器は本人の収入を担保するものになります。アマチュアにとっては普通演奏によって対価を得ることはない(一定額以上の対価を得ている場合は納税の義務が発生する)点で、プロとアマとは本質的に全く違います。音楽によって収入を得ている人をプロの音楽家と言い、自分の収入の可処分所得を音楽に費やしている人をアマチュア音楽家と私は定義しています。

 アマチュアの中にはレッスンを受けずに全くの独学である程度弾きこなす人も珍しくありません。しかし今の私は老い先短いからこそ回り道したくないので必ずレッスンは受けたいと思います。そうすると私にとっては何かの楽器を始めるということは楽器を購入するだけでなくレッスン代を確保することも意味します。そうなんです、高いフルートを買ってそのためにレッスン代をけちらなくなることは本末転倒ではないか?

 長く声楽のレッスンを受けて来たので基本的な息の支えは身についているため、初めて自分のフルートを購入し、運指表を見ながら吹いたところ初めから3オクターブ全ての音を鳴らすことが出来ました。とは言え運指は今でも間違えますし指の回転はまだまだ遅いです。それでも簡単なメロディーを吹いている分には、家族からは上手いねと言われます。

 先生に勧められるままに高いフルートを購入して、レッスンも今まで通り続けるとすると、経済的にその他を相当削らなければなりません。最も望ましいですが現実的は無理ですね。明後日に松先生のレッスンがあるので正直に相談してくるつもりですが、高いフルートを購入する代わりにレッスンの頻度をさげるか、今まで通りの楽器でレッスンも今まで通りとするか、どちらが良いでしょう? そりゃレッスンは今まで通り続けなさいと言うと思いますよね。まあ実際それが現実的な回答と論理的には思えるのですが、一方で声楽のレッスンは止めてしまったけれど、だからと言って現在全く歌えないわけでもない。いずれどこかでフルートにしてもレッスンを卒業する日を迎えるだろう。その卒業試験の課題曲を具体的に先生時指示してもらって、その課題曲を吹くのに適した楽器はどの程度の楽器なのか? 言い換えれば、現在のゴールを何処においているのか、ゴールレベルに応じて楽器にかける金額とそれまで必要と予想される合計のレッスン代との合計額を大体のところで予想した上で、楽器代とレッスン代の比を50:50ぐらいにするのが本当の意味での大人買いではないか?等と思ってみたり。だんだん面倒になってきました。基本はある程度つかめて来たのでレッスンを止めるという選択肢があっても良いのかなと思い始めています。下手な内の方が楽しくて、レベルが上がるにしたがって楽しみよりも苦しみの方が増えることは声楽レッスンで経験済みですし。フルートは既に楽しさのピークを越えつつあるような気もします。


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