あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

秋深し今宵はスタンリー・キューブリック 

2018-11-16 14:21:41 | Weblog


闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1877~1886



1)ワイラー監督の「噂の二人」
ワイラーは人種差別や偏見打破に意欲的に取り組んでいたので、わいらあとても尊敬しているが、これは昨今話題沸騰ちうの同性愛への差別に取り組んだ先見的な作品。同時に他者に対していわれなき敵意をばらまく悪魔的人格への警告もなされている。
シャーリン・マクレーンは、みずからがLGBTであることを苦にして、むざんにも自裁して果てるが、今なら生きて生きて堂々と告白できただろうに。
他方、流言飛語によって致命傷を負ったヘプバーンは、全世界の敵幾万に向って昂然と額を上げ、雄々しく進んでいくが、この美しくも健気な姿を「ローマの休日」の後日談として眺めてある種の感慨に浸ることも許されるだろうか?
素晴らしいリリアン・ヘルマンの原作による、2度目の映画化!に拍手。

2)スチーブン・ソダーバーグ監督の「エリン・ブロコビッチ」
元ミスコン女王で3人の子持ちのシングルマザーで、法律の知識もなジュリア・ロバーツが弁護士アルバート・フィニーの事務所に無理やり入って公害企業から3億3300万ドルの和解金を勝ち取るという夢のような実話を映画化したもので、文句なしに面白い。

3)レオ・マッケリー監督の「めぐり逢い」
ケーリーグラントとデボラ・カーの恋のめぐり会いだが、脚本があまりにも安直なので白ける。

4)スタンリー・キューブリック監督の「ロリータ」
キューブリック自身が述べているように、ハリウッドの規制コードで主人公とヒロインのちゅちゅうたこかいな的描写が殆どないために、なんのための映画化意味不明なてんぷらとなてしまった。スー・リオンに全く小悪魔的魅力がないのも致命的ずら。

5)スタンリー・キューブリック監督の「時計じかけのオレンジ」
暴力を振るおうとすると激痛や嘔吐が起こる「善人療法」を受けた主人公だったが、けっきょく御破算に終わってしまう。そんなことははなから無理に決まってるさ。

6)スタンリー・キューブリック監督の「アイズワイドシャット」
ショスタコのジャズ・ワルツ第2番に伴われてぐんぐん深まるスリルとサスペンス。
前半のパーテーでハンガリー人の男に誘惑されるニコル・キッドマンの蕩けるような官能美はこの映画ならではのもの。
後半ではトム・クルーズが細君以外の女に惹かれていく過程で生命の危険に晒されるのだが、最終的には収めるところに収まって幕となる。
クルーズの起用には疑問符もつくが、でもよくもキューブリックがこの素晴らしい作品を遺してくれたと感謝するしかない。70歳での急死が惜しまれる。

7)スタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」
しごきに堪えかねた新兵が鬼軍曹を殺して自殺するまでが前半、後半は同期の新米がベトナムに赴き、海兵隊員として最前線で戦うおはなしだが、3名の戦友を狙撃した敵の女兵士の死が心に残る。

8)スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」
はじめは少年だけが持っていた獲得してシャイニング(輝視能力)を両親までもが獲得するようになるのは不思議。あの高山ホテルという因縁の場の魔性のなせるわざか。音楽は弦チエレなどを使っているが、彼がもっとも重宝するのはリゲティである。

9)フランシス・フォード・コッポラ監督の「ワン・フロム・ザ・ハート」
コッポラの女と男のお遊びミュージカル映画だが、さっぱり面白くない。トム・ウエーツが唄っているのがゆいいつの慰めか。

10)ロアート・レッドフォード監督の「リバー・ランズ・スルー・イット」
牧師館で育った兄弟の物語。ブラビはいいが残る2人の役者がいまいち。
モンタナの大河の中で、ブラビが大魚を命がけで釣り上げるシーンが良かった。
私は1993年にこの映画の試写をみたが、どういうわけか試写室はがらがらで、客は私と村上春樹の2人だけだったことを覚えている。

        メス光る声なき秋の神頼み 蝶人

コメント
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