あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ジェシー・ネルソン監督の「I Am Samアイ・アム・サム」をみて

2014-05-25 09:47:18 | Weblog


bowyow cine-archives vol.645

「オール・ザ・キングスメン」で狂気の独裁者を不気味に演じおおせたショーン・ペンが、ここではなんと小学5年生程度の知能しかない知的障がい者を演じている。

 ペンには愛する娘がいて2人は一緒に暮らしたいのだが、世間やその法律は彼らの絆を引き裂こうとする。それをだんだん本気になって支援する売れっこ弁護士をミシェル・ファイファーがおいしい役どころで助演している。

 ペンの障がいはうちの長男と同じ脳障がいの自閉症だと思われるが、彼は小学5年生程度といいつつかなり言葉も上手に使えるし、対人関係も良好で、これはいまの用語では高機能自閉症とかアスペルガー症候群という範疇に入る自閉症者であろう。

 同じ脳障がいであるとはいえ、うちの長男のような普通の古典的な自閉症者は、これほど巧みに社会に溶け込み、言語・行動・労働・コミュニケーションなどの面で自立することなど夢のまた夢だから、ああうらやましいなあと思いつつ見ていた。

けれどもいちばん羨ましかったのは、ペン選手がホームレスの女性とセックスして娘を産んだことだった。こういう幸福に恵まれる自閉症者なんて、実際にはほとんどいないだろう。

 高級ではなく低級自閉症男子の最大の悲しみは、人世で最大の快楽である女性とのセックスを体験できないことだろう。


  なにゆえにあのめくるめく快楽を体験できないのか自閉症の男の子にして 蝶人
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする