妊娠経過のグラフ。自分の子どもか真ん中にいるのか、気になるもんだね。
出産予定日は7月2日。
今日が5月21日だから、もうあと予定日まで50日をきったってところ。
妻の体調のこともあるから実家に帰ってて、僕はずっと一人暮らし。
プールで泳いだり、本を読んだり、サーフィンしたり、仕事したり。
もちろん、家事や公共料金の支払いなどなど、全て一応やっている、つもり。
妻が時折おなかの写真を送ってくれる。
ほら、こんなに動いているよって。
妻が時折、長男の動画や写真を送ってくれる。
元気にしているよって。
週末に会う妻も子も幸せそうだ。
長男の樹は、子ども預かりにも慣れてきたようで、
ずっと寝かせるのに困っていたのに、今はもう21時には眠るそうだ。
大体の夫婦喧嘩の原因が、それだったのに。
結婚とか、子育てって大変だ。
だけど、思い返してみると、幸せだ。
色々な生き方があっていいと思うから、
だから結婚とか親になるとか、それらの選択肢だけが全てではないけれど、
でも、俺は幸せだ。
未来のこどもたちに勘違いされては困るから伝えておくと、
俺も妻も、お前たちに将来世話をしてもらおうなんて思って産んだんじゃなあない。
「もし、なんで産んでくれたの?」って子どもに質問されたらどうするって。
つい最近、智子とも話したところなんだ。
「なんていおうかな」
智子はそう言っていたけれど、俺は言うことは決まっている。
お父さんがすげー、お母さんのことが好きだったからなんだ。
どんなお前たちに会えるかなんてわかりゃしない。
いい子かもしれないな、言う事聞かない子かもしれないな。
生まれてみるまではわからないだろう。
そう、生まれてみるまではわからないんだ。
そうやって生まれてきたんだから、お前たちに会いたかったというのは半分嘘になるかもしれない。
半分嘘ってことは、半分本当ってことだ。
半分は、お前たちに会いたかったからだ。
俺が好きな智子だから、きっと、いい子が生まれてくるだろうって。
いい子かどうかはわからんけど、とにかく、楽しいだろうなって、そう思ったんだ。
まだ生まれていないキミ。
お母さんは結構、お前のことで大変な思いをしているよ。
ちょっと前には風邪をひいたりしたんだ。
その時にも、お前に影響が少しでも出ないように、風邪薬を飲まずに、
できるだけジッとして、早く風邪が治るように安静にしていたんだ。
そのもうちょっと前には、羊水といって赤ちゃんの入っている袋の水が少なくって、
病院で寝泊りする「入院」をすることになった。
いつまで入院しなくてはならないのか、いつになったら治るのか、
ずっと不安を抱えながらお母さんはベッドで休んでいたんだよ。
こんなこともあった。
羊水に栄養がたくさんいく時期だから、ずっと頭が痛くなってしまう。
頭が痛いとお母さんから連絡が来るたびに、少しでも俺は代わってやりたいと思っていた。
でも、お母さんにしかできないことなんだよね。
夜中におなかが痛くなって病院に行ったこともあった。
樹のとき以上に、何度も何度も採血検査があって、
何度も何度も何度も何度も。
智子の腕には注射の針のあとが残ってる。
語尾に「笑」ってついて、今日も3本とられちゃったとか書いてあるけれど、
痛いに決まってるだろ。痛いんだぞ。
幸せをくれることもあった。
羊水が少ないときも、智子が風邪をひいたときも、
お医者さんには「この子の心臓はとても元気に動いていますよ」って。
そして、元気におなかの中で暴れていたんだ。
それを聞いたとき、俺がどれだけ嬉しかったか、分かるかい。
心臓が動いているだけで嬉しいって、そう心から思ったんだぜ。
色々辛いこともあるのにね、痛いことも、苦しいこともあるのにね。
それでも、俺も、智子も。
お前と会える日を指折り楽しみにして、
俺は毎日カレンダーに生まれてくる日までを蛍光ペンでなぞっていたりするんだよ。
生まれてきたら、生まれてきたで、これはこれで大変なんだ。
いろんな人が会いに来てくれたりね、勿論嬉しいことだけれど。
あといろんな手続きもあるし、なかなか眠れない日々も続くんだな、これが。
でも、それでも、
ああ早く会いたいなと思う。
なんでだろなほんとに。
今、お前は2000gだそうだ。
2000gっていったら、2Lペットボトル一本分の重さってことだ。
ちょっとそれを持ってみたら、はは。ちいせぇなぁとか思ったり。
俺は夜中に何やってんだろう。
お前が腹の中で動いて、智子が嬉しそうだから。
俺もすげー嬉しいよ。
ずっと大切にするから、しっかり生まれてこいよ。一緒にサーフィンもしよう。
ずっと大切にするから、いつまでも楽しんで生きよう。
きっと楽しい毎日になるぞ。