ー真夜中のゆりかごーEN CHANCE TIL/A SECOND CHANCE
2014年 デンマーク 102分
監督=スサンネ・ビア キャスト=ニコライ・コスター=ワルドー (アンドレアス) ウルリク・トムセン (シモン)マリア・ボネヴィー (アナ)ニコライ・リー・コス (トリスタン) リッケ・マイ・アナスン(サネ)
【解説】
第83回アカデミー賞外国語映画賞受賞作『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ビア監督と脚本家アナス・トマス・イェンセンのコンビによるサスペンス。妻子と幸せな日々を過ごしていたが、突如思いも寄らぬ悲劇に見舞われた刑事の葛藤を、育児放棄や家庭内暴力など現代社会が抱える問題を取り上げながらスリリングに描く。テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズなどのニコライ・コスター=ワルドーを主演に、『ある愛の風景』などのウルリク・トムセンらが出演。
【あらすじ】
愛する妻と幼い息子と幸せな毎日を送っていた刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)は、通報を受けて同僚のシモン(ウルリク・トムセン)と共に現場に掛け付けた一室で、薬物依存のカップルと目を覆うような育児放棄の現場を目の当たりにする。夫婦でわが子をいつくしむ日々は愛に満ちていたが、ある日思いがけない悲劇に見舞われ、アンドレアスの中の善悪の価値観が揺らいでいき……。(シネマトゥデイ)
【感想】
こんな作品を見ると、監督の力量を感じます。
さすがスサンネ・ビア監督。
もはやストーリーもいらないんじゃない?
監督の意図するところが、的確に伝わってくる感じ。
面白かったです。
子供虐待の通報を受けて、刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)が相棒のシモン(ウルリク・トムセン)と踏み込んだ部屋には、かつて自分がDVで逮捕したトリスタン(ニコライ・リー・コス)がいた。
あきらかに薬物を使用している。
愛人のサネもいた。
さらに戸棚の中には汚物にまみれた赤ん坊ソーフスが。
サネは自分の子供だと認めた。
しかし、調べてみるとソーフスの発育栄養状態にも問題はなく、サネからも薬物は検出されなかった。
トリスタンは薬物使用に問題はあるにしても、留置まではいかないということで釈放となった。
アンドレアスは憮然とした。
彼には美しい妻のアナと、ソーフスと同じくらいの月齢のアレキサンダーという息子がいた。
幸せな毎日だったが、子供の夜泣きに悩まされていた。
泣き出すとアンドレアスが車に乗せてドライブして眠らせたり、アナが乳母車で散歩して眠らせたりした。
ある夜、アレキサンダーは泣かなかった。
気が付いたアナが抱き上げると、アレキサンダーは息絶えていた。
アナの悲鳴で起きたアンドレアスが必死で蘇生を試み、アナに救急車を呼ぶように言うが、アナは救急車を呼ぶのを拒み、アレキサンダーを取り上げたら自殺すると脅した。
アンドレアスはアナに睡眠薬を飲ませ、眠らせるとアレキサンダーを抱き、病院に向かう。
しかし、思いとどまり、トリスタンの家へ。
トリスタンの家では二人とも薬物のせいでぐっすりと眠り込んでいた。
赤ちゃんはバスルームでまた汚物まみれで寝かされていた。
アンドレアスは、亡くなったアレキサンダーに汚物のついたソーフスの衣類を着せ、取り替えて帰って来た。
ここ!
いくら死んでいるとはいえ、我が子にそれはあり得ないと、ちょっと見続けるのをやめようと思った瞬間です。
ソーフスを連れて帰っても、アナはアレキサンダーではないと言うよね。
トリスタンの家では、亡くなった赤ん坊を発見して大騒ぎ。
サネはこれはソーフスではないと言うが、トリスタンは理解できない。
そして、トリスタンが考えついたことは、死んだ赤ん坊を森に産めて、誘拐されたと騒ぐこと。
この企みはうまくいくはずもなく、アンドレアスも駆けつけてトリスタンが連行される。
子供をなくして気が狂ったようになっているサネは精神病院に。
こんなふうに登場人物たちが混乱して、どうなるのかなあという興味に聞かれて見続けていると、とんでもない展開となって行きます。
このへんの手腕が、スサンネ・ビア監督すごいね、という感じです。
ガンと殴られて目を覚まされて、事実と虚構の存在に気づかされます。
ほんと、アンドレアスさん、アナの何を見ていたの、とか、サネって、いいお母さんやったんやとか、すごく救いもありました。
人間って多面性があって、一面だけではわからないよって話。
ほんとすごいわ。
お薦めです。