マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

黄金のアデーレ 名画の帰還

2015-12-06 09:33:41 | 映画ー劇場鑑賞

ー黄金のアデーレ 名画の帰還ーWOMAN IN GOLD

2015年 アメリカ/イギリス 109

監督=サイモン・カーティス キャスト=ヘレン・ミレン (マリア・アルトマン)ライアン・レイノルズ (ランディ・シェーンベルク)ダニエル・ブリュール (フベルトゥス・チェルニン)ケイティ・ホームズ (パム・シェーンベルク)ジョナサン・プライス

 

【解説】

ナチスに奪われた世界的に有名なグスタフ・クリムトの名画を取り戻すため、オーストリア政府を相手に返還訴訟を起こした女性の実話を基に描いた人間ドラマ。肖像画のモデルとなった女性のめいで、戦争に運命を翻弄(ほんろう)された実在の主人公をオスカー女優ヘレン・ミレンが好演する。彼女とタッグを組む弁護士に、『[リミット]』などのライアン・レイノルズがふんし、『ラッシュ/プライドと友情』などのダニエル・ブリュールらが共演。『マリリン 7日間の恋』などのサイモン・カーティスがメガホンを取る。

 

【あらすじ】

アメリカ在住の82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、グスタフ・クリムトが描いた伯母の肖像画で第2次世界大戦中ナチスに奪われた名画が、オーストリアにあることを知る。彼女は新米弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)の助けを借り、オーストリア政府に絵画の返還を求めて訴訟を起こす。法廷闘争の一方、マリアは自身の半生を振り返り……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

おっと、この邦題、これじゃネタバレやねー。

この名画が主人公の手に戻るかどうか、そこがお楽しみなのに。

 

クリムトの名画「WOMAN IN GOLD」、もともとは「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」というタイトルだった。

アデーレは、現在82歳でアメリカでブティックを経営しているマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)の伯母。

オーストリアで若くして亡くなった。

 

アデーレの夫は、マリアの父の兄で、砂糖の事業で成功し大金持ちになったが、子供がなく、マリアたちの一家と一緒に暮らしていた。

この名画は、伯父が伯母をモデルにクリムトに描かせた肖像だったのだ。

 

さて現在のアメリカ。

マリアの姉が亡くなった。

遺品の中に、この名画のことで伯母が残した遺書があるはずと、書かれてあった。

折しも、オーストリア政府が、第二次世界対戦下でナチスに略奪された財産を、持ち主にかえすという国家をあげてのキャンペーンが始まった。

 

マリアは、友人の息子で新米弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)の力を借りてその絵を取り戻せないかと考えた。

でも、あまりに辛い思い出ばかりの祖国オーストリア。

マリアは、ユダヤ人だったので、財産を没収され、軟禁された。

ナチスの目を盗んで、夫とともに命を賭けて逃げてきたのだった。

飛行機のチケットは二人分しかなく、両親は残り、そして二度と会うことはかなわなかった。

 

ランディは勤めたばかりの弁護士事務所に頼んで、オーストリアへ調査に出かけた。

迷っていたマリアも同行することに決めた。

 

オーストラリアで協力してくれる人も見つかった。

フベルトゥス・チェルニン(ダニエル・ブリュール)。

父がナチスの党員だったことに衝撃を受け、迫害された人のために尽くそうとする人。

 

チェルニンの計らいで、博物館で伯母アデーレの遺書が見つかった。

「この絵を国立美術館に寄付する」と書かれてあった。

でも、これは戦前のこと。

母国に裏切られるなんて思っていなかったはず。

マリアは憤る。

 

ところが、伯父がクリムトに絵の代金を支払った領収書も出てきて、絵の持ち主は伯父ということになる。

伯父は戦後、スイスで亡くなり、遺言には全財産をマリアたち姉妹に贈ると書かれていた。

 

やはり、マリアは正統な相続人だ。

 

しかし、オーストラリア政府は狡猾だった。

いろんな手を使って妨害し、訴訟費用が絵の価値に比例するということで、マリアの手に負えない金額を提示してきた。

 

マリアは再び祖国に裏切られ、傷心のまま帰国した。

 

オーストリアを訪れたことがランディの闘志に火がついた。

ランディの祖父は高名な作曲家・指揮者だったが、やはりユダヤ人ということで祖国を追われたのだ。

 

ランディはアメリカからオーストリアを訴えるという暴挙に出た。

 

☆ネタバレ

ランディは粘り、とうとうマリアも今度はランディを応援するためにオーストリアに渡り、スピーチした。

 

審問会でマリアは勝ち、伯母の肖像画はマリアの元に戻った。

オーストリア政府は「ひざまずくからこのまま美術館においてくれ」と懇願するが、マリアはきっぱり断った。

 

マリアは勝った。

でも、マリアの心は晴れなかった。

両親を残して祖国を去らざるを得なかったという事実があまりにも辛く、悔恨の思いは増すばかりだった。

 

この話は真実の物語で、マリアは90歳以上長生きされたそうです。

アデーレの肖像画は今もニューヨークの画廊にあって、誰でも見られるそうです。

 

ナチスの政策で、ユダヤ人たちは迫害され、大量に殺戮され、悲劇に見舞われました。

そのことが元でイスラエルが建国されたのですが、今はその歴史が中東の不安定要素となり、戦争が続いています。

 

フランスで起こったテロもショッキングな出来事ですが、列強国の空爆から逃げてくるシリア難民の問題も深刻。

ナチスがユダヤ人を迫害するという暴挙に出なかったら、イスラエルの建国がなかったら、今の世の中はどうなっていたのだろう。

 

歴史は切れ目なく続いていて、それぞれに原因があり、それぞれの結果があるはず。

ひとつひとつ分析できて解決していれば、こんなふうにはならなかったかも。

 

でも、それぞれの問題が解決する前に予測できない事態が連続して起こり、めまぐるしく展開して積み重なって行く。

報復、恨み、憎しみ、負の連鎖が止まらない。

いまでは、それはこんがらがった毛糸以上にもつれ絡み合って、どんどん複雑になり、解決の糸口すら見えなくなっている。

解決のために、どこまで歴史を戻してやり直せばいいのだろうと、暗い気持ちになります。

 

この作品を見て、今の混乱の原因を作ったナチスは、残虐行為以上に罪深いと思いました。

 

ヘレン・ミレンが最高の演技です。

プティックの女主人という設定なので、衣装もお見事。

着こなしも素晴らしいです。

 

お薦めです。