マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

秘密と嘘

2014-11-15 11:11:16 | 映画ーDVD

ー秘密と嘘ーSECRETS & LIES

1996年 イギリス 142

マイク・リー監督・脚本 ブレンダ・ブレシン(シンシア)ティモシー・スポール(モーリス)フィリス・ローガン クレア・ラッシュブルック マリアンヌ・ジャン=バプティスト(ホーテンス) エリザベス・バーリントン リー・ロス

 

【解説】

96年度のカンヌ、パルムドール大賞を受賞したヒューマン・ドラマ。教養もなくひたすら陽気なだけが取り柄のような中年女シンシア。だがしかし、彼女にはどこか暗い陰りがあった。私生児の娘ロクサンヌと二人暮らしの彼女は、若い時分のふしだらさを年頃の娘に非難されてばかりいたのだ。子供のいない写真館を営む弟のモーリスは姪っこ可愛さに、姉を経済的に援助している。人生の成功者である彼も、浪費家の妻と共にどこか救われない悲しさを抱えている……(allcinema ONLAINE)

 

【感想】

また、素敵な作品を発掘しました。

これは、これは!

 

マイク・リー監督はわりと最近に「家族の庭」を見ました。

ずいぶん突き放した描き方でちょっと冷たい感じがしましたが、この作品は、突き放した描き方は変わりませんが、見終わった後、温かい涙がこぼれました。

 

モーリス(ティモシー・スポール)は写真館を営んでいる。

妻と二人の裕福な暮らし、1年前に家を新築した。

子供がないので、姉シンシア(ブレンダ・ブレシン)の娘ロクサンヌをかわいがっている。

でも、ロクサンヌも思春期からは疎遠になってしまった。

そんな夫の気持ちを察して、妻はロクサンヌの21歳の誕生日を我が家で開こうと提案する。

 

そんな優しい妻なのに、ときどき腹痛やいらいらに悩まされて、体調が悪そうだ。

ぜいたくだけがはけ口になっている。

 

一方、シンシアはおんぼろの実家で、母亡き後、父と弟のモーリスの世話をして来た。

ロクサンヌができた後は、工場で働きながら暮しているシングルマザー。

モーリスの援助も少し受けている様子。

一人娘のロクサンヌは市役所で路上のゴミ掃除を担当している。

ボーイフレンドとくっついたり別れたり、母が父親もわからない自分を産んだことを暗に非難していて、親子の関係は悪い。

 

ホーテンス(マリアンヌ・ジャン=バプティス)は、検眼士をしている独身女性。

最近母親を亡くした。

7歳のときに両親から自分は養女であることを打ち明けられていた。

母が亡くなったことを機に、実の親を捜し始めた。

法律が変わって、出生届が開示されたのだ。

自分の母親が白人のシンシアだと言うことを知る。

そう、ホーテンスの肌の色は黒だった。

 

☆ネタバレ

ホーテンスから連絡を受けたシンシアはびっくりするが、二人は会うこととなった。

当時16歳だったシンシアは、自分の産んだ赤ん坊も見ずに養子に出してしまっていた。

まさか黒人の子供とも思っていなかった。

男か女かも知らなかったのだ。

 

しかし、ホーテンスには動揺する母を受け入れる器があった。

 

シンシアとホーテンスはしばしば会うようになった。

本来陽気で情に厚いシンシアは、ホーテンスも実の子として愛するようになる。

 

そして、モーリスの家でのロクサンヌの誕生会にもホーテンスを招待した。

 

☆ネタバレのネタバレ

家族が持ち寄った「秘密と嘘」。

ここで、シンシアの考えのなさからホーテンスがロクサンヌの姉だということを明かされる。

何も知らされていなくて、傷ついたロクサンヌは家を飛び出すが、モーリスに諭され戻ってくる。

この家族の話し合いが、この作品の真骨頂。

モーリスの妻の不妊の苦しみも語られ、シンシアは心から同情する。

そして、モーリスはここまでのホーテンスの忍耐を賞賛するのだった。

 

ここですよね。

母に捨てられて、しかも黒人であるホーテンス、一番傷ついているはずのホーテンスをモーリスが賞賛するシーン、ティモシー・スポールの演技が素晴らしいです。

「ハリポタ」シリーズの鼠男ですけどね。

 

ホーテンスは何があっても冷静ですが、それは実の親を捜そうと決心したときに、何があっても受け入れようと、覚悟を決めたからなのでしょう。

ホーテンスの真実に立ち向かう勇気が、秘密と嘘に塗り固められた家族に幸せの扉を開けたのでしょう。

 

ラストは日の当たるシンシアの家の庭で、二人の娘に囲まれてお茶を飲んでいます。

「人生っていいわね」とシンシアが言う。

あなたが言うか?と突っ込みそうになりますが、ほんと、そうかもしれませんね。

モーリスの妻のように、夫も家もあってぜいたくできても、絶対に手に入らないものもある。

何が自分にとって大切かという話ですが。

シンシアも辛い人生でしたが、結果がよければすべてよしなのでしょう。

子供が財産、家族が財産。

私も実感だなあ。

 

若い人には、家族を作る努力をして欲しいというのが、おばちゃんとしての私の願いです。

若い人たちに幸あれ。