マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

ヘルプ~心がつなぐストーリー~

2012-04-07 15:55:00 | 映画ー劇場鑑賞

ーヘルプ~心がつなぐストーリー~ーTHE HELP

2011年 アメリカ

テイト・テイラー監督 エマ・ストーン(スキーター)ヴィオラ・デイヴィス(エイビリーン)オクタヴィア・スペンサー(ミニー)ブライス・ダラス・ハワード(ヒリー)ジェシカ・チャステイン(シーリア)アリソン・ジャネイ(シャーロット)シシー・スペイセク(ミセス・ウォルターズ)シシリー・タイソン(コンスタンティン)メアリー・スティーンバージェン(ミス・スタイン)

 

【解説】

1960年代、人種差別が横行していたアメリカの田舎町に変化をもたらした実在の女性たちについて記したベストセラー小説を映画化した人間ドラマ。白人家庭でメイドとして働く黒人女性たちとジャーナリスト志望の若い白人女性との友情を通して、社会に対して立ち上がる勇気を描いていく。主演は、『ゾンビランド』のエマ・ストーン。『ダウト~あるカトリック学校で~』のヴィオラ・デイヴィス、『ターミネーター4』のブライス・ダラス・ハワード、『ツリー・オブ・ライフ』のジェシカ・チャスティンなどが共演。感動的なストーリーはもちろん、彼女たちの熱演にも心を揺さぶられる。

 

【あらすじ】

アメリカ・ミシシッピ州。1960年代当時、白人家庭でメイドとして働く黒人女性はヘルプと呼ばれていた。作家志望のスキーター(エマ・ストーン)はメイドの置かれた立場に疑問を抱き、彼女たちにインタビューをすることに。仕事を失うことを恐れて、皆が口をつぐむ中、一人の女性の勇気が社会を揺るがすことになる。

(シネマトゥデイ)

 

【感想】

アメリカの黒人差別をテーマにした映画を見ると、1960年代まで、黒人の人たちは差別に苦しんでいたこのに驚かされます。

ほんの、50年くらい前。

今のアメリカ大統領が黒人のオバマ氏ということを思うと、短期間に人の意識が変わったことに驚かされます。

 

意識は変わっていないのでしょうね。

みんな努力をしている過程なのでしょう。

それでも、すごいね。

 

この作品は、声高に差別を非難したり、シュプレヒコールをあげたりはしません。

日常生活ー女たちがありきたりに暮らしいてる日常のお話です。

でも、そんな愚痴みたいなことでも、黒人であるが故に、命にまで関わる事態を招くという恐ろしさを秘めていたというのが、この作品のテーマです。

ユーモアや笑いを絡めて、根深い差別をあぶり出して行きます。

 

作家志望のスキーター(エマ・ストーン)は大学を卒業して、地元ミシシッピー州ジャクソンに帰ってきました。

地元の雑誌社で、仕事に就けたからです。

このころの女性は、大学を出ても望むような就職がなかった感じも伝わってきました。

 

地元では、同級生たちが結婚して、地域の婦人会の中心になりつつありました。

黒人差別の色濃く残る町、上流の白人家庭では、ヘルプと呼ばれる黒人女性が、家事全般、育児を切り盛りしていました。

 

エイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)は、17人の白人の子供を育てましたが、自分の一人息子は事故で亡くしていました。

それ以来、心は死んだようだが、働くしか生きる道はない。

今は、子育てを放棄したかのような母親の赤ちゃんの世話をしています。

子供は大好きです。

 

エイビリーンの親友ミニー(オクタヴィア・スペンサー)は、料理自慢。

ヒリー(ブライス・ダラス・ハワード)の家で働いていました。

ヒリーは婦人会の中心的人物で、痴ほうのかかった母親(シシー・スペイセク)と同居しています。

そして、黒人の使用人とはトイレを共有しては不潔だという持論の持ち主。

 

ミニーは、嵐の日、外にある使用人用のトイレに行けなくて、家の中のトイレにいるところを主人のヒリーに見つかり解雇されてしまいます。

それが夫に知られて、ひどい暴力を受けました。

ミニーは、解雇の仕返しをヒリーに食わせました!!

 

ヒリーの元カレと結婚したシーリア(ジェシカ・チャステイン)がミニーを雇います。

ヒリーと問題のある二人が接近したことにより、事件が起きます。

 

☆ネタバレ

雑誌の仕事とは別に、スキーターはヘルプたちのインタビュー企画をニューヨークの編集者ミス・スタイン(メアリー・スティーンバージェン)に持ち込んだ。

ミス・スタインは興味を示し、スキーターに本を書くように勧める。

 

スキーターは、匿名にすることを条件にエイビリーンから話を聞き始めた。

さらに、ミニーも話してくれたが、あとは誰も話したがらない。

インタビューは少なくとも10人以上必要だった。

 

折しも、黒人差別組織KKK団が黒人を射殺すると言う事件が起こり、女たちは重い口を開き始めた。

 

スキーターの本は出版されるや否や、大評判に。

そして、ご当地ジャクソンでも話題になり、大騒動となっていきます。

スキーターにとっても、よくも悪くも大転換のきっかけとなっていくのでした。

 

結末に見える、ミニーの顛末の温かさと、エイビリーンの味わった厳しい現実。

そう、世間が真実をかいま見たからと言って、個人的な幸せが得られるものでもありません。

それほどまでに、差別は根深く、陰湿なものなのだということも伝わってきます。

安易なハッピーエンドではない、骨太な作品です。

 

随所にちりばめられている、女たちの友情や、愛情。

あんなに底抜けに明るくて魔法のようにおいしい料理を作るミニーが、子だくさんで、暴力をふるう夫に苦しめられていること。

エイビリーンが、たった一人の息子を救えなかったことに、とても苦しんでいること。

こういう逸話は、黒人と言う理由だけではなく、女性みんなの共感を呼ぶお話です。

 彼女たちは、黒人だからという理由で、苦しみを胸の中に封じて暮してきたのです。

 

白人の子供は、親よりも慕っている黒人のヘルプを、いつか差別する側に回ってしまう社会の構造。

スキーターは、ごく普通の感覚で大人になった数少ない女性のひとりだったので、その矛盾に気づけたのでしょう。

 

さらに、貧困層の出身だからと言う理由で自分たちの社交界に入れない了見の狭さや、女性という理由で暴力を受ける話など、矛盾を抱えた社会だと言うこともちゃんと描けていて、この作品が、口コミでヒットしていったと言うこともよくわかりました。

 

エイビリーンもミニーも、貧しく無学な女性ですが、自分の仕事に誇りを持ち、それぞれの得意分野の子育てやお料理に対して、哲学を持っているところが素晴らしかったです。

そして、自分の不幸を笑える明るさと強さ。

見習いたいです。

 

ミニー役のオクタヴィア・スペンサーが今年のアカデミー賞助演女優賞を獲得しました。

納得の演技力でした。

 


ヤコブへの手紙

2012-04-07 15:44:34 | 映画ーDVD

ーヤコブへの手紙ーPOSTIA PAPPI JAAKOBILLE/LETTERS TO FATHER JAAKOB

2009年 フィンランド

クラウス・ハロ監督 カーリナ・ハザード(レイラ)ヘイッキ・ノウシアイネン(ヤコブ牧師)ユッカ・ケイノネン(郵便配達人)エスコ・ロイネ

 

【解説】

1970年代のフィンランドの片田舎を舞台に、人を寄せ付けない元囚人と悩める人々を癒やす盲目の牧師との繊細な交流を描き、各国の映画祭で称賛された感動的な人間ドラマ。刑務所を出所したヒロインが牧師のために手紙を音読する日々と、二人の心に宿る絶望と希望とを淡々とつづっていく。監督は、フィンランドとスウェーデンで活躍するクラウス・ハロ。物語の終盤に告白される悲しい秘密と温かな真実に、胸が締め付けられる。

 

【あらすじ】

元囚人のレイラ(カーリナ・ハザード)は、ヤコブ牧師(ヘイッキ・ノウシアイネン)の家に住み、盲目の牧師のもとへ寄せられる手紙を読んであげることに。人生に嫌気がさしているレイラだったが、次第に牧師に対して心を許すようになっていく。そして手紙が届かなくなって気落ちした牧師に、レイラはある秘密を打ち明ける。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

登場人物が4人、美男美女は出てきません。

元終身刑の中年女性レイラ(カーリナ・ハザード)と盲目の老牧師ヤコブ(ヘイッキ・ノウシアイネン)、郵便配達人と刑務所でレイラと話をしていた係官の4人だけです。

 

終身刑だと人生を諦めていたレイラに恩赦が告げられ、ヤコブ牧師の身の回りの世話という仕事が与えられました。

レイラは、拒否したい気持ちでしたが、確かに行くところもなく…。

 

人里離れた教会の牧師館にひとりぼっちで住む盲目のヤコブ牧師。

レイラは、お茶をすすめられて「家事なんかしませんよ」とふてくされます。

見るからに、人との関わりを拒否している風貌です。

 

そこへ郵便配達が「ヤコブー郵便ですよー」と叫びながらやってきました。

音だけで、自転車が新しくなったことがわかるヤコブ牧師。

郵便配達人は「元囚人?」と疑わしそうにレイラを見ました。

 

レイラの仕事は、配達された手紙を読み聞かせ、ヤコブ牧師の返事を聞いて返事を書いて出すいうものでした。

手紙の内容は、大きな悩みから小さな悩みまでさまざまでした。

ヤコブ牧師は、そのひとつひとつに聖書の一文を添え、祈りの言葉を綴るのでした。

 

レイラには気乗りのしない仕事、届いた手紙のほとんどを井戸に捨ててしまいました。

 

☆ネタバレ

あるとき、たくさんのお金が送られてきた。

夫の暴力に困っている相談者にヤコブ牧師が全財産を送ったので、その相談者が、ヤコブ牧師の祈りのお陰で解決したと、感謝の印として送ってきたのだった。

 

牧師が心配で夜中に郵便配達員が忍び込んできた。

レイラは彼ををつまみ出すと、次の日から郵便は届かなくなった。

日に日に落ち込んで行くヤコブ牧師。

ある朝、急にお客さん用の食器をたくさん出してくると、結婚式があると言って正装して教会に出かけた。

もちろん、誰も来ない。

 

孤独の中で絶望したヤコブ牧師は、石の上に横たわった。

「誰も自分を必要とはしていない。神からも見放された」

 

レイラは牧師館に戻り、隠してあったお金からタクシー代だけ抜いて、タクシーを呼んだ。

タクシーが来たけれど、行き先を聞かれ、行くところがないことに気が付いた。

レイラも絶望し、首に縄をかける。

 

雨漏りがひどくて横になっていられず、牧師館に戻ったヤコブ牧師は、レイラに気づき「いてくれたのか?」と声をかける。

 

この日からレイラは変わった。

郵便配達人に郵便がなくても、牧師館に来てくれるように頼み、来ていない手紙を読んだ。

 

そして、2通目の手紙として語り出したレイラ自身の物語。

長い間、封じられた物語でしたが、それこそが、ヤコブ牧師とレイラをつないだ、レイラの姉とレイラの絆。

泣きますよ。

 

少ない登場人物だけど、このお話はとても深い。

信仰のことはわからないのですが、他人のために滅私で行っていると思っていたことが、自分を支えているものであり、裏を返せば己のためだったと言うこと。

それが悪いこととは思わないのですが、ヤコブ牧師をがっかりさせるには十分な事実です。

 

レイラも、自分の罪が姉を傷つけていたと思い込んで、心を閉ざしていたわけですが、もたらされた恩赦が、姉からヤコブ牧師に届けられたお願いだとわかり、ようやくレイラの凍り付いていた心が融けたのでした。

 

ヤコブ牧師は使命を終えたかのように息を引き取り、レイラは断絶していた姉に会いに行くでしょう。

この結末を、神の導きと見るのか…。

私は、レイラの姉の妹を思う気持ちが起こした奇跡だと思いました。

登場はしないけど、すごいお姉さんだと思いました。

 


ショパン愛と悲しみの旋律

2012-04-07 15:40:13 | 映画ーDVD

ーショパン愛と悲しみの旋律ーCHOPIN. PRAGNIENIE MILOSCI/CHOPIN: DESIRE FOR LOVE

2002年 ポーランド

イェジ・アントチャク監督 ピョートル・アダムチク(フリデリック・ショパン)ダヌタ・ステンカ(ジョルジュ・サンド)ボジェナ・スタフーラ(ソランジュ・サンド)アダム・ヴォロノヴィチ(モーリス・サンド)

 

【解説】

数々の名曲を生み出し、今もなお世界中で愛される天才作曲家フレデリック・ショパンの運命と愛に翻弄(ほんろう)された半生を描いた伝記ドラマ。祖国ポーランドを離れ、長期にわたって病に苦しみながらも美しい至高の音楽を生み出し続けたショパンと、恋多き女として名をはせたジョルジュ・サンドとの運命的な愛を紡ぐ。世界的チェリスト、ヨーヨー・マ、『戦場のピアニスト』の演奏で知られるヤーヌシュ・オレイニチャクら豪華アーティストが奏でる名曲の数々が全編を彩る。

 

【あらすじ】

祖国ポーランドを逃れ、たどり着いたパリでは作曲家として認められず失意の底にいたショパン(ピョートル・アダムチク)は、女流作家ジョルジュ・サンド(ダヌタ・ステンカ)と出会う。彼女の情熱にのまれるように愛が始まり、ショパンは次々と名曲を生み出していく。しかし、サンドの子どもたちはショパンとの愛にのめりこむ母を快く思っておらず……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

ショパンの作曲したピアノの名曲の数々、でも、その生涯については「ジョルジュ・サンド」との恋の逃避行くらいしか知らなかったので、興味津々で見ましたが。

 

俳優さんは、学校の音楽室にあった肖像画そのままで、ステキだと思いました。

でも、暗い映画でした。

ショパンの生涯もこのように暗いものだったのでしょうね。

 

19世紀の初頭、ポーランドという地理的にも大国の狭間にあって、悲劇的な歴史を持つ国で、育ったショパン。

父親も音楽家で、フランスから貴族の家庭教師として招かれ、ポーランドに帰化した人で、ショパンを厳しく育てましたが、それも、彼の才能を知っていたからだった。

 

青年となったショパンは大公のピアノ教師となり、その権力に任せた無理難題に答えるので精一杯の毎日。

父は、ショパンをパリへ逃がす。

 

しかし、パリでは仕事に恵まれず、体調も整わない不遇の時代だった。

リストの愛人でもある貴族のサロンで、有名な作家のジョルジュ・サンドと出会う。

このとき、ショパンは貴族の娘に求婚をしていたので、サンドの告白を拒否する。

 

貴族の娘の親から健康を理由に結婚を反対されて、失意のショパンはサンドのもとへ。

サンドは前夫と離婚が成立したばかりで、思春期の息子モーリスと10代に入ったばかりの娘ソランジュがいた。

サンドの一家と一緒にマジョルカ島で静養を試みるが、肺結核は悪化、冬はパリ、夏はサンドの別荘のあるノアンで暮した。

 

娘のソランジュは年頃になり、ショパンに恋心を抱くようになり、息子のモーリスはショパンを嫌って喧嘩沙汰になり、ショパンはサンドと別れパリに戻る。

 

このころから演奏会は成功を納めて、ショパンの人気も高まって行くが、健康状態はますます悪化、姉を呼び寄せて看護してもらうほどだった。

そして死去。

姉はショパンの遺言通り、心臓を故郷に持ち帰った。

 

あの美しくも激しい名曲を描いたショパンが、この作品ではかなり情緒不安定な神経質でわがままな人物に描かれていて、残念な感じがしました。

サンドとの恋の逃避行も、ロマンティクなものではなく、みんなが傷ついてしまいました。

 

サンドも、思春期で感じやすい年頃の子供たち、特にモーリスは画家志望で繊細な性格なのに、母親の恋愛を目の当たりに見せられて、どう感じるか、ちょっと考えたらわかりそうなものなのに。

さらに、気難しいショパンとうまくいかないのは、最初からわかっているだろうに、と思いました。

母親と言うより、女性として生きたかったのでしょうが、子供たちが犠牲になった感じがしました。

 

最終的にはショパンより子供たちをとるわけですから、かなり身勝手だなあと思いまいました。

 

サンドは、この時代で作家として自立し、離婚して子供を育て、男装して社交界に出るなど、当時の女性としては傑出した人には違いはないでしょう。

この作品も、ショパンがサンドのもとを去ってからは、サンドの作品にすり替わりそうでした。

ショパンの生涯と言いながら、ショパンは魅力に乏しい感じがしました。

 

演奏は素晴らしいです。

もう少し、違う作り方があったのでは、と思わせる作品でした。