ーハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人ーHERB & DOROTHY
2008年 アメリカ
監督=佐々木芽生 出演=ハーバート・ヴォーゲル ドロシー・ヴォーゲル
【解説】
ニューヨークで少しずつ現代アートをコレクションしてきたおしどり夫婦の足跡をたどる感動のドキュメンタリー。ごく普通のカップルが、少ない生活費の中からやりくりして集めた膨大な数の作品群と共に、彼らとアーティストたちとの心温まる交流を描く。物語の主人公は、元郵便局員のハーブとその妻で元司書のドロシー夫妻。長年自分たちが好きなものだけを収集し、4000点以上の作品を美術館に寄贈した彼らの選択に驚嘆する。
【あらすじ】
ハーブ&ドロシー夫婦は、ニューヨークの現代アート界きっての有名コレクター。彼らは30年以上にわたり日々ギャラリーやアーティストらを訪ね歩き、少しずつお気に入りの作品を買い集めてきた。今では20世紀を代表するアーティストに成長した画家による名作も数多くあったが、彼らの1LDKのアパートはすでに収納の限界を超えており……。
【感想】
ハーブは88歳、ドロシーは75歳。
二人は30年間で4000点ものアート作品を1LDKのアパートの自宅で蒐集し、もうけるために売ったことはない。
アートバブルにもその暴落にも無縁で、自分たちの決めたルールに従ってただ好きなものを集めてきた。
ドロシーは図書館司書、ハーブは郵便局員。
ドロシーの給料で生活し、ハーブの給料でアートを買う。
自分たちで買えるもの、アパートに入るもの、タクシーやバスで持って帰れるもの。
ミニマルアートとコンテンポラリーアートに限って(安価だから)集めに集めて4000点以上。
コレクションを寄贈されたナショナルギャラリーが、「緊急時に二人が作品を売らなくてもすむように」と支払った謝礼も、ギャラリーに還元するために二人は作品を買ったという。
とにかく、二人はアートが好き。
「どんな基準で選んでいるか」二人からは明確な答えがない。
でも、二人には確信があるようです。
それは、二人の心の目ですね。
言葉や理屈ではないと思いました。
レディスデイだったんですが、映画館は満員で立ち見が出ていました。
私も立ち見…「うっそー!こんな地味なドキュメンタリーなのに」とびっくりしました。
でも、この作品の人気の秘密はわかる気がしました。
ハーブはもともと美術通。
ドロシーはハーブと付き合うようになって美術に目覚めました。
二人は絵を習いに行き、結構満足の行く作品も描けるようになったけど、いいものを見分ける目もできたようです。
二人は、1960年代から新人のアーティストから安い値段でアートを買うようになり、アーティストと人間的な関係も生まれました。
アーテイストから信頼される蒐集家として二人は成長して行ったのです。
アーティストと夫婦の間にあるもの、それはアートに対する情熱と愛の力だと思いました。
そして、それは私のような平凡な人間にだってあるもの、憧れるものなのです。
だから、多くの人々がハーブとドロシーの生き方に引かれて、この作品に引かれたのだと思いました。
すこしでも、アートに興味のある人は、この映画を見てください。
私たちがアートに対してどう接したらいいか、一つの答えがありました。
この映画の監督はニューヨーク在住の日本女性、佐々木芽生(めぐみ)さん。
初めて手がけた映画だそうです。
アメリカの6つの映画祭で賞を取りました。
彼女もまた、無欲の愛の力がこの成功をもたらせたのでしょう。
佐々木芽生(めぐみ)さん