ーぼくのエリ 200歳の少女ーLAT DEN RATTE KOMMA IN/LET THE RIGHT ONE IN
2008年 スウェーデン
トーマス・アルフレッドソン監督 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト原作・脚本 カーレ・ヘーデブラント(オスカー)リーナ・レアンデション(エリ)
【解説】
スウェーデンのスティーヴン・キングこと、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストのベストセラー小説を映画化した異色ラブストーリー。孤独な少年がバンパイアと初めての恋に落ち、戸惑いながらもその現実を受け入れていく過程を詩情豊かにつづる。本作の核となる主人公役を演じるのは、カーレ・ヘーデブラントとリーナ・レアンデションという無名の子役たち。彼らのピュアな魅力が光る、残酷だがはかなくも美しい愛の物語に圧倒される。
【あらすじ】
ストックホルム郊外で母親と暮らす12歳のオスカー(カーレ・ヘーデブラント)は、学校で同級生にいじめられていた。ある晩、彼はアパートの隣の部屋に引っ越して来たエリ(リーナ・レアンデション)という少女と出会う。同じころ、近くの街では青年が逆さづりにされてノドを切り裂かれ、血を抜き取られるという残忍な殺人事件が起きる。(シネマトゥデイ)
【感想】
久しぶりに映画館へ出かけていきました。
見に行った甲斐のある作品でした。
謎が残ったので、本も読むことにしました。
ストックホルムの冬は雪で覆われ、暗い。
オスカー(カーレ・ヘーデブラント)はストックホルム郊外で母親と暮らす12歳の少年。
母は離婚していて、父親とは時々会う。
学校ではイジメにあっていて、誰にも言えない辛い孤独な毎日。
そんなとき、オスカーの部屋の隣に中年の男が引っ越して来た。
マンションの庭のジャングルジムで女の子と会う。
女の子はとても顔色が悪く「友達にはならないよ」という。
そのころ、この辺りでは人が逆さ刷りにされて殺されるという猟奇事件が発生していた。
☆ネタバレ
この殺人事件は、オスカーの出会った少女・エリ(リーナ・レアンデション)と同居している中年の男がやったことだった。
エリはヴァンパイアで、人の生き血を吸って生きているようだ。
その血を集めているのがこの男。
しかし、殺人はしても、血を奪うのに失敗した。
エリは空腹のあまり、通りすがりの人を襲う。
男は死体を凍った川の下に隠した。
こんなふうに、スプラッターだし、ヴァンパイアものなのですが、不思議と怖い感じがしません。
テーマはボーイ・ミーツ・ガール、性に目覚める物語です。
オスカーはとても子供っぽい。
エリは、少しは強がって入るけど、やはり子供です。
ヴァンパイア版「小さな恋のメロディ」と公式ホームページで紹介してありました。
ヴァンパイアの恋ということでは、「トワイライト」も連想します。
ヴアンパイアってエロスを感じますね。
でも、この物語はそんなに単純に進みません。
エリを面倒見ていたおじさんが、かなり悲惨な状態で死んでしまいます。
保護者が亡くなったエリは生きていくのが難しくなります。
ヴァンパイアって、意外に弱い存在です。
人間の生き血しか飲めないし、太陽に当たると燃えてしまうし、夜しか活動できないわけだし。
クライマックスで現れる、ぼかしのかかったエリの局所のアップ。
あれだったら、とても猥褻なことを想像してしまって、返って逆効果だと思いました。
たぶん、あの映画のテーマも伝わらないんじゃないかなあ。
という不満が残って、本を読むことにしました。
ネットで調べた範囲では、あれはエリの傷跡だそうです。
なんどもエリが「女の子じゃなくてもいいの?」と聞きますが、それは、生殖能力がないという意味のようです。
でも、ぼかしがかかっているので、私は男性器があったのかと思いました。
観客を惑わすよくないぼかしだと思いました。
オスカーはエリに引かれ、エリが人を襲うところに遭遇しますが、それでもエリを受け入れ、血だらけの口にファーストキスをします。
エリとオスカーに絆ができ、エリはオスカーの窮地を救いました。
ラストシーン、オスカーは明るい日差しの中で汽車に乗っています。
箱の中にはエリが入っているようです。
トントンツーツー、二人だけのコミュニケーションであるモールス信号で会話しています。
ずっと暗かったオスカーの表情が、このシーンではとても明るいところに、不安と悲しみを感じます。
あの中年の男のような運命を辿らないで欲しいと、祈らずにはいられません。
ハリウッドでリメイクが決まっているようですが、この少年と少女の詩的な感じが残ればいいのですが…
どんな切り口で見せてくれるか、楽しみです。