マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

イントゥ・ザ・ワイルド

2008-10-08 19:15:56 | 映画ー劇場鑑賞
ーイントゥ・ザ・ワイルドーINTO THE WILD
2007年 アメリカ
ショーン・ペン監督 ジョン・クラカワー原作
エミール・ハーシュ(クリストファー・マッカンドレス)マーシャ・ゲイ・ハーデン(ビリー・マッカンドレス)ウィリアム・ハート(ウォルト・マッカンドレス)ジェナ・マローン(カリーン・マッカンドレス)キャサリン・キーナー(ジャン・バレス)ヴィンス・ヴォーン(ウェイン・ウェスターバーグ)クリステン・スチュワート(トレイシー)ハル・ホルブルック(ロン・フランツ)

【解説】
すべてを捨てアラスカへと放浪の旅へ出た裕福な青年の心の軌跡を描いた人間ドラマ。ショーン・ペンが監督を務め、原作は冒険家ジョン・クラカワー著のノンフィクション小説「荒野へ」。前途有望な未来を捨て自由を選択したすえに悲惨な最期を遂げる若者を演じるのは『ロード・オブ・ドッグタウン』のエミール・ハーシュ。『ダーティハリー2』のハル・ホルブルックが、愁いをたたえた老人の役で登場。青年が足を踏み入れていく、美しくも厳しいアメリカの大自然の映像も圧巻。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
大学を優秀な成績で卒業したクリス(エミール・ハーシュ)は車や財布を捨て、自由を手に入れるための放浪の旅に出る。労働とヒッチハイクを繰り返し、アメリカからアラスカへと北上。アラスカ山脈の人気のない荒野へと分け入り、捨てられたバスの車体を拠点にそこでの生活をはじめる。(シネマトゥデイ)

【感想】
「青年は荒野をめざす」ーー昔、こんな歌がありましたね。
いつの世も、荒野を目指す青年はいるものです。
その昔、釈迦もキリストも荒野を目指す真理の追究者だったのでしょう。

成功して、援助を惜しまない両親。
優秀な成績で卒業した大学。
成功を約束された人生にあえて背を向けて、クリス(エミール・ハーシュ)は放浪の旅に出た。
クリスを危険な冒険に駆り立てたものは、いったい何だったのでしょう。

妹カリーン(ジェナ・マローン)が語る、両親の偽善的な家庭。
抑圧的な父親。
平和な家庭を演出する欺瞞的な母親。

でも、そんな家庭で育つ子供は多いし、両親に対する反抗や、社会に対する異議申し立てだけが、クリスの放浪の動機ではないでしょう。

クリスの出奔は、ただの家出ではない。
預金は世界の飢餓を救うために活動している団体に寄付し、クレジットカードは切り捨てる、現金は焼いてしまう。
オンボロ車さえ捨ててしまった。

お金も、安全な生活も、名前さえも捨てても、クリスは人々に受け入れられ、出会う人々に愛されます。
それなのに、定住に満足することはない求道者のクリス。
さらに過酷な自然と孤独を求めて、厳寒のアラスカへ足を踏み入れます。

そこまでして、彼が荒野の中で見つけたかったのは人生の真理というものでしょう。
人はなぜ生きるのか、幸福ってなんなのかー。
どうしても、どうしても、どんな危険を冒しても、彼は知りたかったのですね。

でも、こうみえても私だって若い純粋な時代があったからね、クリスの一途さくらいわかるわ。
ああ、せつないね。

親の立場で見ていたら、涙が後から後からあふれてきます。
最初のシーン、クリスと泣き叫んでがばっと起きた母(マーシャ・ゲイ・ハーデン)を見て、涙が出てきました。
そして、父親の悔恨。号泣。
一緒に泣いてしまいました。

息子を理解したいけど、愛情ばかり先立って、辛いだけの両親。
命をすり減らす思いで、子供が無事に帰る日を待つ詫びている親も多いのでしようね。

☆ネタバレ
最後の最後にクリスは自分の名前を取り戻し、両親の胸に飛び込んで行く夢を見ながら亡くなりました。

自分の見た青空を両親にも見せてあげたい。
クリスはそう叫んでいました。

「幸福が現実となるのは、それを分かち合った時だ。僕の一生は幸せだった。神のご加護を!!」
遺されたこの言葉は、ずっと心配し続けていた両親への、なによりの親孝行となったことでしょう。

全編を通じて、エミール・ハーシュの人なつっこい笑顔が素敵でした。
クリスのラストの病んで亡くなるまでの鬼気迫る演技もすごかった。

農夫のウェイン(ヴィンス・ヴォーン)がクリスを思いやるシーンは、ユーモアもあって素敵でした。
一人息子が放浪の旅に出てしまった母親ジャン(キャサリン・ターナー)の悲しみも伝わってきたし、84歳の革職人ロン(ハル・ホルブルック)の人柄にもほろりとさせられました。

ショーン・ペンが、この物語を、なんの気取りもなく、自然な映画に作ったことが、とてもすばらしいと思いました。

悲惨な結末なのに、見終わった後は悲しい気持ちばかりではありません。

自分自身に真正面から向かい、「人間はどう生きるべきか」を追求し続けたクリス。
アラスカの大自然が彼に教えたものは大きかったのでしょう。
クリスの一生を知ることができて、ほんとうによかったと思いました。