マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

ナチュラル・ウーマン

2018-03-16 21:54:17 | 映画ー劇場鑑賞

ーナチュラルウーマンーUNA MUJER FANTASTICA/A FANTASTIC WOMAN

2017年 チリ,ドイツ,スペイン,アメリカ 104分

 

監督=セバスチャン・レリオ キャスト=ダニエラ・ベガ (マリーナ) フランシスコ・レジェス (オルランド) ルイス・ニェッコ (ガボ)

 

【解説】

『グロリアの青春』などのセバスティアン・レリオが監督と脚本を担当した人間ドラマ。最愛の恋人をなくし、いわれのない偏見や差別にさらされながらも誇り高く生きるトランスジェンダーの主人公を映す。主演を務めるのは、自身もトランスジェンダーのシンガーであるダニエラ・ベガ。フランシスコ・レジェス、ルイス・ニェッコらが共演している。

 

【あらすじ】

ナイトクラブで歌っているトランスジェンダーのシンガー、マリーナ(ダニエラ・ベガ)は、チリの首都サンティアゴで年齢差のある恋人オルランドと同居していた。マリーナの誕生日を祝った晩、家に戻ると急にオルランドの意識が遠のき、そのまま他界する。彼が亡くなったことでマリーナは予想外のトラブルに見舞われ……。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

先日、エル・ファニング主演の「アバウトレイ」を見たばかり。

これは、未成年の女の子が、男性の心を持っていて、男性らしくなるためのホルモン治療をするためには保護者の同意がいるという問題で、レイの周辺の大人たちの反応を描いた作品でした。

 

この作品は、すでに女性の体となったマリーナ(ダニエラ・ベガ)が主人公です。

 

マリーナを演じたダニエラ・ベガ自身もトランスジェンダーの歌手で、この作品の舞台はチリのサンティアゴです。

今年度のアカデミー賞外国語映画賞を受賞しています。

 

ナイトクラブの歌手マリーナは今日が誕生日。

恋人のオルランド(フランシスコ・レジェス )は、マリーナのためにレストランでサプライズを企画し、イグアスの滝への旅行に招待したが、そのチケットを紛失していた。

その夜、自分たちの部屋で愛し合った後、オルランドの具合が悪くなった。

マリーナはオルランドを病院に運ぼうとするが、慌てていて鍵を部屋に置き忘れてしまった。

マリーナが取りに戻っている間に、オルランドはフラフラと階段から転落してしまう。

 

自家用車で病院に運び込むが、マリーナは病室から出され、オルランドは亡くなってしまう。

医者は傷だらけで頭部ににも出血のあることでマリーナに疑いの目を向ける。

事情を知るオルランドの弟のガボ(ルイス・ニェッコ )が病院に到着し、マリーナはともかく解放される。

 

次の日、職場に行くと警察の性犯罪担当の捜査官が来る。

マリーナに話を聞きたいから、仕事が終わったら電話しろという。

オルランドの元妻から電話がかかる。

オルランドの車を引き取りたいというので、車をもって行く。

元妻は、マリーナのせいで離婚になったと思っている。

娘もいるので葬式には出るなと念を押す。

 

家に帰ると、オルランドの息子がいる。

いつアパートを明け渡すかと迫られ、愛犬も返せという。

 

疲れ果て、警察に電話を忘れると、警察に出頭命令が出て、身体を調べられた。

きわめつけは、息子とその仲間による暴力。

拉致され、テープで顔をぐるぐる巻きにされ、車から放り出された。

 

愛する人が突然亡くなったというのに、悲しむいとまもなく、怒涛のように押し寄せてくる災い。

チラシにも掲載されている、斜め45度に体を倒して向かい風に立ち向かうマリーナの姿。

トランスジェンダーの人が立ち向かわないといけない、世間の風当たりというものをストレートに表現していました。

 

☆ネタバレ

オルランドが残した鍵、それはオルランドが通っていたサウナのロッカーの鍵でした。

マリーナは女の姿のまま、男専用ゾーンに入って行ってロッカーを開けますが、そこには何もありませんでした。

それで何かを悟ったのでしょう。

自分らしく生きること。

犬も取り返し、スタージに立って、オペラのアリアを歌い上げるマリーナの姿がありました。

 

私は、ロッカーの中にはイグアスの滝行きのチケットがあると期待していました。

結局、チケットはなかったんだなあ。

それから、息子から犬はどうやって取り戻したんだろうとも思いました。

 

そういう疑問は残ったけど、マリーナは愛する人の死というどん底で、いろんな人から足蹴にされながらも、自分を見失わず、前を向いて歩き出せたのは本当に良かったと思いました。

やはりオルランドが幻影となって、マリーナを導いてくれたから。

愛を本当の意味で感じられたからだと思いました。

マリーナが元妻に車を届けに行くときにかかる「ナチュラルウーマン」キャロル・キングじゃなく、アレサ・フランクリンが歌っているそうです。

マリーナの心情にぴったりでした。

トランスジェンダーといえば、自分に関係ない感じだけど、障害や病気や劣等感を持ちながら生きている人は、私も含めてたくさんいると思うと、この作品は、ユーモアもあって、とても勇気をもらえる作品でした。


しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

2018-03-10 14:56:29 | 映画ー劇場鑑賞

ーしあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスーMAUDIE

2016年 カナダ、アイルランド 116分

 

監督=アシュリング・ウォルシュ キャスト=サリー・ホーキンス (モード・ルイス) イーサン・ホーク (エベレット・ルイス) カリ・マチェット (サンドラ) ガブリエル・ローズ (アイダ)

 

【解説】

美しい風景や動物たちを描いた素朴な作風で知られるカナダの画家モード・ルイスの伝記ドラマ。絵と自由を愛したモードの人生を、彼女を支え続けた夫との関係を軸に描き出す。モードを『ハッピー・ゴー・ラッキー』などのサリー・ホーキンス、夫を『6才のボクが、大人になるまで。』などのイーサン・ホークが演じる。ドラマ「刑事ヴァランダー2 白夜の戦慄」などのアシュリング・ウォルシュがメガホンを取った。(シネマトゥデイ) 

 

【あらすじ】

カナダ東部の田舎町で叔母と暮らし、絵を描くことが生きがいのモード(サリー・ホーキンス)は、魚の行商をしているエベレット(イーサン・ホーク)の家で住み込みの家政婦として働き始める。幼少期にリウマチを患い身内に冷たくされてきたモードと、養護施設で育ったエベレットは互いを認め合い、やがて夫婦になる。ある日、モードの絵の才能を見いだす女性が現われ……。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

実在の画家、モード・ルイスの半生を描いています。

モード(サリー・ホーキンス)はその障害のほとんどを、カナダのノバスコシア州の片田舎の小さな家で暮らしていました。

幼い時にリウマチを患って、手足が不自由だったモード。

両親が亡くなった時に、兄が生家を相続するが、借金に苦しむ兄はその家を売ってしまい、モードは叔母アイダ(ガブリエル・ローズ)の家に預けられる。

世間の目と、それを気にする叔母の厳しい態度に耐えられず、モードは自立しようと考えた。

食料品店で見つけた「家政婦募集」の張り紙を持って、広告主のエヴェレット・ルイスを訪ねる。

 エヴェレット

エヴェレットは孤児院育ちで貧しく無口で気難しい。

廃材を集めて売ったり、魚の行商をしたりしていた。

モードの姿を見て、雇うのをためらうが、モードは帰るところもなく、不自由な手足でエヴェットの気にいるようにと家事に取り組む。

 

「自分が主人で、お前は犬と鶏の下だ」と言われるし、ベッドは一つしかなくエヴェレットと雑魚寝。

叔母からは「エヴェレットの慰み者」と言われる始末。

 

ノバスコシア州は夏は暑く、冬は厳しい。

家事の合間を縫って、モードは棚や壁にペンキで独特な絵を描き始める。

それは、小さな窓から見える自然豊かな四季折々の風景。

その中で息づく鳥、花、動物、小さな家、農夫の姿など。

自己流だけど、色彩豊かに、人の心を揺るがす絵だった。

エヴェットと一緒に魚の配達に行った時に、客に渡す控えのカードに絵を描いたら、そのカードを買いたいという人が現れた。

 

エヴェットから魚を買っていたニューヨークから来たサンドラ(カリ・マチェット)は、モードの絵を気に入り、絵を売ってくれと言い出した。

やがて、家で作品を売るようになり、取材が来て、ニクソン副大統領も買い上げて、モードの名前はどんどん有名になっていく。

 

モードは絵ばかり描いて、エヴェットは家事もするようにと、立場も違ってくる。

 

☆ネタバレ

モードが貧しい中から有名な画家になっていくというサクセスストーリーの裏に、もう一つのエピソードがありました。

モードが若い時に赤ちゃんを産んでいて、その赤ちゃんは障害があったために、モードが眠っている間に亡くなってしまい、兄と叔母で埋めたと聞かされていた。

モードが画家で成功してから、年老いた叔母が「あの子は兄が裕福な夫婦に売った」と告白する。

その娘をエヴェレットが探して、モードを遠目から会わせるシーンがありました。

幸せそうな娘に満足するモード。

 

二人の絆を感じるシーンでした。

 

映画の中では、終始無愛想で気難しいエヴェレットですが、エンドロールに登場するご本人のエヴェットさんは、とても優しそうな好好爺で、微笑ましかったです。

モードさんも、ニコニコされていて素敵なご夫婦だなあと思いました。

 

たまたま同居したから夫婦になったなんて生やさしいお二人ではないということが、映画全体を通して考えさせられました。

この人たちこそ、魂の絆、お互いがお互いを必要とされていて、唯一無二のご関係なんだと思いました。

 

モードの余計な一言でエヴェットが怒り、モードを力一杯打つシーンから、私は泣きっぱなしでした。

打たれてひるむモードでもない。

あんなに小さくてひ弱なモードさんの体の中が、あの絵に描かれる愛ある世界で満たされていると思うと、感動で涙が溢れてきます。

 

エンドロールにはモードさんの絵がどんどん出てきますが、どれもこれも思わずにっこりしてしまうようなかわいく暖かいものばかりでした。

 

みなさんにオススメです。

モードさんの愛の力を感じて欲しいです。



空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎

2018-03-01 17:12:08 | 映画ー劇場鑑賞

ー空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎ー妖猫傳/LEGEND OF THE DEMON CAT

2018年 日本、中国 131分

 

監督=チェン・カイコー キャスト=染谷将太 (空海) ホアン・シュアン (白楽天) チャン・ロンロン (楊貴妃) 火野正平 (大師(空海師父)) 松阪慶子(白玲) キティ・チャン(春琴) チン・ハオ(陳雲樵) リウ・ハオラン(白龍) チャン・ティンエンアイ(玉蓮) オウ•ハオ(丹龍) チャン・ルーイー(玄宗皇帝) シン・バイチン(李白) 阿部寛(阿部仲麻呂)

 

【解説】

空海を主人公にした夢枕獏の小説「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を実写化した歴史ドラマ。7世紀の中国を舞台に、遣唐使として同国を訪れた若き日の空海が不可解な権力者連続死亡事件の真相を追う。メガホンを取るのは、『さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)』などの名匠チェン・カイコー。『ヒミズ』などの染谷将太が空海を、『黄金時代』などのホアン・シュアンが彼と一緒に事件に挑む詩人・白楽天を演じる。日中の俳優陣の顔合わせに加え、湖北省襄陽市に建てられた唐の都のセットにも注目。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

7世紀、唐の時代の中国。若き日の空海(染谷将太)は、遣唐使として日本から唐へ向かう。密教の全てを会得しようという決意に燃える中、ひょんなことから詩人の白楽天(ホアン・シュアン)と出会う。交流を重ねていく一方、権力者が連続して命を落とす不可解な事件が唐の都で起きていた。その真相に迫ろうとする空海と白楽天だが、二人の前に歴史が生み出した巨大な謎が立ちはだかる。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

平日の昼間なのに、劇場はほぼ満員、しかも高齢者が多くて驚きました。

しかも男性率も高かった。

みなさんこういうテーマが好きなのでしょうね。

若き空海の時空を超えた冒険。

ファンタジー作品といっていいんじゃないかな?

 

ちょっと歴史のお勉強。

空海は804年に送り出された遣唐船で最澄たちとともに唐に入る。

この頃の空海はまだ名もなき若い僧の一人に過ぎなかった。

この時、4艘の船が送り込まれたが、空海が乗った第一艘目は嵐に遭いながらも唐にたどり着く。

最澄は第二艘目に乗っていた。

第三、第4艘の船は遭難した。

 

最初に空海が師事したのは醴泉寺の東土大唐――三藏法師、その後密教の第七祖である唐長安青龍寺の恵果和尚を訪ね、入門を許される。

伝法阿闍梨位の灌頂を受け、遍照金剛の灌頂名を与えられた。

恵果和尚が入寂されたので、越州に渡り土木などを学んだ。

空海は、唐に渡ってからわずか2年で日本に戻った。

 

日本では平城京から平安京へと都は移り、空海は真言宗を開き、弘法大師という称号を朝廷から与えられた。

 

伝説も多い人物で、全国にその足跡が残っている。

「高野山の人々や真言宗の僧侶の多くにとっては、高野山奥の院の霊廟において現在も空海が禅定を続けているとされており、そのように信じられている。奥の院の維那(ゆいな)と呼ばれる仕侍僧が衣服と二時の食事を給仕している。霊廟内の模様は維那以外が窺う事はできず、維那を務めた者も他言しないため部外者には不明のままである。」(ウィキペディアより)

 空海

この作品は、空海(染谷将太)が命がけで唐に来たものの、目的である青龍寺に入門が果たされず、もう日本に帰ろうかと諦めかけているところから始まります。

友達になったのは、宮中で記録係をしていた白楽天(白居易-ホアン・シュアン)。

白楽天

白楽天の案内で唐を見物している時に、怪しい黒猫に出会います。

 

原題は「LEGEND OF THE DEMON CAT」、この黒猫が主人公です。

そして黒猫に導びかれて入り込むのが、白楽天が書いた「長恨歌」の世界。

この時代から30年前の、玄宗皇帝と楊貴妃の愛の物語は果たして本当だったのか?

 

現皇帝が謎の死を遂げ、次期皇帝が重篤な病に侵されているのは黒猫の呪いではないのか?

白楽天と空海は、この謎に巻き込まれ、とうとう幻術の世界に引き込まれていくのです。

 楊貴妃

アクション映画と期待したらがっかりするでしょう。

実はファンタジー映画です。

見終わった後はミュージカル映画みたいな印象です。

めくるめく幻想の世界。

とても美しい映像。

私はとても気に入りました。

 

吹き替えで見たんですが、字幕で見るほうがもっと面白いのかな?


ビガイルド 欲望のめざめ

2018-02-28 15:41:29 | 映画ー劇場鑑賞

ービガイルド 欲望のめざめーTHE BEGUILED

2017年 アメリカ 93分

 

監督・脚本=ソフィア・コッポラ キャスト=コリン・ファレル (マクバニー伍長) ニコール・キッドマン (ミス・マーサ) キルステン・ダンスト (エドウィナ) エル・ファニング (アリシア)

 

【解説】

第70回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したスリラー。南北戦争期のアメリカ南部にある寄宿学園を舞台に、負傷して運び込まれた北軍兵士をめぐって、女性たちが情欲と嫉妬をむき出しにする姿を映す。監督は『ロスト・イン・トランスレーション』などのソフィア・コッポラ。『ラビット・ホール』などのニコール・キッドマン、ソフィア・コッポラ監督作『SOMEWHERE』にも出演したエル・ファニング、『メランコリア』などのキルステン・ダンストらが出演している。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

南北戦争下のアメリカ南部。世間から隔絶された女子寄宿学園で生活している園長(ニコール・キッドマン)や生徒(エル・ファニング)ら女性7人は、けがを負った北軍の兵士(コリン・ファレル)と遭遇する。敵方ではあるが、彼女たちは彼を屋敷に運んで介抱する。園長をはじめ学園の女性たちは、容姿端麗で紳士的な彼のとりこになってしまう。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

私は小学校の時から女子クラスで育ったので、こういう閉鎖された女の世界というテーマにすごく惹かれました。

1971年のドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演の「白い肌の異常な夜」のリメイクだそうですが、私は残念ながらオリジナルは見ていません。

でも、全然違う作品に仕上がっていたのではないかな?

この作品で監督のソフィア・コッポラはカンヌ映画祭の監督賞を受賞しています。

 

南北戦争が激しくなり、南部の小さな村にも戦乱の影が迫っている頃、マーサ園長(ニコール・キッドマン)が経営するファーンズワース女学園には、帰る場所がない女子学生5人ともう一人の教師エドウィナ(キルステン・ダンスト)が、ひっそりと寄宿生活を送っていた。

生徒のエイミー(ウーナ・ローレンス)が森の奥できのこ採りをしていると、大怪我を負った北軍の伍長マクバニー(コリン・ファレル)と遭遇した。

マクバニー伍長

エイミーは学園まで連れ帰り、ミス・マーサたちは驚くが、まず傷の手当と学園の建物の中に彼を運び入れた。

ミス・マーサは彼の足に埋まった銃の弾を取り除き、裂けた傷を縫い合わせ、消毒をして寝かせておく。

部屋は立ち入り禁止にするが、女学生たちは興味津々で彼と接触する。

 

やがてマクバニーがなんとか歩けるようになると、庭の手入れなど、力仕事を引き受けて働くようになる。

しかし、マクバニーは敵である北軍の兵士であり、良くなれば出て行ってもらうとミス・マーサは宣言した。

そして、その歓送会を開いた夜、事件が起こる。

 

☆ネタバレ

その夜エドウィナの部屋に行くと囁いたマクバニー、しかし、エドウィナが物音を聞きつけて開けた部屋で、彼はアリシア(エル・ファニング)と抱き合っていた。 

ショックを受けたエドウィナはマクバニーを階段の上から突き落としてしまう。

ミス・マーサはマクバニーの出血を止めるため、マクバニーの足を切る決断をした。

 

片足を失ったことを知ったマクバニーは荒れ狂う。

ミス・マーサの銃を奪い、みんなを脅かした。

もともとマクバニーはアイルランド移民で、北軍にはお金で雇われた傭兵だった。

南軍は引き上げてしまった。

北軍に引き渡すとこの学校のことが敵に知られてしまう。

ミス・マーサと女学生たちは毒キノコで彼を殺すことを思いつく。

 

閉鎖された世界で、誰が主導権を握るか、スリリングな展開です。

ニコールとキルスティンの男をめぐる主導権争いが見所。

そして、毒キノコ作戦を知らないキルスティンを、女学生たちの機転で切り抜けるところがとてもドキドキの展開でした。

 

マクバニーとエドウィナ

ここから出て行くことを夢見て、男に取り入ろうとしたキルスティンの野望も、マーサの前にしぼんでしまったところ、マーサという人のしたたかさ、強さ、見事だと思いました。

 

私は、ソフィア・コッポラのガーリー作品、結構気に入っています。

この作品も副題の「欲望のめざめ」みたいなことはありません。

ドロドロしていないし、あっさり、さっぱりしています。

この作品も、女性が作った品だと思いました。

女同士の付き合いって、こんな感じだなあと思いました。


アバウトレイ 16歳の決断

2018-02-19 17:22:29 | 映画ー劇場鑑賞

ーアバウトレイ 16歳の決断ー3 GENERATIONS/ABOUT RAY

2015年 アメリカ 92分

 

監督=ギャビー・デラル キャスト=ナオミ・ワッツ (マギー) エル・ファニング (レイ) スーザン・サランドン (ドリー) テイト・ドノヴァン (クレイグ)

 

【解説】

『SOMEWHERE』などのエル・ファニングらが出演したヒューマンドラマ。16歳のトランスジェンダーのレイと、レイを見守る家族の姿を追い掛ける。メガホンを取るのは、女優としても活躍してきたゲイビー・デラル。『インポッシブル』などのナオミ・ワッツ、『デッドマン・ウォーキング』などのスーザン・サランドンら実力派が共演する。ハートウォーミングなタッチもさることながら、短髪の主人公にふんしたエルの熱演も見どころ。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

トランスジェンダーで16歳のレイ(エル・ファニング)は、身も心も男性として生きていくことを母親のマギー(ナオミ・ワッツ)に告げる。思わぬカミングアウトと医師から渡されるホルモン治療の資料などに、マギーは困惑するばかり。一方、レズビアンであることを公言してパートナーと充実した日々を送る祖母ドリー(スーザン・サランドン)はレイを応援する。ある日、マギーはレイのホルモン治療の同意書にサインをもらおうと元夫を訪ねる。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この作品、2015年のです。

どうも地味な作品なので公開を見送られていたらしい。

日の目を見られて良かったです。

いい作品ですよ。

 

トランスジェンダーの問題というのは、日本では話題にも上らず、蓋されがちだと思います。

そして、グローバルスタンダードなルールは受け入れようと建前論は整っているように見えます。

アメリカでは言い古されたテーマになってしまったのかもしれないけど、日本ではまだまだ口にしたくないタブーに近いテーマなんじゃないでしょうか?

その表れか、劇場のお客さんもすごく少なかった。

私を入れても10人以下。

 

でもこの作品を、家族の問題を描いた作品としてみたら、女3世代の、意外に古臭い、または失われた家族の絆というテーマの作品になっていて、実は私、後半泣きっぱなしでした。

お客さんが少なくて、思う存分涙を流せて良かったくらいです。

 

私立高校に通う16歳のレイ(エル・ファニング)は、シングルマザーの母マギー(ナオミ・ワッツ)とその母の母、祖母ドリー(スーザン・サランドン)と彼女のパートナーのフラニー(リンダ・エドモンド)の4人家族。

普通のとは言えないけど、3世代同居の家庭。

 

レイはラモーナという名前を持つ女の子として生まれたが、自分の性に違和感を持ち、とうとう男性として生きる道を選んだ。

しかし、未成年のため、ホルモン治療を始めるためには両親の承諾が必要だった。

 

ドリーは、自分もレズビアンカップルとして生きているので、体を変えてまで男性になる必要はないと考えている。

 

マギーは、本音では娘のままでいて欲しいと願うが、レイの切なる願いも叶えてやりたいと葛藤する。

 

レイは、新学期は男の子として転校して新しい学校で迎えたいと切望している。

 

問題は、両親のサイン。

つまり父親のサインも必要ということ。

マギーは、レイの父親であるグレイグ(テイト・ドノヴァン)とは、10数年も連絡をとっていないし、行方も知らなかったのだ。

 

マギーはグレイグを探し当てたが、グレイグには新しい家族があった。

もちろん、事情が分からないグレイグはサインを拒否する。

 

☆ネタバレ

このストーリー、トランスジェンダーというのは身近に感じられなくても、問題を抱えた家族をどう受け入れるか、というテーマで考えれば、すごく共感できます。

 ドリーとそのパートナー

ドリーのような、ウーマン・リブ時代の主張の強い母親に育てられたマギーという人物。

シングルマザーとしての生き方を選んだのではなく、仕方なくそうなったという感じ。

今も収入が少なく、母のアパートでパラサイトしている状態。

過去の過ちときちんと向き合わなかった結果が、最愛の娘からあぶり出されたという感じです。

 

苦悩するマギーですが、彼女なりに問題に向き合おうとする姿にとても共感が持てました。

マギーの過去の過ちで、自分が父親のない子になってしまったことを知るレイの絶望も悲しかった。

それでも、家族がなんとか理解し合い、許しあっていく過程が心を打ちました。

 

エル・ファニングが、かわいい子役から脱皮するような迫真の演技です。

 

ラストの日本食料理屋さん、今まで存在も知らなかった家族が大きなテーブルを囲んでぎこちなく食事する様子がとても微笑ましかったです。


グレイテスト・ショーマン

2018-02-17 15:46:41 | 映画ー劇場鑑賞

ーグレイテスト・ショーマンーTHE GREATEST SHOWMAN

2017年 アメリカ 104分

 

監督=マイケル・グレイシー キャスト=ヒュー・ジャックマン (P・T・バーナム) ザック・エフロン (フィリップ・カーライル) ミシェル・ウィリアムズ (チャリティ・バーナム) レベッカ・ファーガソン (ジェニー・リンド)

 

【解説】

19世紀に活躍した伝説のエンターテイナー、P・T・バーナムを『X-MEN』シリーズや『レ・ミゼラブル』などのヒュー・ジャックマンが演じるミュージカル。空想家の主人公が卓越したアイデアと野心で世界中を熱狂させるさまと、ロマンチックな愛の物語が描かれる。監督はマイケル・グレイシー。ミシェル・ウィリアムズやザック・エフロンらが共演。『ラ・ラ・ランド』で第89回アカデミー賞歌曲賞を受賞した、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが音楽を担当している。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)は妻(ミシェル・ウィリアムズ)と娘たちを幸せにすることを願い、これまでにないゴージャスなショーを作ろうと考える。イギリスから奇跡の声を持つオペラ歌手ジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン)を連れてアメリカに戻った彼は、各地でショーを開催し、大成功を収めるが……。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

P・T・バーナムという人は、実在の人物なんですね。

19世紀のアメリカの興行師。

賛否両論のある人物のようですね。

 

さて、映画の中のP・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)は、仕立屋の息子。

父についてお屋敷に出入りし、その家の一人娘チャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)と恋仲になる。

チャリティは寄宿学校に入れられ、バーナムは父を失い宿無しとなるが、チャリティと文通しながら愛を育む。

バーナムは仕事を転々としながら、安アパートを借りたところでチャリティを迎えに行き結婚、二人の娘に恵まれた。

 フィニアス・バーナムとチャリティ

しかし、堅気の仕事はうまくいかず、バーナムは詐欺まがいのことをして銀行から資金を得て、ニューヨークに博物館をオープンさせる。

娘の一言からインスピレーションを得たバーナムは、当時偏見と差別の中で暮らしていたフリークス(奇形や奇人の人たち)を集めてサーカスを開いた。

これが大当たり。

 

お金持ちにはなったけど、上流と言われる人たちの世界には入れてもらえない。

娘も差別され、妻の両親とも和解できない。

 

そこで新進劇作家のフィリップ(ザック・エフロン)と手を組み、なんとか上流社会にも認められようと野心を燃やす。

 フィリップとバーナム

ヴィクトリア女王の御目通りが叶い、ヨーロッパでは有名な歌手ジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン)と出会う。

 歌姫、ジェニー

☆ネタバレ

ジェニーのアメリカ進出を手伝い、ニューヨークでのコンサートを成功させたバーナム。

この時、ジェニーもまた上流階級に復讐心を燃やしていて、自分と共通の思いがあることを知る。

 

サーカスはフィリップに任せ、ジェニーと一緒にアメリカ全土を興行して回ることになった。

チャリティも娘たちも置いて。

 

この時のバーナムは、上流階級をひれ伏せさせたいという野心しかない。

愛する家族も、今まで一緒にやってきた仲間たちの気持ちもまるで思いやれない。

 

ジェニーの巡業は各地で大成功を収めていた。

しかし、ジェニーとバーナムの思いがずれてき始めた時、二人の関係は破綻して、バーナムには莫大な借金だけが残った。

 

そこにバーナムの劇場の火事。

フィリプが大やけどを負った。

 

失望の中にいる時、フリークスたちがバーナムを励ます。

そして、フィリップが出資して、空き地に大きなテントを張ってサーカスを再開。

 

バーナムはフィリップにサーカスを任せ、自分は家族の元へ戻っていった。

 

この作品、ミュージカルにして成功したんじゃないかな?

時代は19世紀だけど、音楽は今のキレキレのポッブなミュージック。

ダンスもキレキレ。

すごく楽しい。

 

バーナムは貧しいから誰もやっていない見せ物みたいなことをやって、大衆に怖いもの見たさで受けただけで、彼自身に偏見がなかったわけじゃない。

新聞批評も最悪、でも彼は逆境アイデアと力にする強さがあった。

 

やはり芯になってくるのはチャリティとの愛。

バーナムは、チャリティと娘たちのためにもっともっとと欲張りすぎて破滅してしまった。

 

チャリティも、ジェニーとの仲を邪推するのではなく、破産したことを相談してくれなかった夫に失望して去って行ったのです。

「言ってくれたら、反対しなかったのに…」

 

この夫婦、本当に運命の人だったんだなあって、感動しました。

 

バーナムは心を入れ替え、家族のために尽くす父親になっていくでしょう。

 

ヒュー・ジャックマンはアカデミー賞の司会でも歌とダンスを披露してくれていたし、もちろん「レ・ミゼラブル」では主役を務めていましたので、その実力は十分発揮されています。

 

忘れていけないのが、ザック・エフロン。

私は忘れそうになっていたけど、「ヘア・スプレー」ね。

また、見直したい気持ちです。

 

今回もいい役でしたね。

 

単純に楽しめばいいんじゃないかなあ。

歌と音楽とダンスとサーカス!!

めくるめくショーの世界。

素敵です。


スリー・ビルボード

2018-02-11 15:05:40 | 映画ー劇場鑑賞

家庭の事情と怠け癖から、長らくブログの更新ができていませんでした。

覗きに来てくださっていた読者の皆様、本当にありがとうございます。

まだ元どおりとはいきませんが、少しずつ更新を増やしていきますので、よろしくお願いします。

 

ースリー・ビルボードーTHREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI

2017年 アメリカ 116分 

監督・脚本=マーティン・マクドナー キャスト=フランシス・マクドーマンド (ミルドレッド・ヘイズ)ウディ・ハレルソン (ウィロビー) サム・ロックウェル (ディクソン) アビー・コーニッシュ (アン)

 

【解説】

娘を殺害された母親が警察を批判する看板を設置したことから、予期せぬ事件が起こるクライムサスペンス。本作はベネチア国際映画祭で脚本賞、トロント国際映画祭で観客賞に輝いた。娘を失った母をオスカー女優のフランシス・マクドーマンドが演じ、『メッセンジャー』などのウディ・ハレルソン、『コンフェッション』などのサム・ロックウェルらが共演。ウディやサムも出演した『セブン・サイコパス』などのマーティン・マクドナーがメガホンを取る。(シネマトゥデイ)

 

【あらすじ】

ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め……。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

原題を直訳すると「ミズーリ州のエビリングの町はずれにある3つの大きな広告板」という感じでしょうか。

ミズーリ州はアメリカ中西部に位置しています。

エビリングという町は架空だそうです。

 

ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は町はずれの、ほとんど車も通らないようなところにあるボロボロの広告板を見て、広告を出すことを思いつきます。

ミルドレッドの19歳の娘は、この広告板の近くでレイプされ焼死体で発見されました。

それから7か月も経つのに、犯人の手掛かりすらつかめていません。

ミルドレッドは犯人にはもちろんのこと、捜査が進展しない警察にも怒っていました。

そこで思いついたのが、警察を批判する意見広告。

責任者のウィロビー警察署長(ウディ・ハレルソン)を名指ししました。

 

ウィロビー警察署長(ウディ・ハレルソン)とミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)

⭐︎ネタバレ

娘を無残に殺された母親が出した広告、同情されてしかるべきと思うが、批判されたウィロビー所長は人格者で町の人々の尊敬を集めていた。

ミルドレッドに同情を寄せていた町の人々も、この行為はやりすぎだと冷たい態度に変わっていった。

息子は学校でいじめられ、元夫も忠告しに来た。

元夫はミルドレッドに暴力をふるい、19歳の若い恋人がいた。 

 

ウィロビーも、捜査が進展しないことに忸怩たる思いを持っていたが、このミルドレッドの派手な広告板には憤っていた。

ミルドレッドに広告を取り下げるよう頼みに行き、自分の膵臓癌で余命が限られていることも打ち明けるが、ミルドレッドは引き下がらない。

 

ウィロビーを慕う部下のディクソン(サム・ロックウェル)は、広告板を製作した広告会社のレッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)に圧力をかける。

 

まず、ウディ・ハレルソンとサム・ロックウェルという個性派俳優が警官役というところに驚かされます。

ウィロビーは重い病にかかっているし家族思いだし、人格者。

しかし、思わぬタイミングで自殺してしまいます。

彼は遺書を残していて、ミルドレッドに善行を行うのです。

 

ディクソンの方は、独身で、マザコンで、差別主義者だし乱暴者。

はっきり言って、ひどい警官です。

最終的にはレッドにひどい暴力を振るって瀕死の重傷を負わせてしまう。

これがもとで、警官はクビに。

 

ディクソン(サム・ロックウェル)とママ

 

ミルドレッドも、事件解決と警察批判のためには手段を選ばない人。

火炎瓶も投げてしまうし、危うくディクソンを殺すところでした。

でも、娘の事件にこだわる執念の裏には、娘への深い愛情と確執への悔恨の思いもあるのです。

 

このように、この三人が悪人でもなく、善人でもなく、実に人間的。

良心もあり、差別心もあり、自分のことはなかなか客観的に見られない人たち。

つまり、私たちですよね。

 

見ているうちに、犯人捜しなんてどうでもよくなって、登場人物たちの言動や動向に目を離せなくなっていきます。

怒りに燃えて行った行為とそこから巻き起る波紋、取り返しのつかない結果。

行動を起こすということがいいことか悪いことか、だんだんわからなくなっていきます。

 

そしてラスト、ミルドレッドとディクソンが車に乗り込み、どうやら良くないことをしに行く様子。

でも、どこか幸せそうな二人。

このラスト、すごく気に入りました。

しばらくこのシーンが頭から離れなくなりそうです。

 

この作品、今年度のアカデミー賞の作品賞、脚本賞、主演女優賞にフランシス・マクドーマンド、助演男優賞にウディ・ハレルソンサム・ロックウェルがノミネートされています。

脚本の良さと個性的な俳優陣。

映画の醍醐味ですね。

 

忘れてはいけない、音楽の効果。

悲惨なテーマを悲惨に見せない、効果絶大でした。


僕のワンダフルライフ

2017-10-10 10:46:56 | 映画ー劇場鑑賞

ー僕のワンダフルライフーA DOG'S PURPOSE

2016年 アメリカ 100分

 

監督=ラッセ・ハルストレム キャスト=ブリット・ロバートソン (10代のハンナ) K・J・アパ (10代のイーサン) ジョン・オーティス (カルロス) ペギー・リプトン (大人のハンナ) デニス・クエイド(大人のイーサン) ジョッシュ・ギャッド(ベイリー/エリー/バディ)

【解説】

W・ブルース・キャメロンのベストセラー小説を、『HACHI 約束の犬』などのラッセ・ハルストレム監督が映像化したドラマ。少年に命を救われたゴールデンレトリバーが、転生を繰り返しながら自分の使命に気付く物語が描かれる。主人公の犬の声を『美女と野獣』などのジョシュ・ギャッドが担当し、若き日の飼い主をK・J・アパが好演。共演は、ブリット・ロバートソン、ジョン・オーティス、デニス・クエイドら。

【あらすじ】

ゴールデンレトリバーの子犬ベイリーは、少年イーサンに命を救われてからいつも一緒に過ごすようになり、彼と強い絆を育む。やがて青年に成長したイーサンは大学入学で故郷を離れ、ベイリーは年老いて死を迎えるはずだった。だが、ベイリーはイーサンに会いたい一心で何度も姿を変えて生まれ変わり……。(シネマトゥデイ) 

 

【感想】

まあ、どれほど長くブログを放っていたことでしょう。

それでも懲りずに読んでくださっていた皆様、本当に失礼しました。

 

まだ本格的に再開とは行きませんが、ぼちぼち書いていきますので、よろしくお願いします。

 

ラッセ・ハルストレム監督といえば、「ギルバート・ブレイク」や「ショコラ」といったジョニー・デップファンならお馴染みの監督さんですが、犬の映画も「HACHI」などを撮っておられて、ご自身が犬好きというのがよくわかります。

この作品は、特に犬好きにとっては見逃せない作品なのではないでしょうか?

犬が生まれ変わる?

甦りの作品?

ちょっと疑わしい感じもありますが、とにかく犬好きならご覧ください。

 

主人公は犬のベイリーの魂。

犬って、幸せな生き方をする子ばかりではありませんね。

ベイリーも、何回かの犬生の中で、不幸な生涯を終えたこともありました。

でも、ある時、野良犬のゴールデンレトリバーだった時です。

イーサンという少年に出会います。

イーサンの父親は仕事に行き詰まっていて、どちらかというと孤独な少年でした。

両親に頼み込んでベイリーを飼い、恋人とも出会い、幸せな時間ずっとベイリーと一緒でした。

しかし、父親の行動が元で、イーサンは一気に不幸のどん底に。

怪我をして決まっていた大学進学も諦め、恋人とも別れてしまいました。

ベイリーとも別れ、専門大学の寮へ。

その間に、ベイリーの寿命は尽き、死んでしまいました。

 

ここからが、この作品の不思議なところ。

次にベイリーが生まれ変わったのは、警察犬シェパードで、しかもメス。

担当者はカルロスで、この人も孤独な人でした。

絆も生まれますが、犯人逮捕のお手柄の中、ベイリーは犯人に撃たれて死んでしまいます。

 

次に生まれ変わったのはコーギー。

大学生のまたまた孤独な女子学生にもらわれます。

食べるのが大好きな犬。

この子の恋が元で、飼い主も恋をして円満な家庭を持ち、犬の寿命を全うして死んでいきました。

 

さて、結末が気になります。

次に生まれ変わって飼われたのが貧しい夫婦。

妻は寂しくて犬を飼いたいのですが、夫は家に上げることを許しません。

ずっと庭に繋がれたまま、飼い方も知らないのです。

ある時、動物虐待だと指摘され、夫は妻を欺いてこの犬を捨てに行きます。

 

犬は飼い主の元に帰ることも選択できたのに、自由に生きる道を選びます。

そして奇跡がー。

 

ここからは是非見ていただきたいです。

ハンカチやテッシュが要りますよ。

犬の、飼い主へのあの無条件とも言える信頼、愛、すべての謎がこれで解けるかもしれません。

 

私も以前に飼っていたビーグルの雑種だったチャコを思い出しました。

死ぬ間際まで、私を見つめ全幅の信頼をおいてくれていました。

何もしてあげられなかったのに…

あの瞳が忘れられません。

 

そして、今そばにいるミニチュアダックスのライトくん。

猫みたいにお膝に乗ってきてぺろぺろ舐めてくれます。

なんて可愛いのでしょう。

もしかしたら、私が小さい時に可愛がっていたチロちゃんの生まれ変わりかもしれません。

そう思ったらたまりませんね。

 

犬は短命だし、病気にもなりやすい。

おいて旅行にも行けないし、すごく寂しがり屋。

つまり、犬は人がいないと生きていけない存在です。

 

犬と人間の歴史。

これほど深い絆ってあるでしょうか。

犬は野生であることを捨て、人間に尽くすことを選んだかのようです。

人間は犬のこの潔い選択に応えるためにも、犬との共生を大切にしたいと思いました。


パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊

2017-07-01 17:31:32 | 映画ー劇場鑑賞

ーパイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊ーPIRATES OF THE CARIBBEAN: DEAD MEN TELL NO TALES

2017年 アメリカ 129分

 

監督=ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ キャスト=ジョニー・デップ (ジャック・スパロウ) ハビエル・バルデム (サラザール) ブレントン・スウェイツ (ヘンリー・ターナー) カヤ・スコデラーリオ (カリーナ・スミス) ケヴィン・R・マクナリー(ギブス) ジェフリー・ラッシュ(キャプテン・バルボッサ) オーランド・ブルーム(ウィル・ターナー) キーラ・ナイトレイ(エリザベス・スワン) ポール・マッカートニー

 

【解説】

ジョニー・デップが孤高の海賊ジャック・スパロウを演じる、大ヒットシリーズ第5弾となるアクションアドベンチャー。ジャック・スパロウが、全ての海賊の滅亡をもくろむ“海の死神”サラザールとの闘いを繰り広げる。過去のシリーズにも出演してきたオーランド・ブルームやジェフリー・ラッシュのほか、悪役に『ノーカントリー』などのハビエル・バルデムがふんし、カヤ・スコデラーリオやブレントン・スウェイツらが共演。監督を、『コン・ティキ』のヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリが務める。壮大なスケールで描かれる冒険とバトルに注目。

 

【あらすじ】

ヘンリー(ブレントン・スウェイツ)は、過去に伝説の海賊ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)と旅をした父のウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)の呪われた運命を、何とかしたいと考えていた。そこで海にまつわる伝説を調査したところ、呪いを解くには伝説の秘宝“ポセイドンの槍”が必要なことがわかる。その後、英国軍の水兵になったヘンリーが船に乗っていたところ、“海の死神”サラザール(ハビエル・バルデム)の襲撃に遭い……。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ第5作目となる「最後の海賊」、初日に見てきました。

ここしばらくあまり面白くない作品が続いたために、期待半分、でもかなり期待して見に行きました。

いやあ、面白かったー。

よしもと新喜劇もびっくりなドタバタ劇。

 

第1作目のノンストップアクション、ジェットコースタームービーの迫力には及びませんが、その分かなり笑わせてくれます。

 

公開が始まったばかりなので、ネタバレしませんが、すごい大物がカメオ出演。

期待してください!!

 

シリーズの初心に戻って、若い人たちの純愛は切ないし、バルボッサとジャックのじゃれ合っているようなやり取りはおかしくて笑えます。

  今回の主役、ヘンリーとカリーナ

 

 バルボッサと猿

毎回と同じように猿が可愛いし、ジャックの仲間も冷たいんだか温かいんだか。

  ジャックと仲間たち

ウィルの呪いはどうなるかとか、エリザベスは出てくるのかとか、ワクワク感は最後まで続きます。

エンドロールまで見逃さないでくださいね。

次もあるんじゃないかなあ。

 

「最後の海賊」という日本語の副題。

うーん?と首をかしげてしまいます。

原題は「DEAD MEN TELL NO TALES」

最初にサラザールがいいます。

「死人に口なし」

  サラザール

そもそも、第1作目からこのシリーズはホラー色です。

夏向きの作品。

ヒットするんじゃないかなあ?


 サメのゴーストも面白かった!!



LION/ライオン~25年目のただいま

2017-05-14 08:54:47 | 映画ー劇場鑑賞

LION/ライオン~25年目のただいまーLION

2016年 オーストラリア 119分

 

監督=ガース・ディビス 原作=サルー・ブライアリー キャスト=デヴ・パテル (サルー) サニー・パワール (サルー(少年時代)) ルーニー・マーラ (ルーシー) デヴィッド・ウェンハム (ジョン)  ニコール・キッドマン(スー) アビシェーク・パラト(グドゥ) ディヴィアン・ラドワ(マントッシュ)

 

【解説】

『英国王のスピーチ』などのプロデューサー、イアン・カニングが製作に名を連ねた実録ドラマ。幼少時にインドで迷子になり、オーストラリアで育った青年が Google Earth を頼りに自分の家を捜す姿を追う。メガホンを取るのは、テレビシリーズや短編などを手掛けてきたガース・デイヴィス。『スラムドッグ$ミリオネア』などのデヴ・パテル、『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラ、名女優のニコール・キッドマンらが顔をそろえる。

 

【あらすじ】

インドのスラム街。5歳のサルーは、兄と遊んでいる最中に停車していた電車内に潜り込んで眠ってしまい、そのまま遠くの見知らぬ地へと運ばれて迷子になる。やがて彼は、オーストラリアへ養子に出され、その後25年が経過する。ポッカリと人生に穴があいているような感覚を抱いてきた彼は、それを埋めるためにも本当の自分の家を捜そうと決意。わずかな記憶を手掛かりに、Google Earth を駆使して捜索すると……。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この物語が実話だということにまず驚かされます。

インドで迷子になった少年が、25年前の自分を取り戻すお話。

人間にとってアイデンティティがいかに大切か、考えさせられます。

いろんな問題が浮き彫りになるけど、最後の最後に大切なのは、果たして何なのか。

深い作品でした。

 

しかも、母を探すきっかけになったのがグーグルアースとは!

 

5歳のサルーはスラム育ちだったが、自分が貧しいとか辛いとかまるで感じずに暮らしていた。

それは、母の愛と兄グドゥの気遣いに守られていたから。

特に大好きな兄。

グドゥと一緒に走っている貨物列車に飛び乗って石炭を盗む。

石炭を牛乳と交換する。

好物の揚げ菓子をいつかグドゥに買ってもらう。

これもサルーにとっては、ヒーローように立派な生きる道だった。

 

母は石切場で石を運ぶ仕事をしていた、昼も夜も。

夜は妹の面倒を見るのだが、その夜、グドゥは夜の仕事に出かけると言った。

妹はよく眠っている。

サルーもグドゥと一緒に働きたかった。

無理を言って付いてきた。

しかし睡魔には勝てない。

駅で眠り込み、グドゥは「ここで待つように」と言って行ってしまった。

夜中の誰もいない駅で目覚めたサルー。

給水塔が見える。

「グドゥー!!」と呼べど、誰もいない。

停車中の電車に乗り込んで、またも眠ってしまう。

起きたら、電車は全速力で走っていた。

どこへも止まらず、ひたすら西へ。

インドは広い。

着いたところは大都会カルカッタ。

 

大量の人で溢れている。

ここでも「グドゥー!!」「ママー!!」と叫ぶけど、雑踏にかき消される。

言葉さえ通じない。

「どこからきたの?」

「ガネストレイ」

誰にもわからない地名。

孤児狩り、子供拐いなどの危険をなんとかくぐり抜けるが、とうとう孤児院に入れられる。

 

オーストラリアのタスマニアに住む夫婦がサルーを引き取りたいと申し出た。

 

サルーはジョンとスーの夫婦に引き取られた。

1年後、やはりインドの孤児マントッシュも引き取られたが、マントッシュは自傷行為などの問題のある少年だった。

 

それでもスーたちは二人に愛情を注いで20年間育てた。

サルーは経営学を学ぶためメルボルンの大学に進学した。

マントッシュは社会に馴染めず、人里離れたところで一人で生活を始めた。

 

サルーにはルーシーという同級生という恋人ができた。

ある日、友達に招かれてインド風のパーティに参加した。

そこであの市場にあった揚げ菓子を見つけた。

その途端、あの頃の記憶が蘇ってきた。

母、グドゥ、まだ自分を探しているのではないか?

自分を探す声に悩まされる。

 

5年経って、ルーシーとタスマニアに戻ってきたサルーだが、母が自分を探しているという思いはさらに深くなり、苦しんでいた。

グーグルアースでカルカッタから電車の時速と距離を計算して、故郷を探す作業に没頭し、ルーシーとも別れてしまった。

ジョンもスーも引きこもるサルーを心配していたが、サルーは肉親を探す作業は、スーを裏切る行為だと余計疎遠になっていく。

でも、スーは言う。

「私は、自分の子を持とうと思えば持てたが、持たなかったのだ。父親に虐待されて辛い思いをしている時に、肌の黒い少年が現れ、私はいつかこの子たちを引き取ると決心したから。私が自分の子供を生むことに何の意味があるのか。世の中には辛い思いをしている子供がいる。その子達を引き取り育てるのが私の使命だと感じた」

 

しかし、スーも苦しんでいた。

サルーもマントッシュも幸せには見えなかったから。

子育てって、愛情だけでは足りないのか。

貧しい国から養子を取って育てるというのは、とても尊敬に値する行為だと信じていましたが、本当に難しいと思いました。

マントッシュについては多くは語られていませんでしたが、虐待されて心が傷ついたというのはわかりました。

 

サルーがひるまずに故郷探しができたのは、幼い時に母や兄に愛されていたからだと思う。

スーを受け入れることができたのも、愛された幼児体験があったからでしょう。

数奇な運命を辿ったサルーですが、グーグルマップで兄と別れた給水塔のある駅を見つけ、見覚えのある川や橋を見つけ、とうとうインドへ母を捜しに旅立ちます。

 

☆ネタバレ

ネタバレになりますが、サルーは母と会えます。

「ガネストレイ」ではなく、ガネッシュ・タライという町でした。

母も、サルーがいつ帰ってきてもいいように、遠くへは引っ越さなかったのです。

妹とも再会。

ただ大好きなグドゥは、サルーと別れた駅の近くで電車に轢かれて亡くなったそうです。

 

サルーは自分の名前も間違っていて、サルーではなくライオンという意味の名前だそうです。

 

ニコール・キッドマン、この役は素晴らしい。

大女優の風格。

スーのこの崇高な思想が体現できるのは彼女だけかもしれないと思いました。

他人の子供、特に不幸な子供を育てるという困難にあえて挑んだスーの精神に心から感動しました。

その思いが、十分に詰まった作品でした。

 

みなさま、ぜひご覧ください。