モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

この1年の反省

2011年12月29日 | モノ・こと・ことば
かたち21のHP


前世紀末のバブル経済の崩壊以降今日に至るまで、工芸の世界も停滞していました。
また全体の趨勢としては工芸(手仕事)は衰退の傾向にあると私は思っています。
衰退現象がどういうふうに現れているかというと、
メディア受けを狙った制作、アマチュア化、
「わざ」の未熟などによる真贋の区別の不可能化、
そしてデフレ現象(安直に作られた安い価格のものを買おうとする)があります。
そういう中で「工芸」をどう語っていく(モノ・語り)のかということを考えていて、
今年はほとんどどん詰まり状態にあったと反省しています。

ところが、先日開催した「アートでおもてなし展」に出品されてきたものを見て、
自分の中で危うく見失いかけていたものが改めて見出されたような気がしました。
それは、中野みどり(染織)、植草達郎(陶芸)、角好司(漆芸)、岸野承(木彫)
といった作家たちの仕事ぶりを再認識することを通して得られました。

この人たちに共通する仕事の特徴は何かというと、
メディア受けを狙っていない(その意味で“無名”の状態にあるといえます)、
アマチュアでなく、プロとして誰も追随できない世界を持っている、
うたかたの世の底でひっそりとしかし確実に「わざ」を磨き上げていこうとしている、
といったことです。
この人たちは、工芸の衰退期にあっても、
「本当のものを作りたい」という願望に真っ直ぐに向き合って、
黙々と仕事を続けてきたのですね。
結局、もし工芸(手仕事)の再生ということがありうるとすれば、
そういった「本当のものを作りたい」という志を
継続していくという行為以外にはないということです。

それで私も我に返ったことは、私のような立場の者は
メディアの動向とかにも一応目配りしたりして、
それでなんとなく浮き足立ったり、方向を見失ったりするのだけれど、
そういうことはこの際きっぱりと止めて、
「本当のものを作りたい」という願望に真っ直ぐ向き合っている人たちの仕事だけを
見つめていくようにしていこうということでした。

この年の瀬に、「かたちの会」会誌の次号の制作に取り組み中です。
明年1月末に発行を予定しています。
「アートでおもてなし展」出品作を中心に、上記の心構えで、
「いい仕事」を紹介していく、といった内容のものにしていきたいと考えています。

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