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遠い国での業務改革

2020-10-16 12:00:00 | 20期生のブログリレー

こんにちは。20期生の安納です。

去る8月の第2回講義における見事なインタビューの中で、恥ずかしながら皆様の前で半生を(赤裸々に)語る機会をいただきました。「今までに最も成果のあった(印象に残った)仕事について」の問いをいただき、アフリカでの生活を思い出したのは自分でも意外でした。この度は、彼の地で見聞きした経験の一端、特に勤務先の出来事について、書きたいと思います。

彼の地での業務

勤務先は内務省の出先機関でした。住民台帳の整理や各種証明書を作成する業務を行っています。業務は窓口、検索、タイピングなどきっちりと分業されていて、Directorをトップに据えた官僚制組織でした。植民地時代の名残を感じます。

証明書発行業務では、台帳を探してくる担当とタイプライター担当がいて、書庫で検索された台帳がタイプライターのもとに運ばれ、証明書の書式に印字されると完成します。タイプライターの老朽化や台帳の取り回しの煩わしさを見た私は、証明書発行業務のDB化を図っていました。

ちなみに業務時間が特徴的で、朝8時から13時くらいまでが稼働時間であり、残務があったら夕方16時から17時ごろに出てきて業務をつづけます。日中の時間帯はとにかく暑くて、外気温が40℃を超えることもあります。一般家庭のクーラーの設置率は低く、行政組織の建屋といえど冷房されていることはまれでした(稼働させたとしても電気料金が高価)。日の高いうちは皆、自宅でじっとして暑気をやりすごすのです。

組織の雰囲気

スタッフさんの業務をみていると、台帳担当のAさんは、タイプライター担当のBさんのもとに台帳を運び終えるが早く、Bさん相手におしゃべりを始めることが多々ありました。Bさんも手元もそぞろにタイピングしながら応酬しておりまして、私はおせっかいにも「Aさん分は運び終わったわけだし、他の人の分を運ぶの手伝ったら?」と申し上げてしまうことがありました。こんなとき、Aさんは私に向かって「(A)Chacun son traveil」ときっぱり仰るのです。

この言葉はフランス語で、いつも口頭で伝えられていたため、文法的に妥当であろうA(aに`)が付いていたかは定かではありません。英語で表記すると To each his/her own work(deepL翻訳による)となるようです。意味が取りづらいのですけれども、「誰にでもその人の仕事がある」といったところになるかと思います。

自分の仕事は終わったのだ余計な口を出すな、そもそもその立場にないだろう、というきつめのニュアンスがあったのではないかと思います。若輩ながらも公用パスポートを帯びた身としては、なかなかツラいお言葉でした。証明書処理数には季節変動はあるものの、大幅に目標が変動することはないため、文化的に協働の必要性が生じなかったのではないか、などと歴史的な文脈で処理しようと試みます。

もっとも私もボランティアとして他国行政の末席を借りている立場だったので、組織の差配に口を出すのは出過ぎた真似だったと反省するとともに、mon traveil(自分の仕事) にまい進いたしました。

外部環境の変化と業務改革

牧歌的なルーチンワークの日々にあって、改革を余儀なくされる事態が訪れました。イラク戦争の勃発と多国籍軍の駐留です。国境の警備が強化され、警察や軍による国民の身上確認の機会が増えました。身上改めにおいては、各種証明書の携行と提示が求められるため、発行希望者が爆発的に増えます。タイプライターも総員配備で火を噴き、スタッフはあちこち動きまわって、今までにない活況を呈するようになりました。協力を求め交渉するシーンも増え、もはや自分の職掌に拘泥する人はいないように見えます。

タイプライターのもつキーが重く修正が困難という欠点を嫌ったためか、DBのもつデータの参照と印刷が容易な利点を好んだためか、構築してきたシステムも日の目をみて、PCの操作を教わろうとするスタッフも増えてきました。特に、DB化されていれば検索と印刷が容易になることに着目し、「私は書庫の台帳を全て登録する!」と息巻くスタッフが現れたことは刮目に値しました。危機を経て、フランスから独立した1970年代以来の業務ルーチンが徐々に変わろうとしていたのです。

変革の要因

強烈な外部環境の変化、戦争の勃発が、業務の変革に最も大きな影響を与えたことは間違いありません。しかし、この要請にこたえようとするスタッフたちの真摯な態度、そもそも逃げ道はない状況ではありましたが、業務に対するオーナーシップがあったことも、変革の要因だったと思います。

一方、いささか手前味噌ですが、自身が技術的側面から変革の萌芽を育めたことも、要因のひとつと申し上げられるのではないかと思います。一般的にボランティアは、迎えいれると何か(モノ)が付いてくる、くらいに思われている節がありまして、私の場合もPCとバーターのようなものでした。さほど期待される存在ではありませんでしたが、課題が捉えられれば、介入なく解決にむけて没頭することができました。

また、国と国との契約の中で迎え入れられたボランティアでしたが、受入れを選択したこの内務省出先機関の長は、進取の試みを厭わなかった点で優れたリーダーシップを発揮した、と言えるかもしれません(半年ほどで更迭されたため色々な詳細は不明です)。朝はいつもあいさつに来てくれたり、扉の前には警官を配備してくれたり、色々と配慮してくださいました。


上記の見聞をまとめますと、

①各人が事業へのオーナーシップもつ文化を醸成すること
②進取挑戦するリーダーシップを発揮すること
③試みを持続させ可能性の芽を支援すること

に留意することが、変革を促す組織作りに役立つものと思います。いずれも慎重な制度設計や実施の工夫が必要であり、そう簡単ではありません。雇われる身分で言えば、いつまでも(A)Chacun son traveil に甘んじることなく、責任の拡大を意識することを心掛けたいと思う次第です。

折りに触れ、中小企業診断士となった目を通して、あの頃を顧みる機会を設けてみたいと思います。

 


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2 コメント

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Unknown (大井 秀人)
2020-10-16 23:04:09
貴重なご経験を共有いただき、ありがとうございます。私はアジアとヨーロッパしか行ったことがないので、全く知らない世界でした。ただ、何かやろうと考えている人にとって「変化はチャンス」であることが普遍の原理である、ということがよくわかりました。外部要因の大きな変化に対して、いかに行動できるかですが、普段のメンタリティーも大事ということですね。
Unknown (岡田 英二)
2020-10-18 14:17:51
日常では変化を求めず、ピンチや非日常が変化を加速させる事例のように感じました。
よそ者のアドバイスを歓迎しない環境で組織に入り込むノウハウは、コンサルにも求められるスキルと考えます。
当時を振り返ったお話を聞ける機会があるといいなぁと思いました。

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