ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

【観劇メモ】海をゆく者

2014年12月22日 | 演劇

ベテランのオジサマ俳優さんたちによる、とても重厚で濃密な舞台だった。

雨の渋谷、パルコ劇場。

席は前から4列目だったので、演じる皆さんの表情までよくわかる。


舞台はクリスマス前夜のアイルランドの片田舎の町。
散らかった部屋の中だけで、物語は進んでいく。

アル中気味な上に目も見えなくなってしまい、わがまま言い放題でいつも怒鳴り散らしているこの家に住む兄弟の兄リチャードに、
「花子とアン」で白蓮の元夫を演じていた吉田鋼太郎さん。

酒乱を反省し禁酒中の弟シャーキーに平田満さん。
違う街で運転手をやっていたが、雇い主の奥さんと関係を持ってしまい、失業して故郷に戻ってきたばかりらしい。

前日からのお酒で帰れなくなった古くからの友人アイヴァンに浅田和之さん。
眼鏡がないとほとんど何も見えない極度の近眼。

やはり彼らの友人で底抜けに明るいニッキーに大谷亮介さん。
シャーキーの元恋人と今は一緒に暮らしている。
最近出なくなったが、以前はドラマ「相棒」の3人組の刑事の一人だった方。

ニッキーが客人として連れてくる上品な紳士ミスター・ロックハートに小日向文世さん。

この渋い面々が演じる緊迫の一夜。

ミスター・ロックハート以外は、みんなそろってダメなヤツだ。
職を転々としてたり、酒乱だったり、過去になにやら悪いこともしていそうな気配。

最初は穏やかな飲み会だったけれど、ミスターロックハートの提案でポーカーが始まってから、
なんだかおかしなことになってくる。

どうやらこの上品な紳士は実は悪魔が姿を変えていて、遠い昔にシャーキーと取引をしたときの約束を果たしにきたらしい。

このゲームに負けたらシャーキーは悪魔に魂を持って行かれるようだ。

終始ニコニコほほえみを浮かべながら、ときどき真顔で恐ろしいことを言う小日向さんの悪魔はホントに怖い。

言葉少なにうつむき気味の平田さんは渋くてステキ

浅野さんはいつもながらのコミカルな動きと絶妙な間合いのセリフで、暗~い雰囲気になりがちな舞台に
ちょくちょく笑いを誘う。

一発触発的な場面で上手に場を和ます大谷さんの雰囲気は安心感がある。

吉田さんの怒鳴り散らす迫力は、少し前にやっていたドラマ「MOZU」の怖~い悪い人を思い出させる。

シャーキーが負けて魂を取られるかっていう最後の最後で大どんでん返しがあり・・・。

すごすごと引き下がる悪魔の気の弱さがなんともかわいい。
悪魔なんだから、有無を言わせず魂くらい盗っちゃえそうなものを、
きっちり約束を守ったりする人(?)のよさが、なんだか小日向さんの雰囲気にぴったり。

酒乱でどうしようもなくて、町を出て行ったシャーキーを「お前が酒乱だってことは街のみんなが知ってる」と
あらためて受け入れる、兄や友人たちの暖かさ。

ほとんどどうしようもないくずっぽい男たちが、
全てが済んだ朝日の中で「クリスマスだから教会に行こう!」なんて言ってるのも「あ、教会はちゃんと行くんだ」と微笑ましい。

派手な展開はなく、ず~っと汚い部屋の中で繰り広げられたお話だけど、
会話の向こうに取り巻く人たちの姿が浮かび、街の景色が広がっていく、奥深い舞台だった。

この日、一緒に行ってくれたのは私の同級生のお嬢さん。
10代の彼女にはちょっと重いかな、と思ったけれど、感動してくれていた。

ひょんなことからこの日ご一緒いただくこととなり、少し早めに待ち合わせて、軽く何か食べよう、と言うことに。

彼女が選んだお店は渋谷パルコの1階にあるハンバーガーショップ。

オバサンだけではまず行かないであろうお店だ。

彼女はアボガド、私は照り焼きのハンバーガー。

 

そして、息子と一緒ならまずお目にかからないマシュマロたっぷりのホットドリンク



ファストフードのハンバーガーとは全然違うちゃんとしたハンバーグが乗っかっていて、とても美味しい

こんなにおなか一杯になっちゃったら、お芝居の間に寝ちゃうのでは・・・と心配したけれど、
そんなことも吹っ飛ぶ面白さだった。

舞台が終わって、せっかくだからお茶でもしちゃおうか、と駅前のロクシタンカフェへ。



息子しかいない私は、次男より一つ年下のお嬢さんと はたして話ができるのか?と心配だったけれど、
彼女の方がずっと大人で私に話を合わせてくれる。

穏やかな笑顔の下に、10代の少女なりの楽しみや悩み、そして、その年齢にしては抱えきれないほどの痛みと、
それを乗り越える助けとなる大きな夢を抱えているであろう彼女。
その一つ一つを叶え、乗り越えて行く過程には、いろいろなことが待ち受けているであろうことを、
その年齢を通りすぎてきた彼女のご両親や私たち周りの大人は知っている。

けれど、そのことをいくら口で説明したところで、体験しないと納得できないってことも知っている。

私が息子たちに思うように、彼女のご両親も、できることなら先回りして大きな石ころを取り除き、
彼女のゆく道を平坦なものにしてあげたい、と切望していることだろう。
そしてそんなことが決してできないことで歯がゆい思いをしていると思う。

ただ、これだけはなんとなく思うのだけれど、世の中結構何とかなる。

そう思って、鏡の前で口角を引っ張り上げよう。

この日の舞台も、最後は明るい朝日が差し込んでいたことだし。

なんてことを思いながらお茶していたらすっかり遅くなってしまった。
ご両親にはご心配をおかけしました。

彼女がステキな大人になる日を、比較的近い距離で少し離れて見ていられそうなのが今からとても楽しみだ。

今からいかようにも変えていくことができる彼女の輝く未来を応援したい。

今日は、オバサンにつきあってくれてホントにありがとう
機会があれば、またぜひ一緒に行きましょう






























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