もやいマンション日記

マンション役員の体験を綴った「マンション日記」に、プライベート所感を綴った「nonnon日記」が混ざっています。

No.371「体のないハクの物語⑨ペットロスの人へ」

2021-10-11 | 日記

            nonnon日記

空き地の上空から、丸い月がぼんやりと、優しい光を放っていた。

2匹が遊び疲れて木の枝の上で休んでいる時、カールが尋ねた。

「ねぇ、ハク、隣の家にあんないいオイちゃんがいたのに、なんで、ハクは

オイちゃん家の猫にならなかったんだい?」

ボクは答えた。「オイちゃんの猫になっても良かったさ。母さんのシロが死んで

ジイチャンもどこか行って帰ってこなくなって、ボクはずーっと一匹ぽっちだった。

昼間オイちゃんにご飯もらって、話しかけてもらえるのが、とても嬉しかった。

でも、夜はどうしても、ジイチャンと母さんの匂いのするベッドの布団で寝たく

なったから、ニャーニャー鳴いて、いつも外に出してもらった。

だから、オイちゃんは自分の猫にできない、と思ったかも知れない。それに、

いつだったか、ボクが屋根の上で昼寝してる時、なんだかすごい大きい音のする

車が来て、オイちゃんが寝たまま運ばれて行くのが見えた。心配したよ。

ジイチャンみたいに、もう帰って来なくなるんじゃないかって。

すぐに、オイちゃんは帰ってきてホットしたけどね。」

「ふーん、ボクは人間に心配してもらうことはあっても、人間の心配をしたこと

はないけど、ハクは大変だったんだね。」とカールは言った。

「そう、ボク達、飼われ猫は、飼い主さん次第で、暮らしが変わるんだよ。

ボクはある日、オイちゃんに風呂場でシャンプーしてもらって、毛が乾いたら

飛び切り美味しいご飯もらって、満腹でペロペロしてた。ーその後、いきなり

オイちゃんはボクをケージに閉じ込めた。やがてジイチャンの娘のケイおばちゃん

が来て、ボクは車に乗せられてどこかに運ばれて、やっと止ったと思ったら、

ケイおばちゃんが、『ハク、さよなら元気でね。可愛がってもらうんだよ。』

って言ったんだ。

ボクはわけがわからず、ギャーと鳴いた。でもいくら鳴いてもダメだった。

ケージが何かに覆われて、真っ暗になって、またどこかに運ばれた。

ゴーッ てすごい大きい音がして殺されるかと、とっても怖かったよ。

長い時間、床がとても揺れて、ボクは疲れ果てて眠った。」

「ふーん、ハクはとっても辛い思いをしたんだね。」とカールは言った。

「目が覚めても真っ暗だったからーボクはきっと、捨てられたんだ、人間に捨て

られたんだ、母さんのシロが言っていたみたいにー連れて行かれて殺されるー

ボクは『運の悪い猫』なんだと思ったからーどこかに着いて、ケージのドアが

開いた途端、唸って飛び出したー

お母さん家の台所の隅の隙間に閉じこもって、ギャーギャー鳴き叫んだ!

今思い出すと、とっても可笑しくなるけどね。」

「うん、ボクは天井から見てたよ。激しいヤツが来たなー、どうなるんだろう?

猫はボクの思い出だけでいいのにーって思った。」とカールは正直に言った。

「今はケイおばちゃんに感謝してるよ。ボクを大事に思ってくれるお母さんの

ところに送ってくれて。じいちゃんの家はどんどん汚くなっていたしー

オイちゃんも、イマイチ頼れなかったしー。」

「うん、長く暮らしたボクのお陰で、お母さんは、『猫扱い』が上手だったろ?」

カールが恩着せがましく言った。

「そうだね、キミのお陰も大きいね。」ボクは相槌を打った。何しろ先輩だ。

本当は・・・前に飼われていたキミが、デコボコ猫だったお陰で・・・

ボクは何をしても褒められて、やりやすかった・・・のだけれど・・・・。

 

 

 

 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.370「体のないハクの物語⑧」

2021-10-02 | 日記

              nonnon日記

ボクは、カールを「懐かしい遊び場」に案内した。

そこは、大きな池の傍のひろーい空き地だ。ジイチャンが台所の側の戸の下に

穴を開けてくれて、自由に家と外を出入りすることができた時代、母さんの

シロとボク達姉弟猫の4匹で、さんざん遊んだ楽しい思い出がいっぱいの場所。

背の高い草がいっぱい茂って、草のトンネルがいっぱい。大きな木も沢山立って

いて、虫も鳥もいっぱいいて、みんみん鳴く虫とか、頭がとがった虫とか、

ひらひら飛ぶ白い虫とか、面白い生き物がいっぱいいて駆け回って遊んだ場所だ。

あの時と違うのは、地面だけでなく、空中も自由に飛び回れること。

カールはギャーと歓声を上げて、さんざん飛び回った。空も草の中も池の水の

中も、二匹で追いかけっこしたり、かくれんぼして遊んだ。

カールは目をキラキラさせて、「ボク、こんなに楽しい場所は、初めてだよ」

と言って、4枚羽の虫の背中に乗って空中を走り回る遊びに夢中になった。

ーーーーーああ、ここは昔とちっとも変わってないーーー変わったのはボクだ。

ボクは体はないけどお腹は空かないし、空中を自由に移動できる。思ったり、

考えたりも、生きていた時と同じようにできる。

ボクは何者になったのだろう?

今のこの力は、一体どこからきているのだろう?

ボクは何ができて、何ができないんだろう?

さんざんカールと遊びまわった後で、ボクは考え始めた。ーーーーーー

 

 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.369「体のないハクの物語⑦」

2021-09-06 | 日記

             nonnon日記

 ずーっと夢にまで見ていた懐かしい「我が家」がなくなっていてー

ボクはその場にしばらくへたり込んでしまった。

やがてカールが目を覚ました。「ここはどこ?」

「着いたんだよ。ボクの故郷だよ」「待ってよ、どうなってんだい?」

二人でもめていると、ボクらの気配を感じたのか、そこの家の犬が急に

庭で吠え始めた。(人間は全く気付かないのに、どうも五感の鋭い動物は、

ボクらの存在に気付いてしまうらしい。)

追い立てられた感じで仕方なく、ボクはカールを背中に背負って、隣の

「オイちゃん」の家の庭に回ってみた。

(ご飯がなくて、お腹がペコペコの時、隣のオイちゃんの家に行ってご飯をもら

えてから、度々お邪魔した。思えば、この人がいたから、ボクは生き延びられた

んだ。とても、とても感謝している。)

勝手に出入りした網戸は・・・あれ、ボクの爪ひっかけで、ボロボロに破れて

穴が開いてたのに、綺麗な網戸に変わってる! 

網戸をスーッと抜けて、カールと一緒に家の中に入ってみるとー

いた、居た!オイちゃんがいた!・・・オイちゃんは、少しまた年を取った様子

ではあったけど、足を引きずりながら、部屋の中を歩いていた。

(あの頃のジイチャンみたいだ!)とボクは思った。

「オイちゃん、オイちゃん!」ボクは懐かしくて、跳びついて足元にスリスリ

したけれど、もちろん、オイちゃんは気付かない。

「会いたかったよ、オイちゃん!」

ところが、オイちゃんは、「おかしいな、ここにあった筈だけどな・・・」

とボソボソ言いながら、何か探している最中だった・・・。

「あ、オイちゃん、眼鏡探してるな。」ボクはすぐに解った。だってあの頃も、

しょっちゅう探してたから。見回すと・・・

新聞紙の下に眼鏡の黒い柄がチラッと見えた。

「何とか新聞紙めくれないだろうか?」ボクは傍にいるカールに相談した。

「うーん、それくらいなら、できなくもないな」とカールは意外なことを言った。

見ていたら、カールはフーと息を吐きながら、手を延ばしてコチョコチョと

器用に新聞紙の端を少しだけめくったー。「スゴーイ!」ボクは目を見張った!

「ああ、あった、あった!」オイちゃんがすぐに見つけた。

「ちょうど良い風が入ってきて、眼鏡を見つけられた!」オイちゃんはニッコリ

笑って喜んだ。ボクはちょっとオイちゃんに恩返しできた気がして嬉しかった。

そして「グズな猫」と思っていたカールをちょっと尊敬した。

「やったね!昔、コップを転がす技みがいて、手先は今でも器用さ」

カールは手をコチョコチョやって得意そうに自慢した。

ボク達は「イェーイ!」と手を合わせた。(肉球がパンと鳴った。)

ボク達にもできることがあるぞー。決して役立たずの透明猫じゃないぞー。

ボクは久しぶりに明るい気持ちになれて、体の底から、力が湧いてきた。

(体、ないけど・・・)

「そうだ、カール、ボク達が昔よく遊んだ、楽しい空き地に行かない?」

ボクが提案すると、カールは、うんうん、とうなずいた。

 

 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.368 「体のないハクの物語⑥」

2021-08-30 | 日記

              nonnon日記

ボクはカールの首を噛んだまま、目をつぶって一気に北海道から九州上空に

飛んで行った。そーっと、薄目を開けると、とんでもなく怖かったけど・・・

白い雲の間を急速落下して、目指すジイチャンの家の辺りに降りた。

えらくフニャフニャしていると思ったら、カールは気を失っていた。

・・・懐かしい家・・・母さんと兄弟とジイチャンと、賑やかに暮らした家。

楽しい日々だったのに、いつか兄弟がいなくなって、ジイチャンがいなくなり、

母さんが死んで・・・

独りぼっちで、ながーい日々を暮らした家。

・・・お腹が空いて、さびしくて悲しくて・・・毎日鳴きながら眠った夜・・・。

ジイチャンと母さんの匂いのするベッド・・・。

ずーっと帰りたくても帰れなかった家にやっと帰れた。

ボクはそーっとカールを降ろして、ゆっくり辺りを見渡した。

そしてーあっけにとられて、呆然とした。

ない、ない・・・ジイチャンの家がない! 確かにここに建っていたはず!

ソテツの木も、カーポートも、日向ぼっこしたコンクリートのポーチも・・・

みんな、ない!・・・そこには、全く知らない新しい家が建っていた!

 

 

 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.367 「体のないハクの物語⑤」

2021-08-29 | 日記

          nonnon日記

ボクのお骨が骨壺に納まって棚に置かれて以来、お母さんは写真やビデオを

見ては度々泣いていた。(ボクはここにいるのに・・・泣かなくて

いいのに・・・とボクは残念に思った。)

体のないボクは部屋を自由に飛び回った。お腹も空かず、喉も乾かず、

結構楽しい!   そして先代の猫、ボクの兄貴分のカールという猫とさんざん

遊んで仲良くなった。そこである日、ボクは前からずーっと気に掛かっていた

ことをカールに言ってみた。

「自由に飛び回れるなら・・・ボクが生まれ育ってずーっと暮らした・・・

ジイチャンの家に行けないだろうか? あの懐かしい家に行って、あの懐かしい

匂いを嗅ぎたい!」 するとカールは「えー、ここを出るの?怖いよ」

「すぐ戻るから、大丈夫だよ。行ってみようよ。」

不思議なことに、目をつぶって、ウーン、と念ずると・・・ベランダの外に

出ることができた。瞬間移動だ。ボクは戻ってカールにコツを教えた。

何度かレッスンしたら、カールもできるようになった!

ボクは無理やりケージに閉じ込められて、ここに連れてこられた。

あれから冬が3回、夏が4回過ぎた。ジイチャンと母さんと暮らしたあの

家はどうなっているだろう?  行ってみたい! 帰ってみたい!

ボクはカールの首を噛んで・・・念じた・・・。

 

           

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする