犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

こどもと暮らす

2016年12月13日 | おせわがかり日誌

ふっと気づくともう師走
あれ?おかしいなこないだまで10月だったじゃないの
なんでもう12月? あと半月で新年なんてうそでしょ

10月の半ば過ぎ
二人目の姪が生まれて5日ばかり妹の家に手伝いに行っていた
入院中の妹に代わって、上の子たち(男8歳/女6歳)と、ねこ5匹(♂2/♀3)のお世話をしに

犬たちは、夫(会社と実家が近い)と、
義実家(犬に関しては全幅の信頼をおいている)に託して行った
みんなと事前に念入りに打合せしていたことが幸いし、トラブルは(ほぼ)なかった

いつ生まれるかわからないから、
10月はなにも予定を入れず、起きてはメールチェック、寝る前もメールチェック
滅多にメールをしないのだが、毎日一度は妹に具合を尋ねていた
夫、この時期殆ど会社に泊まり込んでいたのだけど、なるべく家に車を置いておいてくれた
夜中や明け方に連絡がきたら、すぐさま義実家に犬たちを預けられるようにと

どんな出産になるかは始まってみないとわからない
帝王切開になったら入院生活が伸びるかもしれないし、赤ちゃんにトラブルがあった場合もバックアップが必要
このことがわかってから、一年かけて仕事の調整をした(1か月くらい休んでも支障がないように)
長ければ途中、こどもたちがいない時間帯に、会社に行くこともあるかもしれない…
「その場合は…こうで…ああで」なんつって、電車の乗り換えなどにも思いを馳せる
いたずらにシュミレーションしてばかりいたこの一年、いよいよ本番




予定日2週間前にもなると、伯母さんはそわそわ
スーパームーンだったか、満月満潮の日(の出産は多い)があり、
この日に生まれる夢を見て、一日ドキドキして過ごした
こらえきれなくなり、妹にメール

『今日満月だけどどうなの?予兆とかないの?』

困ったのは妹で、そういわれてもないものはない
というか、そんなもん(予兆)あったらすぐ連絡するって言ってるのに、まったくもうお姉ちゃんときたらという気持ちのこもった、

「それがないんだよねー」

という返事が来た
妹も姉が手ぐすね引いて待っているので、検診に行くたび報告メールを寄越し、そして結びはいつも

「まあでも、まだ生まれるって感じじゃないんだよね」

という締めくくりであった

予定日も10日前になれば、妊婦は体を動かすだけでも大変なのに、この時期は検診続き
そしていよいよ正式に『いつ生まれてもおかしくない』時期に突入
そうなると後のことを頼まれている姉は、もう毎日確認メールを送るしかない

『おはよう、今日はどう?』
「いやまだちょっと赤ちゃん小さいのね、今生まれたら大変だなー、いつ来てもおかしくないんだけど」

『おはよう、今日はどう?』
「赤ちゃんのサイズ、あともうちょっとってかんじなんで、まだ来てほしくないんだなー、いつ来てもおかしくないんだけど」

『おはよう、今日はどう?』
「ようやく適性サイズになってきたみたい、でもまだなんだよねー、いつ来てもおかしくないんだけど」

『おはよう、今日はどう?』
「とても順調~、でもなんもないのさー、いつ来てもおかしくないんだけど」

『おはよう、ないってわかってるけど、今日はどう?』
「うーんそれがまだなんもないんだねー、いつ来てもおかしくないんだけど」

『おはよう、昨日はあんな感じだったけど、今日の所はどう?』
「ないんだなーそれがー、お姉ちゃん、なんかあったらいうから、まだ、なんもないから、いつ来てもおかしくないんだけど」

・・・そうですよねー、とかなんとかいうやりとりを繰り返しているうちに、最後の検診日

「今日は内診があったんだけど、それが刺激になってその日に生まれることがあるんだよねー、でもいまんとこ、な~んもないんだわ、いつ来てもおかしくないんだけど」

という、いつもと同じようなメールを夕方受け取り、そうかー今日もまだかー、とソファーに沈み込む




義母からメールが来て「(妹さん)どう?」と聞かれる
私が妹に聞くようにして義母からも毎日のようにメールが來ていた
こちらも事前に犬たちのもの(ごはんやゲージや薬)を預けたり、説明したり、用意周到、準備万端なのだった

『それが今日は最後の検診で、内診があったんだけど、今のところ何の動きもなく、今日はないかも、って本人が』
「そうねえ、でも私も内診したその日に生まれたから、わかんないわよ~」

ってつい昨日のことのように言う義母
思わず「・・・ってソレいつやねん!(四十数年前)」とツッコミをいれそうになるのをこらえ、

『そうですねえ、念のため、今夜は起きていようと思います』

とかなんとか無難な返事をして乗り越える

そうこうしているうち、日ハムが優勝し、日本一になった
ひいきのチームはどうもならんかったけれど、ひいきの選手がひとり三役の大活躍をして日本一になった

日本ハム大谷翔平!父親、母親、高校時代の監督が語る進化の秘密


大谷、菊地雄星、マエケン、森友哉、ダルビッシュの高校時代の号泣。


160キロ右腕・大谷 決勝で15奪三振も・・・


雄星も大谷くんも(藤浪も)もうずーっと応援しているので、私にとってはこの日はスペシャルデイ
おそらく来オフにメジャー行きとなるであろう大谷翔平が、はじめて日本一になった夜
・・・お祝いしたいじゃないか

『・・・飲んじゃっても・・・大丈夫だろうか』

電車はそろそろとまるし(念のためやめといたら、自分?)という気持ちがないこともなかった

・・・でも・・・大谷君が・・・日本一だもの

夜のうちに祝優勝生ビールを飲んじゃって、アルコールが抜ける明け方まで起きていればいい
今日は検診(内診)で刺激があったから、いつ来てもおかしくないから、夫もそれで生まれたし

その日は、連日泊り込みだった夫が入浴のため帰宅していた
日の出前には会社に戻る予定となっていて、しかし妹からはいつ連絡が来るかもしれないから、会社までは私が車で送っていくことになるのかもしれない
明け方まで粘ってみたが、妹から連絡はなく、なんだかどんより疲れてきた

「俺、車で行くよ、疲れたでしょ、ずっとそんなんで」
「でも」
「もう朝だし、なんかあったら、実家に犬たち迎えにいってもらうように言うよ」

そう言って、5時15分くらいに夫が出て行った
風邪は絶対引けない(新生児 has come)ので、湯ざめを避けるためお風呂は入らずにいた
寝る前に入ることにしていたけれど、入ろうかしら? でももう瞼が重い
からだもずっしりと砂袋のように重い(それはいつもじゃなぃ×Zisの…)…歯磨きも明日でいいや
戸締りをして、念のためまたメールをチェックして、なんにもなくて、よし、大丈夫 眠る
前の日もろくに寝てないから、すぐ深い眠りに落ちる
…ほんとはお風呂に入りたかった…歯磨きもしたかった…けどもう力尽きた
化粧をしたまま、泥どろとした眠りに落ちていった

「ピンポーン♪」
「ドン・ドン・ドン!」
「●●さん、●●さん(わたしの名前)」

瞼がゆっくり開く
・・・朝日・・・晴れてる
誰かが私を呼んでい・・る・ね
時計を見る・・8時・・はちじ・・・朝の8時
うちは集合住宅
入口はオートロック
なのになぜ玄関の扉が・・・
誰かの拳で叩く音がするの・・・?

朦朧としながらインターフォンをつかむ

「・・・はい、あの、どちらさ(ま)・・・」

『生まれるわよ!』

「・・・ハ?」

『だから生まれるのよ!○○ちゃん(妹)、赤ちゃん生まれるのよ!●●さん(わたし)!』

「・・・え・え・え・え・えー!」

血が沸騰して頭のてっぺんから湯気が出た

「あのその、ひどい恰好をしていますので、ちょっとお待ちください」

鏡で自分を見る
Tシャツに短パン
化粧は落としてない
お風呂にも入ってない
ものすごい寝癖
おまけに歯磨きもしないで寝たね そうだよね

昨日掃除はしたけども、昨日は昨日、今日は今日
久しぶりに義母が部屋に入るというのに、部屋はごちゃごちゃ、おまけに犬の毛だらけ、もちろんホコリもある

ああだれか・・・教えてくれ・・・わたしはいったい、姑が玄関の扉一枚隔てたところに立っているというこのとき、何から手を付けたらいいのか・・・

うろうろ、うろうろ・・・ハ!・・・そうだ・・・生まれそうなんだ・・・こうしちゃいられない

「ボッ!」と火がついて、「もういいや!」と義母を招き入れる
(いまさらそんなことでなんとかなるような関係ではないのでまあいい・・・いいとしようじゃないか)

「夜明け前に◎◎(夫)から電話あったのよ、家に行ってくれって、あの(夫が出て行って私が寝た)あと、すぐ電話があったって」

かいつまんで(着信履歴やメール履歴も合わせて)説明すると、こうだ
私が寝落ちたあとすぐに妹は産気づいた(やっぱり来るのね内診日)
そして姉(私のことですね)の電話を鳴らした 鳴らした 鳴らした・・・出ない
妹は母にも連絡した

「陣痛が来た、おねえちゃんが電話に出ない」

母からメールが来ていた

「妹を頼みます」

返事はむろん、ない
妹はメールを寄越した

「おねえちゃん、生まれそうです」
「おねえちゃん、連絡ください」
「おねえちゃん、病院行きます」
「おねえちゃん、ついたらもうわたし連絡とれないので〇〇(義弟)に連絡して…」

そして義兄に電話するとすぐに出た
義兄は仕事中だった
妹は陣痛の痛みに耐えながら、これこれこうで姉が電話に出ない、メールをしても連絡がとれない、と訴える
夫は答えた

「あー、今いちばん、起きないね」

そこで実家へ連絡を入れてテキパキと(犬の移動のこと)手配、

「絶対起きないと思うからもう直接行って」

と、鍵を渡したのであった

頭を抱えて「なんで今日!これまでずーっと気を付けていたのになんで今日!!!」と叫ぶと、義母は笑った

大急ぎで着替えて、エントランスで待っている義父のところ(車)へ犬たちを抱えて行った
犬たちと別れて(長期で)生活するのは初めてなので、もっとしめっぽくなるかなとも思ったのだけれど、そんな余裕も隙もなく、明るく見送る




部屋に戻り、もうスーツケースに必要なものは詰まっているし、夫も着替えから何から一揃いさっき持って行ったばかり、今すぐにでも行ける(準備さえできてれば)

非常時だ、ええい、このまま行っちゃおうかな?

そういう気持ちがチラっと芽生えたのは事実だけれど、義姉がこんなだらしない姿で行って、そのだらしない義理の姉に子供たちを預けなきゃならない、預けるしかない父親の気持ちってもんはどうだ?
私は黙って服を脱ぎ、剛速急でシャワーを浴び、化け、厳重に火の用心&戸締り(+セコム)をし、濡れた髪のまんまバスに飛び乗った
電車で揺れながら、ああ結局寝不足でこのまま明日からは5時起きで小学生と幼稚園生と暮らすのだ、眠い、ぐっすり寝てから行きたかった・・・
といいつつ、それでもあれほどけだるかった疲れもなぜか心地よく、強い日差しが差し込む車両で「日焼け止め、塗ってなかったね・・・」と思い出す

そうかー、今日かー(多分)、今日生まれるのかー
どんな気分だい?いままでずっとあたたかな寝床にいて、外に出てきて、君にはこの世は、どんな世界に見えるんだろう
そんなことを考えながら、夏の空のような輝きをしている10月の空を、雲を眺めていた
その日のうちに赤ちゃんは生まれ、母子ともに健康で予定通り5日ほどで退院するという
私は子供たちと(猫と)5日間の濃密な時間を過ごし、
(聞いてはいたけれど小学生男子登校直前に「連絡帳にハンコ捺せ」とか「あのさ、きょう、○○持っていかなくちゃいけないんだけど、ある?」とかいうんだな)
無事に妹と姪の退院を見届け、帰宅して荷物を置いて、会社へ行った

* * * * * *

わたしが6歳の時に、妹が生まれた
当時は大阪で暮らしていたため、ちかくに身内はいなかった
そのころの世間は職場も学校も週休2日ではなかったし、父が私の面倒を見ることなどどだい無理な話で
(いてもそのころの『父親』に小さなこどもの面倒が見れたかどうか、という疑問はあるけれど、つまりそういう時代だった)
『大阪』という魅力もあって、旅好きの祖母(母方)がきて、面倒を見てくれることになった
入院が近いというので、母が前髪を切ってほしいと祖母に頼むと、自分で(素人に)頼んだくせに仕上がりが気に食わなくて、ぶんむくれて怒っていた(祖母はケラケラ笑っていた)
祖母は時代劇が好きで、夜はいつもテレビで時代劇を見ていた
その内容について、お風呂上りの母にひとつひとつ報告し、母が生返事でそれに答える
そのやりとりを聞いているのも好きだった
黙っていたし、そんなそぶりは見せなかったけれど、祖母が家にいるのはなんともいいな、と感じていた
私が祖母に会えるのは年に一度、お盆の時だけ
それも大勢いるいとこたちの(孫たちの)ひとりとしてだったから、このままずっといてくれないかな、と思っていた
赤ちゃんが生まれてからも、ずっと、ずっといてくれたらいいのに
おばあちゃんが帰らなければいいのに

母が入院してからは、幼稚園の送り迎えをしてくれた
当時は交通も案内も不便で、知らぬ土地で難しかったろうに、時々、病院へ連れて行ってくれた
あれは1月のはずだったけれど、近所の河原でヨモギを摘んで、草餅を作ってくれた
そのときに、ヨモギと、似てるけれど違う草の、完璧な見分け方を教えてくれた
髪を結ってくれた
それがとても痛かった
でも痛いとは、一言も言わなかった
鏡を見ると、左右のバランスが悪かった
それを見てふたりでケラケラ笑った
そんなことを一気に思い出していた

「おねえちゃん、実は、三人目ができてね」

と妹に打ち明けられた時のことだ
『返す時がきたんだな』と思った

あの経験がなければ、私の基礎はなかった
祖母のくれた非日常は、祖母の持っていたやさしさ、豊かさ、あたたかさを、私に分け与えてくれたように思う
今度はそれを、甥や、姪に、返す
そしていつか、甥や姪は、自分より小さな、大切な誰かに、返すのだ

このことの直前に『永い言い訳』という映画を見ていた
シチュエーションは違うけれど、主人公と同じように、こどもたちの世話をした
兄妹ゲンカはもちろんだが、三人きりの夜に強い地震があったり、まるで映画と同じ、というようなことがいくつかあった
代打としての仕事をこなしながら、つくづく痛感した

『この子たちの母親がこの子たちの人生からいなくなったら大変だ』

こどもの日常とは、そういうものだ


* * * * * *


見るたびに違う格好で時には上下逆になっていたりする、小さな兄と妹の寝姿
はっきり寝言を言ったり、突然けらけら笑ったり(寝言の一環)、そういうのを聞いてびっくりしたり笑ったり
ふたりの寝姿を見守りながら、明日学校や幼稚園に着ていく服を選び、それぞれの枕元に積んで、寝相を治す
起こさないように、そっと

朝はふたりともたいてい5時過ぎに目覚める
川の字になって寝ているので、ふたりして笑いながら、ごろごろ転がって起こしに来る
起きたらすぐにお着替え、たっぷり時間があるので、彼らは子ども部屋で遊んだりしている
ごはんを作って食べさせてる、はみがきして、支度して、さあいってらっしゃい!と送り出したら
「ティッシュがない!」と騒ぎだし、大人用のを持たせようとするといやだと首を振り、じゃあ妹のを持っていけというと困った顔をする
なんとか男の子用のを見つけだして「ほら」と渡すと、ありがとう、もそこそこに、バッタのようにすっ飛んで行く
男の子の朝はいつもそんなかんじ 女の子の方はもっとしっかりしている

しかし私たちが小学生の頃と違って、学校や幼稚園とのコミュニケーションが蜜である
交換日記を交わすように、連絡帳でやりとりを重ねる 毎日、毎日くりかえし
明日は○○持たせてください、今日はこんなことがありました、エトセトラ

妹がバスで帰ってくるころ、兄も学校から帰ってくる
なぜか毎日バス停で落ち合うことになる
こどもたちは横断歩道を歩くのが決まりなので、家とは反対側の、つまり甥は歩いてきた道をもどるかたちで、横断歩道へ向かってわたり、家に帰る
道すがら、ふたりが同時に言い出す、こんなことがあった、あんなことがあった、というのを、しっかり聞く
話半分で聞いていると「ねえ、おばたんちゃんと聞いてる?」というツッコミが入る

帰ったら宿題をしなくてはいけない約束なのだけれど、兄のほうは友達と遊ぶのが楽しい時代、
幼稚園のバス停までSLのような勢いで走ってきて、真っ赤なほっぺで息を切らし、

「おばたん、友達と約束したから、遊びにいってもいい?」

宿題さえすればいいので、帰ったら必ず今日のうちに済ませると約束し、それならいいよといって帰宅
男の子はものすごい勢いで、ゲームと漫画と水筒をリュックに詰め込み、出て行ってしまう

妹は、おやつの焼き芋(大好き)をにこにこしながら食べている

「やきいも、おいしいね~」

食べてるのあなただけですよ(ニコニコ)
大好きなEテレを見てケタケタ笑ったり、「この子は〇○なんだよ」と説明してくれたりする
5時のサイレンが鳴って(出かけた兄が帰ってくる約束の時間)10分ほど超過すると、

「おまえはボーリングの球か!」

と突っ込みたくなるような勢いで男の子が帰ってくる
戻ってきたら必ずやること、と約束していた宿題は、ゲームがしたくて気もそぞろ
しぜん、漢字練習の字は乱暴に、音読もそれはそれは雑になり、叱られてなげやりに、それじゃダメやりなおし、鬼のように再読を迫る

「だってえ~、かさじぞう、はじめてなんだから~」

甥は泣きそうになっている だめです そんな早読みじゃ○はあげられませんから
男の子は、ぷーっとふくれて、うつむく

その間にも、やたら身体能力のよい姪は、壁と柱を伝って長押につかまり、ブンブンブン、振り子宜しく体操の内村選手と化す
『ひえーーー!』という間に飛び降りて、着地(Yポーズ)、思わず『10点!』と拍手しそうになり、違う違うそうじゃないって、言ってる間にもういない
お風呂は二人で入ってもらって、その間に片づけ ねこのうん○をとったり、おしっこシートをとり変えたり

「ねえ、おばたん!おばたん!見て!見て!」

と叫ぶのでお風呂場に見にいくと、そのやたら身体能力の高い姪が、鼻をつまんだかと思ったら、ずぶり、ともぐり、湯船の中で、くるくる、くるくる、でんぐり返しをする
そしてざばーと上がって、「きゃははははは!」と笑うのだった そんなだから夜は添い寝をせずとも、ぐっすりだ





「わーそれ食べたーいだいすきー!」というから作ってみれば「おばた~ん、これ、残していいー?」とだまし、
「明日持っていくものないね?宿題終わったね?」と確認しすべてクリアしたかと思っていると「おばたんプリントにハンコ捺してないじゃない」と言い出す
・・・んもう、こどもって!

そんな暮らしにやっと慣れたころ、妹たちの退院の日が来た(そうなると思ってた)
夫婦のお昼ごはん(チャーハン・サラダ・生姜焼き)をつくり、家族みんなの夜ご飯(カレー)をつくりおき、家を後にした

こどもをめぐる日常は、ほんとにいろんなことがあって、一日として同じ日はない
本当はつまびらかに書き記したい気持ちもあったのだけれど、少しずつその日々は遠くなり、記憶は心の奥のほうに、塵のように積もっていく
もう、もとの形には戻らないし、 このままにしておきたい
時々、祖母とのことのように、何かをきっかけに鮮明に思い出したりして、笑ったり、懐かしんだり
それでいい

ひとつだけ
最初の夕方に、冷蔵庫にあるはずの麦茶のパックが見つからず、明日学校や幼稚園に持っていく麦茶が作れない!と焦り、こどもたちに留守番を頼んで、買いに行った
その家からはどこへ行くにも歩いて15分以上はかかる、陸の孤島のようなところなのだが、一つ目に頼りにしていた店になく、遠いコンビニまで歩いてやはりなく、結局スーパーへ行ってやっと買えて、バスで帰ってきた
バス停からも距離があるので、とぼとぼ歩いていくと、ショールをかぶった姪っ子が、玄関先に立っている
赤ずきんちゃんみたい ふくれっつらである

「おばたーん、もう、おそいじゃなーい、心配したのよー」

そういって、ぎゅーっ、と抱きついてきた

「もーう、もーう」

おなかに頭突きをかまして・・・いやおでこをぶつけてくるので、ごめんごめん、と、頭を撫でて、ぎゅー、っと抱きしめた
中からは、ぴこーん、ぴこーん、と、甥っ子がゲームに興じる音
奴の気配からは、制限時間のない(親がいるときは30分という厳しい決まりがある)自由な夜に狂喜乱舞、この隙に!この隙に!という気概が伝わってきた
家に入り、麦茶パックをしまおうと冷蔵庫を整理したら、奥のほうから、使いさしのが出てきた
どーっと疲れる・・・でもいいの そのおかげでスーパーへ行き、お赤飯を買えたから(誰も食べなかったけど)



そしてその日はやってきた
義弟と病院へ、妹と、姪2を迎えに行く
姪2にあうのは2度目で、2日前に会ったときより、ふっくらしているようだった
事務手続きが終わるまで一緒にいて、終わったら、最寄の駅まで送ってもらった

じゃあね、またね

無理しないでね

そっちもね

ガラガラガラ、とスーツケースを転がしながら電車に揺られてバスに乗り継いで家に戻り、仕事道具を持って、会社へ行く
またいつもの生活に戻ってきた
犬たちも家に戻った

それから予定していた「今年のうちにしたいこと」をすべてやりきった
アテローム再発除去手術をしてもらい、予後順調で抜糸⇒様子見の通院、あと1回行けば終わり
給湯機、コンロ、浴室乾燥機の交換工事の打合せ⇒工事完了、勧められて電力会社の変更も行う
公(会社の)私(自分ちの)ともに保険屋さんと打ち合わせ、複数の保険の更新、完了
粗大ごみも家電ゴミも出したし、開かずの部屋の掃除は大体終わった
タイヤ交換においては偶然たまたま半月前予約した日がことしの初雪前日だった
夫は「なんて日だ!」とお気に入りらしいアレで『偶然も実力のうち』と胸を張る妻を褒めたたえた(なんかちょっと違うだろうという気持ち)
加えて「わたしもうだめ」と言って倒れた炊飯器の後継器とほかに必要だった家電や消耗品を買いそろえた
今年の汚れ今年のうちに!じゃないけれど、何年も課題だったことをついに今年やり遂げたというような達成感もある
仕事面でも順調で、年末調整も終わり、源泉徴収票は渡し、還付金も振り込んだ
あとは届いたソフトをふたつ更新したり、イレギュラーなことがいくつかあるにせよ、もうじきいつもの業務スケジュールに戻れる




もう5時に起きるのではなく、5時に眠る生活に戻っているのであり、こどもの気配はどこにもない
その代わりといってはなんだが、ふとめの犬と、老犬に迫られ、幸せに、毎日面白おかしく暮らしている