特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2-21・円運動で時間遅れが測定できる理由

2023-10-28 02:28:49 | 日記

円運動している時計は円運動の中心に置かれた時計よりも時間の進み方が遅くなる。

まあこれは確認された実験事実です。

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円運動は連続横ドップラー状態である、という所から始めましょう。

「その2-20・横ドップラーシフトの測定について」で指摘したように「運動方向と光が直交する条件で光を観測する事」が横ドップラーシフトの測定では必要になります。

そうしてこの条件は「円運動の中心と円運動しているもの、それが観測者であれ、光源であれ、いずれの場合も自動的に満たされている事」になっています。

もちろん光源が円運動している場合は、観測者は円運動の中心に立ち、いつも光源の方を見ている様に自転している必要があります。(これは通説の計算条件に相当します。)

他方で観測者が円運動している場合は、観測者は常に円運動の中心に置かれた点光源を見ている事が必要です。(これはアインシュタインの計算条件に相当します。)

さてそのように設定できるならば、それは横ドップラーシフトで考えられている2つの場合「光源が動いて、観測者が静止している場合=通説の条件」と「観測者が動いて、光源が静止している場合=アインシュタインの条件」を見事に再現している事になります。

 

但しそこで問題になる事は「直線運動と違って、円運動では円運動している対象物に常に横Gがかかっている」という事です。

そうしてその「発生している横Gが円運動している対象物の時間の遅れに影響を与えるのではないか?」という疑問があります。

というのもよく言われている様に「重力は時間の遅れを引き起こす」という一般相対論の結論があるからですね。

さてそうなると「横Gは時間の遅れを引き起こすのか?」という事を確認しておく事が必要になります。

もし「引き起こす」というのであれば「その効果を考慮しないと円運動での時間の遅れを正しく計算する事が出来ない」という事になります。

しかしながら幸運な事に「横Gの存在は時間の遅れを引き起こさない」という実験結果が出ています。(注1

さてそうであれば我々は安心して「円運動の周回速度Vを使って、あとは特殊相対論が主張している式sqrt(1-V^2)に従って円運動している対象物の時間の遅れを計算できる」のです。

 

さてしかしながらそうやって計算出来た時間の遅れをどうやって確認したらよいのか、というのが問題になります。

円運動している対象物からどうやって時間遅れの情報を引き出すのか、という話です。

そうしてその時間遅れの情報を引き出すのを光を使ってやると、それがまさに「横ドップラーシフトの測定」となるのです。

 

さてそれで「光源が円運動している場合」では「光源の物理プロセスが円運動の中心から見ますと時間が遅れて見える」のです。

その結果として「原子、あるいは原子核から出てくる光の周波数が落ちているのが観測される」のです。

さてその時に「どの時点で光の周波数が落ちているのか」といいますれば「原子、あるいは原子核から観測対象となる光子が分離した時点」となります。

あとはその光子が中心にある観測装置にむかって光速で移動して来るだけです。

そうであれば中心にある観測装置は周波数が落ちた光子を観測する、つまりは「赤方偏移した光子を見る」のです。

そうしてその赤方偏移の程度から「円運動している光源の時間の遅れが分かる」のです。

さてそうであればこの方法では「2つの時計の間で時刻合わせをする必要がない」つまりは「ランダウ・リフシッツの一般解のしばり」からは自由になっているのです。

 

また逆に「観測者が円運動している場合」では「観測装置の時間が遅れます」。

そうしてその観測装置の時間の遅れを、基準の周波数を保っている光の周波数を測定する事で、逆に観測装置の時間の遅れが分かる、と言う次第です。

つまりはこの場合は観測装置は「青方偏移を観測する」のです。

そうしてこれはアインシュタインが導出した横ドップラーの式に適合しています。

 

さてそうであれば同じ円周上をお互いが常に相手を見るようにして置かれた光源と観測装置では両方ともに同じように時間が遅れる為に、観測された光には赤方偏移も赤方偏移も観測されず、基準の周波数が観測される事になるのです。

さてしかしながらその時に光源が大きな円周上を動き、観測者が小さな円周上を動く、ただし両者の角速度ωが等しい場合は、大きな円周上を動く方の周回速度が大きいのでそちらの時間の遅れの方が小さな円周上を動く観測者の時間の遅れよりも大となります。

さてそれで、これがまさに静止衛星と地上に暮らす我々との間で常に起こっている「時間遅れの検証実験」になっている理由です。

あるいは「視線方向の相対速度がゼロであるのに、静止衛星の時間が遅れる理由」です。

それは「静止衛星と我々が赤方偏移を示す横ドップラーの状況になっているからである」と言えます。

 

さてそうであれば2つの慣性系にそれぞれおかれた光源が円運動する横ドップラー測定装置では2つの装置共に赤方偏移を観測するのですが、その値にはずれが生じる事になります。

なんとなればその2つの円運動横ドップラー測定装置は異なる固有速度を持つ2つの慣性系に置かれているからです。(注2

 

注1https://archive.md/i5aGs

『CERNミュオンストレージリングで、正のおよび負の相対論的な(γ = 29.33)ミューオンの寿命が測定され、結果は以下の通りです:τ+ = 64.419 (58) µs、τ- = 64.368 (29) µsです。

正のミューオンの値は特殊相対性理論および静止状態での測定寿命と一致しています。

アインシュタインの時間拡張因子は、95%信頼区間で2×10^-3の相対誤差で実験と一致しています。

特殊相対性理論を仮定すると、μ-の平均固有寿命はτ0- = 2.1948(10) µsとされ、これはこれまでに報告された中で最も正確な値です。

この値が以前のτ0+の測定値と一致することは、ミューオン崩壊における弱い相互作用におけるCPT不変性を確認しています。』

円運動の周回速度が(γ = 29.33)である場合のミューオンの寿命測定結果です。

光速の99.94%まで加速したミューオンの寿命は特殊相対論による時間遅れの計算結果と「95%信頼区間で2×10^-3の相対誤差で実験と一致している」という結果です。

つまり「ぐるぐるまわりによる横Gの発生はミューオンの寿命の延びには影響を与えていない」という事を示しています。

ういき: https://archive.md/UTWGG :の「時計仮説 - 加速の影響の欠如」の説明によれば上記結果は

『Bailey et al. (1977) 粒子は最大約 10^18 Gの横加速度を受けました。結果は同じであったので、加速度は時間の遅れに影響を与えないことが示された。』

と解釈されている様です。

注2:円運動による基準慣性系の検出については

円運動を使った基準慣性系の判定

その2・ 円運動を使った基準慣性系の判定

を参照願います。

円運動による時間の遅れの検出を光を使って行うと「横ドップラーの測定」となります。

 

追記:上記本文の主張は英語版ういき: https://archive.md/N21ga :の「一方の物体が他方の周囲を円運動する」と「ソースとレシーバーの両方が共通の中心の周りを円運動します」で説明されている内容の再確認、あるいは別解釈でもあります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/RdlBE