前回と同様に人工衛星の時間のずれ(=遅れ あるいは進み)についての以下の計算結果を参照します。
人工衛星の時間のずれ(1) : https://archive.ph/QVDUz
人工衛星の時間のずれ(2) : https://archive.ph/bMR8r
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さて今度は2台のISSが登場します。
それで今飛んでいるのをISS①、次に飛ばしたのが(=宇宙で組み立てたのがISS②)です。
さてこの2台の宇宙ステーションですがほとんど同じ高さで同じ軌道を描いて(=地球に対する周回速度は同じで)、但し進行方向は真逆で飛んでいます。
そうでありますから時々ニアミスをおこします。
しかしながら軌道計算が正確ですからほぼ5mの間隔での「高速すれ違い」となります。
さてこの時にお互いに光を出し、またお互いに受光した光を分光測定します。
つまり「お互いに横ドップラー効果を測定する」のです。
さてそれでは問題です。
ISS①とISS②は特殊相対論の従来解釈通りに「時間の遅れはお互い様」であって、両方のステーションはそれぞれが相手の出した光が長波長側にずれる=レッドシフトを観測する事になるのでしょうか?
アインシュタインとミンコフスキー、そうして実はランダウとリフシッツも「そうなる」と言います。(注1)
その理由は「この2台の宇宙ステーションがすれ違うわずかな時間の間は2台のステーションは共に慣性飛行をしていると見なすことが可能であるから」ですね。(注2)
つまり「2台の宇宙ステーションが慣性飛行しながらすれ違う」という状況にあり、従って特殊相対論が予想する時間の遅れの発生が観測できる、という訳です。
そうであれば2台のステーションに立つ観測者はそれぞれが「こちらが静止していて動いているのはお前の方だ」と主張する事が可能となり「時間が遅れているのはお前の方だ」とお互いに主張できるのです。(・・・と言うのが従来の特殊相対論での一般的、歴史的、伝統的解釈です。)
その結果は 英文のういき「相対論的ドップラー効果」
https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Relativistic_Doppler_effect?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc
の「受信者は、ソースが最も近いポイントにあると見なします」にある図3の状況に相当します。
そうであればこの2台のステーションはお互いに「お前の時間が遅れている、と言わなくてはならない」=「お互いにレッドシフトを観測しなくてはならない」という事になるのであります。
さて、しかしながら一般相対論の解であるシュバルツシルト解を使って、人工衛星の固有時を計算するとISS①とISS②は同じ値となります。
つまりISS①とISS②は地表にある時計に対しては遅れているのですが、その遅れ方は2台の間では相違がない、と言う事になります。
そうであれば2台のすれ違う宇宙ステーションはたしかに慣性飛行とみなせる状況ですれ違い、「受信者は、ソースが最も近いポイントにあると見なします」にある図3の状況を再現しているのですが、何故か横ドップラー効果は検出されない、と言うのが一般相対論の結論となります。
さあ大変です。
アインシュタインとミンコフスキー、そうして実はランダウとリフシッツの見解でもある、「時間の遅れはお互い様」が一般相対論によって否定されてしまいました。
まあ状況はそんな所でありますが、当方の見解としましては「当然、一般相対論もち=シュバルツシルト解持ち」であります。
そうであれば「横ドップラー効果は地球とISSとの間に存在し、2台のISSの間には存在しない」というのがこの宇宙のきまりとなります。
注1:ランダウとリフシッツの主張(=時間の遅れはお互い様)については後日、詳細に検討する事と致します。
注2:地球の重力圏内の話であるから、重力の効果を考えに入れる必要があり、したがって特殊相対論での計算はなりたたない、という反論が聞こえてきそうです。
しかしながら地上での粒子加速器による時間の遅れの検出実験も地球の重力場の中で行われておりますが、その結果は特殊相対論の計算結果を支持するものになっています。
つまり「地球の中心から同じ位置にある(=同じ標高にある)、慣性運動をしている2つの時計を比較する場合は地球の重力場がもたらす時間の遅れ効果を考慮する必要はない」と言う事になります。
追伸:地球がからむと特殊相対論の従来解釈=「時間の遅れはお互い様」が成立しなくなる状況と言うのは宇宙から飛来するμ粒子の寿命観測の場合にもあてはまります。
これは「地球に右から飛来するμ粒子①の寿命も左から飛来するμ粒子②の寿命も同じ値をしめす」というものです。
この場合も従来解釈によれば「μ粒子①の立場ではμ粒子②の寿命の方が遅れる=長くなる」と言う事になり、また逆に「μ粒子②の立場からはμ粒子①の寿命の方が遅れる=長くなる」と言う事になります。
しかし実験事実は「μ粒子①とμ粒子②の寿命は同じ」となります。
さてこれは地球と言う存在がμ粒子①とμ粒子②の慣性飛行に影響を与えた結果でしょうか?
それとも地球の重力場の影響ですか?
いいえ、ただ単に「時間の遅れはお互い様」という特殊相対論の従来解釈が間違っている、と言うだけの話です。
追伸の2:2台のISSが宇宙でお互いに近づきつつすれ違う状況というのは、実は地上で実験する事が可能です。
英文のういき「相対論的ドップラー効果」
https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Relativistic_Doppler_effect?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc
の「共通の中心の周りを円を描くように動くソースとレシーバー」の実験の変型判を行えばよいのです。
ういきの説明の実験ではソースとレシーバーが同じ方向に回転していましたがこれをお互いが逆方向に回転させればOKですね。
それでこの場合、ソースとレシーバーがすれ違う時に横ドップラー効果を測定すればよろしい。
そうすればこの場合は横ドップラーが現れていない事が確認できます。
そうしてその状況はまさに宇宙で2台のISSを使った実験の再現になっています。
さて、「何故横ドップラーが観測されない」と言い切れるのでしょうか?
従来の特殊相対論の解釈では「横ドップラーは観測される」となるはずです。
お互いに相対速度Vをもって接近しつつあるソースとレシーバーは特殊相対論の従来解釈に従ってレシーバーはレッドシフトを観測するはずですね。
それでその答えは「1つのオブジェクトが他のオブジェクトの周りを円を描くように動いている」の図5(a)と(b)にあります。
そこで説明されている事は「中心のまわりに円運動しているオブジェクトの時間が遅れる」であり、そこでは言及されてはいませんが「その場合の時間の遅れる量は回転方向に依存しないから」です。
つまり「右回転でも左回転でも、回転速度が同じならば同じ量の時間の遅れが発生する」のです。
さてそうであればソースとレシーバーが一つの中心のまわりにお互いに逆方向に回転しながらすれ違ってもその時に発生しているソースとレシーバーの時間の遅れ量は、回転中心に置かれた時計を基準として同じ値となり、従って横ドップラーは観測されない、と言う事になるのです。
ちなみにういきが提示している式5を見ますと、「上記逆回しすれ違い実験でR'=Rの場合はドップラーシフトは観測されない」と暗にういきは認めている事になります。
すれ違いですから式5の分母と分子のωに入る値の符号は逆になりますが、ω^2 で代入されますので、符号のプラスマイナスは関係がなくなります。
そうしますと f'/f =1(=この場合はドップラーシフトしない) が答えとなります。
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