河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2580- ルル・スイート、アルテンベルク、林正子、マーラー4番、リットン、新日フィル、2018.6.29

2018-06-29 23:29:32 | コンサート

2018年6月29日(金) 7:00-9:15pm トリフォニー

ベルク ルル組曲  4-9、4、3、4、5-2
 ソプラノ、林正子

ベルク アルテンベルク歌曲集Op.4  2-1-1-2-3
 ソプラノ、林正子
Int

マーラー 交響曲第4番ト長調  16-9-19-9
 ソプラノ、林正子

アンドリュー・リットン 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団


とても美しい音で奏でられた3演目。雲の絨毯に乗っているような心地よい演奏にどっぷりと浸かる。

ルルはシーンの切り出しが結構長いもので聴きごたえがある。緊張感のある音楽ドラマ、30分あまりのドラマチックな音楽に聴き手のテンションもあがりっぱなしになりました。
リットンの作り出す流れは見事なもので、どの小節もまたどの一つの楽器もでこぼこすることがない。オーケストラがまるで一つの生命体のようだ。歌う弦、タップリとこくのあるフレージング、ハーモニーが命のウィンド、ブラス。見事なコントロールだ。抑制の美学なのかはたまた良識ある節度なのか、オーケストラの面々が一つのものを目指して作りこむアンサンブルは意識された作為とは別世界の美しさがある。意識が昇華されている。ルルがこれだけ美しさに傾斜していくと、その柔らかい音質と相まって身もだえがしてくる。
ソプラノの林さん、声に深みがあってステージの奥から、そして上から迫ってくるパースペクティヴな佇まいが素晴らしい。歌いくちも余裕ですな。ルルでは出番が少ないですけれども本格派の歌唱、満喫しました。

2曲目のアルテンベルクは10分に満たない。始まったと思ったらすぐに終わってしまう歌曲集で、味わっている暇がない、エキスのみで作り上げた極度にピュアな音楽、このような音楽を声で表現するには正確性の点で特に難しそうだ。膨大な楽器群による多彩な響き、それの一角を成すように聴こえたり、さえざえとした主張の歌いまわしだったり、そこはかとなく感じさせるシャープな現代性が垣間見えたりと、林さんの自在な歌にはほれぼれする。
それにしても、詩は詩としてもやっぱり短い。5曲を2回歌うというのはどうだろうか。


前半2曲のベルク、そして後半はマーラーの4番。林さんは全部に登場。

この4番はリットンがこのオーケストラに念入りに作りこんだものがたくさん聴けた。主張というよりも正しい演奏といった感が強い。ルルと同様、ひとつのインストゥルメントが決してでこることがなくぼこることもない。アンサンブルの一つの極致に到達している。オーケストラメンバーの気持ちが同じ方向を見て一つになっているなあ。練り上げられたアンサンブルの強弱バランスがお見事。このオケ独特の柔らかめのウェットな音色が曲想に似合っている。
シンクロしたアンサンブルはエンドフレーズの末梢神経まできっちりとおよんでいて、スパッとした切れ目は全員一致の見事さ。正しさが末梢まで行き届いているだけと言えばそれはそうなのかもしれないが、よく、聴こえてくるんですよ、そういったあたりのことまで。リットンマジックと言いたくなる。

クラリネットとオーボエのベルアップはアンカウンタブルなほどで、見た目も音も効果的。主張する音がウィンドのバランスの中にあるというのは驚異的。常日頃の室内楽シリーズで培われたものなのかもしれない。オーケストラの特質かもしれないしリットン技なのかもしれない。考え出すときりがないが、お見事な結実だったと言いたい。

こんなタッチの4番だった。小刻みなリズムと憧憬が交錯する初楽章と2楽章、一筆書きのような夢見る音楽に全てを忘れる。緩徐楽章は祈りのように聴こえてきた。奏者全員が祈っているようだった。一つの楽器によるモノローグのようにも聴こえてくる。実に見事な深いため息。
林さんは終楽章の最初の音が出たところで登場。ベルク同様の見事な歌いくちはマーラーとベルクの音楽の違いを感じさせてくれる。
繰り返されたあとの最後の節(せつ)は安定調でグッとテンポを落とし、噛みしめるような歌となり、オーケストラがその歌に絡み合い、えも言われぬ美しさの中、静かに消えていく。
おわり


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