河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2464- ベトソナ、テンペスト、31、チャイコフスキー、ドゥムカ、大ソナタ、デニス・マツーエフ、2017.12.9

2017-12-09 22:34:05 | リサイタル

2017年12月9日(土) 2:00pm 小ホール、武蔵野市民文化会館

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第17番ニ短調テンペストOp.31-2  8-7-6′
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110  6-3+10′
Int
チャイコフスキー ドゥムカ ハ短調Op.59  7′
チャイコフスキー ピアノ・ソナタ(グランドソナタ)ト長調  11-8+3+6′

(encore)
リャードフ 音の玉手箱  2′
シベリウス 練習曲作品76-2  1′
ラフマニノフ 前奏曲作品32-12  2′
グリーグ 山の魔王の宮殿にて  2′
マツーエフ 即興  5′

ピアノ、デニス・マツーエフ


シーズンの演奏回数が多くて内容もタフといった印象が先に来てしまうマツーエフですけれども、ベトソナは殊の外、落ちついたものでした、最初は。

テンペストは幻想的なプレイで特に1,2楽章の静謐に傾斜していくようなおもむきは味わいがあった。キラキラ輝く水際立った音で、ピアノが物体で作られていることを忘れさせてくれる。アルペジオ風味が割とあって、また四声のうちバスの浮き沈みが冴えている。強調は無く短めに顔を出すがなんだか力が見え隠れするものがある。
鍵盤を押した後、さあっあと腕を上にあげる仕草もあまり無くて、一つ一つの音をじっくりと弾き込んで聴かせてくれる。
終楽章はキラキラワクワクノリノリな空中浮遊感。16分休符のあとの4つの音の流れ自然でした。そしてやや激しさを増しながら最後は弱音で急降下し消え入るように。ピアノさばき冴え渡るマツーエフ。

ワクワクベートーヴェン。最後の3つではこの31番の出だしの下降音型が好み。なんだか途中から始まっているような気持ちにさせてくれる。この第1楽章の前にもう一つ楽章があったんだよ実は、とベートーヴェンが言っているように聞こえる。この悟りのような第1楽章はいいですね。やっぱり3作品一束のような味わいなのかもしれない。
音の粒立ちが良くて、曲想のしっとり感が綯い交ぜになって居心地良い。31番この境地。マツーエフがしっかりと魅せてくれました。聴くほどに奥がある。
2楽章はうって変わって激しい。怒涛のような激しさ。切れ味が鋭い。完璧なタンギングを聴いているような錯覚。彫りが深くて立体的、クラクラするようなパースペクティヴ感。がらりと変わって圧倒的なマツーエフの力腕。息つく間も無くそのまま終楽章へ。
と言っても、強烈な2楽章結尾はスフォルツァンドの繰り返しから最後はピアノにディミヌエンドしてしぼみ、リタルダンド。終楽章の頭はこのモードを引き継いでいる。マツーエフの冷静な音の運び。最初から、全部が見えているのだろう。余裕のパフォーマンス。
清らかな第1楽章、激しいスケルツォ、変幻自在。終楽章のフーガへ。お見事とうなるしかない、この全体俯瞰。
嘆きの歌からフーガへ。なんだか全部嘆きの歌のような気がしてきた。音形を変えて再度嘆きの歌へ。そしてコラール風味な進行は抑え気味マツーエフ。このあとの進行は、ベートーヴェンはどうやってフィニッシュしようか探している雰囲気が漂うところ、全てを解決するように一気に垂直降下する。マツーエフのピアノが炸裂、爆発。フォルテシモ×2の音量だわな。
音符が一つに並んだような錯覚の垂直一気降下。鉄板でもなんでも来い突き破るからみたいな圧巻の響きの中、急上昇しサラリと終わる。鮮やかな31番でした。彼のスパイス見えました。マーベラス。

後半のチャイコフスキーのほうはリラックスして、でも気を抜くことは無い。
ドゥムカは作曲家の明るさ暗さ、独特のメロディー。ほの暗い浅めのタッチが少しモコモコ感を醸し出しながら色々と変化していく。

グランドソナタはマツーエフのリズミックでダイナミックなチャイコフスキーサウンドを満喫。
型が明瞭な演奏。怒涛の流れでいくわけではなくて副主題が物憂げさも漂わせてくれる。第1楽章は総じて激しくて音も華やか。型の規模も大きい。これと次のアンダンテ楽章、付点やシンコペーションのモードの味わいが似ている。静かな2楽章なのにリズムが息づいている感じ。この1,2楽章で、もう、ほとんど、作品の大半を占めてしまった。圧巻の演奏。あとは型の残りをやっていく感じ。腕の見せどころもパワーアップ。
マツーエフは楽章間を殊更区切ることは無くてだいたい続けてプレイする。勢いを感じさせるし、ポイントとなる楽章での一服は音楽の流れを冷静にくみ取っているかな。
チャイコフスキーの短い音符の塊が全部スタッカート風な切れ味の良さでいくら速いパッセージでも全部聴こえてくる。エスカレーターがエレベーターのようになり、最後はロケット発射、華麗な指技。まだ、やり足りないと言っている。凄い凄い。


アンコールは5曲。演奏後一礼して下てに引き、また出てきてすぐにアンコールピースを始める。このあとサイン会も無かったので、時間に追われていたのかしら。翌日ゲルギエフと昼夜2公演、ラフマニノフのピアノ協奏曲全4曲弾かないといけないし。その下ごしらえが要るのかもしれない。などと思う中、ショートピースを次々と。
最後の5曲目は自身作の即興(という曲)。やりたいことをあらいざらい全部やりつくす。最初は静かでややジャジー、ガーシュウィン風ドビュッシー風。だんだんとエスカレートしていき、技のオンパレードで大晦日の売り尽くしみたいになるも一滴の乱れも無い。唖然茫然。ぶっ飛びました。

マツーエフのデリカシーとパワー、心ゆくまで堪能できた三鷹の午後でした。ありがとうございました。
おわり



400人規模ホールにNHKのテレビキャメラが5台も。ステージ2台、客席3台。2018年2月2日(金)朝5時からNHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」で放送とのこと。






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