碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

札幌から、取材班がやって来た!

2018年04月22日 | テレビ・ラジオ・メディア


HTB北海道テレビ「民放の日」特集のインタビュー取材です

書評した本: 川本三郎 『映画の中にある如く』ほか

2018年04月21日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


川本三郎 『映画の中にある如く』
キネマ旬報社 2700円

『キネマ旬報』で連載中の「映画を見ればわかること」をまとめた最新刊だ。「クロワッサンで朝食を」のライネ・マギの美しさ。「ハンナ・アーレント」から連想する丸山眞男。そして、俳優の中で「誰よりも倫理的だった」高倉健のこと。映画の細部に神が宿る。


山口 瞳:著、小玉 武:編 
『山口瞳ベスト・エッセイ』

ちくま文庫 1026円

『江分利満氏の優雅な生活』や『居酒屋兆治』などで知られる作家、山口瞳。この文庫オリジナルに並ぶのは、31年間続いた本誌連載「男性自身」から選ばれた、向田邦子を偲ぶ「木槿の花」など名作エッセイの数々だ。「美的でないものは悪だ」の精神が蘇る。


鹿島 茂 
『悪の箴言(マクシム)
~耳をふさぎたくなる270の言葉』

祥伝社 1944円

社会に2つの不幸が蔓延している。「右派的で強引な政権運営」を止められない不幸と、「もうひとつの希望ある選択肢」を持てない不幸だ。政治思想を専門とする著者は、「立憲主義」を検証することでこの国の明日を探っていく。保守の本来の意味が見えてくる。

(2018年4月12日号 )


中島岳志
『保守と立憲
 ~世界によって私が変えられないために』

スタンド・ブックス 1944円

社会に2つの不幸が蔓延している。「右派的で強引な政権運営」を止められない不幸と、「もうひとつの希望ある選択肢」を持てない不幸だ。政治思想を専門とする著者は、「立憲主義」を検証することでこの国の明日を探っていく。保守の本来の意味が見えてくる。

(2018年4月5日号)


「黒井戸殺し」違和感も ドラマ化が難しいクリスティ小説

2018年04月20日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


「黒井戸殺し」違和感も
ドラマ化が難しいクリスティ小説

14日に放送されたドラマ「黒井戸殺し」(フジテレビ系)の原作は、アガサ・クリスティの長編小説「アクロイド殺し」だ。

のどかな郊外の村で富豪のアクロイド氏が殺害される。彼の姪が助けを求めたのが、引退してこの村で暮らす名探偵ポアロだ。使われたトリックが衝撃的で、1926年の発表当時、「フェアか、アンフェアか」という論争が起きたほどの作品である。

三谷幸喜(写真)の脚本はポアロを勝呂(野村萬斎)、語り手のシェパード医師を柴医師(大泉洋)としながら、「ポアロ物」としての基本は外していない。また「全員が容疑者」という前提で構成されており、ネタばれも心配せずに楽しめた。

ただ気になったことが2点ある。1つは野村萬斎のややオーバーな演技。ポアロと勝呂は別人格かもしれないが、話し方や表情を少し抑えたほうがよかったのではないか。

もう1点は容疑者のひとり「復員兵の男」だ。このドラマの設定は昭和27年であり、さすがに兵隊服姿の復員兵が町を歩いている時代ではない。

3月末にテレビ朝日系でも同じクリスティ原作の「パディントン発4時50分」と「大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~」が流された。しかし、どちらも「ミス・マープル」という主人公自体を大幅に変更したため、かなりの違和感があった。クリスティの小説は確かに面白いが、ドラマ化は意外と難しい。

(日刊ゲンダイ 2018年04月18日)

週刊新潮で、朝ドラ「半分、青い。」についてコメント

2018年04月18日 | メディアでのコメント・論評


朝ドラ好発進、
母役「松雪泰子」「原田知世」の貫禄

40代後半以降の世代には、何とも懐かしい2人である。4月からスタートしたNHK朝の連続テレビ小説「半分、青い。」で、主人公の楡野鈴愛(すずめ)と同じ日に同じ産院で産まれた萩尾律のそれぞれ母親役を務める、松雪泰子(45)と原田知世(50)だ。
松雪の演じる晴(はる)は大衆食堂のおかみ、一方の原田が演じる和子(わこ)は裕福な写真館の奥様。対照的だが、2人とも舞台となる「ふくろう商店街」きっての看板美人、何より優しい母親でもある。

ヒロイン役が登場するまで子役が主人公を演じ、脇役陣がドラマを支えるのがいつもの朝ドラのパターンだが、今回は特に“懐かし”の2人が引っ張る。1週目が終わっての平均視聴率は20・1%。まずは好発進のようだ。

「同時出産から子供を巡ってやり取りするシーンなど、これまでの朝ドラにないほど印象深く母親2人を描いているのを感じます。2010年に日テレ系で放映された『Mother』では疑似親子の母親を見事に演じていた松雪さん。今回はいたって世間的な母親役ですが、彼女のキビキビした感じに対してホンワカした雰囲気の原田さん、お互いが個性そのままで演じているのがいいですね」

そう語るのは、上智大学教授の碓井広義氏。


作家の麻生千晶氏もいう。

「年を取ってもきれいで好感度の高い2人、そりゃ中年のオジサンたちは、皆チャンネルを合わせるでしょう。これで主演の永野芽郁(めい)さんと相手役の佐藤健さんが登場して恋愛話などになれば、大人の2人は後ろに引くのでしょうが、中高年男性の視聴者を取り込むにはいいキャスティング。作、脚本を務める北川悦吏子(えりこ)さんの計算ずくの演出ですよ。朝ドラは北川さんにとって初の試み、出身地の岐阜を舞台にし、自らの体験を随所に盛り込むなど、かなりの力の入れようです」

松雪、原田の後には“真打ち”が待つ。少女漫画家を志すヒロイン鈴愛の師匠役として、「トヨエツ」こと豊川悦司が登場するのだ。北川作品とは縁が深い。

世のオバサマ方も夢中になること間違いなし。

(週刊新潮 2018年4月19日号)

産経新聞で、TV局入社式について解説

2018年04月16日 | メディアでのコメント・論評


なぜ芸能人呼ぶ?TV局入社式 
「すごいぜ、うち」 視聴者、食傷気味

テレビ局や大手企業の入社式に今年もさまざまな芸能人が登壇し、そのことがニュースにもなった。テレビ局では慣例化し、視聴者には食傷気味の感も。その一方で、この春は初めてネット放送局の入社式に芸能人が姿を見せた。これは、何を意味するのだろうか…。

芸能人登場はステータス

237人の新入社員から黄色い歓声があがった。服飾雑貨大手のサマンサタバサジャパンリミテッド(東京都港区)の入社式に、俳優の新田真剣佑(まっけんゆう)さん(21)がサプライズ登場し、頬を紅潮させた新入社員らにあいさつしたのだ。

新田さんは同社のCMキャラクターを務めており、広報担当者は「新入社員に喜んでもらうため、入社式には10年以上前から、その時々でご縁のある芸能人をお呼びしている」と明かす。

芸能人を入社式に呼ぶことは、企業にとってステータスのひとつになっている。上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、「会社の内部イベントに人気芸能人が登壇することで報道陣を集め、大手企業らしさを演出できる」と指摘。さらに「芸能人を呼ぶことができる会社に対し、新入社員の胸に『すごいぜ、うち』という社員としてのプライドが生まれる効果がある」と話す。

碓井教授によると、その効果を最大限に利用し続けているのが、芸能界と密接な関係があるテレビ局だという。


愛社精神

放送業界の入社式は、芸能人の参加がもはや「慣例」化している。今年も日本テレビを除く在京キー局とNHKで、それぞれの番組に出演する芸能人が姿を見せた。

テレビ東京では、放送12年目のバラエティー番組「モヤモヤさまぁ~ず2」(日曜夜6時半~)を出演するお笑いコンビ「さまぁ~ず」。担当者は「テレビを通して見ていた出演者と間近で接することで、新入社員にテレビマンになる喜びと責任を感じてもらいたい」と話す。

TBSテレビでは、嵐の二宮和也さん(34)。新入社員にエールを送るとともに、主演の日曜劇場「ブラックペアン」(22日夜9時スタート)をそつなくアピール。テレビ朝日では、新ドラマ「未解決の女 警視庁文書捜査官」(19日夜9時スタート)から、女優の波瑠(はる)さん(26)らが入社式に現れた。

芸能人が登場する入社式が春の風物詩になっていることについて、ネット上では「調子に乗っているとしか思えない」「うらやましがれってこと?」などの声も挙がっているが、局側にとっては、新入社員に対して愛社精神を育むパフォーマンスができるとともに、出演番組の宣伝もできるとあって一石二鳥。今後も「テレビ局の入社式=芸能人が参加」という構図は続くだろう。

ネット放送局の“参入”

テレビ局の慣例に追随するように、今年はスマホ向けのネット放送局「アベマTV」を保有するサイバーエージェント社も、俳優の三浦翔平さん(29)を入社式に招いた。

三浦さんは、同社の藤田晋(すすむ)社長(44)の自伝をベースにしたアベマTVオリジナル連続ドラマ「会社は学校じゃねぇんだよ」(21日夜10時スタート)の主演。藤田社長や新入社員と一緒にドラマタイトルの看板を掲げながら記念撮影を行った。同社の広報担当者は「エンターテインメントを提供する会社として、今年初めて芸能人を呼んだ」と話す。

碓井教授は、「ネット放送局も入社式に芸能人を呼ぶことで、『オレたちもテレビ局だぞ』というアピールをはじめた」と分析する。

仮に放送とインターネット通信との垣根をなくす放送制度改革が進めば、さまざまな事業者がテレビ局の放送設備を使って番組を流せるようになり、既存のテレビ局が地上波チャンネルを独占する時代は終わる可能性もある。

ネット放送局を保有する同社が入社式に芸能人を呼んだことは、もしかしたら地上波チャンネル参入への意欲の表れ、あるいはそんな未来図の先取りといえるのかもしれない。〔文化部 三宅令〕

(産経新聞 2018.4.14)

レギュラー化を希望したくなった、春のドラマスペシャルとは!?

2018年04月15日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


1月クールの連続ドラマが先月末に終わり、4月クールのそれがまだ始まらないこの時期。何本ものドラマスペシャルが放送されています。中には「これってレギュラー化してもいいのでは?」という作品もありました。

『ミッドナイト・ジャーナル~消えた誘拐犯を追え! 七年目の真実』

今年開局50周年を迎えるテレビ東京が、3月30日に春の記念ドラマ『ミッドナイト・ジャーナル~消えた誘拐犯を追え! 七年目の真実』を放送しました。原作は、本城雅人さんによる社会派サスペンス小説『ミッドナイト・ジャーナル』(16年、講談社)。若干のアレンジはあるものの、基本的な設定はそのままに映像化されていました。

主人公は中央新聞さいたま支局の県警キャップ・関口豪太郎(竹野内豊)です。7年前に起きた悲惨な事件の際、生存していた被害者の女児を、死亡と伝える大誤報で左遷された経験をもっています。実際には整理部の勇み足だったのですが、関口は潔く責任を負いました。

管内で女児連続誘拐事件が発生し、関口は7年前の事件との類似性に気づきます。同一犯ではないか、という疑念を持ったのです。本社に応援を依頼すると、やってきたのは女性記者の藤瀬祐里(上戸彩)でした。彼女は例の誤報騒動の際、一緒に糾弾された仲です。そこに新人記者の岡田昇太(寛一郎)を加えた3人の<チーム関口>が、社内外で軋轢を生みながらも、粘り強い取材で真相へと迫っていきます。

関口の信条は「真実を早く正しく伝えること、それがジャーナル」というもの。周囲、特に東京本社の連中からは、スクープにこだわると揶揄されていますが、関口が本当にこだわっているのは人の命です。また堅物の県警管理官(松重豊)の自宅に夜討ちをかけて、飲めない酒を一緒に飲む姿や、妻を亡くした後、別れて暮らしている娘への思いも微笑ましい。

竹野内豊&上戸彩のコンビが光った

竹野内さんは、このストイックともいえる姿勢で取材に没入する記者の内面まで、実に丁寧に演じていました。上戸さんもまた、竹野内さんの集中力に背中を押されるかのように、凛とした大人の女性記者になりきっていました。

竹野内さんで思い出すのが、かつて2夜連続で放送されたドラマスペシャル『オリンピックの身代金』(13年、テレビ朝日系)です。1964年の東京五輪をめぐって繰り広げられる緊迫のサスペンスでした。

東大院生・島崎(松山ケンイチ)の兄が五輪施設の工事現場で急死します。季節労働者として無理を重ねた結果でした。日本の経済成長を支えながらその犠牲となる人々と、置き去りにされる地方の現実に憤った島崎は、国家を相手に犯行計画を練ります。

事件を追うのは、竹野内さんが演じた捜査一課の刑事・落合。彼自身もまた戦争体験を持ち、妹(黒木メイサ)と島崎の関わりなど、その心中は複雑でした。今回の関口も、新聞社という組織に対する憤りや、死に目にも会えなかった妻に対する自責の念など、その思いはやはり複雑で、どこか落合に通じるものがありました。

記者たちはどのようにネタをつかみ、いかなる方法で裏どりを行い、どんな記事にしていくのか。新聞というメディアの本当の役割とは何なのか。この作品は良質のサスペンス&人間ドラマですが、一種の企業(職業)ドラマとしても十分見応えがありました。

本当は連続ドラマで見たいのですが、毎週というのが大変であれば、季節ごとのレギュラースペシャルでも構いません。チーム関口の地に足のついた取材ぶりと記者魂を、また見てみたいものです。

表参道「本の場所」で・・・

2018年04月15日 | 本・新聞・雑誌・活字













萩原健太さん(音楽評論家)、川崎徹さん(小説家)と・・・




『名探偵コナン』のアニメ監督・松園公さんがスケッチした「実相寺昭雄研究会」 2018.04.13

2018年04月14日 | 気まぐれ写真館
手前左側に座っているのが私です

週刊朝日で、有働由美子さんについて解説

2018年04月13日 | メディアでのコメント・論評


NHKの肩書捨てた有働由美子の“勝算”は?

有働由美子が、朝の人気情報番組「あさイチ」のMCを降板後、27年間勤めたNHKを退局した。NHKを代表するアナウンサーが選んだ次の道は、現場主義のジャーナリストだ。

芸能評論家の三杉武さんは「東京五輪まではアナウンサーとして活躍できるでしょうが、その後は管理職として後輩の指導に当たることになったのではないか」と、退局の背景を分析する。

その有働だが、NHKを通じ、「海外での現場取材や興味ある分野の勉強を自分のペースで時間をかけてしたいという思いが捨てきれず、組織を離れる決断」をしたとコメントしているが、入局前は各地を飛び回る特派員に憧れ、新聞記者を志していた。2011年12月の「AERA」のインタビューで、「国際部の記者になりたくてNHKを受けた」が、アナウンサーとして採用されたと明かす。

07年の人事異動で、アメリカ総局の特派員に就き、08年には管理職に昇進したが、周囲には「現場で、ずっとやっていきたい」と、当時から第一線へのこだわりを見せていたようだ。

今回の有働の決断はどのように映ったのか。有働と仕事をした経験のあるNHK職員は、有働の著書『ウドウロク』(新潮社)を熟読し、有働が海外に興味を持っていると感じていた。「電撃退職には驚いたが、ジャーナリストに転身すると知り、やっぱり海外で取材をしたかったんだなと合点がいった」という。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は「『NHKの有働』は唯一無二の存在。明るさ、親しみやすさ、また等身大の自分を見せる潔さで広く受け入れられてきました。たとえばわき汗の話題でも、取り繕わず視聴者に伝えていましたよね。決して上から目線にならず、『皆さんと同じ一人の女性ですから』というスタンスが見事でした」と評価すると同時に、「アナウンサー出身の女性が、組織運営に関わる理事などのポジションに就いてもいい時代。NHKで働く女性のロールモデルとして道を切り開いてほしかった」と惜しむ。

退局後の初仕事は今夏放送予定のNHKBSプレミアムのドキュメンタリー「世界プリンス・プリンセス物語」の第3弾で、元NHK記者・池上彰との共演がささやかれるが、NHKは「現時点では何もお答えできません」と回答。ジャーナリスト有働さん、これからも、チェスト! きばれ!(本誌・岩下明日香)

(週刊朝日 2018年4月20日号)


2018年度の「碓井ゼミ」、始まる

2018年04月13日 | 大学
2018.04.12

アラフィフ俳優が支えたドラマ特別企画「がん消滅の罠」

2018年04月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


唐沢寿明に渡部篤郎
アラフィフ俳優が支えた3時間の長尺

2日放送のTBS系ドラマ特別企画「がん消滅の罠~完全寛解の謎~」。原作は第15回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作で、岩木一麻の同名小説だ。

日本がんセンターの医師、夏目(唐沢寿明)が担当する末期がん患者が、連続して奇跡的な「完全寛解(がんの兆候が全て消失)」を遂げた。しかし彼らが多額の保険金を得ていたことから、警察は夏目をマークする。

余命6カ月以内の宣告を受けた際、死亡保険の一部を生前に受け取れる「リビングニーズ特約」があり、それには主治医の承認が必要だ。夏目は保険金詐欺の共犯として疑われたのだが、ここから事態は二転三転する。

窮地に追い込まれた夏目をサポートするのは、高校の同級生で同僚医師でもある羽島(渡部篤郎)と、やはり高校以来の仲間で保険会社調査部に勤務する森川(及川光博)だ。さらに夏目たちの恩師で、長く失踪していた西條(北大路欣也)も事件に関わってくる。

原作が「このミス」大賞作だけあって、がん消滅の謎解きだけでなく、厚労省と製薬会社が抱えた新薬をめぐる闇までを描く物語展開に求心力があった。また唐沢をはじめとするアラフィフ俳優たちの落ち着いた演技が、3時間という長尺のドラマを支えていた。

1月クールの「アンナチュラル」もそうだったが、医療サスペンスというジャンルにはまだまだ鉱脈が眠っていそうだ。

(日刊ゲンダイ 2018年4月11日)

週刊朝日で、「エド・はるみ」修士号についてコメント

2018年04月11日 | メディアでのコメント・論評


エド・はるみはどこへ…
慶応修士号で箔つけてインテリ枠!?

かつて「グ~」のネタで一世を風靡し、2008年の流行語大賞も受賞したお笑いタレントのエド・はるみ。そのエドが3月28日、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の修士課程を修了し、修士号の学位が授与された。

〈この2年間、仕事との両立をはかりながら研究をすすめて参りました。(中略)お陰様で何とかやり切ることが出来ました〉

と、エドはコメントを発表。エドといえば、東京マラソンの完走、小池百合子東京都知事が立ち上げた政治塾に参加するなど、お笑い以外の分野で話題を振りまいてきた。昨年にはライザップでの減量に成功し、CMで美ボディーを披露したことも記憶に新しい。

次々と新しいことに挑戦する一方、タレントとして迷走気味にも見えたが、

〈今後は、タレントとして仕事をさせていただきながら、その一方で論文を執筆し、研究者として研究も続けて参ります〉

と、エドは芸能界と研究者の二足のわらじを履くことを表明した。エドをよく知る関係者は話す。

「超がつく真面目さが彼女の持ち味。何事も深く突き詰めて考えがちですが、そんな性格が学問にも生きたのかもしれません」

とはいえ、芸能活動と並行しての研究は可能なのだろうか。上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は「研究を続けていくことにエールを送ります」としつつも、次のように話す。

「芸能活動においては知性派タレントとしての強いアピールになりますが、研究職は芸能活動の“片手間で”できるようなものではありません」

研究者になるためのハードルは相当高いという。

「一般的に研究者として認識されるには、博士号取得が前提。数本以上の論文が専門誌に掲載され、学会で発表しなければ博士号の申請もできません。修士号だけでは誰も研究者とは呼びませんし、まだその卵にもなれていません」(碓井教授


コメントの最後で〈普遍的で身近なテーマを(中略)時に笑いを交えて『伝えて』〉いきたいと語ったエド。お笑いと研究の両立という難関も持ち前の生真面目さで越えられるか。【本誌・秦正理】

(週刊朝日 2018年4月13日号)


入学、おめでとう!

2018年04月10日 | 大学











上智大学後援会新入会員歓迎会




2018.04.09

北海道新聞で、日高晤郎さんについてコメント

2018年04月09日 | メディアでのコメント・論評



日高晤郎さん死去
ラジオ司会者 率直な語り口人気

率直な語り口で道民に親しまれたラジオパーソナリティーの日高晤郎(ひだか・ごろう、本名細谷新吾=ほそたに・しんご)さんが3日午前10時50分ごろ、がんのため札幌市内の病院で死去した。74歳。大阪市出身、自宅は東京都内。葬儀は近親者で密葬を行う。7日までの午前10時から午後4時、札幌市中央区のSTVホール(北1西8)に記帳台を設置する。

大映の「第1回ミス・ミスターフレッシュフェースコンテスト」で優勝し、1962年に映画「江戸へ百七十里」で俳優としてデビュー。67年には「流れ者小唄」で歌手デビューも果たした。映画「007」シリーズで、ジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーの吹き替えをするなど、声優としても活躍した。

(中略)

「時代の案内人」悼む

日高晤郎さんの悲報に、親交のあった人々から惜しむ声が相次いだ。

STVテレビの番組で共演するなどかねて交流してきた歌手の天童よしみさんは、今月1日に見舞いの電話をしたという。「振り絞るような声で『天童の歌に会えて良かった』と言っていただいたのが、最後の言葉になってしまいました」と声を詰まらせた。

STVラジオで長年番組を持ち、日高さんが「戦友」と呼んだパーソナリティーの河村通夫(みちお)さん(70)は「とことん物事を極めようとした人。番組を長期間続けるのは難しいが、彼がいてくれたからこそ僕もエネルギーを出そうと思った。すごいショックです」と悼む。闘病を知り、先月「日高晤郎ショー」本番中にスタジオを訪問した。「番組で音楽が流れている時で放送はされませんでしたが、ものすごく喜んでくれました」としのんだ。

札幌市中央区のSTVホールには3日夕から記帳台が設けられ、多くのファンが訪れた。「日高晤郎ショー」の公開生放送に毎週通っていた札幌市西区のパート木村幸美(ゆきみ)さん(62)は「いいところも悪いところも含めて最後までかっこよかった」と号泣。ススキノでお好み焼き店を営む工藤敦子さん(60)は「同じ大阪出身でいつもお店に足を運んでもらっていた。大好きでした」と泣きじゃくった。千歳市の会社員小林了太さん(29)は「発言は物議をかもすこともあったが、自分の意見として言っていて尊敬できた」と語った。

地方のテレビやラジオに詳しい碓井広義・上智大新聞学科教授(メディア文化論)は、日高さんを「事件や政治経済から近所のうわさ話まで、市井の人たちと一緒に笑ったり怒ったりする『時代の案内人』だった」と評した。【千葉佳奈】

(北海道新聞 2018.04.04)

書評した本: 松田行正 『デザインの作法―本は明るいおもちゃである』ほか

2018年04月09日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


松田行正 
『デザインの作法―本は明るいおもちゃである』

平凡社 2482円

私の師匠である故・実相寺昭雄監督の遺品を整理していて、ある本を見つけた。サイズはほぼ新書と同じだ。真っ赤な背表紙の下の位置に四角い黒地が配され、そこに白文字で「チェーホフ全集」とある。

この赤い背表紙は樹脂っぽい手触りだが、表紙自体は真っ黒な布で覆われている。そして左下の隅に小さくチェーホフのサインがある。それは布に窪みを作って背表紙と同じ赤い樹脂を押し込んだものだ。シンプルだが凝っている。本全体に独自の佇まいというか、一種の美学が感じられた。版元は中央公論社で、発行は58年前の昭和35年だった。

新刊が紙の本と電子書籍の両方で同時発売される時代だ。電子版の便利さを享受しながらも、圧倒的に紙の本を愛用している。ブックデザイナーである松田行正のこの新著を読むと、紙の本の魅力を再認識することができる。また本が単なる情報の入れ物ではないことも。

著者は本のデザインの流れを説明する中で、本の質感には4種類あるという。手触りなどの質感。配慮という質感。意外性など感情の落差を生み出す現象的質感。そして思い出の本にあるような「意味のオーラ」的質感だ。こうした質感が本というものの内容を深めていく。

いくつもの実例が登場する中で、池井戸潤の小説『陸王』の話が興味深い。この本では様々な「イメージの引用」がなされている。カバー・デザインは、靴箱に印刷された大正モダニズムのロゴ・マークという見立てだ。

表紙の大きな円の中に書名(作中で開発するランニングシューズの商品名でもある)と著者名。その上下の小さな円には、ランナーのシルエットと小説に出てくる足袋屋のトンボ・マーク。伝統の技を現代に活かそうとする主人公の心意気が伝わってくる。

本のデザインの作法を知ることは、本をより楽しむための作法を知ることでもあったのだ。


いとうせいこう 『小説禁止令に賛同する』
集英社 1512円

舞台は2036年の日本ならぬ東端列島。主人公は物書きで囚人。施行された「小説禁止令」に賛同するのは凡百の作品に対する憤りからであり、根底にあるのは小説愛だ。本書はいとう版『地下室の手記』であり、リアルな小説論であり、近未来社会論でもある。


半藤一利 『世界史のなかの昭和史』
平凡社 1836円

『昭和史』『B面昭和史』と続いてきた歴史探偵の報告書、その完結編だ。キーマンとしてスポットを当てるのはヒトラー、スターリン、そしてルーズベルト。同時代の世界を俯瞰で見ると同時に、昭和の日本を凝視していく。指導者の世界史認識不足は国を亡ぼす。

(週刊新潮 2018年4月5日号)