碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

「遊びは文化」であることを知らしめた大橋巨泉さん

2016年07月23日 | メディアでのコメント・論評



今月12日に、急性呼吸不全で亡くなっていたことがわかった大橋巨泉さん(享年82)。

日刊ゲンダイの特集記事に、追悼の言葉を寄せました。

合掌。


巨泉さん死去
テレビの「巨人」がつきつけた
安倍政権への痛烈遺言状

「趣味を仕事にしたようなライフスタイルも含め、全てが斬新だった。たけし、さんま、タモリらが司会業に進出する道を切り開いた、まさにテレビのキングでした」(作家でコラムニストの中森明夫氏)

 テレビの寵児とも革命児とも呼ばれた大橋巨泉さんが12日、急性呼吸不全で亡くなっていたことがわかった。享年82。すでに身内で通夜葬儀は済ませ、後日、お別れの会を催すという。

 テレビ界への貢献度は計り知れず、当初は「俗悪番組」などと非難されながら25年も続く長寿番組となった「11PM」をはじめ、伝説的お笑い番組「巨泉×前武ゲバゲバ90分!」「クイズダービー」など数々の人気番組を作り上げた。タレントを呼び捨てにするなど、ともすると「ゴーマン」な印象も持たれがちだが、その素顔は気配りの人だった。当時「ゲバゲバ90分!」に出演していて、最近もゴルフ交友のあった女優の岡崎友紀さんがこういう。

「あの番組は出演者全員がフラットで、誰かが威張るなんてことはまったくありませんでした。もちろん巨泉さんも。当時16歳だった私がある時、オーストラリアに旅行した時はすぐに現地の知り合いの方に紹介状を書いてくれたことも覚えています。数年前から巨泉さんのご近所に住んでいますが、まだ住む前から“今度コッチに住むんだって?”とお電話を頂き、引っ越してからは、ごくごく親しい人たちのゴルフ仲間『ファミリー会』のメンバーに加えてもらっていただけに残念で仕方ありません」

 数々の人気番組を持ちながら、50代半ばに突然降板。日本人に「セミリタイア」という新しいライフスタイルも提示した。01年には政界にも進出(民主党比例区)していたが、翌年、党の決定に反対して議員辞職。05年に胃がんの手術をしてからは、がんの再発を繰り返し、亡くなるまで11年間もの闘病生活を送っていた。

それでも衰えなかったのがテレビへの情熱と、改憲へと突き進む安倍政権への強烈な批判精神だった。14年5月の本紙インタビューでは「僕は、ポピュリズムの権化のような安倍首相をまったく信用しない」「彼にとって、経済はムードをあおる手段に過ぎず、本当にやりたいのは憲法改正であり、日本を『戦争ができる国』に変えることでしょう。法衣の下に鎧を隠しているような男の言動にだまされてはいけません」「マトモな批判さえ許さない戦前みたいな“空気”を今の日本に感じる」と警鐘を鳴らしていたものだ。

 絶筆となった週刊現代(6月27日発売)のコラムでは「このままでは死んでも死にきれないので、最後の遺言として一つだけは書いておきたい。安倍晋三の野望は恐ろしいものです。選挙民をナメている安倍晋三に一泡吹かせて下さい。7月の参院選挙、野党に投票して下さい。最後のお願いです」とつづっていた巨泉さん。その原点はかつて軍国少年だった戦時中に疎開先で米軍機の機銃掃射に見舞われ死にかけたことと、8月15日を境に世界が一変した敗戦体験にあったという。

 昨年12月に亡くなった作家の野坂昭如氏、先日亡くなった永六輔氏に続く戦争を知る昭和ヒトケタ世代の訃報。その“遺言”は重い。


悼む
「遊びは文化」であることを知らしめた
碓井広義・上智大教授

「テレビ史上初の“夜のワイドショー”として前衛的な番組だった『11PM』で週2回、司会を担当していましたが、中でも『金曜イレブン』は、見る者の心を躍らせてくれました。

 右肩上がりの高度成長期を支える勤勉な日本人に対し、“遊んでいいんだよ”とゴルフや麻雀、競馬といった大人のレジャーを番組を通して紹介して人生の楽しみ方を提案。『遊びは文化』であることを世の中に知らしめたことは、テレビ史、いや、文化史における巨泉さんの多大な功績といえるでしょう。

 また『クイズダービー』の前身である『お笑い頭の体操』も含め、司会業の技を確立させると同時に、クイズバラエティー、トークバラエティーの番組構成の原型も築いた。『世界まるごとHOWマッチ』も含め、複数の長寿番組を生み出した、まさに60年代~90年代のテレビが元気だった当時を象徴するテレビタレント。

 いずれも巨泉さんの人格や教養、批評精神が必要不可欠であり、唯一無二のエンターテインメントの王様です」


(日刊ゲンダイ 2016.07.22 )

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