碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「倉本聰 ドラマへの遺言」 第16回

2018年02月03日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第16回

「キャスティングが決まらないと書かない」
伝説の真相は


倉本氏はドラマの撮影が始まる前、役者たちが集まって行われるホン読み(台本の読み合わせ)にも立ち会うという、多くの脚本家とは一線を画すスタイルを貫いてきた。キャスティングについても口うるさいといわれるが、真相はいかに。

碓井 「倉本伝説」として流布していることのひとつですが、キャスティングが決まらないと書かないんだと。実際に先生がキャスティングに関与しているってことですか。

倉本 プロデューサーには相談しますが、僕自身が決めるわけではありません。2005年放送の「優しい時間」(寺尾聰主演、フジテレビ系)のあたりからは若い役者について全く知らないですからね。主要キャストを担ったニノ(二宮和也)も、長澤まさみも知らなくて、「タレント名鑑」を見せてもらいました。昨秋行われた東京ドラマアウォード(「やすらぎの郷」で脚本賞)の授賞式でも、新垣結衣を知らないから、「あの人誰」って聞いたぐらいですから。

碓井 ガッキー、泣きますよ(笑い)。となると、プロデューサーへの相談はどのようになさるんですか。

倉本 興味のある女優さんには、あらかじめ会わせてもらいますね。「風のガーデン」(08年、フジテレビ系)の黒木メイサも、興味を持っていたので何度か会ったんですよ。

碓井 中井貴一さんが演じる主人公の娘役として起用されていましたね。

倉本 数年前には剛力彩芽にも会わせてもらって。いい女優だなと思ったんですが、起用には至っていません。

碓井 黒木さんと剛力さん、容姿も女優としてのタイプも違いますが。

倉本 男として女に惚れる場合もそうなんですが、こういうタイプだから使ってみたいとか、こういう趣味だから好きだとか、決まった好みってないんですよ。出てきて良ければ、ハイって感じです。特に女優の場合は容姿ではなく、センスが放つオーラのサムシング。これが失われていくケースが往々にしてあって、日本のエージェンシーは下手だなって思いますね。

碓井 使い捨て、とまではいかなくても、役者やタレントを長い目で見ていない、育てようとしていない事務所はありますよね。売れているうちに全部売っちゃえ、みたいな。

倉本 この間もね、ある女優さんとマネジャーさんと一緒に食事する機会があって。「CMは今、何本出てるの?」って聞いたら「9本」って言ってたかな。

碓井 それはすごい。「あまちゃん」に出た後の有村架純さん並みだ。

倉本 業種のかち合わないスポンサーのオファーが13本あるんですって。マネジャーは「9本出ていても、あと4本ある」って言うもんだから、そういう発想もあるのかって驚いたわけですが。(つづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。現在は、来年4月から1年間放送されるテレビ朝日開局60周年記念ドラマ「やすらぎの刻(とき)~道」を執筆中。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。



日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」




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