碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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デイリー新潮で、「岡本圭人」上智大中退についてコメント

2018年04月25日 | メディアでのコメント・論評


Hey! Say! JUMP「岡本圭人」が上智大を中退 
「あの大学は芸能人には向かない」との声

「すべてはぼくの力不足です」――。「女性セブン」18年5月3日号(小学館)で、Hey! Say! JUMPの岡本圭人(25)が、2012年に入学した上智大学国際教養学部を、昨年(17年)夏に退学していたことを明かした。しかも、一度は自主退学したものの、思い直して復学した結果の中退という。 

 高学歴化が進むジャニーズ事務所のタレントたちだが、なぜ?

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 昭和生まれの方には、男闘呼組の岡本健一(48)の息子、と言ったほうが通りがいいかもしれないが、父と共にジャニーズ事務所に所属する“ジャニーズ2世”が岡本圭人だ。

「彼が通っていた上智大学国際教養学部というのは、1学年50人ほどと人数も少なく、帰国子女や留学生など英語に堪能な学生が多い。入試は公募制推薦とTOEFLまたはIELTSの点数と英文レポートの提出で行われる書類選考で決まり、いわゆる一般入試とは違います。入学後も授業はすべて英語で行われますから、大変だと思いますよ」とは、上智大学のOBである。

とはいえ圭人は、父・健一の方針で、9歳から5年間、英国に留学し、帰国後もインターナショナルスクールに通ったという。英語は堪能なはずだ。

上智大学の碓井広義教授[63](メディア文化論)は、

「国際教養学部に限りませんが、上智大学は他の大学に比べると規模はそれほど大きくない。これは校風でもありますが、各定員が少なく、何百人もの学生が入れる大教室もありません。多くても100人、通常は30~40人ほどの教室で、学生それぞれの顔が見える授業を行うことが多いんです。出欠を取る授業も多く、代返など効きません。芸能活動をしながら、というのは、厳しいでしょうね」


意外に多い上智出身芸能人

 もっとも、かつて上智大学を卒業した芸能人は多いのだ。川平慈英(55)、早見優(51)、西田ひかる(45)、BENI(32)、クリスタル・ケイ(32)、青山テルマ(30)など、圭人が中退となった国際教養学部やその前身である比較文化学部、さらに前身の外国語学部比較文化学科の卒業生たちである。

「最近は特に、出欠には厳しくなってきています。それは国際教養学部ばかりではありません。都心にある大学なので、通いやすいメリットはあるでしょうけど、上智大学には芸能人枠があるわけでもありませんから、仕事との両立はなかなか厳しい」(同)

 その昔、芸能人の学校といえば、堀越高校や明治大学付属中野高校(定時制)などが相場であった。だが昨今のジャニーズには、高学歴のタレントが増えている。嵐の櫻井翔(36)は慶應大を卒業し、ニュース番組「NEWS ZERO」(日本テレビ系)のキャスターを、NEWSの小山慶一郎(33)は明治大卒で「news every.」(同前)のキャスターを務めるなど、バラエティ番組の司会とは一線を画す領域に踏み込んでいる。高学歴は仕事の幅を広げるようだ。

 ところが最近の上智大学を見てみると、文学部新聞学科に在籍中、政治好きとして数多くの番組に出演していた春香クリスティーン(26)も、結局は単位が取れず、一昨年(16年)に除籍となっている――圭人クンは行くべき大学を間違えたのではないか。

代返なんて昔の話

 キャンパスナビネットワークを運営する大学通信の安田賢一常務が解説する。

「時代が違いますよ。いまは上智だけでなく、大学は出欠に厳しくなっています。文部科学省は、少子化により誰でも大学に入れる“大学全入”となってから、学生の質の低下を懸念して安易に卒業させない教育をするよう大学に求めたのです。いくら期末試験でいい点数をとっても、出席数が足らなければ単位は与えないとか、誰でも“優”がもらえる授業はやめるというもの。かつての日本の大学は、入るのは難しいが卒業は簡単、といわれていましたが、それを許さないというわけです。大学側も出欠の確認にはGPSのついたiPhoneで教室にいるかどうか確認できるシステムを取り入れたり、駅の改札を通るようにSuicaで出欠をとる学校もあります。授業を休むには証明書が必要なところもある。そうなれば欠席の理由が『芸能活動のため』とは言えないでしょうね」

 辛いのは学生ばかりではないというのは、とある大学教授である。

「半期に15回以上の授業を行わなければなりませんし、休講にしてしまったら、休日をつぶして補講を入れなければならない。だから学生だって休講を喜びません。それに最近の学生は、素直に授業に出るんですよね。『お前ら、それでも大学生か』と言いたくもなりますが、ここ10年ほど厳しくなってきた様に思います。大学での教育成果は、文科省に報告、チェックされて、上手くいっていなければ助成金が減らされるわけです。私立大学だって、いまや助成金なしではやっていけないのですから、従わざるを得ませんよ」

 中退は「すべてはぼくの力不足です」と圭人は反省しているが、仮に早稲田や慶應に入ったとしても、それなりに真面目に通わなければ、卒業はできないということらしい。 

 その圭人と入れ替わるように、この4月より上智大学国際教養学部へ通っているのが、Sexy Zoneのマリウス葉(18)。ドイツ人の父と日本人の母の下、ドイツのハイデンベルクに生まれた、日本語、ドイツ語、英語に堪能なトライリンガルで、昨年は米ハーバード大学で行われた世界各国の高校生28人によるサミットにも参加したとか。英語の授業に困ることはなないだろう。

 さて、彼は無事卒業できるか――。

(デイリー新潮 2018年4月24日)