中国ビジネスブログ「漢和塾の窓」

中国語や中国ビジネスに関連するテーマを、漢和塾の小川がつらつらと書き綴る・・・

中国人社員の定着率を嘆く・・・ちょっとその前に!

2011-01-29 19:23:54 | 中国
すっかり、その前にシリーズが復活しました。28日に上海から戻り、日本もなかなか寒い・・・火山が噴火したり、あらためて火山列島なんだな~と思い知らされます。久々の日本は、電車の中の沈黙が少し怖く感じました。

さて、表題の中国人社員の定着率ですが、定説では、「中国人はすぐにやめる!」「給料のいいところに転職する!」とよく言われていますし、実際にそのようなケースも多く見られます。が、それは中国人の問題でしょうか?

今回の出張で、とある企業をお邪魔しました。日本の大手企業が出資した人材集約型の現地企業です。従業員はほぼ100%中国人、給与体系も2,000元が基本で、一部の特殊能力の方は5,000元と、これも一般的な給与水準、いや、むしろ低いくらいです。

が、この企業を訪問してまず最初に驚いたのが、会社の中にマッサージルームがあることです。パソコン、電話等の作業が多い仕事内容だけに、運動量よりは、神経的な負担が多い業務。私も社内作業が続きますと、近所のマッサージに行きたくなりますが、企業内でそのようなサービスをしているのは非常に理にかなっているなと感じました。実際、その企業の離職率率は、10%を切っています。驚異的だと思いませんか?

次に案内していただいたのが、心理カウンセリングルーム!とある日系の工場で自殺者が出たというニュースを随分前に聞きましたが、心の病はインフルエンザよりも重症だと私は思います。さらに施設内には卓球台も設置された広々とした休憩所があり、またその部屋が路上に面していて、外からは何やら楽しそうな会社に見えるような仕掛けが・・・社員旅行などのイベントは当たり前にあり、この会社なら社員も精神的にリラックスできますし、配偶者や両親、友達からも「いい会社で働いているわね!」ときっと言われることでしょう。

私自身の会社を振り返ってみて・・・愕然としました。日本の漢和塾はまだ「銀座で働く」と言う利点だけはたまに評価されますが、社長の私はいつもあくせく!狭い事務所にひしめき合っています。さらに、上海は、暖房の効きも悪く、交通の便もよくない・・・山のような仕事を、運よく社員の方の頑張りだけでこなしていただいています。

給料だけではない部分・・・まずは、経営者・上司が明るいこと!経営の方針、各自のミッション・将来像が示せていることに加えて、職場環境は大変重要だと思います。費用はかかりますが、社員のモチベーションが上がることで業務効率や定着率が上がれば、これは安い買い物ではないでしょうか?


中国における人材採用と教育の課題!

2011-01-24 19:20:17 | 中国
漢和塾・上海(現地法人)を設立したのは、2008年8月。いわゆる金融危機(金融テロ)が勃発する数ヶ月前のことです。銀座に漢和塾を設立してまだ3年目の時点での、中国への進出は、普通の方から見れば、時期尚早、無謀と呼ばれることもありましたが、結果的には、私にとっても、会社にとっても、そして私どもが研修をご提供する先の企業の方にとっても有益なことではなかったかと思われます。

小所帯で、資金に余裕があるわけでもない段階で、14万米ドルもの資本金をつぎ込むのは、かなり覚悟のいることでしたが、幸いにして、20%ルール(初期投資段階は資本金の2割、2年後に残金8割を払う)を利用して、まずは現地法人設立を実現できたのです。が、昨年の8月に、その2年後が来てしまい、10万米ドル以上の資金をつぎ込むことになったのですが、2年前のレート1$116円で計算していたものが、円高(ドル安)のおかげで86円で投資ができたのは運がよかったと思うようにしています。

そんな漢和塾・上海ですが、当初は中国語の研修を現地でも継続して可能なようにする!と言うのが設立理念でしたが、実際に自分自身も会社を設立してみて、痛切に思うのは、中国人の採用と教育の課題の多さです。

採用については、以前、J-Passでも触れましたが、ここ中国でも日本のできるスタッフを採用する日系企業は多いですが、実際には、母国語の能力や実際のスキルを見極めるのは至難の業です。さらには、日系企業の企業文化が特別とは思いませんが、組織で働く概念なども理解できる素養があるかどうかが難しいところです。

中国人採用におけるポイントを3つあげますと・・・

 ①日本語能力の良し悪しで判断しない!

 ②学歴に惑わされず、母国語の能力を見極める!

 ③中国人の採用担当者に全面的にはまかせない!

と言ったとことでしょうか?もちろん、他にも、日本の適正診断テストをそのまま訳して導入しないことだとか、面談の時に、嘘・誇張を見抜くことなどがありますが、まずは上記の3つは基本中の基本です。

また、中国人にマナー研修などを本社からスタッフが来て教育するケースがありますが、日本語のできる中国人でも、日本人から日本語でいくら作法を教わっても、腑に落ちなければ何の意味もありません。ここは、日本のことを理解、体感した中国人の、しかも憧れを持てるような人物から母国語の中国語で説明する必要があるでしょう。漢和塾・上海では、私も日々努力している事例を、現地総経理の方々と共有していきたいと思います。


続々と、日本企業が中国に乗り込みますが・・・

2011-01-21 19:18:05 | 中国
上海に戻って、あっと言う間に4日が経ちました。19日の朝起きてみると、一面の銀世界は大げさですが、十数年前、札幌に住んでいた時のことを思い出しました。夏は気温40度近くになる上海ですが、緯度は日本の鹿児島と同じ。イメージだけなら何となく南の都市に感じますが、冬がこれまた寒い!中国語で「冷到骨子里」と言いますが、大陸性の気候、さらに湿度も高いことから、まさに骨身に凍みる寒さです。今年は特に雪が多く、昼間でも何となく町中が冷蔵庫・・・私の机の上の飲みかけのホットコーヒーは、常温でアイスコーヒーになっていました。

さて、そんな中、今日は日本の地銀5行のお取引先が集まったパーティーに顔をだしてきました。上海では、最も大きいと思われる上海日本商工クラブや、各種業界団体、さらには県人会、スポーツや趣味つながりなど、様々な日本企業、日本人の企業、団体があります。上海の日本人は7万人とも10万人とも言われていますが、長期・短期出張者を入れるとかなりの数になります。ハワイが日本人のリゾートと言われた時代がありましたが、日本人側から見ると、今や上海は日本の街とも言えるかも知れません。もちろん国際都市上海の中での日本のプレゼンスはどんどん影が薄くなっているようにも思いますが、2009年の金融テロ以降も、日本企業、日本人が、続々とやってきているのは間違いないと思います。

ただ問題は、前にも述べましたが、「日本の市場が厳しいからと言って、中国の市場を当てにしても、易々と勝てない!」と言うことです。日本の市場と言うよりは、そもそも自社の技術や製品の品質を磨き、世界のどこでも通用するような、あるいは、日本独自の強みを活かした戦略を組んでいる一部大手企業は別にして、日本の市場が厳しくなったので中国進出を検討!などと言った、ここ2年ぐらいの流れで進出してきた企業は、かなりの苦戦を経験することになるでしょう。

それはなぜか?成熟したとは言え、優良な市場のある日本でさえ、勝ち残れない企業の技術や品質では、欧米、韓国も巻き込んだ世界戦を強いられる中国で勝てるわけがないからです。先日、デフレの正体と言う本を読んであらためて思いましたが、日本の市場縮小を中国進出の言い訳になさるなら、少なくとも10数年前から中国に対する取り組みをしているのが全うな経営者のすることだとも思います。

思い起こせば、北京一人旅をした13年前、「日本負けてる!」と思い中国語、中国の世界に手を染めた私ですが、なぜか日本は、その後もメディアを中心に中国批判を繰り返し、世界の中でお日本の危機感を伝えなかった。日本と中国が結びつくシナリオは、親会社アメリカにはないだけに、ここは一つ、大手企業の、しかもエースに徹底的に頑張っていただきつつ、大手でさえ局地戦を強いられる環境においては、中小、ベンチャーは中国を1,000分割くらいに分析した上で、地域や市場の隙間を見つけていきたいものですね。


適正診断テストの英語・中国語版・・・ちょっとその前に!

2011-01-17 19:16:29 | 中国
今朝の新聞でしたか?適正診断テストの英語・中国語版を開発して、言語が違っても同じように適正がわかるテストが可能になるとの記事が載せられていました。確かに、現在は日本での留学生の採用ニーズも高まり、中国現地でも、中国人の採用には皆さん頭を悩ませているところ・・・一見、有益な情報に思えるでしょう。

しかし、久々にちょっとその前にです。先日は戦わないこと、磨くことと言うコメントをして、他の人のすることを批判してきたことに反省したばかりですが、やはり大新聞、大企業とは言え、明らかに問題のあることには意見しないわけにはいきません。もちろん、このブログでは数百名の方にしか届かないわけで、自己満足もいいところですが、経験から話せる分析ですので是非言わせてください。

私どもの会社、漢和塾では、私以外は全員中国人です。社員はもとより、講師も含めると、1,000人以上の採用テスト、面接をしてまいりました。以前にも、学歴、日本語能力だけでは判断してはいけないとコメントしたように、できる限り、彼らの実力を客観化できる仕組みは必要だと思い実践してきました。また、適正診断についても眼力に頼らずにできないものかと、私の前職出身者が提案してきた適正診断を弊社中国人向けに実施したのは、もう5年も前のことでした。

結果はびっくり。診断テストの担当者が出してくれた分析によると、弊社の管理職候補で採用した中国人の回答は、何一つ信頼できるものではなく、平たくいうと「嘘つき」です!と言うものでした。さすがに青くなって、中国人社員を呼び出して、いくつかの設問に関してどのように答えたのかを問うと、ある重要なことがわかりました。それは、適正試験を受ける以前の考え方、心構えの前提がずれていることです。例えば、何事にも積極的でスピードがある!と言うところを長所にあげたなら、多少、急ぎすぎる嫌いがある!と言う設問にも肯定はするでしょう。彼女の答えは、長所的なものには肯定を、短所になるかも知れないことはすべて否定したものですから、矛盾だらけ、何の信憑性もないデータになったのです。

考えてみれば、自分が試されるかも知れないテスト、あるいは本来テストと言われるものについて、「できない」「できないかも知れない」と言う答えは存在していない可能性があります。日本人ならではの感性で、多少素直に答えようとする心理を分析してつくられたテストを、単純に言語だけ変更してもあまり参考にならない。同じような設問を、何千、何万と分析してこそ、また新たな適正診断テストが開発される日も来るでしょうが・・・

当面は、感性を磨きながらも、質問のパターンを開発する・・・地道な作業を数多くこなすことかも知れません。


人生は・・・戦わないこと!磨くこと!

2011-01-15 19:15:08 | 中国
突然、人生論ですか?と突っ込まれそうですね。

久々の日本での土曜日、会社には出てきたものの、通勤途中に前に買ってあった「怒らないこと」と言う本を読んだこともあって、ふと自分の「怒り」について考えてみました。実際、最近のブログでも、大きなところでは、世界や日本の政府に対して、小さなところでは、語学学校や研修会社など同じ業界への不満について、ブログの文字という暴力をつかって批判したりしている僕がいます。

自分が正しいと言うエゴがそうさせるとは薄々感じてはいましたが、仕事で疲れたり、てんぱってくると、どうも言葉尻が辛辣になります。自分への苛立ちもありますが、それでもそんな苛立ちを怒りに変えて他人にぶつけること自体、よくないことだと思いました。その本の中でも印象に残ったのは、「怒りは幸せの大泥棒」と言うフレーズです。日本の政治に対して、自宅のテレビに向かって怒っている僕のせいで、妻は間違いなく幸せな気分を害している・・・自分の理想にはなかなか届かない講師の教育スキルについて、厳しい言葉を講師に投げかけてる時点で、僕は彼らの幸せを奪っている・・・なんだか反省することが多すぎますね。

ビジネスにおいて、日本でも世界でも当然、競争社会ではあるわけで、常に厳しい競争のもと、冷酷な結果も示されます。あの会社には負けない!あそこより安くしたい!業界で1位になりたい!などと言った感情は、経営者はもちろん、モチベーションの高い営業マンほど持ち合わせているのではないでしょうか?もちろん、常に高みを目指す気持ちは、品質改善の原動力になり、結果的に成果をおさめることもできるでしょう。

ただ、他社を批判したり、出し抜いたり、盗んだり、常にライバル会社を意識しながら生きることは、怒りを原動力にしているだけかも知れません。これは国家間の間でもそうで、中国に負けるな!韓国に負けるな!と息巻いても、そのような戦いは終わりのないもので、最終的には自分も傷つき、疲弊します。実際、世界で成功している企業を見ると、ナルシストとはちょっと違いますが、「ひたすら美を追求したい!」「便利な世の中にしたい!」と言った自発的な理念が先行しているように感じます。

講師の品質の向上は、「習うなら優秀な講師に習いたい!」と言う当たり前のニーズを満たすものでしかなく、当然、優劣は数字に出ますが、決して、他社や他人と戦うことではありません。他社や他人は刺激を与えてくれる恩人と考え、まずは自分を磨くこと・・・人生もビジネスも幸せへの第一歩はそこかも知れませんね。