西部劇と懐かしのカントリー&ウェスタン日記

現代とはかけ離れたOld Countryの世界ですがずっと続けていきます。興味のある方は時々のぞいてみて下さい。

西部劇ー32-(ゲイリー・クーパー西部劇 ”真昼の決闘”) Part4

2014年04月13日 | 西部劇映画

 
真昼の決闘( High Noon ) Part 4
主題歌を歌うテックス・リッターについて


トップの写真は1992(平成4)年にドイツの Bear Family Records 社から出されたテックス・リッターの「 High Noon 」というタイトルのCDです( BCD-15634 AH )。これに載っている解説はテックス・リッターのカウボーイ&カントリー歌手としての一大物語になっているので後日訳して載せてみたいと思っていますが、途中 西部劇「 真昼の決闘( High Noon )」の主題歌を歌うようになったいきさつが書いてあります。 丁度よい機会なのでこの部分だけ訳して載せることにしました、自分なりに補足・脚色を入れています・・・・・以下訳・・・・・

「1950年頃にはテックスは経済的に生き残るために国中を巡業してまわることに頼っていました。かつて自分が活躍した西部劇映画( B Western と表現 )はすっかり衰退してしまい かわって登場したテレビ西部劇にはお呼びがかかりませんでした。( 時代的に )Cowboy Song は売れなくなってしまい、彼のレコードももはやトップチャートに挙がることもなくなっていたのでした。こうした状況の中で 彼にはヒットレコードが必要になっていたのです・・・・そんな時に彼のもとに1本の電話がかかってきました・・・・ディミトリィ・ティオムキン( Dimitri Tiomkin )からのものでした。ある映画のサウンドトラックに唄を歌って欲しいと頼んできたのです。

スタンリー・クレイマーはゲーリー・クーパーとグレース・ケリーを使って新作西部劇 ” High Noon(真昼の決闘)” を完成させたのですが、試写の後この映画が静かすぎるということと 繰り返し出てくるクーパーが歩くシーンの退屈さを 何かで打破しないとお蔵入りになる-と判断したのでした。そこでディミトリィ・ティオムキンにこの映画を救ってくれるような曲を書いてくれ-と頼んだのです。ティオムキンはそうした退屈さをおぼえるような場面に一つの唄を繰り返し流したらどうだろうか-と考えました。 数日してメロディが出来上がると 作詞家の ネッド・ワシントン を呼んで歌詞を付けてくれるように頼んだのでした。二人は歌詞とメロディを抱き合わせて  ”High Noon ” を作ったのですが、それを 誰か Cowboy Singer にレコーディングしてもらう必要がありました。そこでティオムキンがテックス・リッターに白羽の矢を立てて電話して頼んだという訳です。
(CD解説に載っていた写真で白い服がディミトリィ・ティオムキン、真ん中がテックス・リッター、右がネッド・ワシントン) 

テックス・リッターはマール・トラヴィス( country guitar の名手 )他数人のミュージシャンを連れてスタジオ入りして サウンドトラックの下録音をしました。 録音が終わった後に、たとえ試写を見た人達にこの映画が評判悪かったとしても ティオムキンは Tex Ritter にキャピトルレコード社でレコーディングすることを提案しました。当時のキャピトルレコード社のプロデューサーは Ken Nelson でしたが、このアイデアに対する彼の反応は冷ややかなものでした。 そこで今度はティオムキンはコロンビアレコード社に話を持って行き、フランキー・レインとミッチ・ミラーがレコーディングする手はずを取りつけたのです。 ところが、それを聞いた Ken Nelson 等キャピトル社は心変わりして急遽 Tex Ritter をスタジオに呼んで ”High Noon ” を録音して6月21日に発売したのでした(19522=昭和27年5月14日録音)。 それはコロムビアレコード社のフランキー・レイン盤が出される1間前のことでした(フランキー・レインは1952年5月15日にニューヨークで録音)。 

キャピトルレコード社の連中はすぐにミスったな-と気付くことになります。 
というのは、当時のカントリーのミュージシャンやファンはドラムが好きではありませんでしたので、現在映画内でお馴染みになっている重苦しいドラム音は最初のテックス・リッター録音盤には入れられていませんでした・・・・・ところが、フランキー・レイン盤の方はドラムが入ることで歌に印象深い効果をもたらしていたのです。 そこで ケン・ネルソンはドラムをオーバーダビングしたテックス盤を発売し直したのでした、それが今に聴かれるキャピトル盤 ” High Noon ” というわけです。 
 
イギリスでは Decca Records 社が米キャピトルレコードの版権を持っていましたので そこのプロデューサーDick Rower は「 真昼の決闘 」を見てその挿入歌の効果にすっかり魅了されてしまいました。イギリスでは既にドラムなしのオリジナルレコーディング盤が出されていました。その歌の忘れられなくなるほどの効果はレコードにはなかったので Dick Rowe はそれをいじるような選択はせずに新しく録音し直すことにしたのです。

テックス・リッターがイギリス公演にやってきた時に Decca スタジオでの録音セッションを企画しました。この時の録音は他のどの録音よりもアレンジ、サウンド共にオリジナルに近いものでしたし、テックスの最高のレコーディングになりました( Master No.MSC126、Release No.CL13778 )。 不幸なことに、このイギリス録音盤はアメリカのキャピトル社からは発売になりませんでした。 
テックス・リッターが初めてこの歌を聴衆の前で歌ったのは この時のイギリス公演のロンドンが初めてだったのです。テックスはキャピトル盤LPレコード ” Tex Ritter : An American Legend(SKC-11241)” の中で1973(昭和48)年5月にスコットランドとイングランドを巡る31日間の演奏ツアーをした時のある夜のコンサートで、聴衆の前で-この歌を初めて歌ってから21年経つけれど今でも最もリクエストが多いのは ” High Noon ” なんです-と述べるにいたっています。

アカデミー賞授賞式の時にテックスは ” High Noon ” を歌うように要請されました。しかし、彼は Academy 賞選考ほどにはその歌にそれほど感銘を受けませんでした。式の間中その唄を歌うことになったいきさつについて喋らされなければならなかったからです。アカデミー賞では 「 真昼の決闘(High Noon)」はベストソングと最優秀作品賞、ゲーリー・クーパーの男優賞、ベスト制作を受賞しました。かくしてテックス・リッターは再び国中の注目を浴び、Cowboy singing talent の栄誉に輝いたのでした。」

<ここで私の想像をちょこっと>
キャピトルレコードの Ken Nelson がはじめ ” High Noon ” のレコーディングに冷淡だったのは映画そのものを観ていなかったからではないでしょうか・・・・見てはじめてこれはすごい映画だ-と感じて あわてて Tex Ritter のレコーディングに踏みきった・・・・と想像します。今に轟く名作ですから当時 鑑賞してみて驚いたとしても想像に難くないですね。ちなみに、このCDにはここで出てきた Tex Ritter 録音盤の全てが入っています

コメント
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