メイキング・オブ・マイマイ新子

映画「マイマイ新子と千年の魔法」の監督・片渕須直が語る作品の裏側。

知らない町の50年前の再現に挑む

2009年08月27日 23時30分49秒 | mai-mai-making
●主人公のモデルでもある原作者・高樹のぶ子氏
       「この映画には、自分の子ども時代の家の周囲360度の風景
       が、記憶どおりに再現されている」


●試写を見た元・防府在住者
       「映画の中で今、自分が東西南北どの方向を向いているのか、
       描かれた山の形を見るだけで、すぐにわかった。なつかしい」


●ロカルノ国際映画祭で松竹・鈴木忍プロデューサーは一言こう紹介した。
       「この監督はハード・リサーチャーだ」



 以前、『アリーテ姫』という映画の企画中にこんなことを考えました。
「少しばかりリアリティを感じさせてヨーロッパの中世の生活感を描き出せないかな?」
 同僚からは,
「無理無理。学者じゃないんだから考証しきれないって。無理。やめとき」
 と、いわれつつ。

 『アリーテ姫』は、パリのフォーラム・デ・ジマージュ(イメージフォーラム)で上映する機会に恵まれました。上映後に質問を受け付けると、とあるフランスの青年がこんなことをいいました。
「なぜ日本の人がフランスを舞台に映画を作ろうと思ったのですか?」
 あれれ? フランスの観客の目には自国が舞台と写ってるようだぞ。ちょっとはリアリティを感じてもらえたということなのかしら。
 フォーラム・デ・ジマージュの責任者カワ=トポールさんの本職は中世史研究だったのですが、意外なことに、
「この映画のヨーロッパ中世の表現は、結構出来てると思うよ、そこら辺のフランス製映像と比べても立派」
 とおっしゃるのです。
 畏れ多いことです。


 『マイマイ新子』の映画化企画が動き出したとき、じゃあ、同じことを日本を舞台にしても出来ないかな、と、またまた考えてしまいました。
 今度の映画には舞台としてふたつの時代が登場します。
 ひとつは昭和30年。時代だけとれば、昭和35年生まれの自分にも近い実感があるので、まだしもなんとかなりそうな気もします。
 けれど、それが「昭和30年の山口県防府市国衙」と来るのですから。
 自分自身行ったことも見たこともない町の50年前。どうすればそれを再現できるのでしょうか。だけど、実際に手にとって眺められないものを再現するのこそ、アニメーションの役回りなんだぜ、と心にいい聞かせ。

 制作に着手したのは、その前に手がけていた仕事がひと段落つきかけてきた2006年12月。ひと段落しそうでも完全に終わったわけではなく、監督という立場、図書館までも出歩けません。まずは、机の上でそれらしいキイワードでインターネット検索して、古書店にかたっぱしから注文をかけてみました。
 ええ、中身見ずテンで、いきなり注文です。 
 どうなってしまうのでしょう。


        ちなみに山の名前は、
             北=「多々良山」「矢筈ヶ岳」
             東=「大平山」
             南=「江泊山」「向島」
             南西=「桑山」
             北西=「天神山」「西目山」「右田ヶ岳」
        そのいくつかは、高樹文学の中にも登場します。
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