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メイキング・オブ・マイマイ新子

映画「マイマイ新子と千年の魔法」の監督・片渕須直が語る作品の裏側。

公開以来のべ100日経過

2010年02月26日 23時54分09秒 | 日記
ちょっと数えてみました。

昨年11月21日の劇場公開開始から今日まで、14週間、98日になっています。
その前、11月14日、15日に、山口県内4館で先行上映を行っています。

合わせてちょうど100日です。

『マイマイ新子と千年の魔法』は、世間に出て以来、のべ100日を経過しました。

この間一日も欠かさず日本のどこかの映画館で『マイマイ新子と千年の魔法』が上映されてきたわけですが、100日目の本日夜の横浜ニューテアトルの上映回のあと、一、二週間ばかりお休みをいただきます。

もちろん、上映はこれからも続きます。
次は、3月6、7日のワーナー・マイカル・シネマズ防府でのアンコール上映。
さらに、3月13日からの東京渋谷シネマ・アンジェリカ。
そして、3月20日からは、兵庫・宝塚、佐賀、長崎、3月27日より北海道・北見で上映が続きます。

とりあえず、ほんの一、二週間だけお休みをいただきます。

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マイマイフランス便り(11)

2010年02月21日 15時08分24秒 | 日記
 2月14日日曜日のさらに続き。

 最後の質疑応答が終わりました。
 フランスにおけるふたつの映画祭への公式参加は、これですべて終了してしまいました。

 廊下に出ると見知った顔があります。シネ・ジュニアで僕たちを車に乗せて運んでくれたルカさんです。
 明日以降、フランス語字幕入り『マイマイ新子と千年の魔法』プリントはイマージュ・パル・イマージュから再びシネ・ジュニアに引き継がれ、まだまだ16日まで上映が続きます。ルーカスさんはそのプリントを受け取りに来ていたのでした。久しぶりだね、と、握手。プリントを頼んだよ。
 プリントはまた、ルカさんの小さな車で、次の上映場所に向けて運ばれてゆきました。シネ・ジュニア映画祭は20か所の映画館を結んで開催されています。そのうち、17か所で『マイマイ新子と千年の魔法』が上映されるのです。

 劇場を出ようとして、「『アリーテ姫』上映、『マイマイ・ミラクル』上映、カタブチスナオ監督の舞台挨拶と質疑応答」と書かれた紙が、イマジュ・パル・イマージュのポスターの上に貼られたままになっているのに気づきました。
 イーブさんの袖を引いて、「これ、欲しいんだけど」と日本語でいうと、丁寧にはがしてくれました。言葉は通じなくても、気持ちはいくらでも通じるもんです。

 イーブさんの車でパリに向かい、ラギオニのシナリオライターであるアニク・ル=レイさんお勧めのレストランで、アニクさんもまじえて最後の晩餐となりました。これでエスカルゴも食べられたし、牡蠣や冷たい貝も食べられました。要するにメインディッシュなしの前菜二皿注文だったのですが、午後11時を過ぎてそれ以上のものを食べる元気はもはやありません。
 そういえば、今日はバレンタインデーなんだったっけ。一個だけ持っていたウイスキー・ボンボンをアニクさんにプレゼントしました。アニクさんは貴伊子みたいに上品な食べ方をされました。
 イーブさんには、今日の上映を見に来てくれていたという彼の娘さんたちのために缶バッジを。チャーリーズ・エンジェルズの三人娘にもくれないか、というのでその分も。
「でも、なんだかもうおねむみたいなのね」
「たぶんジェットラグのせいなんでしょうな」
「ぐっすりお休みなさいね」
「そのほうがいい」

 何日ぶりかでパリのソルボンヌの隣のホテルへ戻ると、すでに午前1時です。
 イーブさんは車のトランクからスーツケースを降ろしてくれ、さらにトランクの奥を探っていろいろと取り出し始めました。ワイン、もう一本少し甘めのお酒、それからこっちはヒコーキ好きのあなたのために飛行機の本。
 あ。泣かせようとしてるな、こいつ。

「サンクス・フォー・ユア・カインドネス」
「何いってんです。あなたは美しい映画たちを携えてやって来てくださった。映画にまつわる素敵なお話をいくつもされた。そのおかげで、あんなにたくさんのフランスの子どもたち、大人たちが心になにかを確かに宿すことができた。そうしたことに携われたことを誇りに思っているんです」

 マイクを握ったら話さない、携帯電話で話はじめたら終わらない、だけど普段は決して口数の多くない彼が、いつになく穏やかな口調でまっすぐにこちらの目を見て、ゆっくりした英語で、熊さんみたいな声で話しかけてくれる。
 何回にも及んだ舞台挨拶や質疑応答を通じて、『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』の置かれた状況を今ではよく知っている彼の言葉だからこそ、胸に沁みます。

 ああ、だめだ。本気で泣かせようとしてやがる。

 ということで、パリでも熊みたいなおっさんと抱き合う羽目に。

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マイマイフランス便り(10)

2010年02月21日 06時33分31秒 | 日記
 2月14日日曜日、つづき。

 一昨日映画祭オープニングが行われたアンギアンの映画館へ移動。
 映画館のロビーでは、子どもたちを対象に粘土アニメのワークショップが開かれていたり、アニク・ル=レイさんが自作の絵本のサイン会を開いていたり。
 ここで、『マイマイ新子と千年の魔法』上映終了後の質疑応答を行いました。子どもたちの顔、彼らを連れてきた親御さんたちの顔、それぞれが印象的です。

 そしてまた次の上映会場であるサン・トワーン・ロモーヌ市(Saint-Ouen l'Aumone)の映画館へ。『アリーテ姫』上映後の質疑応答、および、その次に始まる『マイマイ新子と千年の魔法』の紹介。
 上映開始前に一応時代設定などを説明しておこうと思ったのですが、座席に二人だけいた子ども客には難しいかもしれない、と思ったので、

「お子さんたちにわかりやすくいうなら、まだテレビがなかった頃のお話なのです」

 と、いってみたところ、子どもたちは目をまん丸にしていました。子どもたちにとっては、
「テレビが存在していない」
 というのは驚愕すべき、ひょっとすると、怯えるべき世界であるようなのです。

 そして、再び上映後の質疑応答。
『アリーテ姫』と『マイマイ新子と千年の魔法』を続けて見た観客の方が、
「確かに同じ作家の作家性を確認できた」
 などといってくださいます。
 そろそろ午後9時近いので、先ほど目を丸くしていた子どもたちが親に連れられて帰り支度を始めています。あわてて缶バッジを引っ張り出して、おわたししました。
「ドウモアリガト」
 小学生の女の子たちが日本語で答えてくれました。

 質疑応答は、イマジュ・パル・イマージュではずっとイーブさんが司会を勤めてくださってます。もう何度目かになるので、さすがに以心伝心になってきて、「あの話を観客にしてあげてください」などと話題を振ってきてくれる関係になってきています。

「新子の家の周りの麦畑は、家が立ち並んで消滅しました。貴伊子の社宅は数年前の台風で壊れ、立て直されてしまっています」

 と、紹介していると、
「工場は? 工場はどうなってしまったの?」
 と尋ねてくる方もありました。
「工場は数年前に閉鎖され、今は別の企業になっています。一部の土地はショッピングセンターになっています
 と、答えると、この女性は、
「ああ・・・・・・」
 と、ため息をついていました。何か工場に思うところがあったのでしょうか。
 子どもたちにとってはテレビの有る無しが、大人たちにとっては失われてゆく何かが、日本のわれわれとフランスの観客を結ぶ共通認識となりやすいのかもしれません。
 しかし、この映画は、失われたものへの郷愁にふけるためのものではありません。

「埋立地はさらに沖へ延びて広がっています。今、その突端に立つとそのとき、千年前に諾子が舟でやってきたまさにあの海の上に自分が立っていることを発見します。あの土地を取り巻く山々の形はいつまでも変わりません」

 ね、その感覚はおもしろく、楽しいでしょ、と。

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フランスからの手紙

2010年02月20日 11時49分59秒 | いただいた感想より
2月12日、イブリーでの上映をご覧いただいた、在仏日本人女性Fさんからお手紙をいただきました。

『マイマイ新子と千年の魔法』をご覧になったあとの6歳の息子さんの様子がとてもかわいらしかったので、お許しをいただいた上で、ここに手紙の一部をご紹介させていただきます。

(当然ながら、多少のネタバレありです)




―・―・―・―・―・―・―

2月12日にパリ郊外のイヴリー市での「マイマイ新子と千年の魔法」の上映会に行ってきました。
素敵な時間をどうもありがとうございました。
それから、上映後、金魚の件を質問させて頂きました息子に大変優しく答えて頂いた事もあわせて本当に感謝しています。

息子は今6歳で、普段フランス語中心の生活をしていまして、日本語はまだちょっと覚束ないし、字幕も追えないため、まだまだ理解出来なかった部分も多いと思います。

が、上映後いろいろ新子の世界について話してくれました。
息子が監督に伝えて欲しいと言った内容(感想)は、まとめるとこんな感じになります↓

「新子ちゃんと諾子は2人別の人物に見えるけど、僕は本当は一緒の女の子だと思う。
普段は新子ちゃんだけど、寝てるときや髪が立ってるときは1000年前に時間の旅行に行ってるんだと思う。
でも時々時間が混じる。
時間が混じってる時に金魚が死んだ、、
だから僕は、死んだのは今の金魚じゃなくて1000年前の金魚だと思う。
なので今の金魚の方は生きてると思う」

というものでした。
金魚の件は、最近、家で飼っていたウサギが死んだばかりだというのも関係しているのかもしれません。
いろいろなアンテナを立てて作品を感じてるんですね。
言葉自体の理解は難しい部分もあったようですが、作品を見て感じることが多かったみたいで、当日の夜、一緒にお風呂に入りながら、いろいろな空想を話してくれました。

息子は「次はパパも一緒に見たい」と言っています。
また、フランスで上映されるのを楽しみにしています。
DVDもいいですけど、やっぱり映画は映画館ですよね!

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ラピュタ阿佐ヶ谷・シネ・ヌーヴォ上映終了

2010年02月20日 03時55分10秒 | 日記
 2月19日。
 上映終了となる東京と大阪の映画館。
 大阪のシネ・ヌーヴォには顔を出せなくて申し訳ありませんでした。

 ラピュタ阿佐ヶ谷は、21時からの上映を前に、18時台に補助席まで満席。今日もたくさんのお客様を積み残してしまった格好になって、これも申し訳ありません。

 上映終了後の舞台上から御礼を申し上げ、観客の皆さんを送り出した客席では、補助席の片づけが始まります。折りたたみ椅子を片付けながら、石井紫(ゆかり)支配人が泣いておられます。
 さびしいのはこちらも同じです。

 何組も去りがたくホールに残るお客様がおられます。そうした方々もすべて帰られると、撤収作業です。
 ラピュタ阿佐ヶ谷のホールの展示物はすべて片付けられました。みんなで楽しく遊んで部屋中に散らかった玩具箱の中身を片付ける気分です。
 観客のおひとりが自作して持ち込んでくださったキャラクターのスタンプは、マッドハウスの丸山正雄プロデューサーが、大事に預かります、と持って帰りました。
 同じく、赤い紙切れと、メンコ、ベーゴマは片渕が預かっています。
 何回にもわたる上映延長のシールが貼られたポスターには、みんなで寄せ書きをしました。これはラピュタ阿佐ヶ谷で保管されます。いつの日か「おかえりなさい新子ちゃん上映」をする日のために。

 フランスで映画館のネットワークを作ってイマージュ・パル・イマージュ映画祭を行うイーブさんからお土産に持たされたワインをここで開けて、最後の乾杯をしました。実は12月19日の初日を満席で迎えられたときにも、ここで劇場スタッフの皆さんとわれわれとで乾杯しました。
 あれからのべ50日間の上映で、座席定数48席のラピュタ阿佐ヶ谷で、合計のべ2463名の観客を迎えることが出来ました。

 最終日、満席になったあとの電話問い合わせに、申し訳ありませんとお断りを告げる劇場スタッフに、
「ずっと長いあいだ上映してくださってありがとうございました」
 と、ねぎらいの声が寄せられていたそうです。
 それも何名もの方から。断わられて映画を見ることが出来ないはずなのに。
 こうしたたくさんの優しい心を見出すことができたのが、この映画を通じての最大の幸せなのです。

 打ち上げの席上、エイベックスの高谷さんに肩をマッサージされてしまいました。
「監督、いけませんよ。完全に固まってますよ」
 と、何十分も。
 チーフプロデューサーにあんなことさせて申し訳ないです。
 だけど、あったかいよね、こういうの。身に染みました。

 高谷さんとはじめて出会ったのは2007年、最初のロケハンの山口での宿だったのだけど、あのとき、僕はずっと宿屋のマッサージ椅子に何時間も浸りこんでいました。
 今、高谷さんはご自分の手で、ガチガチに凝り固まった監督の肩を解きほぐそうとしてくださっている。
 別れ際も、高谷さんは、車のところまで見送っていただいて、
「明日からもまたよろしくお願いします」
 と。

 ええ。
 明日からも、まだまだがんばりますので。

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