次期戦闘機の性能で、日本は対空能力を英伊は対地能力を優先したいとみられている・・・と防衛相幹部が説明しているとのこと。
(https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/491787.html 「次期戦闘機輸出 深まる与党内対立 なぜいま輸出の議論が求められるのか」(2024年02月15日 梶原崇幹 NHK解説委員)
岸田首相が3月5日に西田議員(公明)に答弁した「空対空能力を重視して」いるが故の具体的要求点として挙げた、
・ レーダーやカメラ等を通じて脅威の状況を把握するセンシング技術
・ 相手から見えにくするステルス性能
・ 敵味方の位置情報を通信で共有して組織的な戦闘を行うネットワーク戦闘
・ 航続距離等
・・・は、英伊の要望とどう違うのか。上のNHKサイトのページを読んだ。
私は、「こういう性能がいらない国なんてあるわけがない。」と先日書いた。う〜ん、思い込みでしたか。
「日本は、専守防衛の立場から、相手の領域に戦闘機を送ることは想定せず、むしろ、「航空優勢」、味方の航空機が大きな妨害を受けることなく作戦を実施できる状態を確保するための「対空能力」を重視しています。そして、中国などを念頭に、数の上で圧倒的に不利な状況で、1機で複数の戦闘機に対応できるよう、多くのミサイルを積むことができる能力や、より遠方から相手を見つけ出せるよう高出力のレーダーが不可欠だとしています。」
「一方、イギリスやイタリアは、ロシアを脅威ととらえており、地上の敵への対応、対地能力を重視しているとみられています。このため、地上を攻撃する爆弾を多く積むことができる能力や、地上の状況を把握する多くのセンサーを機体の下部に取り付けることを求める可能性があるとしています。」
(1) 英伊はセンシング対象が空ではなく地である(ステルスのあり方も変わるのかどうかは私にはわからず)
(2) 英伊はミサイルでなく爆弾をたくさん積みたい
・・・というのが違いなのか。
対象が「空」か「地」かでセンサーの取り付け位置が変わる。ということは、対象を「空」とした性能の戦闘機が護衛するんだろうな。
そっか、納得!・・・と書くのはまだ早くて。
日本と英伊では欲しい戦闘機のタイプが違いすぎるんじゃないの?
能登半島地震への自衛隊の対応についての木原防衛相の答弁には、目的(運ぶのは負傷者か燃料か、とか?)に合わせてヘリコプターに手を加える話があった。戦闘機でもそれはできるのか?
できるなら、
「えー、具体的には機体のサイズやコストに制約があり、各国すべての要求性能が実現できない中、各国が同等の貢献を行うことを前提に自国が優先する性能の搭載を主張し合う、こういったプロセスでもあります。」「我が国が優先する性能を実現するために、英伊が自ら求める性能を断念することは想定されず、我が国が求める戦闘機の実現、これが困難となります。」
という岸田首相の答弁は矛盾する。
ということは、できないんだ。
次期戦闘機が、対空に特化(日本の要望)か対地に特化(英伊の要望)の択一になるなら? 日本か英伊にとってあまり役に立たない。
両者の要望のバランスをとった物になるなら?
私には知識がないのだが、そういう中途半端な戦闘機は日本と英伊の両方に使いにくいのではないか。
それとも、戦闘機界では目的に沿った仕様から外れた物を使うことは珍しくないのだろうか? そんな馬鹿な・・・ 昔の、もっとアナログな、操縦士の腕次第的な戦闘機ならともかく(朝鮮戦争では第2次大戦での経験ある米パイロットだったのでミグに勝てたそうだが)。
おかしいなあ。
「我が国が求める性能を有する装備品の取得維持が困難となり我が国の防衛に支障をきたすことになる。」(岸田首相)というのは、英伊も同じはずなのだが。
日本が第三国輸出をするなら英伊も対空タイプで良い、と確約しているのか?・・・それならやはり日本がのせられたような。
日本が第三国輸出を決めてもまだ交渉次第なのか?・・・それなら、ほぼ対地なタイプの戦闘機になってしまう結末もあり得る。それって自衛隊パイロットの安全に関わる問題なので、譲ってはいけないよね?
または、岸田首相が(またもや)嘘をついていて。
本当は対地タイプで良し・目的は共同開発に参加すること・兵器の第三国輸出解禁の口実にした・・・という線も私は疑う。
いずれにしても、「第三国に輸出する」だけでは済まないだろう。
その前に生産・さらに前に営業が必要だ。だって受注生産だから。日本は生産と輸出(とメンテナンスも?)だけ、とは思えない。イギリスやイタリアよりも日本が営業できる国? 東南アジア説がある(*)。
ここでまた、対空タイプ・対地タイプのどちらになるかが影響する。
日本が要望する対空タイプって、需要は大きいのかなあ。日本のせいで売れない戦闘機になったから責任とれ、とか言われない?
生産数増も狙うなら需要が大きいタイプにしないとおかしい。自国が望まない仕様になったあげく売れなかったら?
または、東南アジアには対空タイプが売れそうなので、という話がついていたりするのか? この場合、「第三国輸出の必要性」は英伊に求められたせいではなく、東南アジアに売るための制限はずしがもともと日本政府の意向だったのではないか。
・・・と考えると、岸田首相の説明は全く足りていない。
首相の答弁には、兵器の第三国輸出を回避したい、という葛藤は全く感じられない。
・・・なんにせよ、情けない。
こういうことをこんな日に書いている状況が。
(岸田首相は東日本大震災を悼む言葉を発するだろう。聞きたくないね!)
こういうトラブルから、憲法が守ってくれていたものなのに。
今初めて憲法を習う小学生は、条文と現実の矛盾をどう思っているのだろう。第2次安倍政権以降、憲法が形骸化させられてきたが。今はもう、形骸化した憲法のもとで日本人が生まれ育つ時代になってしまったか。
自民党と公明党がとんでもない失敗をして日本に災いをもたらすのか。
または、悪だくみを隠して日本をとんでもない方向に持っていこうとしているのか。
例えば、自分の所属政党の議員達すらコントロールできない。そんな岸田首相が、イギリスとイタリアとの共同開発・東南アジア諸国の在り方・10年先の戦闘機のあり方に手を出している。危ないに決まってる。
安全保障政策は難しい。だが、とりあえず、岸田首相はポンコツなので止める、そういう判断でいいはずだ。
他のことはものすごくだめだが安全保障政策だけはできる、そんな人はいない。
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(*)
「自民党では、周辺の東南アジア諸国で戦闘機を防御的に活用する国に輸出すれば、国際紛争を助長することなく、望ましい安全保障環境を創り出すことつながるという見方が多くあります。」(「次期戦闘機輸出 深まる与党内対立 なぜいま輸出の議論が求められるのか」)