◆電話の便り
「おまえ昨日、佐藤のところに電話しなかったか?」
「何時ごろ」
「三時から五時のあいだ」
「その時間帯なら会議室で提案の熱弁張っていたよ」
「電話なんかできるはずがない」
そうか
「それで 佐藤はなんと言ってたのだ」
「おまえからの妙な電話があり、
小さな声で「ボソボソ」わからないことを
そして最後に、力ない声で
「さようなら、お元気で」と言ったそうだ」
「ほんとかね、そんなおぼえ、全くないね」
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「おい、昨日佐藤死んだよ、脳梗塞だったそうだ」
「清水、おまえ、おれのところに妙な電話かけてくるなよ、ナ」
講談社「世界全史」より
◆たわわに熟したブドウの木の下
コンキツネは今年も見た。
「熟してうまそうだな」
挑戦、努力、努力だ今年こそ
コン・コン・飛びつくがとどかない。
「あれは熟し過ぎた色、
酸っぱい苦い葡萄よ」
言い捨てて、まてよ、
毎年同じようでは人間に笑われる」
ここは一つ思案のしどころ
うまい手がある、その鋭い牙なんのため
幹ごと引き倒し、これでらくらくこれでよし
「ああ、おいしかった」
「おれの頭も捨てたものではないナ
満足満腹、来年もこの手でいこう」
(天才ピンボケ)