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 国内排出量取引制度、政府原案を公表 削減目標、自主的に設定

2008年10月16日 | 国内排出量取引制度




 政府は17日、温暖化対策に関する有識者懇談会を開き、10月から試行実施する温室効果ガスの国内排出量取引の原案を公表した。

 取引の前提となる排出削減目標の設定は、政府の規制ではなく企業が自主的に決める方向で決着。今回の試行を将来の本格導入の前提としないことも確認した。

 産業界への配慮が伺える内容だが、事業所や企業単位での目標設定を基本とする政府案に対し、産業界の委員が「業界団体単位での設定を認めるべきだ」と反発するなどしこりも依然残っている。


●自主行動計画を目安

 試行の参加企業は、日本経団連の自主行動計画を目安として自社の削減目標を設定し、達成に向けて自社で削減努力を進めるか、他から排出枠を購入するかを選択することとなる。

 政府案は自主的な削減目標を設定した企業同士での排出枠の売買のほか、中小企業での削減分を排出枠として購入できる国内クリーン開発メカニズム(CDM)制度や、途上国から排出枠を調達する京都議定書のCDM制度の活用を認めている。

 このほか政府案は排出量の測定のしやすさを勘案し、試行の対象とする温室効果ガスを当面はエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)に絞る方針を明記。

 排出総量ではなく排出原単位による目標設定も認めた。これらについては懇談会でも特に反論はなかった。


●業界団体単位での目標設定

 意見が割れたのは削減目標を設定する単位について。

 森本宜久委員(電気事業連合会副会長)や関澤秀宮委員(日本鉄鋼連盟環境・エネルギー政策委員会委員長)が業界団体単位での目標設定を認めるよう訴えた。

 森本委員は「企業ごとの目標設定は、業界団体ごとに目標を定めた自主行動計画の実効性を喪失させる」と懸念を表明。

 関澤委員は目標設定だけでなく、取引に関しても業界団体単位での参加を認めるよう要望し、排出枠調達のために鉄連の加盟各社で資金を拠出するファンドの創設構想も明らかにした。


●議論持ち越し

 これに対し、坂篤郎内閣宣房副長官補は「市場の中にクジラがいると、取引はうまくいかない」と関澤委員の意見を否定。結局、懇談会では業界団体単位の参加を認めるかどうかの結論は出ず、議論は持ち越しとなった。

 関澤委員は業界団体単位での参加が認められない場合、試行への参加そのものを取り止める可能性も示唆している。

 懇談会では企業の排出量が正確に測定されているかどうかを監視・検証するモニタリングの仕組みについても質問が集中。「あまり費用を掛けるわけにはいかないが、容易なものでは勝手な目標がまかり通ることになる」といった懸念も出た。

 政府側は「きっちりしたモニタリングの仕組みをつくって信頼性を高める一方で、慣れない企業の利用を想定して、できるだけ仕組みを簡素にする必要もある」と説明。

 今後、関係省庁で詰めの議論を行うとしている。





【記事引用】 「日刊工業新聞/2008年9月18日(木)/14面