民無信不立(民信なくば立たず)
「信」という言葉は、迅速の「迅」にもっとも近い。
「信」=「迅」である。
現代の北京語では、手紙(メール)のことを「信」という。
すばやく(迅速に)相手に届いてほしいという気持ちがこもっている。
今でこそ電子メールは一瞬で相手に届くが、昔は、馬・舟・伝書鳩・飛脚等を用いて、相手に届くまでには相当な間(ま)があった。
「信」(シン)のワードファミリーには、
すべて「速く進む」という基本義がある。
疾・窃・進・晉・信・迅
などは、すべて「すばやく進行する」ことをあらわす。
○迅速(ジンソク)の「迅」は、速く進むこと。さっと速く鳥の飛ぶさまを表す字形。
○疾病(シッペイ)の「疾」は、病気が急速に進行(悪化)すること。
○窃盗(セットウ)の「窃」とは、人にきづかれないよう、すばやく盗ること。
○進行(シンコウ)の「進」は、鳥が飛ぶように速く道を歩くことを表現した字形。
※進←→退(歩みが滞る)
○晉(シン)は、二本の矢が目標をめがけて、まっすぐに進むさまを表現した字形。
ここで「信」についてみてみると・・・
その字形は、「人」+「言」(古文の字体は人+口)
[sien](北京語のピンインはxin4)というコトバは、
「制約や支障も受けずに、速やかに進行する」
ということを意味する。
ウソやいつわりがあれば、言動はとどこおる。反対にウソやいつわりがなければ、誰に対しても話がすらすらと進む。
かつて、福島第一原発が爆発した後の状況やらその後の放射線の影響やらについて、原発御用学者の一人(名前は忘れた)と、当時京都大学原子炉実験所助教であられた小出裕章(こいでひろあき)先生の二人がメディアの場で、それぞれ意見を陳述し合ったことがある。
私には御用学者の説明は、何を言わんとしているのかさっぱり分からなかった。文脈がめちゃくちゃで要領を得ない。要点もわからない。モヤモヤモヤモヤとした気分になった。
(携帯電話の料金体系の説明なども同じ。何がなんやら分からない)
それに対して、小出先生のお話しは、スーッとすばやく心に届いた。すくなくとも小出先生が何をおっしゃろうとしているのかははっきりと明確に理解できた。
それはおそらく小出先生が事実をそのまま具体的に理路整然と列挙してくれたからだろう。
御用学者のように、心に「なんとかごまかしてやろう」という思案があれば、無駄に言葉を飾らざるをえず「粉飾」によって、文脈がいらずらに乱れ、その言が相手に「すーっと届く」ことにはならないのである。モヤモヤばかりが残り疑念が生じる。
現在のコロナの状況もまたしかり。
御用学者(感染研)の言っていることよりも、小出先生ほど明快ではないかもしれないが、上昌広(かみまさひろ)先生や、白鳳大学の岡田晴恵(おかだはるえ)先生の発言の方が、少なくとも私にはすーっと通りやすく感じる。
しかし肝心の我が国の宰相は、通りにくいも何も、「息をするようにウソをつく」と言われているほどだから、「信」にはほど遠い。
「朋友と交わりて信」(学而)
「民信なくば立たず」(顔淵)
子貢問政。
子曰:「足食,足兵,民信之矣。」
子貢曰:「必不得已而去,於斯三者何先?」
曰:「去兵。」
子貢曰:「必不得已而去,於斯二者何先?」
曰:「去食;自古皆有死;民無信不立。」
古(いにしえ)より皆死有り。民信無くんば立たず。と。
https://kanjikazoku.crayonsite.com/
漢字家族・漢字の語源(スマホ用サイト)
漢籍・原典(漢籍リンク集)