漢字家族BLOG版(漢字の語源)

漢字に関する話題など。漢字の語源・ワードファミリー。 現在、荘子「内篇」を素読しています。

牛に関する熟語について(荘子が招聘を固辞した故事)

2008年12月09日 06時33分49秒 | Weblog


 [ブログ内検索][牛・丑・うし・ウシ(漢字の語源・成り立ち)]
に関する熟語について

 辞書を引けば、「牛」に関する熟語は少なくないことがわかる。

牛衣
牛飲馬食
牛券
牛車
牛酒
牛女
牛郎
牛斗
牛心炙
牛馬走
牛歩
牛毛
牛喘
牛溲 ・・・ ほほーう (^^;
牛驥同竜

 などなど、「牛」があたまにくるものだけでも枚挙にいとまがない。

 牛鼎烹鶏(ギュウテイホウケイ)

  というのがあった。

  牛鼎(ギュウテイ)にて鶏(ケイ・にわとり)を烹(に)る。

  すぐれた才能・能力を持つ人物は、つまらぬ事をやるのには適しない。を入れて煮るような大きな器でを煮るようなもので、役不足だということ。

   割鶏焉用牛刀(鶏をさくになんぞ牛刀を用いんや)


  『荘子』内篇の素読 をつづけているが、荘子ならこんな不平は言わない。それどころか、国王からの招聘をさらりとことわっているのだ。かっこいーい!

(用意されたポストでは役不足だと不平を言ったのではなく、どんなに厚遇されたとしても、世間的な名誉になんか興味なし、まっぴらごめんだよ ということ)

   [荘子、濮水に釣す(荘子・秋水篇)]


  に関する熟語や故事は、他にもまだまだありそうだ。



招聘(ショウヘイ)
 しかるべきポストを用意して招く。厚遇を約束して雇用すること。
 つまり、国王の「師」として招くこと。

 本来は、外部の人を一日講師として招くような時には「招聘」などとは言わない。これは便利使いしているだけ。礼を尽くして、下にも置かぬ待遇で雇い入れることが「招聘」である。

 「彼は、学長として招聘された」 というような使い方をする。


牛・丑・うし・ウシ(漢字の語源・成り立ち)


荘子:斉物論第二(21) 夫道未始有封

2008年12月09日 05時32分44秒 | 漢籍
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荘子:斉物論第二(21)

 夫 道 未 始 有 封 。 言 未 始 有 常 。 為 是 而 有 畛 也 。 請 言 其 畛 。 有 左 有 右 。 有 倫 有 義 。 有 分 有 辯 。 有 競 有 爭 。 此 之 謂 八  。


 夫(そ)れ道は、未だ始めより封(ホウ・くぎること)有らず、言は、未だ始めより常(つね・さだまれるなかみ)有らず。是(こ)れが為(ため)にして畛(シン・くぎらるること)あり。請(こ)う其の畛(シン・くぎり)を言わん。左あり右あり、(あげつらうこと)有り(ギ・はかること)有り。分(ブン・わかつこと)有り(辨 ベン・さだむること)有り、競(キョウ・きそうこと)有り争(ソウ・あらそうこと)有り。此(こ)れを之(こ)れ八徳(ハットク)と謂う。

 道とは、本来何の境界秩序もない渾沌であった。また道に対する言も、本来それだけでは何ら一定の内容をもたない純粋形式にしかすぎない。ところが、この渾沌としての道が、言の内容として摂取される。実在が概念的認識の世界にもたらされると、そこに道の「畛」すなわち境界秩序が成立する。今、参考までにその境界秩序をあげてみよう。

 まず成立するのは、右と左という秩序づけ、すなわち対偶の観念である。次に成立するのは論議すなわち両者に関する比較討論であり、次には、この両者の弁別と価値づけであり、次には、価値づけられたもの相互の対立と闘争である。

 この「左と右」「論と議」「分と辯」「競と争」を八徳という。

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例によって、この一節も、全面的に福永光司先生の解釈に依って読ませていただきました。
 是非とも、福永光司先生のご著書をご覧ください!
  参照:「荘子 ─ 中国古典選:朝日選書・朝日文庫」


(ホウ)
 限界、境界。



 ■音
  【ピンイン】[zhen3]
  【呉音・漢音】シン
  【訓読み】あぜ
 ■解字
  会意兼形声。
  右側の字(音シン)は、びっしりつめる意を含む。
  畛はそれを音符とし、田を加えた字で、びっしり作物を植え田畑の間に残ったあぜ道。
 ■意味
  田と田との境をなしている小道。
   転じて、ものごとの区画分別の意。


有倫有義
 『釈文』によると、ある本では「有論有議」とあったという。
 郭象は「倫」を「理」の意味に解する。


八徳
 『老子』三十八章 ─ 道を失いて徳あり。「徳」=「得」。
 八徳とは、人間が道に心知の分別を加えて得た八つのもの。