胡四王の強力 ② 「花巻の伝説」 昭和58年発行 及川 淳 著から
たとえば、矢沢に嫁に行ったその息女は、夫が妾を寵愛するのに嫉妬して、夫を口説いた。
夫がそれをしかりつけると、やにわに夫をこわきにかい込んで、家の柱を礎石から一尺余りも上に持ち上げて、夫の頭をその間に挟もうとした。
夫は平あやまりにあやまって、やっと許されることができた。その妾が即座に離縁されたのはいうまでもない。
またあるとき、夫の乗馬二匹が、放れ駒となってそのあたりをはね回り、中間どもが取り押さえかねて騒いでいると、つかつかとその場に進んだ彼女は、二匹の首を両脇に抱え込むようにして取りしずめたなど、数々の強力伝を残している。
胡四王神社の険しい参道の途中に、二つの大きな石が並んで立っており、両石といっている。
佐兵衛主従が、力比べをしたと言われている石である。
ウソをついたものがこの石の間を通ろうとすると、二つの石がその間をせばめてしまうので、どうしても通り抜けることができないと言い伝えられている。