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東京発世界行

written by Ken
 



1977年、ビル・エヴァンスは、Fantasy レーベルから Warner Bros. へ移籍する。
同年5月に録音された "I Will Say Goodbye" は、エヴァンスが Fantasy に残した最後のレコーディングである。
しかし、本作が発売されたのは1980年1月のことだ。ピアノ・トリオは(少なくともアメリカでは)売れない。そういう時代だったのである。

ビル・エヴァンスのレギュラー・トリオにとって、70年代になってから初めてのスタジオ録音作品ということで、非常に力の入った内容である。音質もそれ以前のものに比べ、格段に向上している。
また何よりもエヴァンスのピアノが充実していて、彼の指先は鍵盤の端から端まで縦横無尽に動き回る。
一方、エディ・ゴメスのベースは、どういうわけかイコライザーで低域をカットしており、全くベースらしからぬ変な音を鳴らしている。もっともこれは本作に限った話ではなく、同時期に録音されたチック・コリアやマッコイ・タイナーとの共演盤でも、ゴメスはしょぼい音を出しているのだが。
そんなわけで、トリオのサウンドとしてはかなりアンバランスな出来ではあるが、その分、ピアノが活躍し、不足を補って余りある作品となっているのだ。
特に傑出しているのは、ハービー・ハンコック作曲の (2) "Dolphin Dance"。長調と短調が複雑に交錯する曲だが、こんなに美しく演奏されるとは驚くほかない。


I Will Say Goodbye

Original Jazz Classics


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『アイ・ウィル・セイ・グッバイ』 (1977年録音)
ビル・エヴァンス(p)、エディ・ゴメス(b)、エリオット・ジグムンド(ds)。
アルバム・タイトルは、ミシェル・ルグラン作曲の収録曲から。本作は、同曲の異なるバージョンが2種類収録されており、Fantasy への決別を暗示しているといわれている。
しかし、本作を発表後、80年9月にエヴァンスは急死。
まさか、こんな形で本当の別れが来ようとは誰が予測しえただろうか。

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ケニー・ドリューの廉価盤が発売されたので、買ってみた。

ケニー・ドリュー(1928-1993)は、ニューヨーク生まれの黒人ジャズ・ピアニスト。1950年代に数枚のリーダー・アルバムを発表しているが、当時はB級扱いでしかなかった。57年録音のハード・バップの名盤、ジョン・コルトレーンの 『ブルー・トレイン』 で、初期のケニーの演奏を聴くことができる。
60年代に、彼はヨーロッパへ移住。デンマーク、コペンハーゲンを活動の拠点とし、70年代以降、ニールス・ペデルセン(b)とともに活躍する。80年代には、日本のレコード会社ビクターが「初心者向けのジャズ・ピアノ」と呼ぶべきアルバムを多数、企画・制作し、主に日本で人気を博した。(女性ファンは増えたようだが、ジャズ愛好者には嫌われてしまったようである。)


ダーク・ビューティ
ケニー・ドリュー, ニールス・ペデルセン, アルバート・ヒース
ビデオアーツ・ミュージック


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Kenny Drew Trio "Dark Beauty" (1974年録音)
ケニー・ドリューが「初心者向け」に堕する以前に発表した大傑作。
ノリノリのケニー。がんがん弾きまくるペデルセン。低めにチューニングされたドラムを叩くアルバート・ヒースの3人が、圧倒的な演奏を繰り広げている。
初めて本作を聴いたとき、僕はロック少年だったのだけれど、心底ぶったまげたものである。

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ビル・エヴァンスが、ベテラン・ジャズ・ミュージシャン達を迎えて作り上げた意欲作。

ビル・エヴァンス(p)、ハロルド・ランド(ts)、ケニー・バレル(g)、レイ・ブラウン(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)という5人編成による演奏だが、いわゆるオールスター・セッション的なものではなく、大半の曲において、綿密にアレンジされた楽曲がプレイされている。しかも、当時のエヴァンス・トリオの緊張感と違い、非常にリラックスした雰囲気が漂っているのが特徴といえよう。
(3) "Second time Around" は、ブラウン、ジョーンズとのトリオによる佳曲で、僕は個人的に70年代のトリオ演奏の中で一番好きな演奏だ。なんといっても、レイ・ブラウンのベースがいい。低音が腹に鳴り響くのである。エヴァンスのピアノもお洒落だと思う。どうして、こんな名演奏がわずか3分45秒でフェイドアウトしてしまうのか。全く理解できないのである。
(6) "Nobody Else But Me" は、オリジナル LP に収録されなかったボーナス・トラック。ベースとギターのデュオから始まり、ジャム・セッション風の演奏になっているが、アレンジされた演奏を重視したエヴァンスは、このトラックをボツにしてしまった。この曲があるとないとでは、かなりアルバムの雰囲気が違うと思うのだが。


Quintessence
Bill Evans
Original Jazz Classics


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『クインテセンス』 (1976年録音)
幻想的な風景写真のカヴァーが美しい名盤である。

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昨日、買ってきたばかりの CD。
まだ4回くらいしか聴いていないのだけど、とりあえず書いて見る。

1974年、ニューヨークのジャズ・クラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音。同日の演奏は "Since We Met" というアルバムで発表されているが、本作は後年になって発売されたもの。(なぜか、1曲を除いてモノラル。)

まず、ピアノがすごく良い。
エヴァンスのピアノは、フレーズとコード(ハーモニー)に特徴があるのだけど、60年代までの演奏は音域が狭く(真ん中へんの鍵盤ばかり鳴らしている感じ)、強弱の差が小さかったのだが、その点、かなり改善されていて、曲全体にめりはりと盛り上がりが感じられるようになってきている。(この傾向はさらに続き、77年の傑作、"You Must Believe In Spring" で完成する。)
ベースのエディ・ゴメスは、この頃からピックアップを使用しており、音量は大きいもののスイング感に欠ける。
マーティ・モレルのドラムは、ブラシ・ワークは素晴らしいと思うのだが、スティックになると出しゃばりすぎて、うるさく感じることが多い。


Re: Person I Knew
Bill Evans
Original Jazz Classics


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"Re: Person I Knew" (1974年録音)
ベスト・ナンバーは、"Alfie"。きれいなだけのピアニストから、ドラマチックに盛り上げるトータルな音楽クリエーターへとビル・エヴァンスは変化して行く。

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ビル・エヴァンス(p)と前衛派フルート奏者ジェレミー・スタイグの共演盤。

本作の聴きどころは、実をいうとピアノでもフルートでもなく、エディ・ゴメスの攻撃的なベースである。
エディ・ゴメス(1944- )の演奏のほとんどを僕は好まない。彼のベースは“遊び”の部分が多すぎてリズムをキープしていない、70年代以降、ピックアップを使うようになってから低域をカットしたため、ベースらしい低音を鳴らさなくなった、というのがその理由である。
しかし、本作におけるゴメスは圧倒的だ。
ビル・エヴァンスにしては珍しく、共演者スタイグのソロのときに、彼はピアノ演奏を中断してしまう。そういうときに、ゴメスががんがん前へ出てきて、リズムに揺さぶりをかけるのである。彼のベースが曲全体を引っ張っていくのだが、こういうときのゴメスは途轍もなくかっこいいと思う。


ホワッツ・ニュー
ビル・エヴァンス・ウィズ・ジェレミー・スタイグ, ビル・エヴァンス, ジェレミー・スタイグ, エディ・ゴメス, マーティ・モレル
ユニバーサルクラシック


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Bill Evans with Jeremy Steig "What's New" (1969年録音)
ベストは1曲目、"Straight No Chaser"。
通常、曲の最後のほうで用いられる 4バース(4小節ごとのソロ交換)が最初に登場する。その後に続くエヴァンスの右手オンリーのソロとゴメスの 4ビートが素晴らしい。


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YouTube - Bill Evans Trio - Emily
1970年、コペンハーゲンでの演奏。
エヴァンスのピアノとゴメスのベースがいい感じで絡み合っている。

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「こういう言葉は使いたくない」というものをいくつか書き出してみる。

■わんこ
犬のことを「わんこ」と呼ぶのは、例のテレビ番組のせいかもしれない。そういう呼び方をするひとって、なんとなく頭が良くなさそうな気がするのは僕だけだろうか。
また、猫のことを「にゃんこ」と呼ぶのは、もはや論外である。

■生きざま
たいがい、「俺の~」が頭につくらしい。
彼の脳内はどうなっているのだろう。

■相方
配偶者のことを「相方」と呼ぶようになったのは、最近のことだと思う。
彼らは漫才コンビなのだろうか。

■言の葉
「言の葉」は、「言葉」の古語であり、「和歌」の意味もある。
古語として用いたり、短歌などの中で音韻を揃えるために用いたりするのは構わないが、現代文に安易に用いると途端に軽薄になってしまう。

■リテラシー
元は「識字能力」の意味だったが、今や「なんとかリテラシー」が巷に溢れかえっている。
何なんだろう、この胡散臭さは。この語を用いることによって、なんとなく物事が判ってしまったような気になるからだろうか。

言葉に罪はない。
言葉の使われ方、言葉を用いる者の考え方の問題であるのかもしれない。

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ジャズ・ピアニスト、ハービー・ハンコックには、意外なことにピアノ・トリオ・アルバムが非常に少ない。
特に、アコースティック作品を集中して発表していた1960年代には、トリオ作品が1枚もないのである。("Inventions & Dimensions" というアルバムはピアノ・ベース・ドラム・パーカッションという編成だが、内容的にピアノ・トリオとは全く異なる。)

本作、"Speak Like A Child" は、そんな時代のハービーが発表したピアノ・トリオ + ホーン・セクションという編成の異色作である。
ホーン・セクションは、フリューゲル・ホルン、バス・トロンボーン、アルト・フルートという編成で、ソフトな音色の楽器ばかりだが、彼らのソロはなく、ひたすら伴奏に徹している。そして、そのアンサンブルが実に見事なのだ。ハービーの作・編曲の才能がここに完成しているのである。
そして、アドリブ・ソロは全てピアノ。ハービーのピアノをこれほど堪能できるアルバムは、他に存在しない。


Speak Like a Child
Herbie Hancock
Blue Note


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『スピーク・ライク・ア・チャイルド』 (1968年録音)
ジャケットも美しい 60年代ハービーの文句なしの最高傑作。最初から最後まで楽しめる。

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通称、“お城のエヴァンス”。

1968年、スイスのモントルーで行われたジャズ・フェスティバルでのライヴ盤である。(ビル・エヴァンスはライヴが多すぎると思う。)
メンバーは、エディ・ゴメス(b)と、当時、新人だったジャック・ディジョネット(ds)。
ほとんどの曲がテンポ速め。エヴァンスのピアノは、最初から前のめりで、時に共演者を置いてきぼりにしながら、突き進んで行く。
饒舌なベーシスト、エディ・ゴメスは、非常に強いピチカートで演奏しているのだが、録音バランスのせいか、肝心の部分が聞き取れなかったりする。(全部クリアに聞こえたら、かなりうるさいと思う。)
ディジョネットのドラムは、実に素晴らしい。とにかく、単調な繰り返しを嫌うひとで、4ビートの曲でも、1小節ごとに違った叩き方をしているのだ。(彼は翌年、マイルス・デイヴィスのグループに参加し、さらに成長していく。)


Bill Evans at the Montreux Jazz Festival
Bill Evans
Verve


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邦題 『モントルー・ジャズ・フェスティバルのビル・エヴァンス』
スイスの古城の写っている美しいジャケットだが、演奏内容は相当に荒々しく、男性的なアルバムだと思う。

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アルバム・タイトルは収録曲の題名から。タイトルに反して、ニューヨーク録音である。

"California Here I Come" は、1967年8月、ニューヨークのジャズ・クラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードで録音されたライヴ・アルバム。
ビル・エヴァンス・トリオには、前年から参加しているベーシスト、エディ・ゴメスと、短期間だがレギュラー・メンバーだったドラマー、フィリー・ジョー・ジョーンズが加わっている。

いつになく明るいトーンを奏でるエヴァンスのピアノ。ゴメスのベースも伸び伸びと歌っている。
そして、全体のキモになっているのが、フィリー・ジョーである。彼のドラムは、猛烈に共演者をプッシュする。また、時にふわふわとどこかへ飛んで行ってしまいそうになるエディ・ゴメスをしっかりと4ビートに繋ぎ止めようとする。(もっとも、フィリー・ジョーは、エヴァンスが得意とする3拍子系の曲が苦手らしく、急に大人しくなったりもする。)
とにかく、実に楽しいスイング感あふれる演奏が、最初から最後まで詰まっているのである。


California Here I Come
Bill Evans
Verve


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本アルバムは、ビル・エヴァンスの没後、1982年に 2枚組 LP として発表された。その後、90年代に CD ボックスに収録されたことがるが、単独で CD 化されたのは、2004年のことである。
一般に、未発表録音集というと、余りもの、コレクターズ・アイテムといった印象があるが、本作は決してマニア向けの作品ではなく、1960年代後半のビル・エヴァンス作品を代表する1枚として推したいと思う。

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