昭和の時代

アナログの時代がなつかしい

忘れられた言葉 ”いで(農業用堰堤)”

2017-12-08 09:26:02 | 日記
 近所の老人(私と同年代だが)から
”いで(井手)に枯草が詰まって見苦しい、取り除きたいから手伝ってくれ”
と言って来た。
私は農家でもなく、いで(井手)には関係ないのだが、人手が足らぬらしい。
”今の若い奴は、いで(井手)と言っても解らんのだから!”
と、帰って行った。
 私も”いで(井手)”という言葉を何十年振りかで聞いた。

 いで(井手)とは農業用水の堰堤の事である。
今は頑丈なコンクリ-ト製の恒久構造で、仕切り板一枚で取水出来るようになっている。
 昔は字のごとく、”手で囲う程度に水を堰きとめる”で、石を並べただけの簡単なもので、
都度整備を必要とした。
 この整備作業を、”いで(井手)をつく(堰く)”と言った。
川の上流から下流までいたるところで、村中総出で、井手作りが行われていたものである。
 整備が終わると井手に神社から授けた御幣と花が供えられた。 

 井手をつく(堰く)日は子供にも楽しみな日であった。
川を堰いて水量が減ると魚が手掴み出来る、冷えるのも忘れ親に諭されるまで遊んだものである。

 いで(井手)が農業用堰堤に整備された頃から国の減反政策により耕作面積が減って来た。
農家の老齢化により耕作放棄地も年々増えており、一番大事な用水の取水口の管理もままならぬ
ようになって来た。

 いで(井手)の名前が忘れ去られるのは仕方ない、が、水田まで忘れ去られては困るのだが。