映画「椿三十郎」を鑑賞した。織田裕二の別の側面が見られる映画だ。
上役の汚職を正そうとする正義感にあふれた9人の若侍。その危なっか
しさを見るに見かねて命をかけてまで支援する浪人・椿三十郎。時代劇
によくある勧善懲悪型ではあるが、私にはどうも会社におけるマネージ
ャーと若手社員との関係に見えた。彼らはやる気は満々だが思慮が浅く、
放っておくと何をしでかすか分からない。
下手に叱責すると反逆するかへこんでしまう。上司としては自分でやった
ほうが早いが、彼らの育成を考えると自主性を尊重することも必要だ。
失敗したときはその責任をかぶるというリスクもある。そのジレンマの中
でビジネスを成功させなければならない。それでもうまくいった時は彼ら
と喜びを分かち合える。
しかし椿三十郎は組織に組み込まれて自己実現するタイプではなく、枠
にはまらない自由奔放な性格だった。だから上司に実績を認められて昇
進の機会を与えられてもあっさり断ってしまう。「本当に良い刀は鞘に
おさまっているものですよ」という城代家老睦田の妻の言葉に、「俺は
良く切れるが鞘におさまっていない刀だ」と自嘲気味につぶやくところ
がこの映画のミソか。
この映画を見て「自分なんかはよく切れないけど鞘におさまっている刀
だな」、と思った。それでもたまには鞘から出して斬らねばならない。
斬ってこそ刀と言えるのだから。でも、いっそ三十郎のように鞘なんか
捨て去ってどこかへ飛んでいきたいよー!!