関西中小企業研究所のイベント

一般社団法人関西中小企業研究所が開催する研究会などのイベントのご案内と報告を掲載しています。

関西中小企業研究所 第73回研究会

2016-11-21 15:46:16 | 中小企業

起業マインドで道をひらく

藤田優さんは株式会社ハンコヤドットコムの若き社長。

インターネット黎明期の1998年から印鑑のネット販売ビジネスを展開してきました。「ネットでは物は売れない」と言われながら、隠したパソコンで事業をしていたと言います。

そのハンコヤドットコムは今では印鑑のネット通販の国内最大級のサイトに成長。2008年12月には日本オンラインショッピング大賞を受賞。2009年3月9日には『カンブリア宮殿』で紹介されました。

時代を先取りする経営を進めてこられた藤田社長から、ハンコヤドットコムの挑戦のお話をうかがいます。さらに、これからの時代は後継者こそが起業マインドを持つべきであると藤田社長は言われています。「第二創業」と言われる事業承継のあり方についてお話をうかがいます。

皆様のふるってのご参加をお待ち申し上げます。

日 時      2016年11月21日(月)午後6時~8時

場 所      ティグレ大阪会議室
           〒540-0012 大阪市中央区谷町2-6-4谷町ビル8F TEL.06-6966-1866

テーマ  『起業マインドで道をひらく』

講 師      株式会社ハンコヤドットコム代表取締役社長 藤田 優さん

藤田優(ふじた・まさる)さんプロフィール ●1968年10月13日大阪市生まれ(47歳)●大阪学院大学卒●1998年5月父の営む飲食店で働く傍ら、印鑑のネット販売をインターネットで開始●1998年9月「ハンコヤドットコム」サイト開設●2000年3月株式会社ハンコヤドットコムを大阪市中央区に設立●2008年12月第12回日本オンラインショッピング大賞「最優秀大規模サイト賞」受賞●2009年3月9日『カンブリア宮殿』で放映される●株式会社ハンコヤドットコム代表取締役社長。

会 費      2,000円(研究所正会員は1,000円、学生は500円)

お申込  お名前、ご住所、事業所名を記入し、
       下記までeメールをお願いします。
        kanchuken@estate.ocn.ne.jp

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主催:一般社団法人関西中小企業研究所
       大阪市中央区谷町2-6-4谷町ビル8F 
       TEL.06-6966-1866



関西中小企業研究所第72回研究会のご報告

2016-11-07 09:16:49 | 中小企業

 

グローバル時代の人づくり

 

                                                  講師  箕面高校校長

                                                                           日野田直彦さん    

 

 

2016年10月28日にティグレ会議室で、箕面高校校長の日野田直彦さんに「グローバル時代の人づくり」と題して講演していただきました。以下に報告します。

 

 

自己紹介

 

箕面高校校長の日野田です。最年少の民間校長ということで、色眼鏡で見られることが多いのです。自分から手を上げて校長になったというよりも、みんなから押されて気がつけば校長になっていたという感じです。いろんな経緯で校長になりましたので、実際に何をしているかを見てもらう方が理解していただけると思います。私は帰国子女なので、一方的に話しているよりは、途中でさえぎってもらって質問をしていただくと話が盛り上がり、良い講演会になるのではと思います。日本の皆さんはまじめなので、真剣に聞いていただくのはいいのですが、正直いって怖いです。「分からんかったら、分からん」「分かったら、うんうん」とレスポンスを返してもらえたら有難いです。

 

それでは、始めます。民間校長に対するイメージは、皆さんどのようなイメージをおもちですか?民間校長になった多くの方が失敗しているのを見られているト思います。教員の皆さんはいい方ばかりですが、集まると全教員VS管理職という構図になりがちです。それをトップダウンで押さえつけると、戦い方を知っておられるので、とことん向かってこられます。京都大学に頼まれて講演をしたときに、中小企業の社長さんから「二代目の中小企業の社長さんみたいですね」といわれました。親父さんから会社を受け継いで、難しい職人さん相手に一人で戦っている二代目の社長にそっくりですという意味でした。

着任時は36歳でした。2000年は京都大学の卒業生就職率が60%の超氷河期でした。この時代をマスコミはロストジェネレーションと呼んでいますが、最悪の状況で社会に放り出された残念な世代です。アメリカなどでは30代、40代の校長先生はたくさんいます。校長職が、「上がりの職責」というのは日本だけです。その意味でいうと日本は変な国です。変な国を変える人身供養の気持ちで、校長先生になるために手をあげました。はじめは塾の先生をしていました。もともと大学生のころにプログラマーをしていまして、facebookをご存じだと思いますが、facebookは僕達がつくったのです。ザッカーバーグは友達で、facebookの登録は30番目です。ザッカーバーグバーグやCEOのミック・ジョンソンは友達なのでよく食事に行きます。ただ、いろんな事情で教育の方へ行きたいと思っていました。ところが、日本ではほとんど教育をうけたことがないので、みんなが前を向いて黙って授業を聞いているのは耐えられません。小学校3年まで日本で教育を受けていました。インターナショナルスクールに入って前を向いて黙って聞いていたら、「お前は授業に参加していない」と怒られたので、しゃべるようになりました。そして日本に帰ってきて、日本の授業を受けると「黙って、前を向いている子供」はいい子なんです。先生にとって。聞いていなくても、考えていなくても評価されます。それって本当に勉強になりますか?スタンフォード大学やハーバード大学ではテストで100点とっても評価されません。授業中に発言しないのであれば、「ホームエデュケーションでいいでしょう」と諭されました。日本の教育を知らないといけないので、塾に就職しました。あることで奈良学園の立ち上げに参加し、そして就職しました。民間校長に手をあげましたら、妻からなんで、「永久就職の奈良学園から任期3年の民間校長」になったのと、文句をいわれました。今年で3年目ですからどうしょうかなあと思っています。帰国子女というのはキャリアアップが基本ですから、いろんなことにチャレンジしょうと思っています。

 

箕面高校からハーバード大へ進学

 

箕面高校の特徴ですが、温泉学校といわれていました。常識として戦力の低い先生の集まりでした。川合塾の編差値で52でした。上にも行けない下にも行けない子どもたちが集まる学校でした。先生の平均年齢は53歳で、55歳以上58%、40代5%、30代5%、20代32%のいびつな年齢構成でした。1200人の生徒に、年間2000万円の経費しかありません。校長先生の使えるお金は年間5万円、出張費年間1万円で、なにもするなということです。ですから自腹を切るしかありません。この2年半で車4~5台買えるぐらいの自腹を切りました。先生方は共通の目標がない、仲が悪い、意志決定ができないという状況でした。皆さんであればこの学校に行きたいですか?

帰国子女というと「キラキラしたイメージ」があると思います。しかし、私は父親がインフラ関係の仕事をしていて、25年前にクーデタが起り、先日亡くなられたプーミポン国王が出てきて治まった内戦中のタイにいました。友達は銃で死にましたし、私も頭に銃を突きつけられて死にかけました。それから比べると「死にはしませんので楽しまないと」と思いました。学校はぐちゃぐちゃ、予算はないはと色々考えました。先生たちは今でこそ仲良くなりましたので、そのころのことを懐かしんで話してくれますが、「怪しい人が入り込んできた」と思っていたようです。わたしもひしひしとそれを感じていました。

チームビルディング、健全な意思決定などいろいろとありますが、簡単に状況を表現すると、敵陣地に一人で乗り込むベトナム戦争のグリーンベレーのようなものでした。少数民族を仲間に引き入れて、周囲から攻めのぼる戦略はグリーンベレーと毛沢東を合体したような気持ちでいました。ほぼ3ヵ月間、毎日徹夜していました。戦略ノート50冊ぐらい書いています。血便、血尿が止まりませんでしたが、それがまた楽しかった思い出です。5000件ぐらいの反応パターンを頭に入れて「いつもすいません。ご迷惑かけて」と頭を下げて先生にのぞみました。

アジア人でよかったと思いました。インターナショナルスクールにいますと白人中心の世界ですから、リーダーシップを発揮すると「イエローモンキーがなにごちゃごちゃいうか」ということになります。そこで、頭をペコペコ下げて、相手の願いを一つ一つ聞いて、丁寧に一つ一つ解決していきました。小さいプロジェクトを立ち上げていくと、「このアジア人なかなかいい所あるジャン」ということになり、「こいつのことも聞いてやろう」ということになります。アジア人が世界のリーダーになろうとおもえば、「サーバントリーダー」でないとなれないと思います。白人に命令するのは無理です。白人はもともとぼくらのことが嫌いなので、嫌われているということを分かった上で行動すると好かれます。白人は無理やりリーダーシップを発揮すると、論理を飛ばして暴力できます。そんな目で日本人の先生を見ると、日本人なのでいい人ばかりです。先生方は職人さんなので、ある先生がやりたいことがあると、ほかの先生がそれを潰しにかかります。最初の3ヵ月は、私が御用聞きになり、私が提案するという形で進めました。最初は誰も口をきいてくれないので、コーヒとお菓子をもって先生のところを回りました。3ヵ月ぐらいしてやっと「こいつ変な奴ではない」と思われるようになりました。

今どうなっているかというと、上手いこと行くと、ハーバード大学に入る生徒が出そうです。メルボルン大学1名、ロイヤルメルボルン工科大学1名、クエンザン大学1名入りました。すべて東京大学より上位の大学です。編差値52の高校からです。これらの生徒は、もともと英語はまったくしゃべれませんでした。どんなことをしているかは、「箕面高校、グローバルリーダー総合育成プロジェクト~骨太の英語力養成事業~」を見てもらえれば分かりやすいと思います。私は「グローバルリーダー」という表現は嫌いです。リーダーはもともとグローバルでないとなれません。しかし、日本で説明するときはこの方が理解されやすいのでこのように表現しています。「骨太の英語力養成事業」というのは2年半前に大阪府が立ち上げたものです。

 

ソクラテスメソッド(禅問答)で人材教育

 

父兄の皆さんに説明するときに、教育の話はしません。はじめに世界情勢を説明します。世界の人口が変わります。2050年にアフリカのナイジェリアの人口が5億人になります。アメリカの人口の1.5倍、EU35ヶ国よりも人口が多くなります。国連調べですから必ずそうなると思います。ナイジェリアのGDPは日本と同じになります。もうすでに、ナイジェリアは高度成長期に突入しています。ITを使っているのでスピードが速いです。そんな時代に偏差値教育というのが役立つと思いますか?みなさんのお孫さんや娘さん息子さんが、皆さん方と同じ年ごろにそのような時代がきます。アフリカは遅れた地域という認識は成り立ちません。

そんな時代に私たちは何をすればいのでしょうか?ペーパーテストで大人の期待する答えを穴埋めするだけでいいのでしょうか?わたしは帰国子女ですが、英検を「落ちまくった」のです。ア~エの中から答えを選べとなっているのですが、どれも一応正解になっています。「これ、ポエムとしてはいいよね」「これは面白い答えですね」というと「それはだめだ」と返ってきます。「私にも哲学がある、あなたの考えは知らない」と反論すると、「君は何と過激なんだ」と怒りだしますので、「議論をしてこそ新しいイノベーションが生まれるのに、あなたは言論を封殺する。あなたこそ過激ではないのですか」と反論すると黙ります。googleの村上さんは友達なので、「この国は明るい北朝鮮ですね」とよく話をします。そこで常識を疑い続ける、「OPEN MIND INNOVATION」をトレーニングしています。箕面高校で分かったことですが、男子は男子、女子は女子で集まる傾向があります。この方が居心地はいのですが、新しい考えは生まれにくいです。インターナショナルスクールでは、ジャパニーズ、コリアン、チャイニーズは優しいので議論になりません。アイコンタクトで意志疎通をとりますが、お互いをあまり理解していないのです。ですから、黒人、白人、女子、アジア人というチームを組むとイノベーションが起ります。ミッションは「変化の激しい時代に対応できる人材育成」としました。2002年にスタンフォード、ハーバード、デル、マイクロソフト、フェイスブック、アップルの経営者が集まって「21世紀型課題解決学力」と定義されました。それは、ロジカルシンキング・システム思考・ディベート思考などです。箕面高校でつけるべき学力はロジカルシンキングなどがありますが、「インターラクティブな授業」を目指しています。先生と生徒が向き合って議論するときに、「あなたはどう思いますか」と対等に議論できることを目的にしています。先生と生徒というより「YOU」と「Ⅰ」ですから。生徒たちに告げています。「大人である先生より生徒の方が発想力は上なので、先生と堂々と議論して欲しいし、学校経営にも参画」してくれるように頼んでいます。ですから、昼休みの校長室は生徒でいっぱいです。その方法は、ソクラテスメソッドです。日本にもあった「禅問答」と同じです。この方法でイノベーションを起こそうとしています。

 

ハーバードから見れば北野高校も箕面高校も大きな差はない

 

そもそも、日本の教育は今後どうなっていくのか?日本の英語教育が大きく変わります。大変な時代に入ります。平成36年に大転換します。TOEFLは4技能を4時間半かけてテストします。たとえば、英語で「お家で勉強するのがいいですか?あなたの考えを述べなさい」という質問に15秒で考えて、45秒の英語で回答するという試験です。「即問、即答のトレーニング」をされてないので今の高校生には無理ですね。論理的に話をして、相手を納得させることに慣れていません。「国際会議でしゃべらない日本人をどうして喋らせるか? しゃべり続けるインド人をどう黙らせるか?」とよくいわれています。

英語教育で「TOEFLIB」は120点満点の試験ですが、高校生に57点とることを指導しています。ちなみに、東大生の平均が45点、英語の先生の点数が55点です。57点とるために、高校生に誰が教えるのでしょうか?長崎大学は「TOEFL61点以上あれば、センター試験を満点とみなす」としました。英語は民間の試験に移っていくことになります。

大阪を取りまく教育の現状はどうなっているかというと、1986年に大阪の中学生の人口は40万人でした。現在はどうなっているのでしょうか?2015年度で24万人です。ほぼ半減しています。2050年に大阪の人口は400万人になります。高齢者が多いので現在の人口の減少は目に見えませんが、25歳以下の若年層の人口減少が半減しています。日本もそうですが、ここまで社会的破綻を起こしている地域は日本にもないですし、世界にもありません。大阪だけです。このぐらい厳しい認識を持って教育に臨む必要があると思います。

「骨太の英語養成授業に取り組みなさい」という要請が私の着任時にありました。大阪府は英語圏への就学を推進しています。「27年度にTOEFLを80点以上採る高校生を5人以上出しなさい」という指導でした。ちなみに、この話をパナソニックで講演した時に話をしましたら、「私たちでも無理です」といわれていました。帰国子女でも75点採れたらいい所です。同志社大学で60点採れれば、世界第8位のUCバークレーに交換留学できます。TOEFLで80点採るのはそれぐらい難しい課題です。

現在の英語教育の現状は、6年間英語を勉強しても話すことはできない。しかも、英語が話せたとしても、議論にならない。勇壮に弁論するのは上手ですが、コミュニケーションにならないのが現状です。それと、すぐに無理、難しいと弱音を吐きます。ご父兄の皆さんは、メルボルン大学に今年から入りますので、はじめて本当に入れたといわれましたが、はじめは「無理でしょう」という反応でした。箕面高校に編差値は52ですが、世界から見ればトップレベルにいます。ハーバードから見れば北野高校も箕面高校も大きな差はないのです。大事なところは、マインドです。「本当に世界を変える気があるのか」「死ぬ気でやる気があるのか」そこが判断の基準です。

 

箕面高校とBerlitz(ベルリッツ)で共同開発

 

そこで、プラン1を作りました。先生から意見を聞いて私から提案をして、全体の課題にしました。それは、Berlitz(ベルリッツ)と提携することでした。Berlitz(ベルリッツ)はCIAの異文化教育センターが元々の起りで、CIAの職員に異文化教育のための施施でした。それが海外に人を送り出すための教育機関に変わりました。Berlitz(ベルリッツ)は経営的に困っていました。大学生は勉強しませんし、企業の人は600点採れればすぐに辞めていくので人が集まらなかったのです。その話を聞いていましたので、箕面高校とBerlitz(ベルリッツ)で新しいチームを作り共同開発で英語を入れた哲学の授業をつくりました。ハーバードで取りいれられている国際バカロレアを日本人向けにアレンジしたものです。「国際バカロレア」というのはいろんな物事を色んな視点から見ていくという教育手法で、日本にあった「禅問答」のようなものです。そのかかった費用は4000万円ですが、箕面高校にはお金がないので出した金額は40万円です。先生方には、普通の箕面高校が4技能(書く・話す・コミュケーション・ディベート)をどこの高校も成果を出せていないので、それを実現すると救世主になれると説明しています。若い先生を中心にやる気になってくれています。さらに「Rare Job」と提携しまして、1月に1回フィリピンの人と30分間英語で会話するという授業をつくりました。30分間のうち15分ぐらいは時間がもつのですが、それ以降の15分は地獄の15分に変わります。地獄の15分をしゃべるために自分から進んで勉強するようになりました。その結果、TOEFLで100点以上が2人、60点以上が30人近く生まれました。100点はハーバードへいける点数です。同志社大学の交換留学生を利用すると30人が東大を追い越して世界第8位のUCバークレーに進学できるということになりました。進研模擬試験で、着任時までは英語の編差値65以上は10人でした。着任してから、43人に増えました。国語、数学の編差値も大きく伸びました。しかし、テスト対策をしていませんし、授業時間は8%減らしました。補講・補習を日本人は好きですが、一切していません。日本人は残業が好きですね。オーストラリア人は朝の6時に出勤してきて、午後の2時に帰ります。なぜそんなに早く出てくるかと聞くと「遊ぶために決まってるでしょう」といいます。それでもGDPは日本人より高いのです。日本人も残業せずに早く帰ればいいと思います。生徒に勉強しろとはいません。「楽しめ、楽しいことを見つけろ」といっています。「楽しいことをするために、夢を実現するためには勉強は必要でしょう」と諭しています。日本人は目的と手段がぐちゃぐちゃになっています。そこを治せば伸びるのではないでしょか?

 

箕面高校の生徒が、「慶応大学のビジネスコンテスト」で優勝

 

次のプランです。本当にしゃべれるだけでいのか?日本人の長所は、「インテリジェンスが高い・モラルが高い・よく考えている」ところだと思います。しかし、考え過ぎてしゃべれないという現実があります。教育現場にいて分かったことは、「しゃべらないこと」が是認されていて、「しゃべる」場合は、先生の期待する答えを求められます。これでは、「しゃべろう」とは思いません。「しゃべらない」ことを強制され、「しゃべる」場合は「期待される答え」を求められる。言葉を選ばずに表現すると「言語障害のトレーニング」をうけているようなものです。「しゃべるな」といわれて、「期待される答えを出せなく」なった瞬間にドロップアウトして自殺に走ることになります。

 シリコンバレーでよく使われているペンキを塗ったらホワイトボードになるアイデアペイントというのがあります。これは特許をとっているので高いので、アメリカのラスト・ オリウム社に連絡して、箕面高校を実験台に提供するので、新しいペンキを創れと提案して無料で導入しました。マインドマップ・ロジックツリ―などの手法を教えました。これはマッキンゼーやハーバードで使っている方法を高校生向けのアレンジしたものです。子どもたちはすぐにマスターしました。ハーバードではノートの取り方を徹底的に訓練されます。上から下へ座布団を並べたようなノートは講義のコピーです。頭の中にあるビジョンやビジュアルを具現化するために採るのがノートなのです。

 次のプランは、起業家精神を持つことです。日本では短期留学がはやっています。語学の勉強は日本でもできます。それよりもマインドを鍛えることが大事です。そこで、MITと連携をしてアントレプレナーシップ(起業精神)トレーニング・プログラムの短期留学を取り入れました。スタンフォードに「大きな幼稚園児になれ」という言葉があります。「子どもの心を持って発想し、チャレンジしろ」という意味です。もともと、MITは世界最高の起業家をつくるためのセンターです。順番待ちで3年先までは入れません。倍率が500倍ぐらいです。MITのアントレプレナーセンターの所長に無理をいって、日本人向けの「24ステップ・プログラム」をつくりました。これは、24段階のステップを踏むと社会的課題は解決できるというプロググラムです。「アントレプレナー」を日本では「起業家」と訳されていますが、本来の意味は「社会的課題を解決する取り組み」です。社会的課題を解決するのに、ボランティアよりお金を回して社会をよくすることのほうが、確実に実績が上がります。MITは社長をつくることが目的ではないのです。社会的課題を解決することが目的で、お金を回すのは手段です。ビル・オーレットさんがMITの所長で、3年先まで日程が詰まっています。普通には絶対に会えない人です。30分の予定で話してもらう予定でしたが、話が盛り上がり3時間付き合ってもらいました。午後には、ハーバードから来ているメンバーの話を聞きました。MITアプリケーションづくり世界のNO1、3Dプリンターを世界で最初につくった人、環境ベンチャで世界的に活動している方などに会いました。

 プログラムは24ステップで多すぎるので、6ステップに短くして行いました。このプログラムは、私自身がスタンフォード系の人間でして、それにMITと連携して、ハーバードで味付けした感じのものです。子どもたちがそれぞれアントロプレナーに取り組みました。アイデアを具現化してビジネスモデルに仕上げたモノをビジネスコンテストで競いました。審査委員長は、ハーバード、スタンフォードの「ムックス」をつくった本人で世界の映像のボスです。シンガポール人でいい人でした。「君たちは英語が少し下手だけど、全米大会に出たら3位ぐらいには入れる」と褒めてくれるのです。それを聞いた生徒に火がついて、「慶応のビジネスコンテスト」で優勝しました。出ることができないのに出て優勝しました。MITで訓練してきたので、うちの生徒に普通の日本人では勝てないです。マインドを持っていれば海外の大学なら簡単にいけます。今度ハーバードを受ける生徒は、英語が下手なのです。「BUT」の発音が「バッ」「バッ」なんです。まるでずうずう弁の英語のようです。しかし、これに人気があるんです。

 

箕面高校にハーバードの学生やMITを呼んでワークショップ

 

 生徒を学校経営に参加させていますので、留学費用が高いという問題提起がありました。高いので、「松竹梅コースをつくって欲しい」という提案がありました。それは「60万円コース、30万円コース、5万円」というものでした。5万円コースは、母子家庭なのでお金がないというのです。「5万円で海外旅行はできないぞ」というと、「そこを考えるのが先生の仕事でしょう」といわれまして、そこで、ハーバードの学生を日本に呼びました。課題解決型の「イノベーション・ラボ」があります。そこの学生10人を呼びました。ハーバードの学生が自分たちの論文を発表して、日本の生徒がそれを聞いて、解決策を提案するというワークショップです。学生たちは、自分たちと世代の違う高校生の意見を聞きたがっているのです。解決策を一緒に探すということであれば、高校生たちも勇気が出ますし、学生たちも多くを学ぶことができます。外国人は日本に来たがっているのです。しかし、日本人の顔が怖いので来れないといいます。マインドマップやロジックツリ―を使ってハーバードの学生がホワイト・ボードに自分の意見を書きます。これを見て、学校で学んだマインドマップ、ロジックツリなどのノートの取り方が間違いではないと確信します。チームビルディングをして、解決策を練り上げてプレゼンテーションをします。態度、手の振りかた、その場の空気を読みながらのプレゼンテーションもハーバート仕込みで圧巻です。ハーバードから来たインド人学生は、手振り身振りが「きもい」、英語も下手でした。生徒たちはこれでもいのだと理解し、皆のりのりになっていました。優勝したチームのお母さんは、子どもの姿を見て涙をながされていました。人前でしゃべったこともない子どもが、堂々とプレゼンしている姿を想像できなかったのでしょう。卒業式や始業式に、生徒に向かって「変態になれ」といっています。日本語では「きもい」ということになりますが、英語で「変態」は「gifted」といます。これは神から認められたという意味で、才能・天才性といういい意味です。

この前もワークショップを開催しました。グーグルの村上さんとMITディレクターのアンドリューを日本に呼びました。「たこ焼き食わしてやるので、日本に来て」というと「いくいく」と、来てもらいました。MITのメンバーにも参加してもらいました。グーグルの村上さんとアンドリューの対談も開催しました。日本で高校生がグーグルの社長の話を聞けるのはいいでしょう。今年ハーバードを受ける生徒がいますが、村上さんが気に入って、村上さんの推薦付きでハーバードの試験を受けることになりました。多分と通ると思います。

 

日本は1950年の焼け野原、世界の救世主になろう

 

行動の前提は「2011年に入学したアメリカの小学生の65%は大学卒業後、就職する職業は今、存在していない」という時代になります(デュ―ク大学のキャシ―・ダビットソン教授の言葉)。生徒には、英語は話せなくてもいいので、「人の悪口や評論家になるな、文句があるなら解決策を出せ」といっています。スタンフォード大学に「30秒考えても、1時間考えても答えは8割がた同じ」という統計があります。だから思いつくことを120回やって答えを出す方がいい回答が見つかるのです。生徒は猛烈にチャレンジしますので、ディスカバリーチャンネルのプレゼン大会に出て優勝した生徒や、ダボス会議が主催しているビジネスコンテストで優勝して、100万円もらって会社を立ち上げた子供がいます。「一緒にワクワクしませんか?」ということです。

日本は課題先進国です。急激な高齢化、財政の破綻、年金の崩壊などの課題を多く抱えているのです。しかし、アメリカも中国もすべての国にがそうなります。日本がこの課題を解決すれば、世界の救世主になれるのです。チャンスが広がっていると思います。ユーグレナの出雲さんは友人ですが、「今の日本は、戦後間もない1950年の焼け野原の日本と同じ」だといいます。社会資本はあるけれど、社会システムは壊れているからです。チャンスがいっぱいあるのです。

「もはや安定した企業はどこにもない。社会の変化に対応し続けることが『安定』」である」とMIT所長のビル・オーレット教授はいっています。ということで、社会だけではなくて、「学校が皆に居場所のある良い『場』であることを願っている」という箕面高校のプレゼンでした。ここら辺でよろしいでしょうか?ありがとうございました。

 

 

 

質問 校長先生がいるので教育が進んでいると思うのですが、日本にとっての解決策はないのでしょうか?東大阪の教育委員をしています。東大阪は「モノづくりの町」で、日本にとっても大切なところです。共通のカリキュラムで教育に斬新さがないのです。高校生を育てて、世界の羽ばたいてもらって、日本に帰って来てもらい東大阪を蘇らせて欲しいと思うのです。

回答 よく受ける質問です。私は今年で任期が切れますので、次のリーダーを養成していて、主導権をとってもっています。箕面高校はカリキュラムの変更をしていません。

   教育のやり方を変えただけです。「双発性イノベーション」というやり方で、Berlity(ベルリッツ)と箕面高校の先生との共同開発でカリキュラムを変更しまた。先生の能力は高いのですが、押し付けられると反発するということになりますので、一緒につくりあげるという方法です。先生の能力が発揮されて良い教育内容ができあがりました。私も高校生が日本を変える力になると信じています。

 

 

質問 教育に携わる者として先生のお話に共感を持ちました。帰国子女を日本の大学に入れる教育をしているのですが、先生と反対の悩みも抱えています。そこで先生に質問ですが、日本はノーベル賞の受賞者がアジアで一番、犯罪率は低く、愛国心も高いと思うのです。日本の公教育は素晴らしいと思うのですがいかがでしょうか?箕面高校の校長先生としての感想をお願いします。

回答 日本の教育は素晴らしいと思います。しかし、時代に合わなくなってきていると思うのです。日本の教育は、人口が増大するときに適応した教育システムでした。多くの生徒の中から優秀な生徒を選び出して、小数のエリートをつくりシステムです。たとえば、数学ですがほとんどの生徒は好きになりません。少数の生徒は伸びますが、ほとんどの生徒は落ちこぼれます。この教育はスポイルシステムです。中国やインドでも同じようにやっています。建物、カリキュラム、財政がワンパッケージで少数の優秀な生徒を生み出すための教育です。日本人は優秀で最適化するのが得意です。教育も最適化を追求して出来上がったシステムが現在の公教育です。最適化したものをつくりあげると、思考停止してしまいます。日本人の持っている文化です。現在の日本は少子化の時代になっていますし、グローバル社会です。私は「TTP」を叫んでいます。「徹底的にぱくれ」という意味です。世界からいものを取り入れて、今の時代に即した教育にリセットしたらいと思います。ゼロにするのではなく、いいものを残してつくり変えるのです。それが今の教育の課題だと思います。

 

 

質問 いろんな取り組みをされています。成果もあげられていますが、教育委員会から予算が付きましたか?

回答 2000万円の予算ですが、その内1500万円が電気代です。この間も水道管が破裂しまして、家庭科室が水浸しになりました。築60年の建物ですが、建て替えができないのです。共同事業は公的信用を与えるということで実現しました。予算は0です。

 

 

質問 国際会議で日本人はどのようの対応しているのでしょう。「しゃべる仕事」をしながら英語教育をしています。地元で仕事をしていると専門学校から英語教育の依頼を受けて、英語の講師をしいています。仕事をしていて感じることは、外国人の対応と日本人の生き方があまりにも違いすぎるので、国際会議では日本人はどのようにしているのか疑問に感じたので質問しました。

回答 国際会議では、日本人は外国人にやり込められています。なぜ

かというと、日本人は話をするとき、相手の目を真っ直ぐに見ずに目をそらします。これでは相手にやり込められます。目を見て話せば理解できるのです。ハーバード大学では、交渉術を学びます。相手と交渉して、相手の希望を引き出し、与えることで優位な立場になり交渉をまとめるという方法です。その意味で、自分のいたいことはいうことが大事です。キッシンジャーとしゃべることがあったのですが、「日本人は簡単だ。情緒でしか来ないから」といってました。日本人は「海ゆかば」で最後は破れかぶれになります。企業でいえばまずいですね。撤退戦も考えておかなければなりません。

それと、日本では塾に行きますね。アメリカやヨーロッパでは、その時間に親と子供が、宗教、政治、セックスについて話をしています。日本では本音で話すことはないですね。これって本当に民主主義なんですか?「プロム」はダンスパーティーのことですが、学校でやろうと思っています。ダンスをするとなると男性はおたおたします。国際会議では必ずダンスパーティーがおこなわれます。日本の男性はおたおたしています。そのとき、どのように立ち振る舞うかでその人の教養がはかられます。英語だけではなくてそんな作法術も必要だと思います。

 

 

質問 先進的な子どもたちを育てておられることに驚きをもっていますが、同時に子どもたちが世の中に出たときに「ボコボコ」にされないかと心配になる所です。大学というところにいますので、おおきな壁がありまして、校長先生のようなふるまいをしたら、1日たりとも生きていけないことになります。日本は数千年の文化を持っているので、その中で生きてきました。いろいろと問題もありますが、アメリカでもたくさん問題を抱えています。そのせめぎ合いの中でどうしていくかという問題にぶつかります。私であれば、いろいろと考えすぐには、手が出ないのではないかと思います。先生の中にジレンマはないのでしょうか?

回答 正直、いつもニコニコしていますが、家に帰ったら泣いています。3ヶ月間、寝ずに数千パターンを考えました。何をやってもデメリットが出ます。それならば、できるだけ多くの子供が幸せになることを選び、やり続けるしかないと思います。アメリカは大嫌いです。多くの友人がいますが、アメリカという国は暴力的ですし、危ないです。日本は世界一治安のいい国です。日本のような国が増えて、日本人がニコニコ笑ってくれたらいいと考えています。その一部として、MIT・スタンフォード・グーグル・東京大学を混ぜこんでやっています。実家は神官の出です。祖父は大和の乗り組員でインターナショナルではないのです。私の哲学は「常にワクワクして、へこたれなないで、自殺はしないでね」というものです。「偏差値よりも自分のやりたいことを見つけて欲しい」といっています。今年から初めて、美術系体育系の大学に進学する子供が出てきました。皆それぞれの思いがあり、一つの枠にはめ込むのは無理があります。自分の好きなことを見つけて「やるんやったら、とことんやれ、飯のタネになるまでやれ」ということだと思います。

   みなさんに、「今日は1日何点の出来ですか」と質問しますと、答えは「60~80点ぐらい」ですと返ってきます。この質問をオーストラリア人にすると「120点」と返事が返ってきます。「なんで」と聞くと、「今日バーベキュするから」と応えます。「明日はどう?」と聞くと「120点」と返ってきます。なんでと聞くと「明日天気いでしょう」といいます。ハッピーな社会を目指していきたいと思います。