関西中小企業研究所のイベント

一般社団法人関西中小企業研究所が開催する研究会などのイベントのご案内と報告を掲載しています。

関西中小企業研究所第56回研究会のご報告

2015-05-26 13:41:34 | 中小企業

 

綿花栽培と参加体験による価値創造

~地域に人を呼び込むコトづくりマーケティング~

講 師  大阪府産業経済リサーチセンター主任研究員  松下  隆さん

 

 2015年5月19日、ティグレ会議室に於いて、大阪府産業経済リサーチセンター主任研究員の松下隆さんに「綿花栽培と参加体験による価値創造~地域に人を呼び込むコトづくりマーケティング~」と題して講演をしていただきました。以下に要約します。

 

綿花栽培プロジェクト

 

 松下です。よろしくお願いします。

みなさん綿についてご存知でしょうか?綿栽培は明治の29年頃までは河内や泉州を中心に行われていました。綿花栽培は統計上なくなっていますが、全国的には栽培が広がってきています。私も綿花栽培に携わって5年になりますが、洋綿は一本の綿の木から上を向いて60個ぐらいの綿花が採れます。高さは120cmから2mぐらいで、横幅は1mぐらいです。和綿は下を向いて咲きますので、同じ綿でも品種によって違います。綿の原種は茶色をしています。それを品種改良して白くしました。それは服に色を染めるときに白いほうが染めやすいからです。綿花は繊維の綿の部分と繊維の短いリンタ(注:実の周囲の短い繊維)と綿実に分けられます。綿は糸などにして使います。リンタはキュプラ―(ベンベルグ)などの繊維の原料として使います。綿実は絞って綿実油をつくります。柏原の岡村製油などが有名で高級な油です。絞った油粕は有機肥料として利用されています。綿花は捨てる所がありません。

日本工業統計によりますと、綿の織物、綿の帽子、綿のニットなどの綿関連製品等の出荷額は大阪が一番多く、種類も多岐にわたります。タオルの出荷額は愛媛県の今治と抜きつ抜かれつ競っています。

色染めが大阪の問題点になっています。泉大津と堺で染めが行われていますが、住工一体化が進み、染めた廃液を川に捨てられないことがコスト増につながります。川に捨てれば処理費はかさまないのですが、下水に流す場合には処理費がかかり競争力をなくし、泉大津では染色業者が激減ました。泉佐野は川に流すことができますし、地下水を使うことができますので水道代がいりません。都市整備と染色事業の生存はトレードオフの関係にあります。

 これまで、国産綿花の製品化は無理だと言われてきました。やっても高くて売れないと言われてきました。しかし、かつては原料をつくり、生産していました。市場環境も変化してきました。高くても売れるという時代ですし、メイドイン・ジャパンのいいものは売れるということになってきました。綿花原料の99%は輸入に頼っています。繊維原料は輸入するというのは常識になっています。そこをひっくり返して取り組んでみようというのが綿花栽培プロジェクトです。

 

コットンサミット

 

 綿は糸偏になっていますが、昔は木偏(棉)が使われていました。幕末から明治にかけて綿作りが行われていました。綿作りがサツマイモ、ジャガイモ作りに変わり、明治18年ごろ米作に凌駕されたと言われています。合成繊維は「石油が枯渇すれば再生不可能の限りある資源」であること。一方、綿糸は再生可能な綿花を原料にしていることから、資源枯渇の恐れがないことに加えて、綿を生産するのに要するエネルギー量は合成繊維の5分の1程度の省エネルギー型の素材であることなどから、綿花が繊維素材として見直されてきています。

 江戸時代は麻が主流で衣服をつくっていましたが、綿は麻よりも糸にする工程が少なく労力がかからないということで、綿花栽培が盛んになりました。大阪での綿花栽培の要因は、肥料として油粕を大阪の海運で調達できたことがあげられます。大阪での綿花栽培は大正5年までおこなわれていました。作付面積は約5反でした。その内、中河内(現在の八尾)の割合が91%を占めていました。その理由は泉州に紡績機械が導入され、海外から紡績機械ににかけやすい輸入綿花が入ってきたためだと思われます。中河内の綿作りが最後まで残っていたので「河内木綿」と呼ばれるようになりました。

 有機栽培や無農薬栽培による純国産の綿製品づくりのためにコットンサミットに取り組んでいます。このサミットは2011年から始まりました。全国に綿花栽培をしている仲間がいます。2010年には栽培地が10ヶ所でしたが、2014年には21ヶ所に増えています。綿は温かい所が好きなので南の方が多いです。栽培面積は2014年には18haに上っています。この広さは、甲子園球場の5倍の面積に相当し、USJの半分ぐらいの面積になっています。作った綿花をすでに製品化している方が12件、製品化を検討している方が5件おられます。綿栽培者を10年間みていますと、綿栽培者たちに変化が見られます。栽培者が個人から企業に変化しています。産業や文化を学ぶことが目的でしたが、現在は地域振興が目的になってきています。3つ目は、栽培面積が一箇所当り1反か2反になり、多いところでは1haも栽培し面積が大きくなってきています。私はコットンサミットの事務局をしていますので、全国の栽培者の方とお会いしています。栽培面積が一番大きいのは東日本大震災の被災地である、宮城県仙台市荒浜です。津波が来た後に、被災地新興ということで綿花を植えに行きました。そこでは8ha栽培しています。

 

東北コットンサミット

 

 綿の種類はいくつもありますが、アジア綿、陸地綿、海島綿が3大種と呼ばれています。

アジア綿は日本綿と言われているもので、綿の長さは短く、枕や布団に使われています。陸地綿はアメリカ綿と呼ばれていて標準的な綿です。海島綿は赤道直下で栽培されている綿で毛足が長いものです。世界の綿花生産量は1位が中国、2位がインド、3位がアメリカです。天然繊維には綿、麻、絹、カシミアなどの毛があります。その反対に化学繊維があります。石油が高騰してくれば、環境の面から考えても、天然素材を作り出すことを迫られます。そこから全国コットンサミットの活動が注目されています。コットンサミットの目的は、「全国で綿花が栽培され、地域、人々が活性化していくことを願う」というもので、過去4回のサミットを開催しました。2011年に第1回全国コットンサミットが大阪府の岸和田市で開催、2回目が2012年に鳥取県境港市、3回目が2013年に奈良県広陵町、4回目が2014年に愛知県蒲郡市で開催しました。のべ参加者は4~5000人を数え15事業者の栽培・事業化が報告されました。参加者のなかには、収穫した綿花を製品化し、販売するものが多いです。

サミット活動(綿花栽培の実践)の目的と役割は天然素材への要望が高まることに応えることだと言えます。人口減少社会の出現で、「プレミアム感の高い商品の要望」が高まります。オ―ガニックやエコを意識した倫理感の高い消費、つまり「エシカル・コンシューマリズム」に結び付きます。土から衣服ができる工程を見える教材として提供できます。農家は高齢化が進み、我々の食を担う農地が荒れ果て、「遊休地」や「耕作放棄地」が増加することが予想されます。大阪府内だけで「耕作放棄地」が1000haあります。そこを利用して新しい産業を生みだす可能性を秘めています。

 2011年3月に津波が東北を襲い農地が塩害にさらされます。米は農地に10%以上の塩分を含みますと発芽しなくなります。綿花は塩分濃度が高くても発芽しますので、塩分を吸収し土壌改良に役立ちます。東北の農家が米栽培できるように、2011年5月に5人の仲間とともに綿を植えに行きました。これが東北コットンサミットの始まりです。東北コットンプロジェクトも大きくなってきまして、バスタオルやタオルの製造を始めています。パートナーがすごくて、全農、高島屋、JALなどが支援しています。「服を着ることで、農家の支援になる」というキャッチコピーで活動を表現しています。

 

 人口減少と時代価値の変化

 

 人口減少は2007~8年から始まっています。今からその減り具合が急激に加速します。重要なのは人口減少社会を経験した人はいないということです。江戸時代から見ましても天明の大飢饉のときに人口が少し減少した経験はありますが、それ以降、人口は増加しています。人口が増える社会の経験から、人口が減る社会の経験をすることになります。人口減少社会を山登りと下りに例えると分かりやすいと思います。山登りの場合は頂を目指してみなの意識が収束していきます。下る場合は目的を達成したので、途中で花を見る、温泉に行く、次の山を目指して動くなどと次の目的に向かって多様化します。価値観の再構成が必要になり、多様化と豊かさを追求することになります。

 2013年に野村総合研究所が出した報告書によりますと、とにかく安いものを買いたいという傾向から、多少高くても品質のいいものを買いたい、自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶという傾向に変化してきています。 綿栽培を例にとれば、今までの時代は綿花を栽培して糸をつくり、その糸から衣服を作ったり雑貨をつくってきました。これからの時代は、綿花栽培を実習し、綿花をつくる喜びを体験します。田舎暮らしを仲間と楽しみながら、綿花を収穫し、糸づくりを経験し、ジーンズや衣服に仕上がる工程を学び、新しい喜びを生活の中に取り入れるという時代に転換するといったことを強く意識することが求められると考えます。

 

 


関西中小企業研究所第56回研究会のご案内

2015-05-19 11:46:12 | 中小企業

綿花栽培を通じた新たな価値づくり

https://www.facebook.com/events/732536196859226/

 経済が成熟化し、人口が減少する社会に入っています。価値は多様化し、ビジネスのあり方も大きく変わってきています。消費者のニーズはモノからコトへ移り、企業が提供する商品やサービスは高付加価値化し、多品種少量の商品や個性的なサービスに移ってきています。そんな中で、一度は廃れた製品を復活させるものづくりも増えてきています。
 綿花栽培もここ10年広がりはじめています。明治に衰退した和綿がなぜ今見直されるのか?講師の大阪産業経済リサーチセンター主任研究員・松下隆さんはその調査をされ、今回、本を出版されました。和綿栽培や国産の繊維製品の事例をご紹介いただきながら、お話をうかがいます。
 多くの皆様のふるってのご参加をお願い申し上げますとともに、実践的にこれからの経営に生かしていく一歩にしていきたいと思っています。

      日 時     2015年5月19日(火)午後6時~8時

      場 所     ティグレ会議室
    (〒540-0012 大阪市中央区谷町2-6-4谷町ビル8F TEL 06-6966-1866)

      テーマ     「綿花栽培を通じた新たな価値づくり」

       講 師     大阪産業経済リサーチセンター主任研究員 松下 隆 さん

●松下隆(まつした・たかし)さんプロフィール● 大阪産業経済リサーチセンター主任研究員。中小企業診断士。全国コットンサミット実行委員会事務局。2000年より岸和田での綿花栽培活動をバックアップし、2011年「第一回全国コットンサミットin岸和田」の仕掛け人。自らも綿花栽培を実践している。著書:『参加体験から始める価値創造―綿花栽培に学ぶコトづくりマーケティング』(2014/11』同友館、1620円)

    会 費     2,000円(研究所正会員は1,000円引き)

    お申込     屋号、お名前を記載の上、下記までメールをお願いします。   
          kanchuken@estate.ocn.ne.jp
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    主 催   一般社団法人関西中小企業研究所
             大阪市中央区谷町2-6-4谷町ビル8F
            TEL.06-6966-1866


関西中小企業研究所第55回研究会のご報告

2015-05-11 16:12:15 | 中小企業

大阪への外国人旅行者誘致に向けて

 講 師  大阪産業経済リサーチセンター主任研究員 山本敏也さん

 2015年4月22日、ティグレ会議室において、大阪産業経済リサーチセンター・経済リサーチグループ主任研究員の山本敏也さんに、「大阪への外国人旅行者誘致に向けて」と題して講演していただきました。以下に要約します。

 

インバウンド急増の背景

 

 ご紹介いただいた山本です。よろしくお願いします。

街中を歩いてみますと、訪日外国人の方と多く出会います。「インバウンド」つまり訪日外国人の分野は活況を呈しています。訪日外国人およびその旅行者のことを指してインバウンドといます。外国人旅行者は2014年に1300万人を超えました。2013年に比べて約30%増加しました。2013年度は1000万人を超えたということで話題になりましたが、それを超える勢いで伸びています。国別に見ますと、1番が台湾で283万人、前年度比45%の増加。2番が韓国で276万人、39%の増加。中国は3番で241万人、84%の増加になっています。

 インバウンド急増の背景は、①LCC(Low Cost Carrierの略)の台頭です。②急激な円安です。③観光立国実現に向けたアクション・プログラムなどが挙げられます。オリンピックを見据えた観光振興、ビザ要件の緩和、歴史的町並み保存などです。④2020年までに訪日外国人を2千万人に増やすという「日本再興戦略」⑤消費税免税対象品目の拡大で全品目が対象になりました。以上5点が挙げられると思います。

 「インバウンド」に対する言葉として「アウトバウンド」の分野を述べておきたいと思います。「アウトバウンド」とは日本人出国者のことです。ピークは2012年の1849万人で、円安基調により2年連続減少しています。主な訪問先は米国、韓国、中国、台湾などです。両者の格差が急速に縮小しています。1995年には訪日外国人1に対して日本人出国者は4.6倍でした。2014年度にはその比率が1.3倍までに縮小してきています。この現象は政策的な影響もありますが、為替が円安に振れていることが大きな原因と考えられます。

 大阪・関西のインバウンドの状況を見ますと関空経由のインバウンドは2014年には317万人にのぼりました。これは前年度比約37%の増加です。USJハリーポッターの開業も追い風になっています。2008年のリーマンショックから円高が進みインバウンドの減少が続いていました。2011年の「東日本大震災」の影響でインバウンドの急激な減少で、経済に対する影響も意識され始め、そのための対策を打つことの必要性が生じてきました。2012年3月にピーチアビエーションの運行が始まり少し明るさが見えてきました。2013年7月タイ、マレーシアのビザの免除なども影響してインバウンドが増えてきました。さらに2014年9月インドネシア、フィリピン、ベトナムに対するビザ発給要件の大幅緩和、同年10月に消費税の免税対象品目の全商品への拡大などでさらにインバウンドが増え続けています。これを地域別に見ていきますと、台湾は2011年以降急速に伸びています。韓国と同じくらいになってきています。中国は2012~2013年の尖閣問題で落ち込みましたが、2013年末あたりから急激に回復してきています。ASEAN諸国はタイの勢いが止まりません。マレーシア、シンガポールなどが順調に伸びてきています。

 

インバウンドの展望と課題

 

 結論からいますと、大阪・関西のインバウンドの潮流は当面、追い風が続くと思われます。その理由は、日本再興戦略に基づく具体的施策の下支えや、高野山開創1200年祭、大阪の陣400年天下一祭、姫路城の修復完成などが挙げられます。さらには、世界規模でのスポーツイベントが関西・全国で開催されます。2016年スポーツ文化ダボス会議、2017年第8回冬季アジア大会、2019年第8回ワールドカップが大阪・東京で開催されます。2020年には東京オリンピックとパラリンピックが開催されます。これだけの海外イベントが開催されることは珍しくインバウンド誘致に結び付けことになります。USJも妖怪ウォッチ、ジュラシックのジェットコースターの運転を2016年春に予定しています。これらの可能性を実現するのは、為替・株価の急変、戦争・テロがないことが前提になっています。

 過去の国際的なスポーツイベントによる需要変動について見ていきたいと思います。2012年ロンドンオリンピックが行われました。2012年7~9月の訪英外国人の宿泊者数は、ロンドン、イングランド、スコットランドのどの地域においても落ち込んでいます。特にロンドンに泊った人の数は前年度比で7.8%の落ち込みがありました。7~9月を過ぎますと対前年比でプラスになっているということです。その後もマイナスにまで落ち込むことはなかったので、この落ち込みはロンドン五輪の影響ではないかと思います。イベントによる消費額の推移ですがロンドンで13.9%の増加で、全国平均でも8.5%の増加を示しています。オリンピック前後の外国人旅行者数の推移を見てみますと、スペイン、ギリシャ、北京、ロンドンを見てみますと、効果が上がっていると思います。

 インバウンドの急増に伴う課題があります。観光関連施設での問題点が挙げられます。観光バスの乗降スペース周辺の交通渋滞があり、バス専用停車枠の増設が必要です。日本人の場合は、時間通りの集合・出発が可能ですが、外国人旅行者の場合、買い物などに没頭して時間が遅れるということが起こりやすく、交通渋滞の原因になっています。空港においては航空会社カウンター・出国審査時の混雑、空港内のベンチやシャワー設備の不足などの問題を抱えています。宿泊施設では、ホテル・旅館の予約が困難になり、料金が高騰、稼働率が高くなっています。カプセルホテルや大型の高級ホテルの開業・再開発が求められています。

 一般施設での問題は、鉄道では通勤ラッシュ時の混雑、深夜・早朝の空港アクセスの問題があります。商業サービス施設では、駅・病院・劇場などの公共空間における免税の手続き、無料Wi-Fi接続、道路標識、案内板の多言語対応、ハラ―ル対応など大手企業を中心に取り組みが進められています。

 大阪における宿泊施設の稼働状況は、2013年度以降ほぼ80%を超えてきています。ビジネスホテルにおいて、東西の稼働率を比較すると2014年度後半以降、大阪が東京を上回ってきています。シティホテルにおいては、2014年の初めから大阪が東京を上回っています。

 

企業からのヒアリング

 

 企業からのヒアリングの内容を紹介します。道頓堀の和風旅館はインバウンドを受け入れてから、中国、台湾、シンガポールなどからの旅行者が増えてきたようです。花見のシーズンになると4月の宿泊を半年前から予約する外国人もいます。2014年に入って、平日に加えて土日も外国人客が急増して対応が困難になってきているようです。1室4人程度の利用が多い日本人に対して、外国人客は2名ほどと少人数が多いこともあり、土日の外国人向けの予約の受付を制限しています。

 

休憩所設置で賑わいがもどったE商店街

 

 E商店街は、東日本大震災直後の来訪者の激減により、顧客の外国人の占める割合が高いことを知りました。2012年頃から外国人客が一層増えてきたことを受け、商店街の案内サービスなど、積極的な訪日外国人客の誘致を開始しました。誘致活動の一環で「商店街に来て困ったこと」をアンケートで尋ねると、「ゴミを捨てる場所が分からない」「メニューが日本語しかない」「休憩する場所がない」などの声が集まった。そこで、2013年末に空き店舗となった建物の一階を改装して、トイレ完備の無料休憩所を設置し、商店街で購入した商品を食べられるようにしました。さらに、休憩所のWi-Fi環境を整備し、店舗や周辺情報を入手しやすくしました。その結果、これまで賑わいの少なかった休憩所周辺の客の流れが増えて、賑わいが戻りつつあるようです。さらに、大阪市内の観光スポットや商店街を紹介した無料情報誌(日本語、英語、中国語)の配布や、商品を紹介する共通ポップづくりなどを通じて、新鮮で高品質な商品を扱うE商店街のイメージを外国人にアピールしていく。近隣の商店街と連携を強化し、より広域な「面」として発信したいと計画しています。

 

東南アジアからの旅行者の顧客満足度を高めるF社

 

 F社では、2012年頃にマレーシアやインドネシアなどの東南アジアの宿泊客が増加してきています。これまで、ムスリム客からの要望には個別に対応していましたが、国内のハラ―ルに対する認知度の高まりや顧客満足度向上の一環として、2013年11月に和牛のムスリムフレンドメニューを打ち出しました。以前は、大手旅行会社を通じて宿泊客の意向を把握していましたが、正式なメニュー化によって、食事以外の要望にも顧客が自ら伝えやすくなり、顧客満足度が高まりました。オリンピックに向けた具体的な取り組みはないですが、英語、中国語の語学スタッフの育成やタブレット端末のフロントへの設置、メニュー等へのピクトグラム(絵文字など)の導入などの取り組みを進めています。一過性のブームに流されることなく、顧客との長いお付き合いができるように、開催後まで視野に入れたマーケティングを実践しています。

 

インバウンド誘致に求められるもの

 

 安全・安心・快適性の確保の問題が挙げられます。言葉の問題が大きな問題としてあります。音声翻訳システムが無料で提供されています。空港内施設案内システム、ピクトグラム(絵文字)、ハラル、食物アレルギー問題を解決することが求められます。また拠点病院の整備・医療通訳者の育成が急務です。インバウンドの増加で混雑が予想されます。そのためには、郊外への宿泊客の誘導のために古民家を活用するなどのことが求められています。外国人客向けの店舗を設けて利便性を強みにすることが必要です。

 次に、体験価値を上げて、本物を知ってもらうということが求められています。一元客だけを相手にしているといずれブームが去るということになります。日本に来て初めて分かる日本の魅力というのがあります。①気質:高い美徳・規律、礼儀正しさ、好奇心と根気、わびさびなどの神秘的で不思議なおもてなしができる。②作品:歴史・伝統に革新を与えた製品、ハイテク製品、庭園、和食などものづくりへのこだわり。③生活:ハイレベルな消費生活(100円ショップも高品質)、便利・清潔・安全などです。大阪人と交流や大阪の文化・歴史に触れることで、体験価値を高め根強いリピーターを増やすことです。

 3つ目には、地域の独自性をいかすことです。人や地域の交流との交流です。大阪市には田舎が少ないですが、大阪市以外ではまだまだ田舎が残っています。ブドウ畑が残っていたりしますので、田舎を見たり、地元の人と触れ合えたり、日本の伝統的なライフスタイルを体験できることへの評価は高いものがあります。「本物の」の日本や大阪を体験できるような「地域ブランド」づくりが必要です。円安効果に甘んじることなく、円高でも訪れたい都市の魅力を創出することが不可欠です。

 インバウンドの誘致から学ぶことは自分たちを知ることになるのではないかと思います。

一つの例ですが、梅田のスカイビルが、「世界を代表する20の建造物」の一つとして英タイムズ紙で紹介されました。パルテノン神殿、サグラダファミリアとならぶ世界的な観光名所になりました。「普段見過ごしているものに、素晴らしい宝が眠っている!」ことに気付かされました。日本・大阪を再発見するチャンスです。