KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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東京マラソン2009展望

2009年03月20日 | マラソン時評
第一回大会の翌週発売の某週刊誌においては「世紀の暴挙」とまで酷評された東京マラソン、よもや第三回まで開催されようとは。今や「空前のランニング・ブーム」の発信源として、「運動面」以外の話題にもなっている。どうやら、2016年の東京五輪誘致に失敗したとしても、開催が中止になる可能性も少なくなったかもしれない。

現在の「ブーム」については、僕もいろいろと物申したいところもないわけではないが、ここではこの「国内初の賞金レース」の優勝争いの行方について語ってみよう。

この大会、条件さえ整えば好記録が続出するコースであることが、昨年の大会で明らかになった。そこに、マラソン日本記録保持者の高岡寿成、2位の藤田敦史、'05年世界選手権銅メダリストの尾方剛ら今世紀の日本男子マラソンを支えてきたランナーたちが集うわけだから、観戦する側のお楽しみも多い。そこに世界歴代3位のサミー・コリル、日本育ちの第一回優勝者ダニエル・ジェンガ、「永遠に破られない」といわれる高校駅伝1区の記録保持者ジュリアス・ギタヒら外国人の強豪がからんでくる。

38歳の高岡はこの大会での引退を表明した。ロンドン五輪を目指すという藤田も今年で32歳、尾方も36歳。彼らの好走を期待したい気持ちと、彼らが上位に入賞してくるようでは・・・、という気持ちが交錯している。この大会に関して、メディアへの露出が多いのが藤田だが、もし、彼が優勝するとしたら、記録は2時間10分前後ではないかと見ている。藤田というランナー、9年前の福岡ではシドニー五輪金メダリストのゲザハン・アベラ、アトランタ五輪銀メダリストの李鳳柱らとの真っ向勝負に勝って日本最高記録を達成したが、彼はむしろ、'02年のソウル、'07年の別大のような「ライバルたちに記録を出させないレース」が得意なのだ。先のびわ湖のポール・テルガトのように、ライバルたちを金縛りにさせてしまうレースが出来るランナーだ。果たして、そのような展開に持ち込むことができるか。期待のかかる若手ランナー、中尾勇生や前田和浩が「藤田マジック」の術中にはまることなく自分のレースが出来るだろうか。

3月の下旬だけに気温が心配である。今のところの予報では、午後から雨とのことである。昨年のような高速レースではなく、藤田のような駆け引き上手なランナーに有利な展開となると見ているのだが、どうだろうか。昨年の藤原新のような「伏兵」の出現にも期待したい、中尾と同様に「往年の名ランナーの息子」上岡宏次やベテランの阿部祐樹、昨年の防府で苦杯をなめた糟谷悟らに注目している。

北京五輪で棄権した土佐礼子が「区切りのマラソン」として出場する。ところが今回新たに「女子エリートの部」が設けられ、女子の部も有力ランナーが多く揃った。土佐も憧れの存在だった弘山晴美も今回、ここが「引退レース」と表明したし、土佐とともに2年前の世界選手権を走った同い年の嶋原清子、昨年北海道優勝の佐伯由香里、さらには昨年ボストン2位のアレフティナ・ビクティミロワ、昨年パリ4位のシタイェ・ゲメチュ、世界ハーフ銅メダリストのパメラ・チェプチュンバと「簡単に土佐に優勝させてもらえそうもない」レースになってしまった。昨年末に北条に帰郷し、地元でトレーニングを続けて臨む大会である。先月の丸亀ハーフでは、名古屋優勝の藤永佳子に次いで4位でゴール。世界の頂点を目指していた頃とは少し肩の力を抜いて、本当の意味で「楽しんで」走って欲しい。初めて、愛媛マラソンを走った時のように、
「これからも何度もマラソンを走りたい。」
と思えるような走りが出来れば、僕も嬉しい。「これぞ土佐礼子の走り」と唸るような走りを見たい。

今回、女子は代表選考レースではないが、もし、嶋原清子が優勝したら昨年のシカゴ3位とホノルル優勝との「合わせ技」で世界選手権代表に推薦してもいいのではないかと思っている。

脇田茜、新谷仁美と「Qちゃん2世」がマラソンで次々と敗退している中、佐伯由香里はどうだろう。北海道マラソンで初マラソン初優勝とはいうものの、その時も後半に大きくペースを落としている。強力なライバルのいない大会だからトップでゴールできたが、実質は先輩ランナーたちと同じ轍を踏んでいた。今回で真価が問われるところだ、などと重圧をかけなくてもいいくらいの若さが彼女の魅力だ。ただ、先日の福岡クロカンの中継の中で流れたインタビューを見て思ったのだが、歯並びを矯正したらどうだろうか?それをして成功したランナーを知っているものだから。

さて、ここからは明後日、このレースのスタートラインに立つことになっている、マラソン・デビューを控えて子供の頃の遠足前日のような気分になっている方々へのアドバイスだ。(昔、君原健二さんは「マラソンは遠足みたいなもの」と語っていた。)

午後から雨との予報なので4時間以上のゴールを目標とするランナーはそれなりの対策が必要だ。キャリアの浅い方なら雨の中を走るという体験をしたことのない人もいるだろう。あるいは、朝起きたら雨が降っていたので大会が中止と思い込んで、出場料を無駄にした経験のある人もいるのではないか。

僕は雨の降る中のレースを走るのが好きだ。普段の練習では雨の中を走ることはほとんど無い。練習中に夕立に遭い、風邪をひいて寝込んだことがあるからだ。北海道マラソンを目指して走りこんでいた疲れが出たせいだろう。平成7年7月7日のことだっただけによく覚えている。それだけに、雨の中のランニングは非日常的な行為をしているという不思議な高揚感を伴っていると感じるのだ。

しかしながら、重要なのは、「風邪をひかぬこと」である。ウェアも水をはじく素材のウインドブレイカーを着るなどして、身体を冷やさないように心がけて欲しい。帽子(キャップ)は雨の時は必需品だ。ビニール袋の底に穴をあけ、頭からかぶる簡易レインコートで走る人も多いが、雨の降らないうちから通気性のないウェアを着て走ると汗をかき過ぎてしまうので、畳んでウエストポーチにしまっておき、雨が降り出してからかぶるのがいいだろう。汗のかき過ぎというと、実は冬から春にかけてのレースの方が脱水症状が原因による足の痙攣等のアクシデントが起こり易いこともお忘れなく。夏のように「熱中症」ということを意識せず、日常的に水分を摂る量が減少しているからだ。

第一回大会では、ゴール後、スタート地点で預けた荷物がなかなか受け取れなかったことへの苦情の声が報じられたことを記憶している。昨年でどの程度改善されたのかはよく分からないが、雨の日のレースの鉄則は「ゴール後は早急に着替えること」なのである。もし、どなたか付き添いの人がいらっしゃるのなら、ゴール後の着替えを預けておき、ゴール後待ち合わせの場所とゴール予定タイムを打ち合わせておくこともお勧めする。

ともあれ、風邪だけはひかないよう、気をつけて欲しい。「市民ランナー」と呼ばれる、我々リアル・アマチュア・ランナーにとって、マラソンを完走することと同等に大切なのは、マラソンの翌日の仕事を、マラソンを理由に休まないことであることを忘れないで欲しい。

それでは、明後日東京都庁前をスタートする全てのランナーたちの健闘を祈りたい。そして、

「来年は、僕もそこに行くからね。」



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