4人獄死の「横浜事件」再審開始を決定

2008-10-31 | 社会

10月31日10時35分配信 産経新聞
 戦時下最大の言論弾圧事件とされる「横浜事件」で、治安維持法違反の罪で有罪となった元雑誌編集者の遺族が起こした第4次再審請求で、横浜地裁(大島隆明裁判長)は31日、再審開始の決定を下した。第4次再審請求は、雑誌「改造」の編集者、故小野康人さんの次男(62)と長女(59)が申し立てていた。決定理由で、地裁は、拷問で虚偽の自白をしたとする小野さんの口述書などを挙げ「無罪を言い渡すべき新証拠」と認定した。
 決定を受けて会見した次男は「門は開けられたけど、これからが始まり。ぜひ公開審理をして、裁判が行われることを期待したい」。長女は「今回の決定で皆さんの無罪を勝ち取ったと思っている。これまで応援してくださった方々になんとお礼を申し上げたらよいか」と話した。
 横浜事件は昭和17年~20年、「改造」に掲載された論文が共産主義を宣伝しているとして、神奈川県警特高課が論文を書いた評論家や編集者、研究者ら約60人を治安維持法違反で逮捕。20年9月までに約30人が有罪判決を受け、拷問などによって4人が獄死した。
 小野さんは「共産主義を宣伝する論文を改造に掲載した」などとして、18年に逮捕され、懲役2年執行猶予3年の刑が確定し、34年に他界した。
 再審請求で小野さん側は「問題の論文は共産主義的啓蒙(けいもう)論文ではない」とする歴史的研究者の見解を新たな証拠として提示し、判決の違法性を主張。ほかの元被告が起こした第3次請求で再審が初めて認められたが、今年3月、有罪、無罪の判断をせずに審理を打ち切る「免訴」が確定した。

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横浜事件の再審開始決定=「虚偽の自白」推測-第4次請求・地裁
(時事通信社 - 10月31日 11:01
 戦時下最大の言論弾圧事件とされる「横浜事件」で、終戦直後に有罪判決を受けた編集者の遺族による第4次再審請求について、横浜地裁(大島隆明裁判長)は31日、「関係証拠を総合すれば、激しい拷問が加えられ、虚偽の自白に基づく調書への署名がうかがわれる」などとして、再審を開始する決定を出した。
 再審請求していたのは、雑誌「改造」の編集部員だった故小野康人さんの長女ら。小野さんは共産主義思想を広めるような論文を掲載したとして、治安維持法違反容疑(当時)で神奈川県警に逮捕され、1945年9月に横浜地裁で懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
 再審請求書で、小野さん側は「問題の論文は共産主義的啓蒙(けいもう)論文ではない」とする歴史研究者の見解を新たな証拠として提示し、判決の違法性を主張。また「当時、日本共産党再建のための会議とされた富山県での『泊会議』は、編集者を慰労する宴会だった」としていた。

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横浜事件再び再審決定 横浜地裁「無罪とすべき証拠」
2008年10月31日 中日新聞夕刊

 戦時下最大の言論弾圧とされる横浜事件で、終戦直後に治安維持法違反の有罪判決を受けた元被告の遺族らが申し立てた第4次再審請求について、横浜地裁は31日、拷問を受けたなどとする元被告の口述書などを「無罪を言い渡すべき明確な証拠である」として、再審開始を決定した。

 再審請求していたのは、雑誌「改造」の元編集部員、故小野康人さんの次男新一さん(62)と長女斎藤信子さん(59)。横浜事件の再審開始は、別の元被告の遺族らが行った第3次請求に次いで2回目。

 小野さんは、「改造」に掲載された社会評論家、故細川嘉六氏の論文「世界史の動向と日本」の校正を行い、「共産主義を啓蒙(けいもう)した」として、1945年9月に懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。その後大赦になったが59年に死亡。再審開始決定により、有罪から63年で、戦時下の司法の責任が再び法廷で裁かれる。

 大島隆明裁判長は決定理由で、元被告が共産主義を広めたとする有罪判決に、「これを証明すべき証拠が存在せず、ただちに有罪の事実認定が揺らぐ」と指摘。「拙速といわれてもやむを得ないずさんな事件処理がされた」「不都合な事実を隠ぺいしようと記録を破棄した可能性がある」と当時の裁判所を強く批判した。

 遺族らは「論文は共産主義とは関係ない」とする鑑定書を新証拠として提出し、「共産党再建準備会議」とされた会合も「単なる慰労会」と主張。今回の決定で、鑑定書の証拠採用はしなかったものの、「共産主義的啓蒙論文といえるか疑問を禁じ得ない」と指摘。会合は「慰労会そのもの」と断定した。

 横浜事件をめぐっては、第1、第2次再審請求がいずれも最高裁で棄却された。第4次とは別の元被告の遺族らが請求した第3次請求で初めて再審が開始されたが、有罪・無罪を判断せずに審理を打ち切る「免訴」が今年3月に最高裁で確定した。

 今回の決定でも、第3次請求での免訴確定を踏まえ、「治安維持法が廃止されていることなどから、再審を開始しても免訴判決をするほかない」とした。

 <弁護団の佐藤博史弁護士の話> 再審を認めた決定は当時の裁判を「ずさんな事件処理」と断じ、(裁判所が)隠ぺいのため横浜事件の記録を燃やした可能性が高いと認定した。司法の責任を率直に認めた勇気ある決定だ。再審で無罪を勝ち取るのは難しいが、決定は無罪判決に等しいと考えている。

 <中井国緒・横浜地検次席検事の話> 当方の主張が認められず、残念。上級庁と協議して今後の対応を決めたい。

 【横浜事件】 戦時中から終戦直前にかけての言論弾圧事件の総称。神奈川県特高課が、雑誌「改造」に掲載された故細川嘉六氏の論文を共産主義の宣伝とし、富山県の旅館で開かれた細川氏の出版記念会を「共産党再建準備会議」と見なすなど「共産主義を広げた」として、治安維持法違反容疑で改造や中央公論の編集者ら約60人を逮捕。30人以上が起訴され、多くは終戦直後に有罪判決を受けた。4人は獄死。元被告は全員が死亡している。

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http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/adagio/yokohama-jiken.htm


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