NTT、五十音順の電話帳「ハローページ」の発行を来年十月から順次終える 2020/6/30

2020-06-30 | 社会

中日春秋 
2020年6月30日 Tue
 小説家里見弴(とん)は本名を山内英夫という。作家になるのに反対した父を欺くために、ペンネームを思い立った。手にしたのが電話帳である。目をつぶって、ページを開き、鉛筆で指した場所にあったのが「里見」だったそうだ
▼ファンには知られた話のようだが、後の大作家が目を閉じて、電話帳に向かう少し滑稽な姿が浮かぼうか。鉛筆でトンと突いたから弴になったというのは、だれかが創作して広がったつくり話らしい
▼分厚く、無味乾燥ながら膨大な情報を抱え、本来の役割と異なる使われ方もされてきた電話帳である。戦後すでに「昼寝の枕」などと呼ばれていたという。目を閉じてではないだろうが、子の命名のヒントにとページをめくる親もいたようだ
▼意味なく友人の家や同姓の数を調べたり、押し花づくりに使ったり…。長いことめくっていないが、消えていくと聞けば、思い出す光景が多くてなにやら寂しい。NTT西日本と東日本が五十音順の電話帳「ハローページ」の発行を来年十月から順次終えると先日発表した
▼電話番号を調べる本来の用途には仕事柄、数え切れないほど世話になった。個人情報意識の高まり、詐欺のおそれ、スマートフォンなどの普及で必要性が変わったのはよく分かる
▼最近は電話帳というと携帯電話の中の一連の連絡先を指すようだ。優秀な電話帳だが、名付けにも枕にも向かない。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)


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